心療内科で診断書が断られるのはなぜ?もらえないケースと対処法を解説
心療内科の診断書はどんなときに必要?
診断書は医師が診察に基づいて作成する医療文書で、現在の病状や療養の必要性を第三者に伝える“公式の根拠”です。心療内科の診断書は、心の不調によって日常生活や社会活動に支障が出ているときに、その状況を客観的に説明するために使われます。
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学校で必要になるケース
学校では、長期欠席や保健室登校の継続、定期試験時の配慮(別室受験・延長時間など)、体育や行事の参加免除を希望する際に、診断書の提出が求められることがあります。これは、学校側が生徒の健康状態を把握し、適切な対応をするために必要な情報を得るためです。また、進級や進学に関する判断材料として使われる場合もあります。
職場で必要になるとき
仕事に支障が出ている場合、会社への欠勤・休職の申請や、復職の判断、業務内容の調整を行う際に診断書の提出が必要になることがあります。特に「就労困難」や「一時的に勤務制限が必要」などの医学的な判断は、会社が労務上の対応を検討する際の根拠となります。
役場で申請に必要
心の不調に関する公的な支援制度を利用する際、診断書の提出が求められることがあります。たとえば、「自立支援医療制度」や「障害年金」「傷病手当金」の申請時には、診断書が必要となることが一般的です。
これらの制度では、決められた様式の診断書を使う必要がある場合が多く、事前に役所や保険者などの提出先から書類を入手し、医師に提示する必要があります。提出書類の種類によっては、作成に時間がかかる場合もあるため、余裕をもって依頼するようにしましょう。
診断書には何が書かれる?書けないことって?
就労や通学の可否、療養の必要性、公的制度の申請において、その根拠となる書類ですが、内容には明確な範囲と制限があります。正しく理解し、適切な使い方をすることが大切です。
記載されるのは病名・療養期間・就労可否・配慮事項
心療内科の診断書に記載される基本的な内容は、以下のような項目です。
●病名(例:うつ病、適応障害など)
●療養を要する期間
●就労が可能かどうか(労務不能の有無)
●勤務や学習における配慮事項(例:勤務時間の短縮、環境調整)
医師はこれらの項目を、患者の状態や診察内容に基づいて医学的な観点から判断し、記載します。業務・学業における具体的な配慮事項とは、「夜勤は避けるべき」「対人業務を一時的に制限する」「短時間勤務が望ましい」などの記載です。
「復職できるか」「この先どうなるか」は書けない
診断書には書けないこと、あるいは書くべきでないこともあります。その代表例が、「復職の時期がいつになるか」「今後どのように症状が変化するか」といった将来予測に関する内容です。
企業や学校が「いつから完全に復帰できるのか」を求めることがあります。しかし、診断書はあくまでも“現時点”の所見を記載するものであり、「必ず◯月から復職可能」と断定する内容は含まれません。
「◯月◯日以降、復職可能と判断した」といったように、あくまで医師の判断としての「可能性」を記載するにとどまります。その後の復職の可否は、会社側の判断や労務管理の方針に委ねられることになります。
心療内科で診断書をもらえないケースとは?
診断書はあくまで医師の医学的判断に基づいて作成されるものです。どんな時でも必ず発行されるわけではありません。いくつかの条件が整っていないと、希望しても発行されないケースがあります。ここでは、よくある6つの例を紹介します。
「医学的に根拠が足りない」と判断されるケース
最も基本的な理由は、医師が「診断書を書くに足る医学的根拠がない」と判断した場合です。たとえば、「なんとなく仕事がつらい」といった主観的な訴えのみでは、病名の診断がつかず、発行に至らないことがあります。診断書は公的な文書であり、医学的な裏付けが必要です。
初診だけでは判断できない、経過観察が必要な場合
心の症状は一度の診察で確定できないことも多く、初診だけでは診断書が出ないことがあります。うつ病や適応障害などは、症状の継続性や日常生活への影響を一定期間観察しないと確かな診断が難しいため、医師が「経過を見てから判断したい」と考えるのは自然なことです。
専門外のケースで別の医師に回される場合
心療内科は精神症状と身体症状の両方を診ますが、診断書の作成目的によっては精神科医の判断が必要な場合があります。精神疾患による障害年金の申請など、精神保健指定医の資格を持つ医師でなければ作成できない書類がある場合、他の医療機関への紹介が行われます。
※障害年金の診断書について
障害年金の診断書原則として患者さんを診ている医師(または歯科医師)が作成できます。精神保健指定医であることは必須ではありません。ただし、内容は詳細かつ厳密で、日常生活能力等の客観評価が求められるため、経過をよく把握する主治医に依頼するのが望ましいとされています。
本人以外の依頼やプライバシー問題にぶつかるとき
家族や職場の上司などが「代わりに診断書をもらってきたい」と申し出ても、本人の同意なしに発行されることはありません。医療情報は法律で厳しく守られており、診断書の発行も基本的に本人からの正式な依頼が前提です。本人不在の依頼では、たとえ善意であっても医師が対応できないのは当然のことです。
「不正利用されるかも」と警戒されたケース
まれに、医師が診断書の使用目的に疑念を抱き、「これは正当な目的ではないかもしれない」と判断した場合、発行を見送ることもあります。たとえば、休職を繰り返すためだけに診断書を求めているように見えるケースや、職場トラブルの解決に使われかねないといった状況では、医師も慎重にならざるを得ません。
通院不足や情報不足で医師が判断できないとき
心療内科の診断書は、患者の状態を総合的に判断して作成されるため、十分な通院歴や詳細な情報がないと正確な内容が書けません。「久しぶりの来院」「簡単な問診のみ」「過去の記録が乏しい」といった場合には、医師が慎重になり、診断書を出すのを保留することがあります。
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うつ病・適応障害で診断書がもらえないときの対処法
うつ病や適応障害と診断されそうな状態でも、診断書をすぐにはもらえないケースがあります。しかし、落ち込む必要はありません。医師と信頼関係を築き、適切な方法で対処することで、必要な支援につながる可能性は十分にあります。ここでは、診断書を得るためにできる具体的な行動と、その代替手段について解説します。
まず医師に聞くべきこと、伝えるべきこと
診断書を希望する場合、まずは「なぜ今は出せないのか」を医師に率直に尋ねましょう。診断がまだ確定していないのか、通院歴が短く判断材料が不足しているのか、あるいは別の診療科の受診が必要なのか。理由を明確にすることで、次のステップが見えてきます。
同時に、自分の症状や生活への支障についても丁寧に伝えることが大切です。「仕事に行けない日が続いている」「食事や睡眠がまともに取れない」など、日常生活に具体的な影響が出ていることを共有すると、医師も判断しやすくなります。
セカンドオピニオンを検討する
「この医師とはどうしても話が噛み合わない」「明らかに状態が悪いのに取り合ってもらえない」と感じた場合、他の医療機関でのセカンドオピニオンを検討するのもひとつの方法です。ただし、複数の医師に同じ訴えをしても、診断が一致しないことはあります。「どこかで出してくれるだろう」と病院を変え続けることは避け、信頼できる医師を選び、丁寧に説明する姿勢が大切です。
「意見書・経過報告書」で代用できる場合もある
診断書が出せないと医師に言われた場合でも、「意見書」や「経過報告書」といった形で現在の状態を記した文書を作成してもらえることがあります。これらの書類は、診断確定に至らない段階でも「医師の所見」として活用でき、職場や学校への配慮を求める材料になります。
医師に相談する際には、「診断書が難しいなら、現時点での状態を示す書類はお願いできますか?」と尋ねてみるとよいでしょう。提出先が柔軟に対応してくれる場合には、診断書が出るまでの一時的な措置として役立つことがあります。
学校・職場・保険会社…提出先への伝え方
診断書がすぐに出ない状況では、提出先への説明にも工夫が必要です。職場であれば上司や人事に「医師と相談しているが、もう少し経過を見たいとのことで、現時点では診断書の代わりに経過報告をもらっています」と伝えることで、理解を得やすくなります。
保険会社や公的機関の場合も、「〇月〇日に再度受診予定であり、継続的に医師と相談している」ことを明示すると、信頼性が高まります。書面がない状態では伝えにくいこともあるため、可能であれば医師からもらった意見書をコピーして提出するのがベストです。
心療内科で診断書をもらうために診察で伝えるべきこと
診断書は、ただ「ください」と言えばすぐに出るものではありません。心療内科の医師は、診断に必要な情報が揃っているかどうかを慎重に判断します。そのためには、患者自身が自身の状態や背景をしっかりと伝えることが重要です。ここでは、診断書が必要なときに医師にきちんと伝えるべき情報を紹介します。
具体的な症状と生活・仕事への影響
最も大切なのは、現在の症状をできるだけ具体的に伝えることです。たとえば「気分が落ち込む」だけでなく、「朝起きられず遅刻や欠勤が続いている」「食欲がなく、体重が3キロ減った」「人と話すのが怖くて接客ができない」など、生活や仕事にどう影響しているかを結びつけて話すと、医師の判断材料になります。
症状がどれほど日常に支障を与えているかを伝えることは、診断書の必要性を客観的に説明するうえでとても重要です。
発症時期とストレス要因を押さえる
いつごろから不調が始まったのかをできる限り正確に伝えましょう。「〇月頃から眠れなくなり、翌朝の出勤が辛くなった」「上司とのやりとりがきっかけで不安感が強くなった」など、発症のタイミングやきっかけになった出来事(ストレス要因)がわかると、医師も症状の経過や背景を把握しやすくなります。
適応障害などは「環境とのミスマッチ」が原因であることが多いため、仕事や学校などの状況が症状にどう関係しているかを明らかにすることが求められます。
提出先・用途・期限を医師に共有しておく
診断書は、その提出先や目的によって内容が変わることがあります。職場に提出するものか、学校か、それとも自治体や保険会社への提出か、それによって必要な情報が異なるため、最初の段階で「どこに、何のために、いつまでに必要か」を医師に伝えておくと、スムーズに作成してもらいやすくなります。
また、提出先の指定様式やフォーマットがある場合には、必ず持参するようにしましょう。
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初診日でも診断書は出る?
「初めて診察を受けた日にすぐ診断書を出してもらえるのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。ここでは、初診当日に診断書が発行される可能性や、発行に至らないケースについて解説します。
即日発行が可能な条件とは?
たとえば、過去に別の医療機関での診断歴があり、紹介状や投薬記録、休職中である証明がある場合などは、医師が十分な情報を得られたと判断し、その場で診断書を作成することがあります。また、患者の訴える症状が明確で、医師が「休職や環境調整が急務である」と判断したときも、即日で診断書が発行されることがあります。会社や学校への対応が急を要する場合には、応急的な形での診断書(短期間の療養を指示するもの)が出されることもあるでしょう。
複数回受診しないと発行できない理由
多くの場合、初診だけでは診断書は出せないと医師が判断します。精神疾患の診断は、症状の経過や変化、ストレスとの関連性など、継続的な観察が必要となるからです。
たとえば、「仕事に行けない」「眠れない」といった訴えがあったとしても、それが一時的なストレス反応なのか、慢性的なうつ症状なのかは、数回にわたる診察や経過観察を経て、ようやく見えてくることが多いのです。
また、診断書は医師にとって「医学的に責任のある文書」であり、曖昧な情報のまま発行すると誤解を招いたり、本人にも不利益をもたらしたりする可能性があります。慎重な判断を求められるのは当然といえるでしょう。
「診断書ください」の前に知っておくべきこと
「とりあえず診断書を出してもらえばいい」と軽く考えてしまうと、思わぬトラブルになることもあります。診断書を依頼する前に、費用や有効期限などの基本的な知識を押さえておきましょう。
診断書の値段は?保険適用外になる理由とは
知っておきたいのは、診断書の作成費用は保険適用外であるということです。医療機関によって金額は異なりますが、一般的には2,000円〜5,000円程度、内容が複雑な場合や特殊なフォーマットが必要な場合には、1万円を超えることもあります。
なぜ保険が使えないのかというと、診断書の発行は「治療行為」ではなく、「文書作成業務」にあたるからです。つまり、病気を治すための医療ではなく、医師が公的な立場で医学的な意見を文書化するという事務的な行為であるため、健康保険の対象外となるのです。
診断書を何通も提出する必要がある場面では、費用もかさみます。あらかじめ提出先に「コピー提出でよいか」「PDFでも可能か」などを確認しておくと、無駄な出費を防げるでしょう。
「有効期限」ってあるの?発行日と提出日の関係
診断書には「〇月〇日まで有効です」といった明確な有効期限が書かれているわけではないことが多いですが、提出先によっては「発行から○日以内のもの」といった独自のルールが設けられていることがあります。
たとえば、企業の休職制度や保険会社の手続きでは、「発行日から1ヶ月以内の診断書が必要」といった条件があるケースもあります。古い診断書を提出してしまうと、受理されない、または差し戻されるといったリスクもあるため、提出先の条件を事前に必ず確認しておくことが大切です。
また、病状の変化があった場合には、あらためて最新の診断書が必要になることもあります。その都度、医師との相談をしながら対応していくようにしましょう。
うつ病と適応障害、診断書に差が出るポイント
同じように「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった症状があっても、うつ病と適応障害では、診断内容も診断書に書かれる内容も異なります。見た目の症状は似ていても、医師が診断書にどう記載するかは、症状の出方や経過、原因となる要因などによって変わります。
診断名は医師の総合的な判断によって決まり、本人の希望だけで決まるものではない点に注意が必要です。ただし、症状が重く長引く場合には、適応障害からうつ病へと診断が変わることもあります。
うつ病は「症状の持続性」が決め手
うつ病と診断される際に重視されるのは、症状の「持続性」や「重症度」です。気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠障害、食欲低下といった症状が2週間以上継続しており、日常生活や仕事に明らかな支障をきたしていることが、診断の重要な基準です。
診断書には、「うつ病」「うつ状態」といった診断名とともに、療養期間や就労の可否、職場での配慮内容などが書かれます。症状が慢性的で、再発リスクが高い場合には、長期の休職や段階的な復職支援が必要と判断されることも少なくありません。
適応障害は「環境との関係性」で判断される
適応障害は、特定のストレス要因に対する反応として起こります。たとえば、転職、人間関係の悪化、引っ越し、家庭内の問題など、明確な出来事が引き金になっており、その出来事がなければ、重い症状には至っていなかったと考えられるケースです。
このため診断書にも、「環境因による適応障害」と記載されたり、「〇〇職務からの離脱を要する」「配置転換が望ましい」といった環境調整の必要性が明記されることがあります。症状自体は一時的なことも多く、ストレス要因から離れることで早期に改善が見込まれると判断される場合もあります。
休職・手当・年金と診断書の関係
心の不調によって仕事を休むとき、または生活を支えるための制度を利用する際には、医師の診断書が大きな役割を果たします。診断書は単なる“病気の証明書”ではなく、会社や公的機関に対して、どのような対応や支援が必要かを伝える「医療の意見書」でもあります。
ただし、どの制度でも「診断書があれば絶対に通る」というわけではなく、判断にはそれぞれの基準があります。ここでは、休職、傷病手当金、障害年金の3つの制度と診断書の関係を解説します。
休職・復職は会社のルールが優先される
心療内科や精神科で「休職を要する」と書かれた診断書をもらった場合でも、実際に休職できるかどうかは会社の就業規則や制度に基づいて判断されます。
多くの企業では、医師の診断書が提出されると、産業医や人事部が内容を確認し、労務管理上の観点から休職の可否や期間を決めます。また、復職に関しても「医師がOKを出した=即復帰可能」ではなく、会社側が安全配慮義務の観点から最終判断を行うのが一般的です。
そのため、診断書を提出した後も、会社の担当者や産業医と相談しながら復職準備を進めることが大切です。
傷病手当金:診断書のここを見られている
健康保険に加入している会社員が、病気やけがで働けなくなった場合に受け取れるのが「傷病手当金」です。支給対象となるかどうかの審査には、**医師が作成した診断書(意見書)**が重要な判断材料になります。
診断書で特に見られるのは以下のようなポイントです。
●労務不能期間:いつからいつまで働けない状態か
●病名と症状:医学的に働けない根拠があるか
●治療の経過や見通し:継続的な治療が必要かどうか
また、「日常生活にどの程度支障があるか」や、「通勤が困難かどうか」といった内容も、審査に影響することがあります。診断書の内容が不明確だったり、勤務可能かどうかの記載が曖昧だったりすると、支給が遅れたり不支給になる可能性もあるため、主治医としっかり相談しながら記載を依頼しましょう。
障害年金:誰が書ける?精神科との関係性
障害年金は、病気やけがで日常生活や就労に制限がある方が対象となる公的年金制度です。心の病気(うつ病、双極性障害、統合失調症など)でも、一定の状態に該当すれば受給できます。
ここで注意したいのは、「障害年金の診断書は誰でも書けるわけではない」という点です。精神疾患の場合、心療内科・精神科を標榜している医師、または精神保健指定医が診断書を作成しないといけません。
つまり、心療内科しか標榜していない医療機関では、障害年金用の診断書を作成できないことがあります。この場合は、主治医に相談して対応可能な病院や精神科を紹介してもらうことが一般的です。
過去の診察をもとに診断書は発行できる?
「以前通っていた心療内科での診断内容をもとに、今になって診断書を出してもらいたい」「当時は必要なかったが、会社や保険の手続きのために診断書が必要になった」
そんなケースは決して珍しくありません。では、過去の診察記録をもとに診断書を後日発行してもらうことは可能なのでしょうか?実際には、医療機関や状況によって対応が異なります。まずは、発行できる場合と難しい場合、それぞれのケースを見ていきましょう。
記録があれば後日でも発行可能な場合
診療当時のカルテや記録がきちんと残っており、内容が明確であれば、診察からある程度時間が経っていても、後日診断書が発行されるケースはあります。たとえば、「〇年〇月当時にうつ病と診断され、〇日から〇日まで就労困難だった」といった内容の診断書を、後から求めることが可能です。
ただし、医師はあくまで「当時の診療記録に基づいて、書ける範囲」で記載します。そのため、「○年前の時点での診断結果」にとどまり、現在の状態やその後の経過については反映されません。また、作成までに数日かかることもあるため、余裕を持って依頼することが大切です。
記録不足や長期間経過で難しい場合の代替手段とは
一方で、カルテに十分な記録が残っていない場合や、診察からかなりの時間が経過している場合には、診断書の発行が難しくなることもあります。特に、心療内科や精神科の診断は、医師の問診や所見に大きく依存するため、客観的な資料が乏しいと「当時の医学的判断を裏付ける証拠がない」とされる可能性があります。
また、法律上、日本ではカルテの保存義務は原則5年です(治療が継続している等の事情があればより長期保存されることもあります)。保存が終了していれば後日発行が困難な場合があります。このような場合には、代替的な方法として以下のような選択肢を検討することができます。
①意見書や経過報告書の発行
診断書ほど厳密な形式でなくても、当時の状況についての「所見文」を出してもらえることがあります。
②現在の主治医に相談
過去の通院歴や自覚症状、残っている資料(診察券、薬の処方記録、紹介状など)をもとに、新たな診断の一助としてもらえる場合があります。
③提出先への相談
会社や保険会社、公的機関に事情を説明し、「当時の診断書が難しい場合、他の証明方法で対応できるか」確認するのも一つの手です。
診断書の取得には「医学的根拠があるかどうか」が問われます。無理に依頼するのではなく、現実的に可能な範囲で、医師や提出先と丁寧に調整していくことが大切です。
心療内科の診断書でよくある誤解と注意点
「診断書さえあれば何でも通る」といった誤解も少なくありません。診断書はあくまで医療上の意見を示すものであり、全てを自動的に決定づける“絶対的な証明書”ではないことを理解しておくことが大切です。ここでは、心療内科の診断書にまつわる代表的な誤解と、その注意点について解説します。
「診断書さえあれば絶対休める」
よくある誤解の一つが、「医師が“休職が必要”と診断書に書いてくれれば、必ず会社を休める」という考えです。実際に休職できるかどうかは、会社の就業規則や人事部門の判断に委ねられます。
企業によっては産業医による確認を求めたり、診断書の内容をもとに労務管理上の判断を行ったりすることが一般的です。また、診断書の内容が曖昧だった場合には、追加の情報提供や面談が必要になることもあります。
つまり、診断書は「休職の申請理由を説明するツール」であって、「休職の権利を保証するもの」ではないという点に注意が必要です。
「どの医師でも同じ内容を書ける」
心療内科や精神科であれば、どの医師でも同じような診断書を書いてくれると考える方もいますが、実際はそうではありません。診断書の内容は、診察を通じて医師が医学的に判断した内容に基づいて記載されるものです。そのため、同じ症状を訴えても、医師によって診断名や療養期間、配慮事項などが異なることがあります。
提出先に有効期限を求められる場面
診断書自体には「有効期限」が明記されていないことが多いですが、提出先の判断で“何日前までに発行されたものか”という条件が設けられていることがあります。
たとえば、会社の復職手続きでは「復職予定日の2週間以内に発行された診断書が必要」と定めているケースがあるため注意しましょう。また、公的機関への申請では「発行日から1ヶ月以内」など、受付のルールが決まっていることがあります。
古い診断書を提出すると、「最新の状態を確認したうえで再提出してほしい」と求められることもあるため、発行日と提出日との関係には注意が必要です。診断書を依頼する前に、提出先の条件をあらかじめ確認しておくと安心です。
心療内科で診断書依頼をスムーズにする受診前の準備
診断書が必要なとき、診察の場で「うまく説明できなかった」「聞き忘れてしまった」という経験をする方は少なくありません。心身の調子がすぐれないなかで医師に必要なことを伝えるのは、意外と難しいものです。
診断書をスムーズに作成してもらうには、受診前の準備が非常に大切です。限られた診察時間を有効に使い、的確に情報を伝えるために、事前に確認しておくべきポイントを押さえておきましょう。
症状・生活・提出先…整理しておくべき4つのこと
受診前には、以下の4点をあらかじめ整理しておくと、医師とのやり取りがスムーズになります。
現在の症状
例:朝起きられない、頭が重い、人と会うのが怖いなど
生活や仕事への影響
例:出勤が続けられない、家事ができない、学校に行けていないなど
発症時期やきっかけ(ストレス要因)
例:〇月頃から上司の叱責で眠れなくなった、家族関係の変化など
診断書の提出先と目的
例:会社の人事部に提出予定、休職申請に必要など
これらの情報が揃っていることで、医師は診断の判断材料を得やすくなり、適切な診断書作成につながります。
医師にうまく伝えるためのメモ
症状や背景を頭の中だけで整理するのは難しいため、メモを事前に用意しておくことをおすすめします。箇条書きでもかまいません。診察の場では緊張して言いたいことを忘れてしまうこともあるため、手元にまとめたメモがあるだけで、会話がスムーズに進みます。
「提出先と用途」「期限」は忘れがちなので、診断書に反映してもらうためにも、紙やスマホにメモしておきましょう。
会社規定・提出期限を事前に確認
診断書は医師が医学的に作成する文書ですが、提出先のルールに合っていなければ、受け取ってもらえないこともあります。そのため、会社の休職制度の内容や、診断書の提出期限などをあらかじめ確認しておくことが重要です。
企業によっては「所定の様式がある」「提出日は復職予定日の〇日前までに」などの細かい条件があることもあります。これらを確認しておくことで、医師にも正確に依頼ができ、トラブルを未然に防げます。
診断書が必要な場合は、もらえないと心配するより、まずは相談してみよう
診断書は特別な人だけがもらえるものではなく、困っている人が必要に応じて正当に利用するための文書です。医師も患者の生活や社会参加を支えるために、その必要性があると判断すれば、適切な形で診断書を作成してくれます。
重要なのは、「無理に頼む」のではなく、「必要性があるかどうかを一緒に相談する」という姿勢です。まずは自分の状態をきちんと伝えた上で、「会社や学校に提出する必要がありそうなのですが、診断書をお願いできますか?」と素直に相談してみましょう。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
仕事が忙しい、通院先が遠い、体調が悪くて外出がつらい…。そんなときは、オンライン診療を利用することで、自宅にいながら心療内科の受診が可能になります。
初診から対応しているクリニックも増えており、心療内科の相談や診断書の発行にも対応している医療機関もあります。「診断書が必要だけど通院が難しい」という方にとって、負担を減らしながら医師に相談できる手段です。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットに接続できるスマートフォンやパソコンを使い、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオ通話を通じて医師と直接話すことができ、予約から問診、診断、薬の処方箋発行や支払いまで、ほとんどのステップをオンライン上で完結できます。外出が難しいときや、仕事や家事で病院に行く時間をとりにくいときに、強い味方となる仕組みです。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をアプリでスムーズに利用できるサービスです。診察予約からお薬の受け取りまでを一括で行えるのが特徴で、専門スタッフのサポートもあるため初めての方でも安心して利用できます。
お気に入りのクリニックや薬局を登録できる機能や、お薬手帳をデジタル管理する仕組みもあり、全国どこからでも当日または翌日に薬を受け取ることが可能です。忙しい方や体調が不安定な方にとって、診断書の相談や薬の受け取りまでを効率よく行える大きなメリットがあります。
まとめ
心療内科で診断書が出ないのは、医師が冷たいからではなく、医学的な根拠が不足していたり、診察の経過が十分でなかったりするのかもしれません。まずは、診断書の提出先や目的を明確に伝え、必要な情報を整理して医師に相談してみましょう。
それでも発行が難しい場合には、「セカンドオピニオンを受ける」「意見書や経過報告書で対応する」といった方法もあります。
不安や疑問を一人で抱え込むよりも、率直に医師と話し合うことが、診断書をスムーズに受け取るための第一歩です。
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当コラムの掲載記事に関するご注意点
1.当コラムに掲載されている情報については、執筆される方に対し、事実や根拠に基づく執筆をお願いし、当社にて掲載内容に不適切な表記がないか、確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。
2.当コラムにおいて、医療及び健康管理関連の資格を持った方による助言、評価等を掲載する場合がありますが、それらもあくまでその方個人の見解であり、前項同様に内容の正確性や有効性などについて保証できるものではありません。
3.当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。
4.前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は一切責任を負うものではありません。
「診断書をお願いしたのに、発行してもらえなかった…」
そんな経験をして、不安や戸惑いを感じた方は決して少なくありません。心療内科で発行される診断書は、学校や職場での対応や各種制度の利用に欠かせない重要な書類です。しかし、医師が「医学的な根拠が不十分」と判断した場合や、初診だけでは判断が難しい場合には、発行されないこともあります。
この記事では、心療内科で診断書が出ないのはどんな理由や背景があるのか、診断書をもらえなかった場合にどう対応すればよいのか、そしてスムーズに発行してもらうために診察時に意識して伝えておきたいポイントを、専門医の監修のもとで解説します。
心療内科の診断書はどんなときに必要?
診断書は医師が診察に基づいて作成する医療文書で、現在の病状や療養の必要性を第三者に伝える“公式の根拠”です。心療内科の診断書は、心の不調によって日常生活や社会活動に支障が出ているときに、その状況を客観的に説明するために使われます。
学校で必要になるケース
学校では、長期欠席や保健室登校の継続、定期試験時の配慮(別室受験・延長時間など)、体育や行事の参加免除を希望する際に、診断書の提出が求められることがあります。これは、学校側が生徒の健康状態を把握し、適切な対応をするために必要な情報を得るためです。また、進級や進学に関する判断材料として使われる場合もあります。
職場で必要になるとき
仕事に支障が出ている場合、会社への欠勤・休職の申請や、復職の判断、業務内容の調整を行う際に診断書の提出が必要になることがあります。特に「就労困難」や「一時的に勤務制限が必要」などの医学的な判断は、会社が労務上の対応を検討する際の根拠となります。
役場で申請に必要
心の不調に関する公的な支援制度を利用する際、診断書の提出が求められることがあります。たとえば、「自立支援医療制度」や「障害年金」「傷病手当金」の申請時には、診断書が必要となることが一般的です。
これらの制度では、決められた様式の診断書を使う必要がある場合が多く、事前に役所や保険者などの提出先から書類を入手し、医師に提示する必要があります。提出書類の種類によっては、作成に時間がかかる場合もあるため、余裕をもって依頼するようにしましょう。
診断書には何が書かれる?書けないことって?
就労や通学の可否、療養の必要性、公的制度の申請において、その根拠となる書類ですが、内容には明確な範囲と制限があります。正しく理解し、適切な使い方をすることが大切です。
記載されるのは病名・療養期間・就労可否・配慮事項
心療内科の診断書に記載される基本的な内容は、以下のような項目です。
●病名(例:うつ病、適応障害など)
●療養を要する期間
●就労が可能かどうか(労務不能の有無)
●勤務や学習における配慮事項(例:勤務時間の短縮、環境調整)
医師はこれらの項目を、患者の状態や診察内容に基づいて医学的な観点から判断し、記載します。業務・学業における具体的な配慮事項とは、「夜勤は避けるべき」「対人業務を一時的に制限する」「短時間勤務が望ましい」などの記載です。
「復職できるか」「この先どうなるか」は書けない
診断書には書けないこと、あるいは書くべきでないこともあります。その代表例が、「復職の時期がいつになるか」「今後どのように症状が変化するか」といった将来予測に関する内容です。
企業や学校が「いつから完全に復帰できるのか」を求めることがあります。しかし、診断書はあくまでも“現時点”の所見を記載するものであり、「必ず◯月から復職可能」と断定する内容は含まれません。
「◯月◯日以降、復職可能と判断した」といったように、あくまで医師の判断としての「可能性」を記載するにとどまります。その後の復職の可否は、会社側の判断や労務管理の方針に委ねられることになります。
心療内科で診断書をもらえないケースとは?
診断書はあくまで医師の医学的判断に基づいて作成されるものです。どんな時でも必ず発行されるわけではありません。いくつかの条件が整っていないと、希望しても発行されないケースがあります。ここでは、よくある6つの例を紹介します。
「医学的に根拠が足りない」と判断されるケース
最も基本的な理由は、医師が「診断書を書くに足る医学的根拠がない」と判断した場合です。たとえば、「なんとなく仕事がつらい」といった主観的な訴えのみでは、病名の診断がつかず、発行に至らないことがあります。診断書は公的な文書であり、医学的な裏付けが必要です。
初診だけでは判断できない、経過観察が必要な場合
心の症状は一度の診察で確定できないことも多く、初診だけでは診断書が出ないことがあります。うつ病や適応障害などは、症状の継続性や日常生活への影響を一定期間観察しないと確かな診断が難しいため、医師が「経過を見てから判断したい」と考えるのは自然なことです。
専門外のケースで別の医師に回される場合
心療内科は精神症状と身体症状の両方を診ますが、診断書の作成目的によっては精神科医の判断が必要な場合があります。精神疾患による障害年金の申請など、精神保健指定医の資格を持つ医師でなければ作成できない書類がある場合、他の医療機関への紹介が行われます。
※障害年金の診断書について
障害年金の診断書原則として患者さんを診ている医師(または歯科医師)が作成できます。精神保健指定医であることは必須ではありません。ただし、内容は詳細かつ厳密で、日常生活能力等の客観評価が求められるため、経過をよく把握する主治医に依頼するのが望ましいとされています。
本人以外の依頼やプライバシー問題にぶつかるとき
家族や職場の上司などが「代わりに診断書をもらってきたい」と申し出ても、本人の同意なしに発行されることはありません。医療情報は法律で厳しく守られており、診断書の発行も基本的に本人からの正式な依頼が前提です。本人不在の依頼では、たとえ善意であっても医師が対応できないのは当然のことです。
「不正利用されるかも」と警戒されたケース
まれに、医師が診断書の使用目的に疑念を抱き、「これは正当な目的ではないかもしれない」と判断した場合、発行を見送ることもあります。たとえば、休職を繰り返すためだけに診断書を求めているように見えるケースや、職場トラブルの解決に使われかねないといった状況では、医師も慎重にならざるを得ません。
通院不足や情報不足で医師が判断できないとき
心療内科の診断書は、患者の状態を総合的に判断して作成されるため、十分な通院歴や詳細な情報がないと正確な内容が書けません。「久しぶりの来院」「簡単な問診のみ」「過去の記録が乏しい」といった場合には、医師が慎重になり、診断書を出すのを保留することがあります。
うつ病・適応障害で診断書がもらえないときの対処法
うつ病や適応障害と診断されそうな状態でも、診断書をすぐにはもらえないケースがあります。しかし、落ち込む必要はありません。医師と信頼関係を築き、適切な方法で対処することで、必要な支援につながる可能性は十分にあります。ここでは、診断書を得るためにできる具体的な行動と、その代替手段について解説します。
まず医師に聞くべきこと、伝えるべきこと
診断書を希望する場合、まずは「なぜ今は出せないのか」を医師に率直に尋ねましょう。診断がまだ確定していないのか、通院歴が短く判断材料が不足しているのか、あるいは別の診療科の受診が必要なのか。理由を明確にすることで、次のステップが見えてきます。
同時に、自分の症状や生活への支障についても丁寧に伝えることが大切です。「仕事に行けない日が続いている」「食事や睡眠がまともに取れない」など、日常生活に具体的な影響が出ていることを共有すると、医師も判断しやすくなります。
セカンドオピニオンを検討する
「この医師とはどうしても話が噛み合わない」「明らかに状態が悪いのに取り合ってもらえない」と感じた場合、他の医療機関でのセカンドオピニオンを検討するのもひとつの方法です。ただし、複数の医師に同じ訴えをしても、診断が一致しないことはあります。「どこかで出してくれるだろう」と病院を変え続けることは避け、信頼できる医師を選び、丁寧に説明する姿勢が大切です。
「意見書・経過報告書」で代用できる場合もある
診断書が出せないと医師に言われた場合でも、「意見書」や「経過報告書」といった形で現在の状態を記した文書を作成してもらえることがあります。これらの書類は、診断確定に至らない段階でも「医師の所見」として活用でき、職場や学校への配慮を求める材料になります。
医師に相談する際には、「診断書が難しいなら、現時点での状態を示す書類はお願いできますか?」と尋ねてみるとよいでしょう。提出先が柔軟に対応してくれる場合には、診断書が出るまでの一時的な措置として役立つことがあります。
学校・職場・保険会社…提出先への伝え方
診断書がすぐに出ない状況では、提出先への説明にも工夫が必要です。職場であれば上司や人事に「医師と相談しているが、もう少し経過を見たいとのことで、現時点では診断書の代わりに経過報告をもらっています」と伝えることで、理解を得やすくなります。
保険会社や公的機関の場合も、「〇月〇日に再度受診予定であり、継続的に医師と相談している」ことを明示すると、信頼性が高まります。書面がない状態では伝えにくいこともあるため、可能であれば医師からもらった意見書をコピーして提出するのがベストです。
心療内科で診断書をもらうために診察で伝えるべきこと
診断書は、ただ「ください」と言えばすぐに出るものではありません。心療内科の医師は、診断に必要な情報が揃っているかどうかを慎重に判断します。そのためには、患者自身が自身の状態や背景をしっかりと伝えることが重要です。ここでは、診断書が必要なときに医師にきちんと伝えるべき情報を紹介します。
具体的な症状と生活・仕事への影響
最も大切なのは、現在の症状をできるだけ具体的に伝えることです。たとえば「気分が落ち込む」だけでなく、「朝起きられず遅刻や欠勤が続いている」「食欲がなく、体重が3キロ減った」「人と話すのが怖くて接客ができない」など、生活や仕事にどう影響しているかを結びつけて話すと、医師の判断材料になります。
症状がどれほど日常に支障を与えているかを伝えることは、診断書の必要性を客観的に説明するうえでとても重要です。
発症時期とストレス要因を押さえる
いつごろから不調が始まったのかをできる限り正確に伝えましょう。「〇月頃から眠れなくなり、翌朝の出勤が辛くなった」「上司とのやりとりがきっかけで不安感が強くなった」など、発症のタイミングやきっかけになった出来事(ストレス要因)がわかると、医師も症状の経過や背景を把握しやすくなります。
適応障害などは「環境とのミスマッチ」が原因であることが多いため、仕事や学校などの状況が症状にどう関係しているかを明らかにすることが求められます。
提出先・用途・期限を医師に共有しておく
診断書は、その提出先や目的によって内容が変わることがあります。職場に提出するものか、学校か、それとも自治体や保険会社への提出か、それによって必要な情報が異なるため、最初の段階で「どこに、何のために、いつまでに必要か」を医師に伝えておくと、スムーズに作成してもらいやすくなります。
また、提出先の指定様式やフォーマットがある場合には、必ず持参するようにしましょう。
初診日でも診断書は出る?
「初めて診察を受けた日にすぐ診断書を出してもらえるのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。ここでは、初診当日に診断書が発行される可能性や、発行に至らないケースについて解説します。
即日発行が可能な条件とは?
たとえば、過去に別の医療機関での診断歴があり、紹介状や投薬記録、休職中である証明がある場合などは、医師が十分な情報を得られたと判断し、その場で診断書を作成することがあります。また、患者の訴える症状が明確で、医師が「休職や環境調整が急務である」と判断したときも、即日で診断書が発行されることがあります。会社や学校への対応が急を要する場合には、応急的な形での診断書(短期間の療養を指示するもの)が出されることもあるでしょう。
複数回受診しないと発行できない理由
多くの場合、初診だけでは診断書は出せないと医師が判断します。精神疾患の診断は、症状の経過や変化、ストレスとの関連性など、継続的な観察が必要となるからです。
たとえば、「仕事に行けない」「眠れない」といった訴えがあったとしても、それが一時的なストレス反応なのか、慢性的なうつ症状なのかは、数回にわたる診察や経過観察を経て、ようやく見えてくることが多いのです。
また、診断書は医師にとって「医学的に責任のある文書」であり、曖昧な情報のまま発行すると誤解を招いたり、本人にも不利益をもたらしたりする可能性があります。慎重な判断を求められるのは当然といえるでしょう。
「診断書ください」の前に知っておくべきこと
「とりあえず診断書を出してもらえばいい」と軽く考えてしまうと、思わぬトラブルになることもあります。診断書を依頼する前に、費用や有効期限などの基本的な知識を押さえておきましょう。
診断書の値段は?保険適用外になる理由とは
知っておきたいのは、診断書の作成費用は保険適用外であるということです。医療機関によって金額は異なりますが、一般的には2,000円〜5,000円程度、内容が複雑な場合や特殊なフォーマットが必要な場合には、1万円を超えることもあります。
なぜ保険が使えないのかというと、診断書の発行は「治療行為」ではなく、「文書作成業務」にあたるからです。つまり、病気を治すための医療ではなく、医師が公的な立場で医学的な意見を文書化するという事務的な行為であるため、健康保険の対象外となるのです。
診断書を何通も提出する必要がある場面では、費用もかさみます。あらかじめ提出先に「コピー提出でよいか」「PDFでも可能か」などを確認しておくと、無駄な出費を防げるでしょう。
「有効期限」ってあるの?発行日と提出日の関係
診断書には「〇月〇日まで有効です」といった明確な有効期限が書かれているわけではないことが多いですが、提出先によっては「発行から○日以内のもの」といった独自のルールが設けられていることがあります。
たとえば、企業の休職制度や保険会社の手続きでは、「発行日から1ヶ月以内の診断書が必要」といった条件があるケースもあります。古い診断書を提出してしまうと、受理されない、または差し戻されるといったリスクもあるため、提出先の条件を事前に必ず確認しておくことが大切です。
また、病状の変化があった場合には、あらためて最新の診断書が必要になることもあります。その都度、医師との相談をしながら対応していくようにしましょう。
うつ病と適応障害、診断書に差が出るポイント
同じように「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった症状があっても、うつ病と適応障害では、診断内容も診断書に書かれる内容も異なります。見た目の症状は似ていても、医師が診断書にどう記載するかは、症状の出方や経過、原因となる要因などによって変わります。
診断名は医師の総合的な判断によって決まり、本人の希望だけで決まるものではない点に注意が必要です。ただし、症状が重く長引く場合には、適応障害からうつ病へと診断が変わることもあります。
うつ病は「症状の持続性」が決め手
うつ病と診断される際に重視されるのは、症状の「持続性」や「重症度」です。気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠障害、食欲低下といった症状が2週間以上継続しており、日常生活や仕事に明らかな支障をきたしていることが、診断の重要な基準です。
診断書には、「うつ病」「うつ状態」といった診断名とともに、療養期間や就労の可否、職場での配慮内容などが書かれます。症状が慢性的で、再発リスクが高い場合には、長期の休職や段階的な復職支援が必要と判断されることも少なくありません。
適応障害は「環境との関係性」で判断される
適応障害は、特定のストレス要因に対する反応として起こります。たとえば、転職、人間関係の悪化、引っ越し、家庭内の問題など、明確な出来事が引き金になっており、その出来事がなければ、重い症状には至っていなかったと考えられるケースです。
このため診断書にも、「環境因による適応障害」と記載されたり、「〇〇職務からの離脱を要する」「配置転換が望ましい」といった環境調整の必要性が明記されることがあります。症状自体は一時的なことも多く、ストレス要因から離れることで早期に改善が見込まれると判断される場合もあります。
休職・手当・年金と診断書の関係
心の不調によって仕事を休むとき、または生活を支えるための制度を利用する際には、医師の診断書が大きな役割を果たします。診断書は単なる“病気の証明書”ではなく、会社や公的機関に対して、どのような対応や支援が必要かを伝える「医療の意見書」でもあります。
ただし、どの制度でも「診断書があれば絶対に通る」というわけではなく、判断にはそれぞれの基準があります。ここでは、休職、傷病手当金、障害年金の3つの制度と診断書の関係を解説します。
休職・復職は会社のルールが優先される
心療内科や精神科で「休職を要する」と書かれた診断書をもらった場合でも、実際に休職できるかどうかは会社の就業規則や制度に基づいて判断されます。
多くの企業では、医師の診断書が提出されると、産業医や人事部が内容を確認し、労務管理上の観点から休職の可否や期間を決めます。また、復職に関しても「医師がOKを出した=即復帰可能」ではなく、会社側が安全配慮義務の観点から最終判断を行うのが一般的です。
そのため、診断書を提出した後も、会社の担当者や産業医と相談しながら復職準備を進めることが大切です。
傷病手当金:診断書のここを見られている
健康保険に加入している会社員が、病気やけがで働けなくなった場合に受け取れるのが「傷病手当金」です。支給対象となるかどうかの審査には、**医師が作成した診断書(意見書)**が重要な判断材料になります。
診断書で特に見られるのは以下のようなポイントです。
●労務不能期間:いつからいつまで働けない状態か
●病名と症状:医学的に働けない根拠があるか
●治療の経過や見通し:継続的な治療が必要かどうか
また、「日常生活にどの程度支障があるか」や、「通勤が困難かどうか」といった内容も、審査に影響することがあります。診断書の内容が不明確だったり、勤務可能かどうかの記載が曖昧だったりすると、支給が遅れたり不支給になる可能性もあるため、主治医としっかり相談しながら記載を依頼しましょう。
障害年金:誰が書ける?精神科との関係性
障害年金は、病気やけがで日常生活や就労に制限がある方が対象となる公的年金制度です。心の病気(うつ病、双極性障害、統合失調症など)でも、一定の状態に該当すれば受給できます。
ここで注意したいのは、「障害年金の診断書は誰でも書けるわけではない」という点です。精神疾患の場合、心療内科・精神科を標榜している医師、または精神保健指定医が診断書を作成しないといけません。
つまり、心療内科しか標榜していない医療機関では、障害年金用の診断書を作成できないことがあります。この場合は、主治医に相談して対応可能な病院や精神科を紹介してもらうことが一般的です。
過去の診察をもとに診断書は発行できる?
「以前通っていた心療内科での診断内容をもとに、今になって診断書を出してもらいたい」「当時は必要なかったが、会社や保険の手続きのために診断書が必要になった」
そんなケースは決して珍しくありません。では、過去の診察記録をもとに診断書を後日発行してもらうことは可能なのでしょうか?実際には、医療機関や状況によって対応が異なります。まずは、発行できる場合と難しい場合、それぞれのケースを見ていきましょう。
記録があれば後日でも発行可能な場合
診療当時のカルテや記録がきちんと残っており、内容が明確であれば、診察からある程度時間が経っていても、後日診断書が発行されるケースはあります。たとえば、「〇年〇月当時にうつ病と診断され、〇日から〇日まで就労困難だった」といった内容の診断書を、後から求めることが可能です。
ただし、医師はあくまで「当時の診療記録に基づいて、書ける範囲」で記載します。そのため、「○年前の時点での診断結果」にとどまり、現在の状態やその後の経過については反映されません。また、作成までに数日かかることもあるため、余裕を持って依頼することが大切です。
記録不足や長期間経過で難しい場合の代替手段とは
一方で、カルテに十分な記録が残っていない場合や、診察からかなりの時間が経過している場合には、診断書の発行が難しくなることもあります。特に、心療内科や精神科の診断は、医師の問診や所見に大きく依存するため、客観的な資料が乏しいと「当時の医学的判断を裏付ける証拠がない」とされる可能性があります。
また、法律上、日本ではカルテの保存義務は原則5年です(治療が継続している等の事情があればより長期保存されることもあります)。保存が終了していれば後日発行が困難な場合があります。このような場合には、代替的な方法として以下のような選択肢を検討することができます。
①意見書や経過報告書の発行
診断書ほど厳密な形式でなくても、当時の状況についての「所見文」を出してもらえることがあります。
②現在の主治医に相談
過去の通院歴や自覚症状、残っている資料(診察券、薬の処方記録、紹介状など)をもとに、新たな診断の一助としてもらえる場合があります。
③提出先への相談
会社や保険会社、公的機関に事情を説明し、「当時の診断書が難しい場合、他の証明方法で対応できるか」確認するのも一つの手です。
診断書の取得には「医学的根拠があるかどうか」が問われます。無理に依頼するのではなく、現実的に可能な範囲で、医師や提出先と丁寧に調整していくことが大切です。
心療内科の診断書でよくある誤解と注意点
「診断書さえあれば何でも通る」といった誤解も少なくありません。診断書はあくまで医療上の意見を示すものであり、全てを自動的に決定づける“絶対的な証明書”ではないことを理解しておくことが大切です。ここでは、心療内科の診断書にまつわる代表的な誤解と、その注意点について解説します。
「診断書さえあれば絶対休める」
よくある誤解の一つが、「医師が“休職が必要”と診断書に書いてくれれば、必ず会社を休める」という考えです。実際に休職できるかどうかは、会社の就業規則や人事部門の判断に委ねられます。
企業によっては産業医による確認を求めたり、診断書の内容をもとに労務管理上の判断を行ったりすることが一般的です。また、診断書の内容が曖昧だった場合には、追加の情報提供や面談が必要になることもあります。
つまり、診断書は「休職の申請理由を説明するツール」であって、「休職の権利を保証するもの」ではないという点に注意が必要です。
「どの医師でも同じ内容を書ける」
心療内科や精神科であれば、どの医師でも同じような診断書を書いてくれると考える方もいますが、実際はそうではありません。診断書の内容は、診察を通じて医師が医学的に判断した内容に基づいて記載されるものです。そのため、同じ症状を訴えても、医師によって診断名や療養期間、配慮事項などが異なることがあります。
提出先に有効期限を求められる場面
診断書自体には「有効期限」が明記されていないことが多いですが、提出先の判断で“何日前までに発行されたものか”という条件が設けられていることがあります。
たとえば、会社の復職手続きでは「復職予定日の2週間以内に発行された診断書が必要」と定めているケースがあるため注意しましょう。また、公的機関への申請では「発行日から1ヶ月以内」など、受付のルールが決まっていることがあります。
古い診断書を提出すると、「最新の状態を確認したうえで再提出してほしい」と求められることもあるため、発行日と提出日との関係には注意が必要です。診断書を依頼する前に、提出先の条件をあらかじめ確認しておくと安心です。
心療内科で診断書依頼をスムーズにする受診前の準備
診断書が必要なとき、診察の場で「うまく説明できなかった」「聞き忘れてしまった」という経験をする方は少なくありません。心身の調子がすぐれないなかで医師に必要なことを伝えるのは、意外と難しいものです。
診断書をスムーズに作成してもらうには、受診前の準備が非常に大切です。限られた診察時間を有効に使い、的確に情報を伝えるために、事前に確認しておくべきポイントを押さえておきましょう。
症状・生活・提出先…整理しておくべき4つのこと
受診前には、以下の4点をあらかじめ整理しておくと、医師とのやり取りがスムーズになります。
現在の症状
例:朝起きられない、頭が重い、人と会うのが怖いなど
生活や仕事への影響
例:出勤が続けられない、家事ができない、学校に行けていないなど
発症時期やきっかけ(ストレス要因)
例:〇月頃から上司の叱責で眠れなくなった、家族関係の変化など
診断書の提出先と目的
例:会社の人事部に提出予定、休職申請に必要など
これらの情報が揃っていることで、医師は診断の判断材料を得やすくなり、適切な診断書作成につながります。
医師にうまく伝えるためのメモ
症状や背景を頭の中だけで整理するのは難しいため、メモを事前に用意しておくことをおすすめします。箇条書きでもかまいません。診察の場では緊張して言いたいことを忘れてしまうこともあるため、手元にまとめたメモがあるだけで、会話がスムーズに進みます。
「提出先と用途」「期限」は忘れがちなので、診断書に反映してもらうためにも、紙やスマホにメモしておきましょう。
会社規定・提出期限を事前に確認
診断書は医師が医学的に作成する文書ですが、提出先のルールに合っていなければ、受け取ってもらえないこともあります。そのため、会社の休職制度の内容や、診断書の提出期限などをあらかじめ確認しておくことが重要です。
企業によっては「所定の様式がある」「提出日は復職予定日の〇日前までに」などの細かい条件があることもあります。これらを確認しておくことで、医師にも正確に依頼ができ、トラブルを未然に防げます。
診断書が必要な場合は、もらえないと心配するより、まずは相談してみよう
診断書は特別な人だけがもらえるものではなく、困っている人が必要に応じて正当に利用するための文書です。医師も患者の生活や社会参加を支えるために、その必要性があると判断すれば、適切な形で診断書を作成してくれます。
重要なのは、「無理に頼む」のではなく、「必要性があるかどうかを一緒に相談する」という姿勢です。まずは自分の状態をきちんと伝えた上で、「会社や学校に提出する必要がありそうなのですが、診断書をお願いできますか?」と素直に相談してみましょう。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
仕事が忙しい、通院先が遠い、体調が悪くて外出がつらい…。そんなときは、オンライン診療を利用することで、自宅にいながら心療内科の受診が可能になります。
初診から対応しているクリニックも増えており、心療内科の相談や診断書の発行にも対応している医療機関もあります。「診断書が必要だけど通院が難しい」という方にとって、負担を減らしながら医師に相談できる手段です。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットに接続できるスマートフォンやパソコンを使い、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオ通話を通じて医師と直接話すことができ、予約から問診、診断、薬の処方箋発行や支払いまで、ほとんどのステップをオンライン上で完結できます。外出が難しいときや、仕事や家事で病院に行く時間をとりにくいときに、強い味方となる仕組みです。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をアプリでスムーズに利用できるサービスです。診察予約からお薬の受け取りまでを一括で行えるのが特徴で、専門スタッフのサポートもあるため初めての方でも安心して利用できます。
お気に入りのクリニックや薬局を登録できる機能や、お薬手帳をデジタル管理する仕組みもあり、全国どこからでも当日または翌日に薬を受け取ることが可能です。忙しい方や体調が不安定な方にとって、診断書の相談や薬の受け取りまでを効率よく行える大きなメリットがあります。
まとめ
心療内科で診断書が出ないのは、医師が冷たいからではなく、医学的な根拠が不足していたり、診察の経過が十分でなかったりするのかもしれません。まずは、診断書の提出先や目的を明確に伝え、必要な情報を整理して医師に相談してみましょう。
それでも発行が難しい場合には、「セカンドオピニオンを受ける」「意見書や経過報告書で対応する」といった方法もあります。
不安や疑問を一人で抱え込むよりも、率直に医師と話し合うことが、診断書をスムーズに受け取るための第一歩です。
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2014年千葉大学医学部卒業
2020年国際医療福祉大学 医学部精神医学・成田病院 精神科 助教
2021年千葉大学大学院医学研究院 精神医学教室 特任助教(兼任)
2023年Bellvitge University Hospital (Barcelona, Spain)
2025年メンタルヘルスかごしま中央クリニック 院長
<主な研究領域>https://researchmap.jp/nr_ohsako
精神医学(摂食障害、行動依存症(ゲーム依存、ギャンブル依存、etc)、せん妄)
【免許・資格】
医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会認定精神科専門医・指導医
日本医師会認定産業医
公認心理師
















































