【医師監修】薬でアトピーは改善できる?正しい使い方を知ろう!治療薬の特徴と注意点


更新日:2025年03月5日

この記事では、アトピー治療に用いられる薬の種類や正しい使い方、そして注意点について詳しく解説します。これらの薬を上手に活用し、アトピーと上手に付き合っていきましょう。
アトピー治療に使われる薬の種類
アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚の炎症と痒みを迅速に抑えることが重要です。まずは、皮膚の炎症を抑える抗炎症薬を使用します。炎症を抑えることに成功した場合、その状態を維持することが次に重要となります。
再発しやすい場合は、抗炎症薬を定期的に使用するプロアクティブ療法が効果的です。薬を使わない日でも、保湿剤でスキンケアを続けましょう。炎症が再発しそうな兆候が見られたら、早めに抗炎症薬を使って症状の悪化を防いでください。
皮膚の炎症を鎮める抗炎症外用薬
抗炎症外用薬は、主に皮膚の炎症を抑えるために使用する薬です。直接皮膚に塗り、炎症を引き起こしている細胞の活動を抑える効果があります。
ステロイド外用薬
ステロイドというのは、腎臓の上にある副腎という器官で作られるホルモンの一種です。このホルモンを人工的に作ったものがステロイド薬で、炎症を抑える効果があります。ステロイド外用薬は1952年から使われている、長い歴史がある薬です。
ステロイド外用薬を肌に塗ると、その場所に集まっている炎症細胞の活動を抑え、さらに皮膚の細胞の活性化も抑えるため、非常に効果的に皮膚炎を抑えられます。皮膚炎が抑えられると、痒みも急速になくなります。
ウイルスや細菌、真菌などの感染によって引き起こされる皮膚疾患を除けば、多くの湿疹や皮膚炎の治療ではステロイド外用剤が基本的な治療方法です。
タクロリムス軟膏
タクロリムス軟膏は、アレルギー反応を抑えることで皮膚の炎症を和らげ、赤みや痒みを減らす薬です。ステロイドではないので、ステロイド特有の副作用がありません。そのため、特に顔や首のような皮膚が薄い部分でも使用しやすいお薬です。
使い始めの3〜4日間は、塗った部分に軽いヒリヒリ感やほてり、弱い痒みを感じることがありますが、使い続けると通常はこれらの症状はなくなります。一部の方は、このヒリヒリ感が強く感じられることがあり、使用を嫌がることもあります。
タクロリムスは分子が大きいため、皮膚のバリア機能が回復した健康な皮膚からはほとんど吸収されません。これにより、全身性の副作用を引き起こす可能性は低くなります。
デルゴシチニブ軟膏
ステロイドとは異なる方法で働き、皮膚のバリア機能を改善する薬です。細胞内の免疫反応を調整するヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎の炎症を抑え、掻きむしり行動や皮膚のバリア機能が低下するのを防ぎます。デルゴシチニブの強さは、ステロイド外用薬の強力なものと同じくらいの効果です。
症状の重さや状態に応じて、部位ごとに使い分けます。タクロリムス軟膏やシクロスポリン、デュピルマブなどとは併用しない方が良いとされています。粘膜や皮膚の傷、ただれた部分や皮膚感染症がある部分には塗らないように注意が必要です。
ジファミラスト軟膏
PDE4と呼ばれる酵素を選択的に阻害することで、炎症を引き起こす化学物質の産生を抑える薬です。これにより、皮膚の炎症やかゆみを抑える効果があります。
ステロイド外用薬や他の軟膏とは異なる新しい作用機序を持っており、安全性が高い事が特徴です。アトピー性皮膚炎の方は、細胞内のcAMPの濃度が低下しており、炎症を引き起こすサイトカインが過剰に生成されてしまいます。ジファミラスト軟膏を使用すると、PDE4を阻害してcAMPの分解を防ぎ、結果として炎症を抑えられます。
非ステロイド性抗炎症薬
NSAIDs(エヌセイド)とは、非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)の略で、解熱・鎮痛・抗炎症作用のある薬剤の総称です。アラキドン酸カスケードという体内のプロセスで生成されるプロスタグランジンを抑えることで、炎症を軽減します。効果はステロイド外用薬と比較すると非常に弱く、アトピー性皮膚炎に対して効果的であるという証拠はほとんどありません。接触皮膚炎という副作用もあり、湿疹を悪化させる可能性があります。
ステロイド薬は怖い?正しい使い方とは
ステロイド外用剤は、皮膚のトラブルを効果的に和らげる薬ですが、その効果と共に誤解も存在しています。この薬が体に蓄積されてしまうとか、使用をやめられなくなるといった情報は誤解です。ステロイド外用剤は特定の部位にのみ作用し、全身への影響を最小限に抑えるように設計されています。
適切に使用すれば、深刻な副作用が生じることはほとんどありません。正しい使い方やその効果、副作用に関する正確な知識を持つことが重要です。
ランクに注意する
作用の強さに応じていくつかのランクがあります。ランクは非常に強力なものからおだやかなものまで「ストロンゲスト」「ベリーストロング」「ストロング」「マイルド」「ウィーク」の5つです。
治療を受ける際には、皮膚症状の程度や患者の年齢、使用部位に応じて、最適な強さのステロイドが処方されます。市販薬を使う場合は、年齢に合わせて選びましょう。大人には「ストロング」、子どもには1ランク下の「マイルド」、さらに小さな赤ちゃんには「ウィーク」を使用するのが望ましいです。乳幼児や高齢者は皮膚が薄いため、吸収率が高く弱めの薬になります。
正しい量と回数は?
適量の外用剤を使うことが重要です。皮膚がしっとりする程度に塗るのが理想です。目安として、直径5mmのチューブから大人の人差し指の第一関節まで押し出した量(約0.5g)で、これは成人の手のひら2枚分に相当します。ただし、実際の使用量は皮膚の状態や外用薬の種類によって異なります。
外用する回数についてですが、急性増悪時には1日2回(朝と夕方、特に入浴後)塗布してください。炎症が落ち着いてきたら、1日1回に減らします。1日1回と2回の使用で効果に大きな差はありません。1日1回の外用でも十分な効果が期待できるため、使用回数が少ない方が継続しやすくなります。
部位による注意点
陰部や顔、首など皮膚が薄いところでは吸収率が高く、手や足など皮膚が厚いところでは吸収率が低くなります。皮膚が薄い部位は薬剤の影響を受けやすいため、より注意が必要です。
塗布した部分にだけ効果を発揮するため、患部にのみ塗るようにしてください。症状が出ていない部分に無意味に塗布したり、予防的に使用するのは避けましょう。
保湿剤は薬と同じくらい重要
ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏には、炎症を抑える効果がありますが、保湿効果はありません。「乾燥肌を改善するための保湿薬」と「炎症を抑えるための抗炎症外用薬」を併用することが大切です。保湿と炎症対策の二つをバランスよく行うことで協力し合って、症状を軽減することが可能です。
保湿剤が必要な理由
乾燥した肌は異物や細菌が入りやすくなり、かゆみを感じる神経が過敏になります。これによって、わずかな刺激でもかゆみやアレルギーが起こりやすくなります。この悪循環を断ち切るためには、保湿剤によるスキンケアが重要です。
保湿剤を使うことで、壊れた皮膚のバリア機能を補強し、乾燥を防げます。また、アレルゲンや細菌の侵入を防ぎ、アレルギーの悪化を抑えることも可能です。
保湿薬の塗り方
入浴後5分以内に保湿薬を塗ると、皮膚が水分を吸収しやすく保湿効果が高まります。もし5分以上経過してしまった場合は、化粧水をスプレーで皮膚に吹きかけて湿らせてから保湿薬を塗ると良いでしょう。
保湿薬は湿疹がある部分だけでなく、全身に塗ることが大切です。塗る際は、指先ではなく手のひらに保湿薬を取り、体のしわに沿って広げるように塗ると均等に行き渡りやすくなります。季節を問わず、一年を通じて継続することが必要です。2分以内でさっと終わらせると、習慣化しやすくなります。大切なのは、毎日続けることです。
飲み薬は必要?アトピー性皮膚炎で用いられる飲み薬
アトピー性皮膚炎の治療では、塗り薬が主役です。これに対して、飲み薬は補助的に使用します。
抗ヒスタミン薬
かゆみを抑えるために使う内服薬です。抗ヒスタミン薬単独では効果が見られないこともあり、抗炎症外用薬と一緒に使うことで、かゆみに対する相乗効果が得られることがあります。
抗ヒスタミン薬には、第一世代と第二世代があり、第一世代は鎮静作用が強く、眠気や集中力の低下を引き起こすことがあります。一方、第二世代は副作用が少なく、日常生活への影響が少ないことが特徴です。アトピー性皮膚炎の治療には、主に第二世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬が使われます。
抗炎症内服薬
抗炎症内服薬としてはシクロスポリンと経口JAK阻害薬があります。シクロスポリンは、強い炎症を伴う重度のアトピー性皮膚炎に対して使用する内服薬です。特に、顔面の難治性紅斑や紅皮症などに有効で、投与後速やかに痒みを軽減する効果があります。ただし、腎障害や高血圧、感染症などの副作用があるため、定期的な血液検査が必要です。
経口JAK阻害薬は、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素をブロックすることで、炎症や痒みを引き起こすシグナルの伝達を抑制し、皮膚の症状や痒みが短期間で改善する効果があります。バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブがあります。
経口ステロイド
経口ステロイドは、症状が急激に悪化した場合に短期間で効果を得るために使用します。ステロイドを長期間服用すると、感染症、骨粗しょう症、糖尿病、不眠症などの副作用が生じる可能性があるため、長期的な使用は適していません。ステロイドの飲み薬は、一時的な対処として使用することが一般的です。
漢方薬
漢方薬を併用または補助的に使うことが有効な場合もあります。ただし、漢方薬の効果には個人差があり、すべての患者に有効であるとは限りません。漢方薬を使用する際は、医師の指導のもとで行いましょう。
「消風散」は、ステロイドなどの外用薬で改善が見られない場合に用いられ、一定の効果が報告されています。「補中益気湯」は、疲れやすい、体がだるいと感じる人に使われ、ステロイド外用薬の量を減らす効果があるとされています。
特定の分子を標的とする生物学的製剤の皮下注射
生物学的製剤とは、遺伝子組換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを用いて作られた薬剤です。特定の分子をターゲットにして治療を行います。生物学的製剤は高分子の蛋白質で構成されており、内服すると消化されてしまうため、点滴や皮下注射で投与します。
デュピルマブ
従来の外用薬や他の治療法では効果が十分でない中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対して使われる薬です。体内の特定の物質(IL-4とIL-13)が炎症やかゆみを引き起こすことがあり、その物質の働きを抑えて炎症やかゆみを軽減します。効果が高く副作用も比較的少ないため、長期間の使用に適しています。
ネモリズマブ
アトピー性皮膚炎のかゆみを引き起こすサイトカインであるIL-31に作用する薬です。IL-31受容体に結合することで、IL-31の働きをブロックしかゆみを抑えます。IL-31は、主に免疫細胞であるTh2細胞から作られ、末梢神経や他の免疫細胞に働きかけてかゆみを誘発する物質です。この受容体に結合してシグナル伝達を阻害することで、かゆみだけでなく、炎症や皮膚のバリア機能の低下も改善すると考えられています。
トラロキヌマブ
IL-13は、炎症を引き起こす他の物質の分泌を刺激して炎症を悪化させたり、皮膚を守るためのタンパク質や脂質を減らして皮膚のバリアを壊したりする物質です。また、抗菌ペプチドの生成を減らすため、病原体が皮膚にとどまりやすくなり、痒みを感じる神経を刺激して痒みを悪化させます。
トラロキヌマブは、IL-13の活性を中和することで症状を改善する薬です。アトピー性皮膚炎の方の皮膚では、IL-13が多くなりすぎていて、これが病気の重さに関係しています。
薬を正しく使うためにも、皮膚科を受診しよう
アトピー性皮膚炎の治療は自己判断で薬を辞めたり、間違った量を使ったりすると症状が悪化する可能性があります。各薬剤の適切な使用方法を理解することが重要です。皮膚科を定期的に受診し、医師の指導のもとで適切な治療を行うことが、症状の改善につながります。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
忙しくて病院を訪れる時間が取れない場合には、オンライン診療がおすすめです。自宅や職場から診察を受けられるため、時間や場所の制約が少なくなります。継続的な治療が必要な場合には、定期的に医師の指導を受けることが重要なため、オンライン診療をうまく活用して適切なケアを続けましょう。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットを利用して自宅から医師の診察を受けられる医療サービスのことです。スマートフォンやタブレット、パソコンなどのデバイスを使って、ビデオチャットで医師と直接話せます。このサービスでは、診察の予約、問診、診断、薬の処方箋の発行、そして支払いまで、すべてオンライン上で完了することが可能です。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をよりスムーズに行えるサービスです。アプリを使って予約からお薬の受け取りまで、全ての手順を簡単に進められます。
専門スタッフによるサポートがあり、お気に入りのクリニックや薬局を登録できる機能も備わっています。さらに、お薬手帳をデジタル化することで、薬の管理も簡単です。このサービスを使えば、全国どこにいても、当日または翌日にお薬を受け取れるため、忙しい方やアクセスの難しい場所に住んでいる方にとっても便利です。
まとめ
アトピー性皮膚炎の治療薬は外用薬が基本です。ただし、内服薬、注射薬なども併用することがあります。それぞれの特徴を理解し、適切に使いましょう。ステロイド外用薬は、正しい使い方をすればアトピー性皮膚炎の治療には効果的です。また、保湿剤を使ってスキンケアを行うことも、症状の改善には欠かせません。
アトピーの症状がつらい場合は、自己判断せずに皮膚科を受診し、自分に合った治療を受けることが大切です。正しい知識を持って、アトピーをコントロールしていきましょう。

医師
五藤 良将

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