アトピーのかゆみに効く最強の飲み薬とは?JAK阻害薬の仕組みと注意点


更新日:2025年03月6日

アトピーのかゆみに効く飲み薬の種類
アトピー性皮膚炎の治療は、主に塗り薬が中心です。飲み薬と組み合わせることもありますが、塗り薬は補助的な役割ではなく、治療の基本となります。この点が、飲み薬と塗り薬の大きな違いです。アトピー性皮膚炎のかゆみに効く飲み薬には、JAK阻害薬、抗ヒスタミン薬、ステロイドの飲み薬などがあります。
JAK阻害薬とは
JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害薬)は、炎症を抑える薬です。関節リウマチや潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎などの治療に用いられます。メリットとしては、飲み薬であるため一日一回の服用で済むことです。胃腸への負担が比較的少ないため、飲み続けやすいといえます。また、JAK阻害薬は、服用開始後1〜2日で効果が期待でき、即効性があることが特徴です。
作用の仕組み
体の中では、免疫細胞が「炎症を起こせ」という指示を出すことで、細菌やウイルスから身を守っています。しかし、何らかの原因でこの指示が間違って出されると、本来炎症を起こす必要のない場所でも炎症が続いてしまうのです。炎症を引き起こす指示は、特定のたんぱく質を通じて細胞に伝わり、さらに別の物質が作られることで炎症が広がっていきます。
この情報の伝達を担う重要な役割を持っているのが、JAKという酵素です。体内にはJAK1、JAK2、JAK3、TYK2という4種類の酵素があり、それぞれが細胞内で情報を伝え炎症を活性化させています。そして、炎症が続くことによって組織がダメージを受けたり、痛みが発生したりする原因になります。
JAK阻害薬の働きは、情報伝達の途中でJAKに結びつき、誤った指示が細胞内に伝わらないようにすることです。炎症の原因となる信号が届いても、それを途中で遮断することで、炎症を抑える効果を発揮します。そのため、炎症が長引くことで起こる症状を和らげることが可能です。
かゆみへの効果
JAK阻害薬には、かゆみを素早く抑える効果があることが分かりました。もともとはアトピー性皮膚炎では、炎症を抑える薬として使われています。ところが、炎症が治まる前の段階でも、かゆみを軽減する働きを持っていることが研究によって明らかになりました。
皮膚が乾燥すると、通常では気にならないような軽い刺激でも強いかゆみを感じやすくなります。これが「機械的かゆみ過敏」です。アトピー性皮膚炎では、この現象が発生しやすく、かゆみのせいで皮膚を掻き壊し炎症がさらに悪化する悪循環が生じます。
順天堂大学の研究グループによる論文が、2024年10月22日にJournal of Dermatological Science誌のオンライン版で公開されました。皮膚が乾燥した状態のマウスを用いて、JAK阻害薬がかゆみにどのような影響を与えるかを調べています。この研究では、乾燥によって機械的かゆみ過敏が起きたマウスにJAK阻害薬を投与したところ、30分以内にかゆみが軽減されることが確認されました。
「2型サイトカイン」と呼ばれる物質(IL-4、IL-13、TSLPなど)が皮膚の神経に作用し、かゆみの信号を脳へ伝えます。JAK阻害薬は、この信号を遮断することで、かゆみを抑える効果を発揮します。特にJAK1を選択的に抑える薬は、他のJAK阻害薬よりも強いかゆみ抑制効果を持つことが分かりました。
アトピー性皮膚炎に効果のあるJAK阻害薬の種類
2020年にJAK1/2阻害薬のバリシチニブが適応拡大されたのを皮切りに、2021年にはJAK1阻害薬のウパダシチニブとアブロシチニブが保険適用され、3種類のJAK阻害薬が使用可能となりました。既存の外用治療で十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎の患者に対して使用し、いずれも1日1回の服用で効果を発揮します。
オルミエント(バリシチニブ)
JAK1とJAK2を阻害する作用があります。アトピー性皮膚炎や関節リウマチの治療に使われ、肺炎の治療にも使われることがある飲み薬です。
通常1日1回1錠を服用します。基本的には4mg錠が処方されますが、症状に応じて2mg錠になることもあります。服用のタイミングに決まりはなく、食事の前後を気にせず、自分の生活リズムに合わせて飲むことが可能です。
リンヴォック(ウパダシチニブ)
JAK1に特化した作用を持ち、より効果的に炎症を抑えられます。アトピー性皮膚炎や関節リウマチの治療に用いられる飲み薬です。関節症性乾癬にも適応があり、より広い炎症性疾患に対応しています。
12歳以上の小児にも使用ができ、15mgと30mgの錠剤があります。副作用としては、ニキビや帯状疱疹が比較的多く報告されています。代謝に関わるCYP3A酵素を阻害するグレープフルーツやセントジョーンズワートを摂取すると、薬の作用が変化する可能性があるため、摂取を避けてください。
サイバインコ(アブロシチニブ)
バリシチニブ、ウパダシチニブに次ぐ3番目の経口のJAK阻害薬で、JAK1を選択的に阻害します。12歳以上の小児への適応するのは、ウパダシチニブに続く2番目の薬剤です。50mg、100mg、200mgの3種類の剤形があります。
服用量を減らしたり増やしたりできる点が特徴で、状態に応じた柔軟な治療が可能です。
症状が改善すれば休薬ができ、再発時に再開することで再び症状をコントロールできます。副作用の発生率が比較的低く、リンヴォックと比較すると皮膚症状(帯状疱疹やニキビなど)が少ない傾向があります。
JAK阻害薬の注意点
JAK阻害薬の使用にあたっては、いくつかの注意点があります。医療費が高額になるになることや免疫抑制作用によるリスクが伴います。
治療費が高額になる可能性がある
JAK阻害薬は治療効果の高さが期待できる反面、高額なお薬です。経済的な負担が大きくなる点に注意しましょう。経済的負担を軽減するために、さまざまな医療費助成制度が用意されています。
・高額療養費制度
・付加給付制度
・医療費補助制度(学生向け、子ども向け、ひとり親家庭向けなど)
・医療費控除
医療費助成制度は、自治体や加入している健康保険、所得状況などによって異なります。そのため、具体的な適用条件や手続きについては、各自治体の窓口や健康保険組合に確認してみましょう。
副作用に注意
JAK阻害薬を使うと、体の免疫力が弱くなり感染症にかかりやすくなります。多いのは、帯状疱疹や風邪のような症状を引き起こす上気道感染で、重症化すると肺炎や敗血症、結核になる可能性もあります。まれに、肺の病気や腸に穴があく症状、筋肉の障害などが報告されています。感染症が重くなりやすい傾向があるため注意が必要です。また、血液検査では肝臓の異常や血球の減少、コレステロールや特定の酵素の値が上がることがあります。
感染を防ぐために、普段から手洗いやうがいをしっかり行い、体調管理に気をつけましょう。インフルエンザや肺炎球菌の予防接種も大切です。また、帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが再び活性化して起こるもので、JAK阻害薬を使っている人は発症しやすいことが知られています。万が一発症した場合は、薬の使用を一時的に中止し、できるだけ早く抗ウイルス薬を飲むことが重要です。
アトピー性皮膚炎で用いられる、その他の飲み薬
JAK阻害薬以外にも、アトピー性皮膚炎で用いられる内服薬があります。それぞれの薬の特徴や副作用をみていきましょう。
抗ヒスタミン薬
かゆみを和らげるためによく使われる薬です。ヒスタミンという物質の働きを抑えることで、アレルギー症状を軽減する効果があります。そのため、じんましんやアレルギー性鼻炎にも使われていますが、アトピー性皮膚炎のかゆみに対しては、効果が弱いことが多いとされています。
人によって効き目に違いがあり、十分な効果を感じられないこともあるため、アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイドの塗り薬が最も重要です。抗ヒスタミン剤は、あくまで塗り薬の補助として使われるものと理解しておくとよいでしょう。
シクロスポリン
臓器移植後の拒絶反応を抑えるために使われていた薬ですが、重症のアトピー性皮膚炎にも効果があることが報告され、日本でも2008年から使用できるようになりました。通常の治療では十分な効果が得られない方に対して使用します。例えば、体の30%以上に強い炎症がある場合や、全身が赤くなっている場合、顔に治りにくい皮疹がある場合などが対象です。
シクロスポリンを内服すると、速やかにかゆみが改善します。塗り薬や抗ヒスタミン剤で効果がなかった方でも、かゆみが消えることで生活の質や睡眠の質が向上します。ただし、強い作用を持つため副作用にも注意が必要です。
腎臓への負担や血圧の上昇といった影響があるため、服用期間は8〜12週間と制限されており、定期的に病院で血液検査や血圧測定を行なわないといけません。また、免疫の働きを抑えるため、風邪などの感染症にもかかりやすくなるリスクがあります。症状が改善したら、できるだけ早く通常の治療に戻しましょう。
ステロイド剤
ここでいうステロイドは、塗り薬ではなく飲み薬のことです。アトピー性皮膚炎の治療では、基本的にステロイドの塗り薬が使われますが、症状が特にひどい場合には、飲み薬としてステロイドを服用することもあります。
アトピー性皮膚炎は長期間にわたって治療が必要な病気です。飲み薬のステロイドは効果が期待できますが、長期間服用すると副作用のリスクが高まります。主な副作用は、感染症にかかりやすくなったり、骨がもろくなる骨粗しょう症、血糖値が上がる糖尿病、不眠症などです。症状が急激に悪化したときなど、一時的に服用することはありますが、長期的な治療薬として使用することは推奨されていません。
漢方薬
「消風散(しょうふうさん)」と「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」があります。これらは、ステロイドの塗り薬と併用することで、単独で使用した場合よりも皮膚の症状が改善したと報告されています。特に補中益気湯は、「疲れやすい」「体がだるい」「根気が続かない」といった症状がある人に適しており、こうした体質に当てはまる場合には、併用を考えてもよいでしょう。ただし、アトピー性皮膚炎に対する漢方薬の効果については、まだ明確な医学的根拠が十分に確立されているわけではありません。
飲み薬で治療する際の注意事項
安全かつ効果的に治療を進めるために、飲み薬を使用する際の注意点を理解しておきましょう。
必ず医療機関を受診する
飲み薬には、市販の抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬もあります。ただし、アトピー性皮膚炎は長期間の管理が必要な病気のため自己判断で薬を選ぶのではなく、医師の診察を受けて処方してもらうのが大切です。
自分の症状に対して塗り薬だけで改善が見込めるのか、飲み薬を併用すべきか、どの種類の薬が適しているのかを正しく知るためにも、まずは病院を受診し、専門的な診断を受けましょう。
正しい用法で内服する
決められた用法・用量を守って服用することが大切です。薬の効果を十分に得るためには、医師の指示通りのタイミングや回数で飲む必要があります。
例えば、食前・食後などの服用タイミングが決められている薬もあり、誤った方法で飲むと効果が弱まったり、副作用のリスクが高まったりすることがあります。また、飲み忘れた場合は、自己判断で次の回に2回分まとめて飲むなどの対応はせず、医師や薬剤師に相談しましょう。
副作用が出たら、すぐに受診する
JAK阻害薬を服用中に、発熱、咳、寒気、だるさ、息苦しさが続く場合や、顔を中心に赤い発疹や水ぶくれが広がる症状が出た場合は、感染症の可能性があります。また、チクチク・ピリピリする痛みや、痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが現れた場合は、帯状疱疹の疑いがあります。これらの症状がみられたら、服用を中止し、すぐに医師に相談してください。
自己判断で中止しない
自己判断で服用をやめると、皮膚の炎症がすぐに悪化することがあります。治療によって炎症が落ち着き、見た目が良くなったとしても、皮膚の内側にはまだアレルギー反応が残っているためです。症状を安定させるためには、医師の指示に従い、服用量や回数を勝手に変えず、毎日きちんと飲み続けることが大切です。
アトピー性皮膚炎で飲み薬を処方してほしい場合は医療機関を受診しよう
アトピー性皮膚炎で飲み薬を希望する場合は、医療機関を受診しましょう。塗り薬だけでは十分な改善が見られない場合や、かゆみ・赤みが強い場合に、飲み薬を併用することがあります。気になる症状があれば、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
症状がつらくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
病院に行くのが難しい場合は、オンライン診療を利用するとよいでしょう。自宅から医師の診察を受けられ、必要に応じて飲み薬の処方も可能です。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットを使って自宅にいながら医師の診察を受けられるサービスです。スマートフォンやパソコン、タブレットを通じて、医師とビデオチャットで直接会話し、診察を受けられます。このサービスでは、診察の予約から問診、診断、処方箋の発行、支払いまで、すべてオンラインで完結できるため、外出せずに医療を受けることが可能です。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKUは、オンライン診療をさらに便利にしたサービスです。アプリをつかって予約から薬の受け取りまで全ての手続きをスムーズに行え、さらに専門スタッフによるサポートも受けられます。お気に入りのクリニックや薬局を登録でき、薬手帳をデジタル化することも可能です。また、全国どこでも、当日または翌日に薬を受け取れるため、便利さが広がります。
まとめ
アトピー性皮膚炎のかゆみを抑える飲み薬には、JAK阻害薬の他にも抗ヒスタミン薬、ステロイド剤、漢方薬などがあります。症状や体質に合わせた治療が必要です。JAK阻害薬は効果が高い一方で、副作用や治療費の負担に注意しないといけません。飲み薬の治療を考える際は、必ず医師の診察を受け、適切な処方を受けることが大切です。治療が長期にわたる場合でも自己判断で薬を中止せず、医師と相談しながら治療を続けましょう。

医師
五藤 良将

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※お薬の処方は医師の診察により薬が処方された場合に限ります。