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オンライン診療に必要な届出とは?提出書類や手続き方法を徹底解説

監修医師 中路 幸之助
更新日:2024年05月16日

更新日:2024年05月16日

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患者様のオンライン診療へのニーズは確かに高まっています。厚生労働省も「更なる情報通信技術の進展に伴い、情報通信機器を用いた診療の普及が一層進んでいくと考えられる」との見解を示しています(※1)。「情報通信機器を用いた診療」とはオンライン診療を指します。

オンライン診療は、開業中の医師はもちろんクリニックの経営を計画する医師からも、大いに注目を集めています。

このページでは、オンライン診療を開始する方法や、地方厚生(支)局への届出についての内容を解説していきます。
なかでも、分かりづらい「届出」に関係するルールは詳しく説明します。


※1 参考:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成 30 年3月(令和54年3月一部改訂)

オンライン診療とは

オンライン診療の定義

情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する医療行為である遠隔医療のうち、医師ー=患者間において情報通信機器を通して患者の診察や診断を行い、診断結果の伝達や処方などの診療行為をリアルタイムで行う行為

 

分かりやすく言えば、離れた場所にいる医師と患者様が、パソコンやスマホを用いてインターネット会議のように、リアルタイムで診療行為を行う(診察を受ける)ことです。

 

診療報酬は初診251点、再診73点(令和4/2022年度診療報酬改定)

令和4年度の診療報酬改定では、オンライン診療の診療報酬は以下のように定められています。

 

●施設基準を満たし、地方厚生(支)局長に届出を行った医療機関
・初診料251点
・再診料73点

 

●施設基準の届出を行っていない医療機関:新型コロナの臨時特例を採用する
・初診料214点
・再診料73点


届出をした場合、届出を行っていないときに比べて初診料が37点高くなりますので、診療スタイル次第で、届出がオンライン診療を行う医療機関の経営に影響を及ぼすことが考えられます。

オンライン診療のみでもクリニック開業できるの?

オンライン診療だけを行う場合も、開業はできます。しかし、後ほど触れますが、オンライン診療に対応できる施設としての基準の1つに、「対面診療を行える体制である」という条件が定められています。つまり実際は、オンライン診療だけを行う場合も、対面診療が行える体制を整備してからでないと開業することはできません。

オンライン診療の届出と施設基準の概要について

オンライン診療の届出とは、経営する医療機関がオンライン診療の施設基準をクリアしていることを地方厚生(支)局長に届け出ることを意味します。

ここで懸念されるのが、オンライン診療の施設基準の中身です。シビアな基準が設定されている場合、オンライン診療を始めることに躊躇が生まれます。

 

そこで以下では、施設基準と届出制度について説明します。

施設基準の考え方

施設基準とは、医療機関が達成しなくてはならない条件です。

保険医療機関は、厚生労働省から人員や設備などの規定を満たすよう求められており、その規定を満たすことができない場合、保険医療は行えません。すなわち、診療報酬を請求することができないということです。

 

施設基準は各診療内容によって詳細に決められています。
ですから、保険医療であるオンライン診療も、オンライン診療に係る施設基準に適合していないと初診料や再診料を請求できません。

 

ところが現在は、施設基準をクリアしていないケースも、すなわち届出をしていなくてもオンライン診療によって初診料や再診料を請求することができるような仕組みになっています(2022年8月時点)。

ただし、あくまでも国は施設基準の届出を勧めており、届出済みの医療機関に対してオンライン診療の初診料を高くする優遇策を取っています。
なお、新施設基準を届け出ていない医療機関にも「診療報酬改定後の施設基準に準じた体制の整備に最大限努めること。」(※2)が求められています。
※2 引用:厚生労働省保険局医療課「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その67)」

オンライン診療の施設基準をクリアするための要件(※1,2)

届出の手続きを行う前に、まず医療機関はオンライン診療に対応できる体制を整備する必要があります。
オンライン診療に係る施設基準の概要は、次のとおりです。

■オンライン診療の施設基準

①情報通信機器を用いた診療のための十分な体制が整備されている

②厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関である

③対面診療を行える体制である

④オンライン診療を担当する医師が、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で定める「厚生労働省が定める研修」を修了している

 

①は、オンライン診療に必須のインターネットやパソコンなどの情報通信機器、システムの必要性を説明しています。

 

②の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は厚生労働省の以下のページで閲覧可能です。

https://www.mhlw.go.jp/content/001126064.pdf

このページには、オンライン診療の正しい実施方法が掲載されていますので、示された指針に沿ってオンライン診療を行ってください。

 

③は、オンライン診療を行う場合は対面診療も行うことができる体制を有している必要があると明示しています。

 

④の「厚生労働省が定める研修」(オンライン診療研修)は、オンライン診療の基本的理解や諸制度、遵守すべき事項、提供体制、セキュリティなどの科目で構成され、eラーニングで受講できます。下記のサイトから申し込みが可能です(※5)。

 

・オンライン診療研修の申し込みサイト
https://telemed-training.jp/entry

 

研修修了後は、厚生労働省指定オンライン診療研修修了証が発行されます。

 

届出方法:最寄りの地方厚生(支)局へ

医療機関が施設基準をクリアした後、必要書類を地方厚生(支)局に提出して手続きは完了します。

 

※3 参考:厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)

※4:厚生労働省 関東信越厚生局「様式1情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類

※5:厚生労働省「オンライン診療研修実施概要

 

届出の方法については次の項目で解説します。

届出を提出するまでの流れ

自院の診療体制が整備できれば、手続きそのものは簡単で、自院を管轄する地方厚生(支)局に書類を2枚提出するだけです。

書類のダウンロード

届出に必要な書類をダウンロードします

オンライン診療の施設基準の届出には下記2枚の書類が必要です。

 

  • 別添7、基本診療料の施設基準等に係る届出書
  • 様式1、情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類

 

これらの書類は次のURLのページからダウンロードできます。

 

北海道厚生局:基本診療料の届出一覧/北海道厚生局

東北厚生局:基本診療料の届出様式/東北厚生局

関東信越厚生局:基本診療料の届出一覧(令和4年度診療報酬改定)

東海北陸厚生局:基本診療料の届出様式/東北厚生局

近畿厚生局:基本診療料の届出様式(施設基準毎に必要な様式を掲載したもの)/近畿厚生局

中国四国厚生局:基本診療料の届出一覧

四国厚生支局:基本診療料の届出一覧/四国厚生支局

九州厚生局:令和4年度診療報酬改定に係る施設基準の届出等

書類の作成・提出

書類の必要な箇所に記載します

 

「別添7、基本診療料の施設基準等に係る届出書」の作成は簡単で、「不正な届出を行ったことがない」などの項目にチェックを入れるだけです。
「様式1、情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類」については、「オンライン診療の適切な実施に関する指針に沿って診療を行う体制を有していること」と「対面診療を行う体制を有していること」の項目をチェックします。
さらに、「厚生労働省が定めるオンライン診療研修を修了している」の項目にもチェックを入れます。修了証のコピーの添付は不要ですが、自院に保管しておかねばなりません。

 

届出は、作成した2枚の書類を地方厚生(支)局に提出して完了となります。
届出書類が地方厚生(支)局に受理されるとオンライン診療を始めることが認められ、診療報酬を請求できるようになります。

施設基準の届出を提出するメリット

現在、施設基準の届出は必須条件でなく、未届の医療機関であってもオンライン診療を行うことができ、「施設基準の届出を行っていない医療機関」として「初診料214点」や「再診料73点」を請求できます。そのため、施設基準をクリアするための自院の整備コストが負担となって、届出を行わない選択をする医療機関もあるようです。

 

しかし、本腰を入れてオンライン診療の分野に進出する際には、届出を行うことで得られるメリットは非常に大きいと言えます。

厚生労働省の求めに応じることができる

初診料に差を設けている点からも分かるように、厚生労働省が届出を求めていることは明白です。実際、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その67)」のなかで見解を明らかにしています(※2)。

 

・厚生労働省の「届出なし」に関する見解

情報通信機器を用いた診療が行われた場合にあっては、コロナ特例による 214 点を引き続き算定しても差し支えない。ただし、この場合であっても診療報酬改定後の施設基準に準じた体制の整備に最大限努めること。

「届出なし」のオンライン診療は特例で、オンライン診療に対応する医療機関に対して施設基準の整備に努めるように、促しています。
ご自身の医療機関でオンライン診療を継続的に行っていくならば、厚生労働省の考えに従った施設基準に達する体制を整え、届出を行うべきでしょう。

売り上げ向上が期待できる

「届出ありオンライン診療」の初診料は251点で、「届出なしオンライン診療」の初診料は214点です。今後、オンライン診療を行う回数が増えれば、整備に投じた費用を回収できることが期待されます。
届出ありの初診料は、医療機関の経営を安定させる力になり得ます。

事前準備や届出後に必要になること

届出としては役所に書類を提出するだけですが、そのための事前準備や届出後には「行うべきこと」が数多くあります(※6)。
前述の「オンライン診療の施設基準をクリアするための要件」と一部内容が重複しますが、非常に大切なポイントであり、再度紹介します。

 

※6 参考:厚生労働省「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」平成30年12月作成、令和元年7月改訂、令和4年1月改訂、令和5年3月改訂、令和5年 11 月改訂、令和6年1月改訂

オンライン診療にあたる医師がオンライン診療研修を受講する

重ねてになりますが、オンライン診療を行う医師は、厚生労働省が定めるオンライン診療研修を受講し、修了しておかなければなりません。

 

厚生労働省指定オンライン診療研修修了証の取得は、届出を行う際に必要となるものですが、届出を行わない場合においても、オンライン診療のルールや手順を把握するために取得することをお勧めします。

オンライン診療時の環境構築

オンライン診療はインターネットを使って行うため、自院にネット環境を整備しなくてはなりません。オンライン診療専用のパソコンがない場合は、新たに用意することをお勧めします。

 

オンライン診療の効率的な運用のために、システムの選定を行うケースも出てきます。ベンダー選定においては、複数のサービス会社を比較検討することが大切です。

セキュリティ体制の整備

インターネット上で行う医療サービスのオンライン診療は、サイバー攻撃を受ける可能性があります。安全な運用に向け、自院のセキュリティ体制の強化が求められます。

 

セキュリティ体制を医療機関だけで構築することは難しく、システム会社やIT企業と連携の上で進めていくことをお勧めします。

まとめ

近年ニーズの高まるオンライン診療に乗り出すことは、患者様にメリットをもたらすだけでなく、クリニックの経営の安定化に繋がることが見込まれます。

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、患者様が医療機関に行きづらい事態となり、オンライン診療は多くの人に利用されるようになりました。さらなるITの進展でオンライン診療の利便性は今後一層高まることが予想され、厚生労働省もオンライン診療の普及を推し進めていく方針を示しています。

 

患者様の要望に即したオンライン診療は、競争の激しいクリニック業界において優位性を高めることが期待されます。

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コメント 二酸化炭素(CO₂)の持続排出による気候変動は深刻な脅威であり、あらゆる分野で対応を検討が必要です。医療は高いCO₂排出を伴う分野とされています。対面診療での診察・検査・処置は医療の基本ですが、それには多くのエネルギー消費を伴い、CO₂が多く排出されます。オンライン診療は、第一に病院への自家用車などでの移動が省けます。ある研究によると、検査や処置よりも患者さんや医療従事者の病院への自家用車での移動などの方がCO₂排出が多いとされています。対面でなくても出来る診療をオンライン診療に切り替えることで、医療のCO₂排出を減らせ、地球環境の改善につながる可能性があります。

監修医コメント

医師
中路 幸之助

二酸化炭素(CO₂)の持続排出による気候変動は深刻な脅威であり、あらゆる分野で対応を検討が必要です。医療は高いCO₂排出を伴う分野とされています。対面診療での診察・検査・処置は医療の基本ですが、それには多くのエネルギー消費を伴い、CO₂が多く排出されます。オンライン診療は、第一に病院への自家用車などでの移動が省けます。ある研究によると、検査や処置よりも患者さんや医療従事者の病院への自家用車での移動などの方がCO₂排出が多いとされています。対面でなくても出来る診療をオンライン診療に切り替えることで、医療のCO₂排出を減らせ、地球環境の改善につながる可能性があります。

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監修医師 中路 幸之助
医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター 専門領域はアレルギー・膠原病内科, 神経内科, 消化器内科, 血液内科, 肝胆膵内科, 呼吸器内科, 総合内科, 感染症科, 循環器内科, 腎臓内科, 内分泌代謝科, 糖尿病内科, 内科 経歴:1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。 主な研究内容・論文として、カプセル内視鏡 消化器内視鏡 消化器病 保有免許・資格は、米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医 日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医
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