【医師監修】帯状疱疹とヘルペス、どう違う？似ているけれど、違う2つの病気の見分け方

帯状疱疹とヘルペス、水ぶくれは似てるけど同じ病気じゃない

帯状疱疹とヘルペスは、どちらも小さな水ぶくれができる皮膚の病気で、一見すると区別がつきません。しかし、実際には原因となるウイルスも異なり、症状の出方や痛みの種類、治療方法や再発のしやすさなどに明確な違いがあります。

症状の違いは“広がり方”と“痛み方”で見分ける

水ぶくれができるという共通点だけでなく、実際に発症する場所や痛みの性質に注目すると、帯状疱疹かヘルペスかをある程度見分けるヒントになります。

帯状疱疹は体の片側に帯状、「神経の痛み」

帯状疱疹は、過去に水ぼうそうにかかった人だけが発症する病気です。皮膚の痛みだけでなく、神経自体に強い痛みを感じることが特徴で、皮膚の一部がズキズキしたりピリピリする違和感から始まります。

発疹は、背中やお腹、胸などの片側だけに帯状に広がります。この「帯状」という名前の通り、神経に沿って帯のように発疹が続くのが最大の特徴です。痛みは日常生活に支障をきたすほど強くなることもあり、治癒した後も神経の痛みが何ヶ月も残る「帯状疱疹後神経痛」に悩む方も少なくありません。

ヘルペスは唇や性器などに限定、「かゆみ・ヒリヒリ」

ヘルペスは、唇の周りや性器周辺など、比較的狭い範囲にだけ現れるのが特徴です。神経の痛みというよりは、ピリピリとした軽い痛みやかゆみ、ヒリヒリするような感覚を伴います。

発疹の数は帯状疱疹に比べて少なく、水ぶくれができても範囲は狭いままで、体の片側に広がることはほとんどありません。治療を受ければ数日から一週間程度でかさぶたとなり、後遺症が残ることはほとんどないのもヘルペスの特徴です。

原因となるウイルスは別物

見た目は似ていても、帯状疱疹とヘルペスの原因ウイルスは全くの別物です。どちらもヘルペスウイルス科に属するウイルスですが、発症のきっかけや感染経路も異なります。

帯状疱疹は「水ぼうそうウイルス」の再発

水ぼうそうのウイルス（正確には水痘帯状疱疹ウイルス）は、症状が治まった後も神経節という神経の根元に隠れて潜伏し続けます。

子どもの頃に水ぼうそうにかかっていない人が帯状疱疹を発症することは基本的にありません。加齢やストレス、疲労などで免疫力が落ちると、潜んでいたウイルスが再び活性化して神経を通って皮膚に現れ、帯状疱疹を引き起こします。

ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」による感染

原因は単純ヘルペスウイルスという別のウイルスです。口唇ヘルペスの多くはHSV-1、性器ヘルペスはHSV-2と呼ばれる型のウイルスが主な原因になります。

日本人の多くが子どもの頃に唾液や接触で感染しており、一度感染すると帯状疱疹と同じく神経に潜伏して再発を繰り返す特徴があります。ただしヘルペスは初感染のタイミングを自覚しない人も多く、気付かないまま体にウイルスが潜伏していることも珍しくありません。

帯状疱疹とヘルペス、感染の違いは？

発症している人から周りの人へうつるかどうかも、両者では大きく違います。家族やパートナーにうつさないために知っておきましょう。

帯状疱疹はうつらないが“水ぼうそう”として感染する場合あり

帯状疱疹自体が直接誰かにうつることはありません。ただし、水ぼうそうにかかったことのない人が帯状疱疹患者の水ぶくれに触れると、帯状疱疹ではなく水ぼうそうとして感染することがあります。

免疫がまだ十分でない乳児や、水ぼうそうに対する抗体を持たないお母さんから生まれた赤ちゃんは、重症化しやすいと言われています。そのため、帯状疱疹を発症している間は、赤ちゃんや妊婦さんとの接触はできるだけ避けることが大切です。帯状疱疹の水ぶくれには直接触れないようにし、接触した場合はすぐに手を洗うなどの注意が必要です。

ヘルペスは接触でうつるため家族にうつさないように注意

ヘルペスは発疹が出ている間、水ぶくれの中に多くのウイルスが含まれているため、キスや性行為、タオルの共用などで他の人に感染します。家族内でうつることもあるので、症状が出ているときは患部に触れない、触ったらすぐに手を洗う、コップや箸を分けるなど、細かい配慮が大切です。特に性器ヘルペスの場合は、パートナーへの感染を防ぐため、症状がある間は性行為を控えましょう。

どうして発症するの？発症・再発の違い

どちらのウイルスも、一度感染すると体から完全に消えることはありません。再発のしやすさやパターンに違いがあるので、再発を防ぐための生活習慣も大切です。

帯状疱疹は「過去の水ぼうそう」が再び動き出す

過去に水ぼうそうにかかった経験が前提になります。その後、長い間ウイルスが神経の奥に眠っており、免疫が落ちたときに再び動き出して発症します。一生に一度だけ発症する人もいれば、再発する人もいますが、再発率は1〜6%と低めです。加齢が大きなリスクとなるため、50歳を過ぎたら発症しやすくなります。

ヘルペスは「いつの間にか感染」、そして繰り返す

ヘルペスは帯状疱疹よりも再発しやすいことが特徴です。最初の感染は無症状のことが多く、体にウイルスが入っていることを知らないまま過ごす人がほとんどです。

風邪をひいたとき、疲れが溜まったとき、女性の場合は生理の前後など、免疫力が下がるタイミングで口唇や性器に再び水ぶくれが現れます。再発を防ぐためには、十分な睡眠と栄養、ストレスをためない生活が欠かせません。

帯状疱疹とヘルペス、治療法の違い

症状に気づいたら早めに治療を始めることで、痛みを軽減し、治りを早められます。治療方法も両者で少しずつ異なります。

帯状疱疹は「早めの治療」が後遺症リスクを減らすカギ

帯状疱疹の治療では、発症からできるだけ早い段階で抗ウイルス薬を飲み始めることが最も大切です。ウイルスの増殖を抑えることで、神経へのダメージを減らし、帯状疱疹後神経痛という後遺症を予防することにつながります。

痛みが強い場合は鎮痛剤の服用やペインクリニックでの神経ブロック注射が効果的です。症状が重いときや免疫力が著しく低下しているときは、入院して点滴治療を受けることもあります。

ヘルペスは軽症なら塗り薬でもOK、再発には飲み薬も

ヘルペスは軽症であれば抗ウイルス成分を含む市販の塗り薬でも治療できますが、初めての発症では必ず医師の診察を受けて、適切な飲み薬を処方してもらうのが安心です。再発を繰り返す方には、あらかじめ飲み薬を処方しておいて初期症状が出た段階で自分の判断で内服する「PIT療法」が有効になります。

間違いやすいけど放置はNG！迷ったら皮膚科を受診しよう

帯状疱疹とヘルペスは、見た目が似ているため自己判断が難しく、間違った対処で症状を長引かせてしまう方が少なくありません。帯状疱疹の場合は、治療の開始が遅れると強い痛みが長期間残ってしまうリスクが高まります。ヘルペスも放置していると再発を繰り返し、感染が周囲に広がる可能性があります。

迷ったときは、無理に我慢せず、早めに皮膚科を受診してください。専門医の診断を受けることで、正しい治療と再発予防のアドバイスを受けられます。

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まとめ

帯状疱疹とヘルペスは、どちらも小さな水ぶくれやピリピリとした違和感が現れる点では似ていますが、「ウイルスの種類」「症状の広がり方」「痛み方」「感染経路」などに明確な違いがあります。帯状疱疹は、治療が遅れると神経痛などの後遺症を残す可能性が高いため、早めの診断と治療開始がとても大切です。「似ているから少し様子を見よう」と自己判断せずに、少しでも異変を感じたら、できるだけ早く皮膚科で専門医の診察を受けましょう。