口の中がチクチク痛む…口腔内の違和感は帯状疱疹のサイン？

もしかして帯状疱疹？口の中にできた場合の特徴は

帯状疱疹というと、体の片側に帯状に現れる発疹や水ぶくれを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、口内にも帯状疱疹ができることがあります。顔の神経の一つである「三叉神経」に沿って発症した場合、口腔内にも症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあるのです。

唇や歯ぐきにできる水ぶくれ

皮膚だけでなく口の中の粘膜にも小さな水ぶくれとして症状が現れることがあります。唇の内側や歯ぐき、頬の内側、舌、上あごなどにプクッとした水疱ができ、破れただれになると強い痛みの原因になります。

水疱ができる部位は、通常は左右どちらか一方に限られ、神経の走行に沿って帯状に広がるという点が特徴です。見た目は小さな口内炎にも似ていますが、触ると鋭く痛む、一部ではなく帯状に広がるという点が違います。

歯の痛みと間違いやすい？神経に沿った症状

帯状疱疹は神経に沿って発症するため、痛みが歯に出ることも珍しくありません。顔面には「三叉神経（さんさしんけい）」という大きな神経が通っており、このうち第2枝（上顎）や第3枝（下顎）がウイルスの影響を受けると、歯の痛みとよく似た症状が出ることがあります。

実際には虫歯がないのに「何本もの歯がしみる」「噛むと痛い」と感じることがあり、これが帯状疱疹による痛みであることも少なくありません。痛みはチクチク、キリキリとした神経性のものが多く、時に夜も眠れないほど強くなる場合もあります。

口の中の帯状疱疹は食事や会話にも影響することも

口の中にできた帯状疱疹は、ただの痛みだけでは済みません。食べ物や飲み物がしみるようになったり、噛むたびに痛みが走ったりと、食事や水分補給がつらくなることもあります。

ただれや潰瘍が口の中に広がると、口を大きく開けたり、言葉を発したりすることも苦痛になるケースもあります。唇や舌、頬の粘膜にまで広がると、歯磨きや会話にも支障が出ることがあるため、放置しないようにしましょう。

口内に帯状疱疹ができる原因は

口内に帯状疱疹ができる理由は、子どもの頃にかかった「水ぼうそう」と深く関係しています。

水ぼうそうウイルスは大人になっても潜んでいる

帯状疱疹の原因は、水ぼうそうのウイルスである「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。水ぼうそうが治ったあとも、このウイルスは完全に体の外に出ていくわけではありません。神経の根元（神経節）に潜んだまま何年も、あるいは何十年も静かに存在し続けています。

顔や口の中に帯状疱疹が出る場合は、顔面に分布している「三叉神経」に潜伏していたウイルスが活性化したことを意味します。これが、唇や舌、歯ぐき、頬粘膜などの口腔内に症状が出る理由です。

再活性化のきっかけは免疫力の低下

帯状疱疹が再発する大きな原因は、「免疫力の低下」です。これは高齢になるにつれて自然に免疫機能が衰えることもあれば、仕事や家庭のストレス、睡眠不足、過労、栄養不足などによって一時的に免疫が下がることでも起こります。

そのため、帯状疱疹は50代以降に多くみられる疾患ですが、20代や30代といった若い世代でも発症するケースは珍しくありません。とくに最近では、生活リズムの乱れや強いストレスを抱える若年層での発症例も増えています。

見逃すとツラい後遺症も！口内にできた帯状疱疹の治療法

帯状疱疹は痛みを伴うだけでなく、放っておくと「帯状疱疹後神経痛」という長引く後遺症が残ることもある病気です。口の中に発症した場合は飲食や会話といった日常生活に支障をきたすため、早期に適切な治療を受けることが非常に重要です。

治療はスピードがカギ！発疹から3日以内が理想

帯状疱疹の治療には「早期発見・早期治療」が非常に重要です。発疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を開始することで、ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化や後遺症のリスクを軽減できます。

口内の症状は「ただの口内炎」や「歯の痛み」と勘違いされやすく、受診が遅れることもあります。チクチクした痛みや水ぶくれに気づいた時点で早めに受診しましょう。

痛みに対する対症療法と神経ブロック治療

帯状疱疹の症状で最もつらいのが、神経に沿った強い痛みです。この痛みに対しては、抗ウイルス薬に加えて消炎鎮痛薬や神経痛用の薬（抗うつ薬など）が使われます。これらの薬でも痛みが十分に緩和されないケースでは、「神経ブロック」という治療が必要になることもあります。

神経ブロックとは、局所麻酔薬などを神経の周辺に注射して、痛みの信号を遮断する方法です。口の中に発症した場合は、顔面や顎周辺の神経にアプローチするため、専門的な技術が必要となります。

入院や全身管理が必要となることも

症状が重い場合、または食事や水分の摂取が困難なときには、入院による全身的な管理が必要になることもあります。点滴での栄養補給や水分補給、二次感染を防ぐ抗菌薬の投与など、総合的なサポートが必要です。高齢者や基礎疾患を持っている方は注意しましょう。

口内の帯状疱疹と口唇ヘルペスの違い

口の周りや中に「水ぶくれ」ができたとき、それが帯状疱疹なのか、それとも口唇ヘルペスなのか、見た目だけでは判断が難しいことがあります。どちらもウイルス感染によって生じる症状ですが、原因となるウイルスや症状の現れ方、再発のしやすさなどに違いがあります。

帯状疱疹とヘルペスの違いについて詳しく解説

口唇ヘルペスについて詳しく解説

似ているようで違う２つのウイルス感染症

口唇ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス1型（HSV-1）」によるもので、唇や口周辺に小さな水ぶくれが繰り返しできるのが特徴です。一方、帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス（VZV）」が原因で、身体の片側に帯状に広がる発疹と強い痛みを伴います。

どちらも早期の受診が大切

見た目が似ていることから、帯状疱疹と口唇ヘルペスを間違えてしまうかもしれません。どちらも放置すれば症状が悪化したり、痛みが長引いたりする恐れがあります。原因や治療方法は異なるため自己判断せず、医療機関で適切な診断を受けましょう。

帯状疱疹の口内発症を防ぐには？

口の中に発症した場合は、日常生活への影響が大きいため、「かからないための対策」を意識することが大切です。

50代からはワクチンが有効！再発リスクも軽減

帯状疱疹は、ワクチンによって予防が可能な病気です。50歳以上の方を対象に、帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。ワクチンは発症や重症化のリスクを下げ、万が一発症しても症状を軽く済ませる効果が期待できます。かかりつけの医師に相談してみましょう。

疲労・ストレスは大敵！日常でできる予防

帯状疱疹の発症は、免疫力の低下と大きく関わっています。予防を心がけるには、十分な睡眠とバランスの良い食事、適度な運動を取り入れましょう。過労やストレスをためないことが、帯状疱疹の予防には効果的です。口腔内を清潔に保つことも重要な予防策のひとつです。口の中は細菌やウイルスが繁殖しやすい環境でもあるため、丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診も忘れずに行いましょう。

帯状疱疹か口唇ヘルペスか迷ったら自己判断せず、早めに医療機関を受診しよう

大切なのは、気になる症状が現れたら早めに医師の診断を受けることです。帯状疱疹の場合は、発疹から3日以内に抗ウイルス薬を始めることで重症化や後遺症を防ぐ効果が高まることが分かっています。症状が気になった時には「様子を見る」のではなく、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

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まとめ

口の中に発症する帯状疱疹は、気づかれにくい上に、激しい痛みや後遺症を引き起こすおそれがあります。「なんとなくおかしいな」と思った時点で様子を見ず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。適切な治療と日ごろの予防を心がけることで、症状の悪化や再発のリスクを抑えられます。