医療機関・薬局向け

【紹介先プロジェクト】他院を知らない&自院が 知られていない

監修医師 井手 武
更新日:2024年11月7日

更新日:2024年11月7日

【紹介先プロジェクト】他院を知らない&自院が 知られていないのイメージ

【紹介先プロジェクト】他院を知らない&自院が知られていない

このSOKUYAKUのブログをご覧になっている患者さん・先生方・薬剤師さんはオンライン診療やオンライン服薬指導などに興味がある方が多いかと思います。

【質問です】

皆さん、GmailやiCloudメールなどのフリーメール、インスタグラム、LINE、X(旧Twitter)、FacebookなどのSNSをお使いの方も多いと思います。

 

これらのサービスを選択する理由を考えた時、サービス提供会社の本社やサーバーが自宅や勤務先から近いから、という方はまずいないでしょう。

 

当然ながら、サービスの質やネットワーク効果などを期待してのことですよね。 例えば、LINEは世界的に見るとマイナーなSNSで、日本やタイなどでマーケットを席巻していますが、世界ではあまり使われていません。

 

世界ではWhatsAppが有名ですが、日本ではLINEの方が圧倒的に普及しています。 これは、周りが使っているとそこにユーザーが集まってくる「ネットワーク効果」が日本で奏功した結果と言えるでしょう。(1)

【オンライン診療は必然?】

フリーメールやSNSの話題とオンライン診療の共通点は、「距離」が関係なくなるということです。

例えば、東京の企業で「大阪での2時間の会議のために2泊3日の出張申請」を部下から求められたら、「冗談でしょう?日帰りでZOOM会議にすればいい」と答えるのが普通です。

 

新幹線で2時間で行ける場所に、宿泊費まで負担する会社はありません。

また、マイナーな本を買う場合、近隣の本屋で取り寄せてもらうより、Amazon Primeで翌日配送してもらう方が早いケースも多いでしょう。
特にコロナ禍でオンライン会議が普及したことで、オンライン診療に対する心理的ハードルは下がっています。

 

移動距離の制約から解放され、全国、あるいは世界中の医療機関やAIが競合となる未来も見えてきます。

「そんなの遠い未来の話」と思われるかもしれませんが、コロナ禍でオンライン会議が当たり前になったように、2022年からのChatGPTの台頭でAIが急速に進化しているように、何がきっかけで変化が起こるかわかりません。

 

加速主義的な視点で考えると、現時点ではクリニックはローカルビジネスですが、データの取得・共有が容易になる未来はすぐそこです。地代家賃の低い場所に医療機関が移転する可能性もあります。 東京-大阪間は、かつては出張といえば宿泊が当たり前でしたが、今では日帰りも可能です。コロナ禍ではリモートワークが進み、地域移住も増えました。

 

未来の医療は、時間距離がゼロに近づくかもしれません。 100%オンライン診療になることはないにしても、ネット回線の大容量・高速化、モバイル医療機器の開発、AIの進化によって、物理的な医療機関受診の必要性は減っていくでしょう。 Amazonが地元商店街に影響を与えたように、ローカルビジネスであるクリニックも、変化を迫られる可能性があります。 患者が利便性を感じ、オンライン診療サービスが増えれば、患者はそちらに流れていくでしょう。

【パレートからロングテールへ】

このように、リアルの診療からオンライン診療の比率が上がるのは将来必然であり、そうなった際に先生方は診療科でのアピールではなく、サブスペシャリティでのアピールが必要になると考えられます。

 

これまでの診療科をうたった一般診療は、ローカルビジネスでは多くの患者を引き付けることができます。これはパレート戦略(後述)によるものです。

 

しかし、SOKUYAKUのオンライン診療で「内科」と入力すると1461件もヒットします。

これが「糖尿病」だと237件に減り

さらに「妊娠糖尿病」だと1件に絞られます。

• 内科:1461件
• 糖尿病:237件
• 妊娠糖尿病:1件

 

これまで、地域の患者を診るローカルビジネスであるリアル診療では、「妊娠糖尿病」を専門性としてうたっていても、患者数が稼げなかったクリニックが、オンライン診療では全国の妊娠糖尿病の相談窓口になれる可能性があります。

 

このように専門性を持つことで、ローカルビジネスでは訴求しても集まらなかった患者が、オンライン診療ではプレゼンスを上げられる可能性があるのです。

 

これは、Amazonのビジネスモデルで語られる、パレート戦略からロングテール戦略への転換です(2)パレートの法則とは、全売上の8割を2割の顧客が担っているというもので、この法則は2割の顧客にターゲ ットを絞るべきだという考え方に繋がります。

 

しかし、アンダーソンのロングテールは全く逆で、残りの8割の顧客に目を向けてものを売ろうとする考え方です。

 

これを医療機関に当てはめて考えると、多くの患者数(8割)が占めるメジャーな疾患(2割)をローカルビジネスではターゲットにしてきました。それは地の利を活かせる限りにおいては有効で、少数の患者(2割)しかいない数多くの専門的な疾患や希少疾患(8割)は大病院や機関病院に任せているような状況もあったかと思います。

 

その背景には

1. 大規模な医療機関でしか所有しない医療機器が必要
2. 専門性をもつ医師や施設がわからない

 

という大きな2つの理由があるかと思います。

【医療者から想定される反論】

「いやー、でも採血もできないし、何かあったときに遠隔地のクリニックだと何もできないじゃん!」

 

もちろん、現時点ではその通りです。しかし、これは加速主義で10年、20年スパン、いや100年スパンで考える必要があります。

 

カルテの共通化などを国が進めようとしていることを考えても、そういった仕組みに乗らない限り、自院が検索結果に載らない可能性も出てくるのです。 そして、オンライン診療で経過を診ているクリニックが、最初から最後までケアをする必要はありません。基本は遠隔のクリニックがオンラインでケアし、実際の採血や処置が必要になった際には、患者の近隣の検査センターやクリニックで共有化された情報のある電子カルテを見てケアすれば良いのです。

 

違う先生に診てもらうことに抵抗があるかもしれませんが、過渡期を超えると、そんなこと気にしていたことさえ忘れるほどになっているかもしれません。

【患者さんから想定される反論】

「そもそも先生がその診療科の専門性を全部網羅すれば良いのでは? 眼科なんて小さな目を見てるだけでしょう?」と言われることも想定されます。

 

以前のSOKUYAKUさんの記事でも書きましたが、TPPIの解決を目指して考えなくてはなりません。 TPPIとはheoretically Possible,but Practically Impossible(理論的には可能だが、実際には不可能)です。

 

井手「先生、朝食を自分で準備できますか?」

 

先生X「トースターでパン焼いて、冷蔵庫から牛乳取り出して グラスに注いででしょ? 簡単じゃん」

 

井手:「ほら、先生方しっかり現実的になられているじゃないですか? 出来ることをして、出来ないことはしていないですよね?」

 

先生X:「いや、出来ることばかりだよ。出来ないことなんかないよ。」

 

井手:「先生、では トースターを作って、パンを小麦粉から育てて、牛乳を朝から絞りに行って、ガラス工房でグラスを作って、食後食器を洗う水も汲んできていますか? 実際にメーカーや農家・酪農家やガラス職人、水道局の人はされていますから 出来ますよね?」

 

先生X:「(心のなかで)井手先生はおかしい。そんな考えは非常識だ。普通はそんなことまで朝食の準備とは言わない」

 

つまり、自分でできないことはメーカーや農家・酪農家やガラス職人、水道局の人などのプロに頼んでいるのです。 皆さんもお寿司屋さんに行ってパスタを注文しないように(できないことを認識しているので)、患者さんも整形外科に行って眼科の治療を依頼しないように、現在では診療科が違えば対応できないことは認識されています。

 

しかし、同じ診療科の中でも更にサブスペシャリティに分かれていることについては、まだまだ認識されていないこともあるかと思います。

 

特に私の診療科である眼科だと「目なんか小さいんだから、何でもわかるでしょ?」と思われているかもしれません。

 

特に現代は、ICTやAIの発展によって、科学技術の積み上げ速度が上がっています。俗にいう情報爆発です。これ自体には、当然、良い面もあります。例えば、これまで対応不可であった疾患が、治癒可能になるまでの期間も、かつてないほどに短縮されてきています。新しい治療法を前にして「もっと早くこの医療技術が完成していれば」と嘆いた経験は、どの医師にもあるでしょう。その意味では、こうした情報爆発は大歓迎です。

 

しかし同時に、情報爆発によって非常に困ったことも起きています。医学情報の総体が倍増するのにかかる時間は、1950年には50年かかっていました。これが2020年には73日(0.2年)になるそうです。

 

現役の医師が、自分の専門分野をアップデートし続けるためには、論文を週に160時間読む必要もあるそうです。1週間=24×7=168時間ですから、160時間をアップデートするだけに使って、それ以外、寝る時間なども含めて1週間に8時間しか残らないことになります。これは事実上不可能ということです。知識の陳腐化が非常に早いことを示唆します(3)(4)

 

加えて、たとえその専門的な知識の増大を補うようにAIなどがサマリーを自動で送ってくれたとしても、専門的な情報というのは、その情報だけではあまり役に立たないものです。

 

特に、生体を扱う医学に関する情報(医学情報)の場合、それがいかに優れた情報であったとしても、その情報だけで現場の医療が改善することはまれです。そういった意味で、医師免許だけでも、机上の勉強だけでもダメで、やはり現場経験のの価値が大切なのです。

 

というのは、医学・生物学は広義にはScienceという括りでも、数学や物理のような厳密なScienceと比べて、まだまだ誤差や標準偏差が大きいので、そのような誤差や標準偏差の認識と、それらに対応する工夫というのが臨床では求められるのです。 そのため、

 

• 診療科が異なる疾患は対応が難しい
• 専門性の深いものは同じ診療科でも対応が難しい

 

ということになるので、紹介が必要になるのです。

【診診連携:専門性といつもの紹介先】

開業医として日々感じる悩みは尽きませんが、その中でも特に頭を悩ませるのが、患者さんの紹介先探しです。
地域や専門性を超えた途端、適切な紹介先を見つけるのが非常に難しくなるのです。

 

特に、東京だと転勤族の方が多くおられますので転居先での受診先相談や紹介状の依頼を多く受けます。しかし、開業して「あれっわかんない!」となってしまって気づいてたのです。

 

紹介先探しは、患者さんの病状によって難易度が大きく変わります。 例えば、非常に珍しい病気の場合、大きな病院(基幹病院)に紹介すれば、専門的な治療を受けられる可能性が高いので、比較的簡単です。

 

しかし、私のように小さなクリニックで診ているような、少し珍しい病気の場合は、そうはいきません。 例えば、円錐角膜という病気があります。これは、角膜が徐々に薄くなって、円錐形に突出してしまう病気です。 円錐角膜は、失明する可能性もある病気ですが、初期の段階では、それほど症状が強くなく、経過観察で済む場合も多いです。

 

このような場合、基幹病院に紹介しても、専門外来がない、手術などの治療が必要になるまで経過観察を勧められるなど、適切な対応を受けられない可能性があります。 かといって、他のクリニックに紹介しようにも、円錐角膜を専門的に診てくれるクリニックは多くありません。 結局、紹介先探しに苦労し、患者さんに適切な医療を提供できないというジレンマに陥ってしまうのです。

 

ここで「専門医」に対する認識の乖離が生じているように感じます。

 

患者さんの中には、「専門医」と聞くだけで、どんな難しい病気でも治せる「神の手」を持つ医師を想像する方もいるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。 厚生労働省は、専門医を「それぞれの診療領域において適切な教育を受け、十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義しています。

 

つまり、専門医とは、特定の分野に精通した医師であり、その分野における標準的な医療を提供できる医師のことです。決して、特別な能力を持つ「スーパードクター」を意味するものではありません。(5)

【直行便で世界中にいけるか?】

航空会社は、全ての空港に直行便を運航しているわけではありません。しかし、乗り継ぎ便を利用すれば、世界中のほとんどの商業空港に行くことができます。

 

わかりやすく日本国内の航空路線で説明すると、基幹空港(ハブ空港)から地方空港への路線が多く(スポーク)、地方空港から地方空港への直行便は少ないです。そのため、地方空港から別の地方空港へ行く場合は、一度ハブ空港を経由する必要があります。

 

仮に、「直行便がないなら空港を占拠する」という団体が要求を突きつけたとしても、利用客数や採算などの理由から、直行便が実現される可能性は低いでしょう。 直行便がないからといって、移動を諦めるのではなく。一度ハブ空港を経由してでも、仕事や旅行といった目的を達成するために移動する方が重要です(6)

ハブ&スポーク方式

宅配便などの物流企業でも、このハブアンドスポーク方式が採用されています。これは、企業と顧客双方にとって、コストとベネフィットのバランスを最適化するための方法と言えるでしょう。患者さん一人ひとりの

 

視点で見れば、最適な医療機関に直接紹介してもらうのが理想です。しかし、医療システム全体を考えると、ハブアンドスポーク方式によって、より多くの人が満足のいく受診体験を得られる可能性があります。厚生労働省の受療行動調査によると、医師からの紹介が患者さんの医療機関受診理由の第一位となっています。これは、患者さんが医師からの紹介に高い信頼を寄せていることを示しています。(7)

では、医師側はその信頼に応えられているでしょうか? 患者さんにとって最適な「ハブ(経由医療機関)」や「スポークの先(最終目的の医療機関)」を用意できているでしょうか? 航空会社のように、あらゆるニーズに対応できる体制を構築できているでしょうか?

 

JALやANAは、北朝鮮のような特殊な国を除き、世界中にハブアンドスポーク方式で就航していると考えられます。実際に調べてみるとトルコ航空は121カ国に就航しています。(8) しかし、 国連加盟国は193~196カ国です。(9)ということは、航空会社一社だけで、ハブアンドスポーク方式ですべての国に患者さんを送ることは不可能です。

 

海外旅行や海外学会を思い浮かべてみてください。JALやANAだけでは行けない場所も多いはずです。そこで重要になるのが、提携航空会社や共同運航便、同じマイレージグループの航空会社といったシステムです。つまり、各航空会社が自社の強みを生かし、リソースを共有することで、顧客に幅広い選択肢を提供できるネットワークを構築しているのです。

 

これを医療に置き換えると、それぞれの医療機関が、自院の得意分野や地域における紹介先情報を提供し合い、ネットワークを構築することで、患者さんにとって最適な医療を提供できるようになります。この考え方を基に、医療機関同士が連携し、紹介先情報を共有する「紹介先登録プロジェクト」を立ち上げました。  https://drsfromto.bubbleapps.io/

【NYAUWという活動を始めたきっかけ】

NYAUWという活動を始めたきっかけは、医療現場で日々感じていたある種の閉塞感でした。「1院・1人ではどうしようもない」というため息。学会・医局・研究会・医師会など、医療の発展に貢献している組織は多く存在します。しかし、患者さんはそのようなセグメントの切り方で医療を見ていません。

 

たとえば、「杉並区医師会の眼科の先生の中で対応してほしい」ではなく、「できるだけ負担が少なく、最適な治療を受けたい」というのが患者さんの願いです。時間・お金・精神的負担が最終的に少なくなるなら、専門外や遠方の医療機関にかかる必要が生じることもあります。 そこで、医師同士が信頼できる紹介先情報を共有し、患者さんの最適な受診を支援する「信頼する紹介先のクリニック登録の数珠つなぎ」プロジェクトを立ち上げました。 このプロジェクトに共感いただけるクリニック院長先生は、ぜひログイン・登録をお願いします!https://drsfromto.bubbleapps.io/

【病診連携:専門性といつもの紹介先】

疾患の発見や治療戦略の策定は、大規模医療機関が得意とするところです。しかし、すべての疾患において、ずっと大規模医療機関に通い続けなければならないわけではありません。病状がある程度安定すれば、地元の医療機関で継続的な診療を受けていただくことも可能です。 特に、近年の医師の働き方改革や逆紹介の推奨によって、大規模医療機関も患者さんを地元の医療機関に戻したいという意向があります。しかし、大病院の医師が単純に紹介元の医療機関に患者さんを戻せば良いというわけではありません。(10)

 

クリニックへの逆紹介は、単純に元の医療機関に戻せばよいというものではありません。もともとの紹介の理由は、元のクリニックでは対応が難しいからこそ、他の医療機関に依頼したという経緯があります。そのため、逆紹介する際には、元のクリニックの専門性や得意分野を考慮する必要があります。

 

例えば、手術施設がなくて手術目的で紹介された患者さんの場合、手術が終わり、経過観察だけで問題ない状態であれば、元のクリニックに紹介すること(Uターン紹介)が喜ばれます。

 

しかし、元のクリニックが専門性として苦手とする疾患のために病院に紹介された場合、検査機器などがなく、病状が落ち着いても経過観察を継続できないことがあります。このような場合には、Uタ ーン紹介はかえって迷惑になる可能性があります。その際には、患者さんの利便性も考慮しながら、その疾患の経過を診ることができる別の専門医療機関に紹介すること(Jターン紹介)が適切です。

 

そして、もともと紹介元がなく、直接病院を受診した患者さんについても、病状が安定し、病院での治療が終了した際には、地域や専門性を考慮して適切な医療機関に紹介する(Iターン紹介)必要があります。

 

そういった際にマイナー疾患の専門性を掲げている方が自分の専門性にあった患者さんがお越しになる確率があがります。

紹介元のクリニックは、病院側の状況を考慮して紹介を行っています。自分の専門分野であれば、どの病院がその分野に強いかを知っていることが多いからです。しかし、病院側はこれまでUターン紹介が主だ ったこともあり、地域のクリニックの情報についてあまり詳しくないことが多いのが現状です。加えて、広域から患者さんがお越しになっているのでそもそもクリニックの専門性を知ることが不可能なのです。

 

しかし、時代は変化しつつあります。患者さんは、医療機関全体を通じた受診体験の満足度を求めるようになり、不満があればそれを評価する力を持つようになりました。患者さんの減少圧力が高まる中、病院側も積極的に紹介先となるクリニックの情報を収集し、参考にすべき時代が到来していると考えられます。

【これからは「じゃない」時代】

• タスクシフト(これまで医師がしていた仕事を医者「じゃない」 看護師さんや薬剤師さん)
• IT化(これまでのアナログ「じゃない」)
• AI診断(これまでの経験「じゃない」)
• オンライン診療(これまでの対面診療「じゃない」)

 

ヨーロッパ文明における軍事革命の背景

軍隊を維持するための【人件費が重かった】ので武器が発達した

 

ゴールドマンサックスの例

ゴールドマンサックスでは2000年には600人のトレーダーが2017年には2人にまで。この背景にあるのは人工知能技術。この技術を呼び込んだのはトレーダーの【人件費が高かった】ことだ

 

イノベーションのターゲット

イノベーションの多くは人件費の問題のないところをターゲットにしないのである。【医師の人件費は?】リフ ィル・認定看護師などは【医師の人件費】をターゲットにしていないですか?

 

話は少し飛びましたが、診診連携をするにせよ、病診連携をするにせよ 専門性の情報を蓄積していく必要があと仮説を持ってプロジェクトを立ち上げました
https://drsfromto.bubbleapps.io/

【専門性情報は存在しないの?】

それぞれのクリニックには【いつもの紹介先】情報が蓄積されていますが、それは通常、外部に公開されていません。クリニック側が意図的に隠しているわけではなく、日常的な業務の中で自然と形成された情報であるため、わざわざ公表するほどのことではないと考えているためです。

 

しかし、先生の専門領域や地域のエッセンスが詰まった【いつもの紹介先】、特にクリニック情報は、患者さんと他の医療機関にとって大切です。繰り返しになりますが、地域や専門性を超えると紹介先はほぼわかりませんので。

 

このプロジェクト「いつもの紹介先クリニック」という前提を一応設けています。それはなぜでしょうか?

 

一般の皆様は、医師が患者さんを他の医療機関に紹介するときには、適切な病院を選んでいると思っていらっしゃるのではないでしょうか。しかし、必ずしもそうとは限りません。医師も人間ですから、専門外であったり、地域が違ったりすると、自信を持って紹介先を決められない場合もあるでしょう。インターネットで検索したり、いつも紹介している病院に頼ったりすることもあるかもしれません。しかし、インターネットの情報が必ずしも正しいとは限らないことは、皆様もご存知の通りです。(11)

 

紹介というのは、専門性だけでは出来ないのです。専門性だけでなく、「後医は名医」というスタンスを理解いただける先生でないと、患者さんが不快な思いをされることになります。 (もちろん、希少疾患や緊急性の高い疾患の場合には、そんなことも言ってられない状況もあることは重々承知しております。)

 

日頃、紹介先として選んでいる先生は、ドライ情報とウェット情報を満たした先生である可能性が高いのです。 患者さんの紹介というのは、専門性(ドライ)情報と「後医は名医」を理解する人間性(ウェット)情報の複合によって行われます。それはGoogleではわからない、日常の紹介行動の中で蓄積されているものなのです。それはまさに、今読んでいただいている先生方のクリニックから外に出ない暗黙知として蓄積されているのです。 皆様にお願いすると、「私の情報なんか役に立ちませんよ」という先生が多いのですが、それが少しでも蓄積されると、大いに助かる患者さんや先生がいると思うのです。ぜひご登録をお願いしたいです!

 

患者さんを治すのであればドライ情報だけで良いのでは?と思われるかも知れませんが【いつもの】紹介先にはなれないのです。

 

患者を紹介される被紹介者である後医(一般的には大病院)は複数の理由で有利です。前医(一般的には開業医)での試行錯誤の結果を知ることができる、生体の自然治癒過程、そして専門性を持つなど「後医は名医」という言葉があるように前医は不利な立場にあります。いわば、後医は後出しジ ャンケンをいているようなものです。

 

しかし、専門性のカバー領域が相対的に狭くなりつつある現代においては、今は後医である医師もこの前医になる可能性が高いことを理解しなくてはなりません。こういった時代において、医師同士も気を使い前医と患者ともに不安にさせない様に医療を行うことが長期にわたる安定した医師間、医師―患者間関係を維持させる方法だと考えます。しかし、決してこれは馴れ合いを意味するものではありません。

【なぜクリニック?①】

医師の皆さまは、学会や講演会などで上には上がいることを悟ります。そのため、単に「患者さんの紹介先を教えて下さい」と依頼すると、どうしても最高峰の医師の情報を教えてくれようとします。

 

しかし、大学病院などのトップレベルの医療機関に紹介することが、必ずしも患者さんの満足度につながるとは限りません。 例えば、毎年起こるアレルギー性結膜炎の患者さんを、大学病院の有名なサイトカイン研究の第一人者の外来に紹介したとします。患者さんは何時間も待たされ、診察時間はわずかということも少なくありません。これは、誰にとっても良い結果とは言えません。

 

紹介した医師にとっては、「なぜこの患者さんをわざわざ紹介してきたのか? 忙しいので、地元の医療機関で診てもらってほしい」という気持ちになります。

 

患者さんにとっては、「有名な先生かもしれないが、長く待たされて軽くあしらわれた挙句、地元の医療機関で診てもらえと言われた。一体何のために紹介状を書いてもらったのか?」と、紹介元の医師にも紹介先の医師にも不満を抱くことになります。

 

このように、患者さんの症状やニーズに合致した適切な医療機関を紹介することが重要です。

【なのになぜ大病院に紹介?】

後医も患者さんも不満を抱く可能性が高いにもかかわらず、なぜ前医は大きな病院に紹介するのでしょうか? アレルギー性結膜炎にはサイトカインの大家が必要と思っているのでしょうか? そんな訳はありません。 でもオーバースペックな病院に紹介してしまう2つの理由があると考えます。

 

A. 医師側にも、患者さんにとって適切なレベルの医療機関情報を探し出すのが難しいという現状がある。「医療機関の専門性に関する情報が公開されていない」「医師同士のネットワークが限られている」などの理由が考えられます。

 

B. 医療機関に対する患者さんの期待値 「大病院は設備や人員が充実しているため、どんな病気でも治してもらえるという期待」「専門医は高度な知識や技術を持っているため、難しい病気でも診断・治療してもらえるという期待」などの理由が考えられます。

 

まず、大前提として、マクロ的な視点からの総論であることをお断りしておきます。患者さんの医療レベルに対する期待値は「大病院に対する期待値のほうがクリニックに対する期待値よりも高い」

医療機関の専門性情報がない場合に 患者さんが納得するのは「大病院でわからないと言われたら納得だけど クリニックでわからないと言われたら最初から大病院に行けばよかった!」ということになってしまうのでリスクマネジメントの観点から、大病院志向が患者さんもクリニック医師にもあるのです。

 

しかし 前述したように 大病院に受診することはその医療機関のレベルに合ったものでないとみなさんが不幸になる可能性が高いのです。

【なぜクリニック?②】

皆さんは、医療機関に占めるクリニックの割合をご存知ですか?

 

厚労省の令和元年のデータを用いてエクセルで計算してみました。医科だけの集計では診療所が92.5%、医科と歯科を合計すると95.4%が診療所となります。

 

それぞれの医療機関は、自身の専門や近隣の医療機関に関する患者さんの紹介先情報を持っていますが、その情報が共有されていないため、他の医師は把握することができません。

 

井手「17万件の診療所、そして医科と歯科で毎年6000件の新規開業の情報を追いかけることはまず不可能なことがおわかりになりますよね?。これが NYAUWのテーマである 【ため息】です」

 

A先生「たしかに17万件と毎年6000件は無理ですね。」

 

井手「そうなんです 紹介先というのは 長年かけて フィルタリングされてきた貴重な情報です。 このような紹介先は知り合いになるためのコスト、関係を維持するためのコストをかけて作り上げた、文脈に依存した情報であるため 他の医療機関にとって意味のある情報かどうかはわかりません。しかし、少なくともある医療機関にとってはコストを掛けて維持されている意味のある情報です。」(12)

 

A先生「確かに 仕事においてもプライベートにおいても自身の人間関係って簡単に維持できるものではないですから たしかに17万件と毎年6000件は改めて無理だとわかりますね」

 

井手「そういった情報をシェアすることで すこしマニアックな表現ですが LANルーターのルーティングテーブルを共有するようなイメージです」(13)

 

井手「ルーティングテーブルとは、データのパケットを宛先に届けるために、次にどのルーターに引き渡せば効率的かを記した表のことです。これを医療に置き換えると、患者さんを適切な医療機関に紹介するために、治療に適した医療機関、移動距離、待ち時間、患者さんの満足度などを考慮した情報を共有するということです。」

 

A先生「17万件の診療所があり、それは総医療機関数の95%で 毎年6000件が新規開業というのは 確かに追いつけないため息ですね」

 

井手「そうなんですよ」

 

この医療機関のうち95%を占める診療所のインサイトが表にでないことで、どれだけ 患者さん 前医 後医社会保障費などの負担が増えているかマクロになんとなく理解できた先生方へ。是非、プロジェクトにご登録ください!(14)
https://drsfromto.bubbleapps.io/

【最後に】

先生方が他の先生を知らないということは、先生も他の先生から知られていないということなのです。

【参考リスト】

(1)海外と日本のSNSユーザー数・普及率

https://lifepepper.co.jp/abroad/sns-popular/

(2) ロングテール戦略とは?

https://product-senses.mazrica.com/senseslab/marketing/long-tail
(3) 医学教育が直面する課題と機会
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3116346/
(4) これからは、デジタルドクターがあなたを診る
https://www.forbes.com/sites/steveandriole/2015/04/07/doctor-d-will-see-you-now/#578cc062a2f2
(5) 専門医とは?

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000094279_2.pdf
(6) 転居と紹介状と直行便

https://note.com/teyede1972/n/n834ef6730f21
(7) 病院を選んだ理由のトップは医師による紹介
https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2023/010693.php
(8) 航空の就航国
https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E5%88%A5%E3%81%AE%E8%88%AA%E7%A9%BA%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E4%B8%80%E8%A6%A7_%E5%B0%B1%E8%88%AA%E5%9B%BD%E6%95%B0%E9%A0%86
(9) 世界の国の数について

https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/textbook/chuu/shakai/document/ducu6/docu602/1784.html
(10) 紹介のUターン Jターン Iターン

https://note.com/teyede1972/n/n765ee95d7e72
(11) Google検索について

https://note.com/teyede1972/n/na205e97caa74
(12) 急に売れ始めるにはワケがある

https://amzn.to/3YL90NY
(13) ルーティングテーブルとは

https://www.juniper-ne.jp/blog/router/routing-table.html#:~:text=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC,%E3%81%82%E3%82%8B%E3 %83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3 %81%A7%E3%81%99%E3%80%82
(14) 医師の皆様 患者さんの紹介先探しにお困りではないですか?
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000053237.html

当コラムの掲載記事に関するご注意点

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監修医師 井手 武
東京ビジョンアイクリニック 阿佐ヶ谷 院長
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