高血圧の代表的な薬|効果・副作用一覧【医師監修】
高血圧の薬(降圧薬)の種類概要
降圧薬はいくつかのタイプがあり、どれかが「絶対によい」ということはありません。それは、高血圧になる原因や、その人の年齢、合併症、体質などがそれぞれ違うからです。
例えば、血管が硬い体質が主な原因の方もいれば、体内の水分量が多い方、あるいは血圧を上げるホルモンの働きが活発な方もいます。また、腎臓が悪い・心不全や不整脈、糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)など、様々な持病や体質に応じて投薬を検討する必要があります。
代表的な降圧剤の種類一覧
高血圧治療で主役となる代表的な降圧薬の名前や分類を紹介します。それぞれの薬が、異なるアプローチで高血圧に立ち向かいます。
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それぞれの詳細についてはここから解説します。
すでに決まったお薬を飲んでいて、薬をもらいに行くだけに通院するのが面倒な方はオンライン診療を活用する手段もあります。
ただし、体調が安定していることやお家で血圧の計測を行っており経過観察が可能な方に限ります。
決まったお薬をもらうだけなら|オンライン診療
代表的な降圧薬の詳細(効果や副作用など)
ここからは、先ほど紹介した5種類の代表的な降圧薬について、それぞれの効果、どのように血圧に働きかけるのか(作用)、特徴、副作用や注意点を解説していきます。
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
血管の筋肉の細胞に入るカルシウムの動きを調整することで血管をゆるめ、血圧を下げます。日本では使用頻度が高く、はじめの一歩として処方されることも多い薬です。
効果・作用
代表的薬剤
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効果の持続時間や体へのなじみ方に違いがあり、患者さんの状態に合わせて選ばれます。
特徴
主な副作用
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服用時の注意点
決まったお薬をもらうだけなら|オンライン診療
ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
ARBは、体の中で血管を縮めて血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)が受容体に結合するのを妨げ、血圧を下げます。腎臓や心臓を守る観点からもよく処方される薬です。
効果・作用
代表的薬剤
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特徴
主な副作用
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服用時の注意点
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ACE阻害薬
ACE阻害薬は、アンジオテンシンIIという血圧を上げる物質そのものの産生を減らす薬です。仕組みはARBと近い場所をターゲットにしますが、体感としての違いもあります。
効果・作用
代表的薬剤
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特徴
主な副作用
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服用時の注意点
決まったお薬をもらうだけなら|オンライン診療
利尿薬
その名の通り「尿の量を増やす」薬です。単独で使う場合もありますが、他の降圧薬と組み合わせて効果を底上げする目的で処方されることが多い薬です。
効果・作用
代表的薬剤
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その他、効果の強い「ループ利尿薬」(フロセミドなど)や、「カリウム保持性利尿薬」(スピロノラクトンなど)もありますが、これらは心不全やむくみ、特定のタイプの高血圧(原発性アルドステロン症など)で使われることが一般的です。
特徴
主な副作用
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服用時の注意点
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β遮断薬(べーたしゃだんやく)
β遮断薬は心臓の働きに関わる「β受容体」に作用して、脈を落ち着かせ、心臓が無理なく血液を送れるようにします。心臓病や頻脈がある高血圧の方で選ばれることが多い薬です。
効果・作用
代表的薬剤
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特徴
主な副作用
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服用時の注意点
副作用かなと思ったら
薬を続ける中で「いつもと違う」と感じたら、遠慮せず医療者に相談してください。今回ご紹介してきたような継続的に服薬する降圧薬は長期間にわたって飲み続けることが多いため、副作用について正しく理解し、対処することが大切です。
むくみやめまい、咳、だるさ、発疹、息苦しさなどは、薬との関連がある場合とない場合があり、自己判断は危険です。症状が軽くても一度記録しておくと役立ちます。
急に顔や舌、喉が腫れる、息がしにくい、意識が遠のくなどの重い症状は救急受診が必要です。定期的な血液検査で腎機能やカリウム、尿酸などをチェックすることも、安全に続けるために大切です。
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副作用への対処法
カルシウム拮抗薬
ARB
ACE阻害薬
利尿薬
β遮断薬
副作用か不明な場合
「薬のせいかどうか分からない」ことは珍しくありません。風邪や脱水、ストレス、睡眠不足など、別の原因が重なっていることもよくあります。
そのため、自己判断での中止はNGです。医師・薬剤師に相談し、必要なら検査で確認してから対応を決めましょう。
いつから、どんな症状が、どのくらいの強さで出ているかを具体的にメモしておきましょう。「薬を飲み始めて3日目から、朝起きるとふらつく感じがある」「夕方になると、足首がパンパンにむくむ」このように具体的に記録しておき、次の受診日に医師に伝えることが、大切です。
服薬についての疑問
高血圧の方が薬(降圧薬)を飲み始めるにあたって、よくある疑問にお答えします。
ただし、体質、持病や検査結果など、万人に当てはまる内容でないことを念頭に不安については処方時に担当の医師に確認されるとよいでしょう。
薬は一生飲み続けなければならないのか?
高血圧の方でも、減塩や運動、体重管理、禁煙、節酒などの生活改善が進むと、薬を減らせたり、まれに中止できたりする場合があります。
ただし、自己判断で止めると血圧が再び上がり、心臓や脳へのリスクが跳ね上がります。
目標血圧を安定して達成し続けているか、他の病気や年齢要因がどうかを医師と一緒に評価し、計画的に調整していくのが安全です。
飲み忘れたらどうすればよいか?
うっかり飲み忘れることは誰にでもあります。その場合の対応は、薬の種類(1日に飲む回数)によって異なりますが、基本ルールは「絶対に2回分を一度に飲まない」ことです。
前もって飲み忘れた場合の対応については医師から説明があると思いますが、不安な場合はかかりつけの病院に連絡されることをおすすめします。
1日1回服用の薬の場合
1日2回服用の薬の場合
他の薬やサプリメントとの飲み合わせは?
薬には「飲み合わせ(相互作用)」があり、降圧薬も例外ではありません。
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他の病院で薬を処方された場合や、市販薬、サプリメントを利用したい場合は、必ず「高血圧の薬を飲んでいること」を医師や薬剤師に伝えてください。
血圧が下がったら薬をやめてもよいか?
まず、自己判断は全体にせず、担当の医師と相談してください。
理由として家庭血圧や診察室血圧がしばらく良好でも、薬を中止するとリバウンドのように上がってしまうことがあるからです。高血圧の方は、目標血圧を安定的に保てるか、合併症のリスクはどうか、季節による変動はどうかなどを総合的に見て、段階的な減量を検討するものです。中止は医師の計画のもとでのみ行い、自己判断は絶対に避けてください。
高血圧の方は、血圧の「高い・低い」に一喜一憂するのではなく、薬によって「安定した状態を保つ」ことが、将来の心筋梗塞や脳卒中、腎臓病を防ぐために最も重要です。
自分に合った薬を見つけるために
高血圧の治療は、医師と患者さんが二人三脚で進めるものです。最適な薬物療法を見つけ、長く続けていくためには、いくつかのコツがあります。
自宅から医師と相談できる「オンライン診療」
医師とのコミュニケーション
診察では、普段の家庭血圧の記録、飲み忘れの有無、むくみや咳など気になる症状、スポーツや受験など生活のイベント、サプリや市販薬の使用状況を伝えると、薬選びがスムーズになります。
具体的な希望(眠くなりにくい薬がよい、1日1回で済む方が続けやすい、費用を抑えたいなど)も遠慮なく伝えてください。
家庭血圧測定の重要性
病院で測る血圧(診察室血圧)は、緊張で高めに出ることがあります(=白衣高血圧とも呼ばれます)。一方、自宅でリラックスして測る「家庭血圧」こそが、医師があなたの本当の血圧を知る上で最も重要です。
朝起きて排尿後、朝食前、服薬前に1〜2回、夜寝る前に1〜2回、同じ腕で、背もたれに寄りかかり、1〜2分安静にしてから測るのが基本です。記録はアプリやメモ帳で十分です。
季節や体調で上下するので、連続したデータで判断していきます。
薬の効果が実感できない場合
血圧は「今日だけ」では判断できません。1〜2週間の平均を見て評価します。高血圧の方で効果が実感しにくいときは、服用時間の見直し、塩分量の再確認、睡眠やストレスの調整、併用薬の検討など、できる改善がいくつもあります。自己判断で中止せず、医師に相談してください。
通院が難しいときはオンライン診療の活用も選択肢になります。必要に応じてSOKUYAKUなどのオンライン診療サービスを使えば、自宅から医師に相談でき、処方の調整や副作用の評価をスムーズに進められます。
あなたに合った薬、あなたに合った治療法は必ず見つかります。大切なのは、治療を「続ける」ことです。
※注意事項※
「高血圧の診断」や「高血圧に対する薬の処方」などについてはオンライン診療では対応が難しいことがほとんどです。
こういった”これから高血圧の治療を開始する”場面においては、まずは医療機関に足を運んでいただき、その後、症状が安定して「処方薬が決まっているのにわざわざ通院するのが面倒」「多忙で時間が取れない」といった場合にオンライン診療を活用ください。
当コラムの掲載記事に関するご注意点
1.当コラムに掲載されている情報については、執筆される方に対し、事実や根拠に基づく執筆をお願いし、当社にて掲載内容に不適切な表記がないか、確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。
2.当コラムにおいて、医療及び健康管理関連の資格を持った方による助言、評価等を掲載する場合がありますが、それらもあくまでその方個人の見解であり、前項同様に内容の正確性や有効性などについて保証できるものではありません。
3.当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。
4.前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は一切責任を負うものではありません。
参考情報: 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
高血圧の治療薬は、高血圧だけでは自覚症状がなくても、突然の脳卒中や心筋梗塞といった、高血圧を原因とする重篤な合併症を防ぐため非常に重要です。また、すでに服薬中の方で「あっても副作用が心配」「自分に合った薬を知りたい」といった想いをお持ちの方もいらっしゃると思います。
降圧薬には多くの種類があり、それぞれ効く仕組みや特徴が異なります。この記事では、代表的な降圧薬の種類、効く仕組み、主な副作用を分かりやすく解説します。ただし、自己判断は絶対に避けて、必ず主治医と相談してください。
高血圧の薬(降圧薬)の種類概要
降圧薬はいくつかのタイプがあり、どれかが「絶対によい」ということはありません。それは、高血圧になる原因や、その人の年齢、合併症、体質などがそれぞれ違うからです。
例えば、血管が硬い体質が主な原因の方もいれば、体内の水分量が多い方、あるいは血圧を上げるホルモンの働きが活発な方もいます。また、腎臓が悪い・心不全や不整脈、糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)など、様々な持病や体質に応じて投薬を検討する必要があります。
代表的な降圧剤の種類一覧
高血圧治療で主役となる代表的な降圧薬の名前や分類を紹介します。それぞれの薬が、異なるアプローチで高血圧に立ち向かいます。
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
利尿薬
β遮断薬(ベータしゃだんやく)
それぞれの詳細についてはここから解説します。
すでに決まったお薬を飲んでいて、薬をもらいに行くだけに通院するのが面倒な方はオンライン診療を活用する手段もあります。
ただし、体調が安定していることやお家で血圧の計測を行っており経過観察が可能な方に限ります。
代表的な降圧薬の詳細(効果や副作用など)
ここからは、先ほど紹介した5種類の代表的な降圧薬について、それぞれの効果、どのように血圧に働きかけるのか(作用)、特徴、副作用や注意点を解説していきます。
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
血管の筋肉の細胞に入るカルシウムの動きを調整することで血管をゆるめ、血圧を下げます。日本では使用頻度が高く、はじめの一歩として処方されることも多い薬です。
効果・作用
主な仕事は、「血管を広げる」ことです。私たちの血管の壁には、「平滑筋」という筋肉があります。この筋肉がギュッと収縮するときに必要なのが「カルシウムイオン」です。
カルシウム拮抗薬は、このカルシウムイオンが筋肉の細胞に入るのをブロックします。筋肉が過度に収縮することを防ぎ、血管が広がりやすくなります。水道のホースがやわらかくなるとイメージしてください。通り道が広がりやすくなれば、血液が流れるときの抵抗が減り、血圧は下がります。
血圧を安定して下げやすく、効き目が一日持続する製剤が主流で、朝一回、もしくは一日2回程度の内服で済むものが多くなっています。
代表的薬剤
アムロジピン(主な商品名:ノルバスク、アムロジン)
ニフェジピン(主な商品名:アダラートCR)
アゼルニジピン(主な商品名:カルブロック)
シルニジピン(主な商品名:アテレック)
効果の持続時間や体へのなじみ方に違いがあり、患者さんの状態に合わせて選ばれます。
特徴
カルシウム拮抗薬の多くはさきほどご紹介のとおり、1日1回の服用で24時間安定した降圧効果が期待できるものが多いことが特徴です。そのため、飲み忘れが少ない・服薬のストレスが少なく、血圧のコントロールがしやすいとされています。
副作用が比較的少ないこともあり、高齢者の方や、合併症のない高血圧の患者さんに最初に選ばれることが多い薬(第一選択薬)です。また、血管を広げる作用により、心臓に血液を送る血管が一時的に縮む(けいれんする)ことで起こる、胸の痛みなどの発作を予防する効果も期待できます。
参考元
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
主な副作用
血管が広がることによって起こる症状が中心です。
顔のほてり・紅潮:顔の血管が広がるために起こります。
頭痛:薬の飲み始めに起こることがありますが、多くは次第に慣れていきます。
動悸:血圧が下がるのを補おうと、一時的に心臓が頑張ろうとして起こることがあります。
足のむくみ:特に足首周辺に現れやすいです。
歯肉肥厚:長期間服用していると、歯ぐきが腫れてくることがあります。歯磨きなど口腔ケアが重要です。
めまい・ふらつき:血圧が下がりすぎた場合に起こることがあります。
服用時の注意点
グレープフルーツ(ジュースも含む)との飲み合わせに注意が必要です。グレープフルーツに含まれる成分が、この薬の分解を妨げてしまうため、薬が効きすぎて血圧が下がりすぎる可能性があります。この薬を飲んでいる間は、グレープフルーツの摂取は避けましょう。
ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
ARBは、体の中で血管を縮めて血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)が受容体に結合するのを妨げ、血圧を下げます。腎臓や心臓を守る観点からもよく処方される薬です。
効果・作用
私たちの体には、「レニン-アンジオテンシン系」という、血圧を調節する仕組みがあります。腎臓から「レニン」という物質が出発点となり、最終的に作られるのが、体内で血圧上昇物質である「アンジオテンシンII」です。
このアンジオテンシンIIは、全身の血管にある「受容体=鍵穴のようなもの」にくっつくと、血管をギュッと収縮させ、血圧を上昇させます。ARBは、この「受容体(鍵穴)」に先回りしてフタをしてしまう薬です。アンジオテンシンIIがくっつけなくなるため、血管は収縮せず、血圧が上がるのを防ぎます。
腎臓への負担を減らす作用が期待でき、蛋白尿(=尿中にたんぱく質が異常量含まれる状態)がある高血圧の方では第一候補になることがよくあります。
代表的薬剤
「~サルタン」という名前がつくのが特徴です。
ロサルタン(主な商品名:ニューロタン)
カンデサルタン(主な商品名:ブロプレス)
バルサルタン(主な商品名:ディオバン)
テルミサルタン(主な商品名:ミカルディス)
オルメサルタン(主な商品名:オルメテック)
イルベサルタン(主な商品名:イルベタン、アバプロ)
アジルサルタン(主な商品名:アジルバ)
特徴
血圧調整の仕組みのなかでも内臓の働きに着目して働きをブロックします。
ARBが働きを妨害する対象物質”アンジオテンシンII”は、血管を縮めるだけでなく、長期間にわたって心臓や腎臓に負担をかけ、動脈硬化や心不全、腎臓病を悪化させることがわかっています。ARBは、そのアンジオテンシンIIの働きをブロックするため、心臓や腎臓を守る効果が期待できます。
糖尿病や慢性腎臓病(特にタンパク尿が出ている人)、心不全、心筋梗塞後といった合併症を持つ高血圧の患者さんに、積極的に使われる薬です。
主な副作用
副作用は少ない薬とされていますが、以下のような点に注意が必要です。
めまい・ふらつき:血圧が下がりすぎた場合に起こることがあります。
高カリウム血症: 腎臓の機能が低下している方では、血液中のカリウム濃度が高くなりすぎることがあります。カリウムが異常に高くなると、不整脈の原因にもなるため、定期的な血液検査が必要です。
一時的な腎機能低下: 飲み始めに一時的に腎臓の数値が悪化することがありますが、多くは問題ありません。ただし、注意深い観察が必要です。
血管浮腫(けっかんふしゅ): まれですが、顔、まぶた、唇、舌などが急に腫れる「血管浮腫」という重い副作用が起こることがあります。起きたら救急対応が必要です。
服用時の注意点
妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の方は、絶対に服用してはいけません(禁忌)。
また、腎機能が低下している方は高カリウム血症のリスクが上がるため、血液検査で安全を確認しながら使います。ほかにも脱水状態の人、高齢者の方は、高カリウム血症などを起こしやすいため、慎重に使用します。
ACE阻害薬
ACE阻害薬は、アンジオテンシンIIという血圧を上げる物質そのものの産生を減らす薬です。仕組みはARBと近い場所をターゲットにしますが、体感としての違いもあります。
効果・作用
ARBが、「アンジオテンシンII」が「受容体」にくっついて血圧をあげることのを防ぐ薬だったのに対し、ACE阻害薬は、アンジオテンシンIIが作られること自体を防ぐ薬です。
具体的には、アンジオテンシンIという物質から生まれるより強い昇圧物質アンジオテンシンIIへと「変換」させる酵素の働きを「阻害」します。生まれる前の段階で叩くイメージです。結果として、血管が収縮するのを防ぎ、血圧を下げます。
腎臓や心臓の保護に役立つ点はARBと共通しています。
代表的薬剤
「~プリル」という名前がつくのが特徴です。
エナラプリル(主な商品名:レニベース)
ペリンドプリル(主な商品名:コバシル)
リシノプリル(主な商品名:ゼストリル、ロンゲス)
特徴
ARBと同様に、「臓器保護作用(心臓や腎臓を守る作用)」に優れています。ARBよりも歴史が古く、長期的な臓器保護のエビデンスが豊富で、費用の面でも選択しやすい薬が多いのが特徴です。
主な副作用
空咳:痰の絡まない「コン、コン」という乾いた咳が、1〜2割程度に出るとされています。これは、ACE阻害薬が「ブラジキニン」という咳を引き起こす物質の分解も抑えてしまうために起こります。
血管浮腫:まれにARBと同様の「血管浮腫(けっかんふしゅ)」が起こることがあります。
めまい・ふらつき:血圧が下がりすぎた場合に起こることがあります。
服用時の注意点
ARBとまったく同じ理由で、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の方は、絶対に服用してはいけません(禁忌)。
利尿薬
その名の通り「尿の量を増やす」薬です。単独で使う場合もありますが、他の降圧薬と組み合わせて効果を底上げする目的で処方されることが多い薬です。
効果・作用
腎臓に働きかけて、体内の余分な「塩分(ナトリウム)」と「水分」を尿として排泄させます。塩分の摂りすぎで血圧が上がりやすい体質の方と相性が良いことが多く、日本人では有用性が高いとされます。
体の中の余計な水を抜いて、水風船のパンパンな状態を少ししぼませるとイメージしてください。体内の水分量(循環する血液量)が減ると、心臓が送り出す血液量が減り、心臓の負担が軽くなります。また、血管の壁にかかる圧力も下がるため、血圧が下がります。
代表的薬剤
高血圧の治療では、主に「サイアザイド系利尿薬」が使われます。
トリクロルメチアジド(主な商品名:フルイトラン)
ヒドロクロロチアジド(合剤としてよく使われます)
その他、効果の強い「ループ利尿薬」(フロセミドなど)や、「カリウム保持性利尿薬」(スピロノラクトンなど)もありますが、これらは心不全やむくみ、特定のタイプの高血圧(原発性アルドステロン症など)で使われることが一般的です。
特徴
利尿薬の降圧効果は比較的ゆるやかですが、少量でも降圧効果が得られることが多く、他の降圧薬(特にARBやACE阻害薬)と組み合わせることで、その効果をサポートするような使い方がされることが多い薬です。
朝に飲むと夜間のトイレが増えにくいという実務上の利点があり、生活リズムに合わせた内服タイミングの調整が行われます。
主な副作用
尿と一緒に体に必要なミネラルも出て行ってしまうため、副作用として以下のような電解質異常が起こることがあります。
低カリウム血症:血液中のカリウムが少なくなり、だるさや筋力の低下、不整脈(脈の乱れ)が起こることがあります。
低ナトリウム血症:血液中のナトリウムが少なくなり、倦怠感や頭痛が起こることがあります。
高尿酸血症:尿酸の排泄が抑えられ、尿酸値が上がることがあります。痛風の持病がある人は注意が必要です。
脱水:特に夏場や、下痢・嘔吐をしている時は注意が必要です。
めまい・ふらつき:血圧が下がりすぎた場合に起こることがあります。
服用時の注意点
解熱鎮痛薬(NSAIDs)を常用すると利尿薬や他の降圧薬の効果が弱まることがあります。市販薬を含め、併用前には必ず薬剤師に確認してください。夏場や発熱時は脱水のリスクが上がるため、自己判断で増減せず、迷ったら医療機関へ連絡しましょう。
また、低カリウム血症などをチェックするために、定期的な血液検査が欠かせません。
β遮断薬(べーたしゃだんやく)
β遮断薬は心臓の働きに関わる「β受容体」に作用して、脈を落ち着かせ、心臓が無理なく血液を送れるようにします。心臓病や頻脈がある高血圧の方で選ばれることが多い薬です。
効果・作用
体が興奮したり、緊張したりすると、「交感神経」が活発になります。交感神経は、心臓にある「β受容体」というスイッチを押し、心臓をドキドキさせ(脈を速くする)、力強く収縮させて血圧を上げます。
β遮断薬は、この脈を速くする「β受容体(スイッチ)」を「遮断(ブロック)」する薬です。心臓の興奮を鎮め、拍動をゆっくりさせ(脈を遅くする)、心臓が血液を送り出す力(心拍出量)を抑えることで、血圧を下げます。
狭心症や心不全、心筋梗塞後の再発予防など、心臓の病気を併せ持つ場合に特に有用です。
代表的薬剤
「~ロール」という名前がつくのが特徴です。
ビソプロロール(主な商品名:メインテート)
カルベジロール(主な商品名:アーチスト)
プロプラノロール(主な商品名:インデラル)
特徴
β遮断薬は、単に血圧を下げるだけでなく、心臓を「休ませる」効果があります。そのため、高血圧以外に、心不全、心筋梗塞後、頻脈(脈が速くなる病気)や不整脈、狭心症などを合併している患者さんに積極的に用いられます。
以前は高血圧の第一選択薬の一つでしたが、糖尿病や脂質異常症を悪化させる可能性が指摘されたことなどから、現在は「心臓の病気を合併している人」や「脈が速い人」に優先的に使われる傾向があります。
逆に運動時に脈が上がりにくくなるため、スポーツのパフォーマンスに影響することがあり、運動習慣がある高血圧の方は医師と調整が必要です。
主な副作用
心臓の働きを抑えるため、以下のような副作用に注意が必要です。
徐脈(じょみゃく):脈が遅くなりすぎることがあります。だるさや、めまい、ふらつきを感じることがあります。
疲れやすさ・だるさ:心臓の拍出量が抑えられるため、運動した時に息切れしやすくなったり、だるさを感じたりすることがあります。
気管支収縮:気管支を広げるβ受容体もブロックしてしまうことがあるため、喘息の発作を誘発する可能性があります。
手足の冷え:末梢の血管が収縮しやすくなることがあります。
めまい・ふらつき:血圧が下がりすぎた場合に起こることがあります。
服用時の注意点
気管支喘息や、重度の徐脈がある人は、原則として使用できません(禁忌)。また、この薬は絶対に自己判断で急にやめてはいけません。急に中断すると、抑えられていた交感神経の働きが急激に強まり、血圧が急上昇したり、狭心症や不整脈が悪化したりする「リバウンド現象」が起こる危険があります。
副作用かなと思ったら
薬を続ける中で「いつもと違う」と感じたら、遠慮せず医療者に相談してください。今回ご紹介してきたような継続的に服薬する降圧薬は長期間にわたって飲み続けることが多いため、副作用について正しく理解し、対処することが大切です。
むくみやめまい、咳、だるさ、発疹、息苦しさなどは、薬との関連がある場合とない場合があり、自己判断は危険です。症状が軽くても一度記録しておくと役立ちます。
急に顔や舌、喉が腫れる、息がしにくい、意識が遠のくなどの重い症状は救急受診が必要です。定期的な血液検査で腎機能やカリウム、尿酸などをチェックすることも、安全に続けるために大切です。
副作用への対処法
カルシウム拮抗薬
顔のほてりや頭痛は、飲み始めの時期に多く、時間の経過とともに軽くなることが少なくありません。
足のむくみは用量や薬の種類で差が出やすく、生活に支障があるほど強い場合は自己判断で中止せず、医師に相談して同系統内での薬の切り替えや用量調整、場合によっては利尿薬の少量追加などの対策を検討します。
歯肉が厚くなる変化(歯肉肥厚)に気づいたら、歯科受診と併せて処方医に伝えるとよいでしょう。
ARB
ふらつきやめまいを感じるのは、血圧が下がったサインの可能性があります。
腎機能に影響しやすい薬のため、定期的に血液検査でクレアチニンやカリウムを確認することが大切です。カリウムが上がりやすい人では、カリウムを多く含むサプリや代替塩の使用を控えるなど、食事面の工夫も同時に行います。
ACE阻害薬
空咳が続く場合、薬の性質によるものか見極めが必要です。咳が生活に支障を来すなら、同じ系の下流をブロックするARBへの切り替えで収まることがあります。
唇や舌、喉の腫れなど血管浮腫を疑う症状が出たときは、稀でも重い副作用の可能性があるため、速やかに受診してください。
利尿薬
尿として水分・塩分を出す作用が強いほど、体のカリウムが下がったり脱水気味になったりしやすくなります。のどの渇きやだるさ、こむら返りなどに注意しつつ、定期的な血液検査で電解質や尿酸をチェックしましょう。
発熱や下痢などで水分が不足しがちなときは、服用タイミングの調整について医師に早めに相談すると安全です。
β遮断薬
脈がいつもより遅い、手足が冷える、だるさが抜けないと感じる場合は、脈拍の自己測定を続けながら、症状が強まる前に医師へ共有してください。用量の微調整や薬の種類の見直しで改善が期待できます。
ぜんそく持ちや気管支拡張薬を使用している高血圧の方では相互作用に注意が必要なので、呼吸器症状の変化もあわせて報告しましょう。
副作用か不明な場合
「薬のせいかどうか分からない」ことは珍しくありません。風邪や脱水、ストレス、睡眠不足など、別の原因が重なっていることもよくあります。
そのため、自己判断での中止はNGです。医師・薬剤師に相談し、必要なら検査で確認してから対応を決めましょう。
いつから、どんな症状が、どのくらいの強さで出ているかを具体的にメモしておきましょう。「薬を飲み始めて3日目から、朝起きるとふらつく感じがある」「夕方になると、足首がパンパンにむくむ」このように具体的に記録しておき、次の受診日に医師に伝えることが、大切です。
服薬についての疑問
高血圧の方が薬(降圧薬)を飲み始めるにあたって、よくある疑問にお答えします。
ただし、体質、持病や検査結果など、万人に当てはまる内容でないことを念頭に不安については処方時に担当の医師に確認されるとよいでしょう。
薬は一生飲み続けなければならないのか?
高血圧の方でも、減塩や運動、体重管理、禁煙、節酒などの生活改善が進むと、薬を減らせたり、まれに中止できたりする場合があります。
ただし、自己判断で止めると血圧が再び上がり、心臓や脳へのリスクが跳ね上がります。
目標血圧を安定して達成し続けているか、他の病気や年齢要因がどうかを医師と一緒に評価し、計画的に調整していくのが安全です。
飲み忘れたらどうすればよいか?
うっかり飲み忘れることは誰にでもあります。その場合の対応は、薬の種類(1日に飲む回数)によって異なりますが、基本ルールは「絶対に2回分を一度に飲まない」ことです。
前もって飲み忘れた場合の対応については医師から説明があると思いますが、不安な場合はかかりつけの病院に連絡されることをおすすめします。
1日1回服用の薬の場合
飲み忘れに気づいた時点で、すぐに忘れた分を飲んでください。ただし、次の服用時間(例えば、いつも朝飲んでいるなら、翌朝)が近い場合は、忘れた分は飲まず(1回とばして)、次の分から通常通りに飲んでください。
1日2回服用の薬の場合
気づいた時点で飲んでも構いませんが、次の服用時間まで十分な間隔(例えば5〜6時間以上)をあけるようにしてください。
具体的な時間は薬ごとに異なるため、処方時に「飲み忘れ時の対応」を医師・薬剤師に確認してメモしておくと安心です。
他の薬やサプリメントとの飲み合わせは?
薬には「飲み合わせ(相互作用)」があり、降圧薬も例外ではありません。
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツは血圧が下がりすぎる恐れがあります。
ARBやACE阻害薬にカリウムサプリやカリウムを多く含む置き換え塩を重ねると、高カリウム血症の危険が増します。
利尿薬と解熱鎮痛薬(NSAIDs)は、降圧効果が弱まるだけでなく腎臓に負担をかけます。
β遮断薬と気管支拡張薬は作用がぶつかることがあるため、ぜんそくのある高血圧の方は必ず申告が必要です。
他の病院で薬を処方された場合や、市販薬、サプリメントを利用したい場合は、必ず「高血圧の薬を飲んでいること」を医師や薬剤師に伝えてください。
血圧が下がったら薬をやめてもよいか?
まず、自己判断は全体にせず、担当の医師と相談してください。
理由として家庭血圧や診察室血圧がしばらく良好でも、薬を中止するとリバウンドのように上がってしまうことがあるからです。高血圧の方は、目標血圧を安定的に保てるか、合併症のリスクはどうか、季節による変動はどうかなどを総合的に見て、段階的な減量を検討するものです。中止は医師の計画のもとでのみ行い、自己判断は絶対に避けてください。
高血圧の方は、血圧の「高い・低い」に一喜一憂するのではなく、薬によって「安定した状態を保つ」ことが、将来の心筋梗塞や脳卒中、腎臓病を防ぐために最も重要です。
自分に合った薬を見つけるために
高血圧の治療は、医師と患者さんが二人三脚で進めるものです。最適な薬物療法を見つけ、長く続けていくためには、いくつかのコツがあります。
医師とのコミュニケーション
診察では、普段の家庭血圧の記録、飲み忘れの有無、むくみや咳など気になる症状、スポーツや受験など生活のイベント、サプリや市販薬の使用状況を伝えると、薬選びがスムーズになります。
具体的な希望(眠くなりにくい薬がよい、1日1回で済む方が続けやすい、費用を抑えたいなど)も遠慮なく伝えてください。
家庭血圧測定の重要性
病院で測る血圧(診察室血圧)は、緊張で高めに出ることがあります(=白衣高血圧とも呼ばれます)。一方、自宅でリラックスして測る「家庭血圧」こそが、医師があなたの本当の血圧を知る上で最も重要です。
朝起きて排尿後、朝食前、服薬前に1〜2回、夜寝る前に1〜2回、同じ腕で、背もたれに寄りかかり、1〜2分安静にしてから測るのが基本です。記録はアプリやメモ帳で十分です。
季節や体調で上下するので、連続したデータで判断していきます。
薬の効果が実感できない場合
血圧は「今日だけ」では判断できません。1〜2週間の平均を見て評価します。高血圧の方で効果が実感しにくいときは、服用時間の見直し、塩分量の再確認、睡眠やストレスの調整、併用薬の検討など、できる改善がいくつもあります。自己判断で中止せず、医師に相談してください。
通院が難しいときはオンライン診療の活用も選択肢になります。必要に応じてSOKUYAKUなどのオンライン診療サービスを使えば、自宅から医師に相談でき、処方の調整や副作用の評価をスムーズに進められます。
あなたに合った薬、あなたに合った治療法は必ず見つかります。大切なのは、治療を「続ける」ことです。
※注意事項※
「高血圧の診断」や「高血圧に対する薬の処方」などについてはオンライン診療では対応が難しいことがほとんどです。
こういった”これから高血圧の治療を開始する”場面においては、まずは医療機関に足を運んでいただき、その後、症状が安定して「処方薬が決まっているのにわざわざ通院するのが面倒」「多忙で時間が取れない」といった場合にオンライン診療を活用ください。
当コラムの掲載記事に関するご注意点
1.当コラムに掲載されている情報については、執筆される方に対し、事実や根拠に基づく執筆をお願いし、当社にて掲載内容に不適切な表記がないか、確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。
2.当コラムにおいて、医療及び健康管理関連の資格を持った方による助言、評価等を掲載する場合がありますが、それらもあくまでその方個人の見解であり、前項同様に内容の正確性や有効性などについて保証できるものではありません。
3.当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。
4.前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は一切責任を負うものではありません。
参考情報: 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
この記事には医師による認証マークである「メディコレマーク」が付与されています。
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