風邪のひきはじめには葛根湯が効果的?葛根湯の成分や効果を解説
更新日:2024年06月20日
かぜの引き始めによる頭痛や肩こり、悪寒などに効果があり、身体を温めたり、発汗及び痛みの緩和などに有効な生薬が7つ配合されています。
「ゾクッときたら葛根湯」などのキャッチコピーでも有名な漢方製剤ですね。この葛根湯の歴史はとても古く、世界最古の医学書といわれる中国の「傷寒論」に記載されています。
葛根湯とは
葛根湯は、風邪(かぜ)の初期の症状改善のため、病院で処方されたり、薬局・ドラッグストアで市販薬として購入することのできる漢方薬(医薬品)です。
かぜの引き始めによる頭痛や肩こり、悪寒などに効果があり、身体を温めたり、発汗及び痛みの緩和などに有効な生薬が7つ配合されています。
「ゾクッときたら葛根湯」などのキャッチコピーでも有名な漢方製剤ですね。この葛根湯の歴史はとても古く、世界最古の医学書といわれる中国の「傷寒論」に記載されています。
この「傷寒論」では、葛根湯について「発熱、悪寒があるもの、頭痛、肩こり、首すじから背中にかけて筋肉のこわばりや痛みがあり、発汗しないもの、冷たい風にあたると寒気がするもの、このような症状には葛根湯が適している」と記されています。
では、葛根湯とは、具体的にどのような処方なのでしょうか。葛根湯は、7種類の生薬で構成されている漢方です。
麻黄(マオウ)
桂枝(ケイシ)
生姜(ショウキョウ)
葛根(カッコン)
芍薬(シャクヤク)
甘草(カンゾウ)
大棗(タイソウ)
では、各生薬の働きを見ていきましょう。(漢方の方剤解説についてはツムラ漢方株式会社の葛根湯エキス顆粒の詳細情報を参考にしています。)
麻黄、桂枝、生姜、葛根・・・主に、体の表面(毛穴など)を開き、発汗を促し、解熱につなげる働き。
芍薬・甘草・大棗・・・炎症発汗過多による体力消耗を防ぎ、汗で流れ出た体内の水分や栄養分を補う働きがあります。また葛根と一緒に働き、肩こりなど筋肉のけいれんやこわばりなどによる痛みも緩和する働きがあります。
桂枝・生姜・・・消化機能を助け、筋肉の蠕動を調整する作用があります。
このように、漢方薬は複数の生薬が、お互いの作用を強めあったり、逆に負担になる作用を打ち消したりしながら、その相互作用によって効能効果を得られるのが特徴です。
身体に合っていれば大きな副作用もなく、自然の生薬を使用している事から漢方製剤を選択する人も増えてきました。生姜や桂枝など、漢方の原料は食材としてもなじみがある生薬が使われているのも大きな特徴です。
医薬品による治療ではなく、民間療法の知恵で、かぜの初期などに、生姜とはちみつなどをお湯で煮出して飲む「生姜湯」などを試した方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、葛根湯を使うタイミングや副作用などについて解説していきましょう。
風邪のひきはじめには葛根湯?
風邪の初期に服用するというイメージが強いお薬ですが、実際の漢方治療を行っている臨床の現場では、冷えからくる肩こりや首こり、頭痛や筋肉痛などの症状にも使用されることがあります(長期連用するものではありません)。
また、引き始めだからといって、何でもかんでも葛根湯を処方すればよいというものでもありません。
漢方薬は「症状」に対して処方するものではなく、患者さんの「体質」に合わせて処方されるものです。葛根湯も例外ではなく、このお薬が合う場合と合わない場合、また適している体質の人とそうでない人がいます。
では、少し踏み込んで、葛根湯がいわゆる「かぜの引き始め」や「ゾクッとくるかぜに!」という時の代表的な処方として広まったのはなぜかを解説していきましょう。
漢方の考え方では、風邪は皮膚など、体の表面から侵入すると考えられています。そして風邪の事を「カゼ」ではなく、「フウジャ」と呼びます。
身体に取って害を及ぼすものを「邪気」ととらえる事から、「風が運んでくる邪気」=「フウジャ(風邪)」ですね。風は体にとって敵になりえる邪気=寒さ(寒邪=カンジャ)や湿気(湿邪=シツジャ)、ウイルスや花粉など、あらゆる病気の原因を運んでくると考えられており、風邪=「万病の元」という考え方をします。
これからの時期に注意が必要な季節性のかぜやウイルス感染症なども体の表面やのどの粘膜から侵入すると考えられています。
寒さなどが皮膚を通して侵入すると、体の表面を寒さが覆ってしまい、発汗ができなくなり、その結果発熱するというのが大まかな漢方の考え方です。
また、熱があるにもかかわらず、ゾクゾクと寒気を感じます。この「発熱、悪寒」が同時に表れている状態。これが葛根湯の使い時です。
葛根湯を服用する事で、毛穴を開いて体の表面に覆われた寒さを散らし、発汗させ、汗とともに風邪も一緒に追い出す事で結果的に解熱させる。これが「ゾクッときたら葛根湯」のメカニズムですね。とにかく「服用するタイミング」。これがとても大切です。
葛根湯の市販薬を比較
医療機関などを受診した際、医師に葛根湯を処方された場合、「ツムラ葛根湯エキス顆粒」や「コタロー葛根湯エキス細粒」など、漢方の処方名に加えて、製品番号(葛根湯の場合は1番)が振られているのを目にした方もいらっしゃるかもしれません。
医師が漢方を処方する場合もありますが、市販薬としても販売されており、手軽に手に入れることができます。ただし、処方名は「葛根湯」でも各製薬メーカーによって商品名を別につけている場合があります。
漢方薬の圧倒的なシェアを誇るツムラ(ツムラ株式会社)やクラシエ(クラシエ薬品)などの製薬メーカーが有名で、比較的どこのドラッグストアでも取り扱いがある漢方です。
メーカーによって、生薬の配合量や1日当たりの服用回数などに若干違いがみられることがあるので、添付文書の情報を確認して、不明点があれば、薬剤師か登録販売者に相談しましょう。(商品情報や価格は2020年11月現在のものです。)
ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A※第2類医薬品 ・2.5g×8包(4日分)希望小売価格:1,200円(本体価格)+消費税 ・2.5g×16包(8日分)希望小売価格:2,100円(本体価格)+消費税
葛根湯エキス顆粒Sクラシエ[12包/30包]※第2類医薬品・12包 希望小売価格:1,800円(税抜)・30包 希望小売価格:3,600円(税抜)
ドラッグストアで比較的多く見られるエキス顆粒(粉薬)は上記のタイプです。エキス顆粒の他に錠剤タイプ、また栄養ドリンクのように液体タイプの漢方製剤もあります。
また、「葛根湯」とは違う商品名で商品を販売している製薬メーカーもあります。エキス顆粒の他に錠剤タイプ、また栄養ドリンクのように液体タイプの漢方製剤もあります。また、「葛根湯」とは違う商品名で商品を販売している製薬メーカーもあります。
カコナール 第一三共ヘルスケア30mL×3本 メーカー希望小売価格980円(税込1,078円)
「葛根湯」と総合感冒成分をミックスしたタイプの医薬品になります。
コフト顆粒 12包日本臓器製薬株式会社 指定※第2類医薬品 販売価格 999円(税込1,098円)
葛根湯の漢方成分に、頭痛や発熱を緩和する解熱鎮痛成分や咳止め成分などの成分が配合されており、より感冒の症状へのカバー範囲が広がっていると言えるでしょう。
ただ、医薬品成分が数種類入っているため、用法用量や併用禁忌などの注意事項も多くなります。
コフト顆粒の場合、リスク区分も「指定第2類医薬品」に分類されるため、既往歴や併用する医薬品、副作用など、注意すべきポイントが多くなります。
服用の際は、薬剤師や登録販売者などに相談して購入するようにしましょう。
葛根湯の飲み方のポイント
葛根湯に限らず、商品には剤型があり、水から煎じて煮出して服用するタイプの商品や、生薬のエキスを抽出して粉状に加工されている商品(顆粒タイプ)や錠剤タイプの商品があります。
葛根湯も、粉のタイプ、また錠剤の他に、栄養ドリンク剤のように生薬のエキスを液体にした商品なども展開されており、各製薬メーカーが多様な商品を販売しています。
ちなみに漢方薬といえば、土鍋でコトコト煮出してお茶のようにして服用するというイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
実は生薬を水から煎じたものを服用する方法は、有効成分が最も濃い状態で服用することができ、吸収もよいので効果も高い事がわかっています。
それは葛根湯も例外ではなく、処方名に〇〇湯とお湯の文字がついている薬が多いことからも納得できるかもしれません。
土鍋で煮出してとまではいかなくても、粉のタイプのお薬をお湯に溶かして服用することで吸収も良くなり、体も温まるので、是非、試してみてください。
ただし、漢方薬は独特の風味や苦みがあるため、どうしても味が苦手でお湯などに溶かして服用できないという方もいらっしゃいます。
そのような場合は手軽に服用できるエキス剤顆粒や錠剤タイプを上手に活用するのも選択肢のひとつです。葛根湯の服用のポイントはとにかく症状を見極め、「適切なタイミング」で服用することです。
服用方法と注意点
服用を検討する際は、医師や薬剤師、または登録販売者に具体的な症状などを相談し、情報の提供を受けてください。体力があまりない人や、発汗が止まらないというような人は、葛根湯に含まれる成分が体力を消耗したり、負担になってしまう場合もあるからです。
構成生薬の中に「麻黄」(マオウ)が含まれますので、他に麻黄を含む医薬品や交感神経作動成分「エフェドリン」を含有する商品を服用している人は重複摂取をさけるため服用を控える必要があります。
また、甘草(カンゾウ)も同様に、過剰服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧の上昇につながることがあるので注意が必要です。(偽アルドステロン症という症状です。)
また、医薬品は添付文書を確認の上、服用する際は用法・用量や使用期限を守って使用するようにしましょう。
妊婦の方や妊娠している可能性のある方は、医師に相談の上服用をするようにして下さい。
小児に服用させる場合は、保護者の監督のもと、服用させるようにしましょう。(年齢により1回あたりの服用量が異なります。また、2歳未満の小児は服用することができません。)
また、下痢や便秘の症状が現れた場合、皮膚に発疹や痒みなどの症状が現れた場合は、アレルギーや副作用の可能性がありますので、服用を中止し、薬剤師や登録販売者に相談の上、必要に応じて医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。
漢方薬は天然の生薬を使用している関係で、湿気などに弱く、品質管理のため、保管方法に注意しましょう。
1包を飲み切らず、残りを後で服用する場合などは切り口を折り曲げて保管し、早めに服用する事をおすすめします。
また、医薬品の効能効果を最大限に生かすため、水や白湯、ぬるま湯に溶かして服用しましょう。
どうすれば購入できる?
購入するには、処方箋を取り扱う保険薬局(医療機関で医師の診断により処方を受けた場合)や街のドラッグストア、漢方薬専門の相談薬局、薬店などを利用して医薬品を購入することができます。(医療用医薬品の販売に関しては国が定めた公定価格(薬価)があります。)
また、第1類、第2類、第3類のすべての一般用医薬品は、一定の条件の下、インターネットや電話相談による注文などで販売できるようになりました。※購入時に専門家からの情報提供が必要な場合があります。
ただし、使用に特に注意が必要な「要指導医薬品」は対面販売に限ります。
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