【医師監修】アトピー性皮膚炎を改善するための3つの対策？正しい治し方とは？

アトピー性皮膚炎は、完全に治ることは少ないですが、適切な治療を続けることで症状をコントロールできます。年齢が上がるにつれて症状が落ち着いたり、もともと軽い症状の場合は、ほとんど目立たなくなる「寛解」という状態に近づくことがあります。

治療の目的は、症状をできるだけ抑えて、普段通りの生活が送れるようになることです。見た目では症状が治まったように見えても、肌の奥では炎症が続いていることがあります。治療を途中でやめると再び症状が悪化することがあるため、自己判断で中止せず医師の指示に従いながらケアを続けていきましょう。

アトピー性皮膚炎の症状の一つである強いかゆみは、ぐっすり眠ることを妨げることがあります。子どもの場合、十分な睡眠がとれないと成長に影響が出て身長が伸びにくくなったり、学校で集中できず本来の力を発揮できなくなるかもしれません。

また、顔に症状が出ると目をこすることが増え、目の病気につながることがあります。視力に影響が出る可能性もあるため、注意しましょう。家族にとっても、負担になるかもしれません。夜中にかゆみで何度も目を覚ますと、家族も睡眠不足になり、心身ともに疲れてしまうことがあります。

アレルギーマーチとは、アレルギーを起こしやすい体質の人が、成長するにつれて異なるアレルギー症状を経験することです。「マーチ」とは行進の意味で、年齢とともに症状が移り変わっていく様子を表しています。

例えば、赤ちゃんの頃に肌が乾燥しやすく湿疹が続いていると、幼児期にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症しやすく、小学校に入る頃には気管支喘息の症状が現れやすくなり、中学生になるとアレルギー性鼻炎や結膜炎が増えてくる傾向があります。成長とともに食物アレルギーや皮膚炎、喘息の症状は軽くなることが一般的です。ただし、大人になっても症状が続く方もいます。

すべての方がアレルギーマーチを経験するわけではありません。家族にアレルギー疾患を持つ方がいると、アレルギーを発症するリスクが高くなります。

皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌やウイルスによる感染症にかかりやすくなります。また、顔の湿疹がひどくなると、目の合併症が起こりやすくなります。

アトピー性皮膚炎は、目のほとんどの部位に影響を及ぼす可能性があり、眼瞼皮膚炎、角結膜炎、円錐角膜、白内障、網膜剥離などが代表的な病気です。顔の皮膚炎が重症な人ほど発症しやすいといわれています。

10代から30代にかけての方に多く見られ、思春期や成人期になっても皮膚炎が続いている場合、発症のリスクが高まります。そのため、顔の皮膚炎が悪化している場合は、目の症状がなくても定期的に眼科で検査を受けるようにしましょう。

白内障

水晶体が白く濁る病気です。一般的には加齢によるものが多いですが、アトピー性皮膚炎の影響で若い人にも発症することがあり、皮膚炎が長引いている場合や顔の湿疹が重い場合にリスクが高くなります。

かゆみのために目をこすったり、叩いたりすることが関係している可能性も指摘されています。アトピー性皮膚炎による白内障は、特徴的な濁り方をすることが多く、進行が早いため注意しましょう。進行すると、視界がかすんだり、まぶしさを感じたり、ものが二重に見えたりすることがあります。

片目だけに症状が出ると気づきにくいため、見え方に違和感がある場合や、顔の皮膚炎がひどい場合は、時々片目を隠して視力の変化を確認してください。

網膜剥離

網膜が剥がれてしまう病気です。網膜が剥がれると栄養が行き届かなくなり、その部分の視界が欠けるようになります。中心部分である黄斑部が剥がれると、視力が大幅に低下します。発症の初期に適切な治療を受ければ回復が期待できますが、放置すると回復が難しくなるため、早期発見が重要です。

アトピー性皮膚炎による網膜剥離は、15〜25歳の若い方に多く見られます。一般的な網膜剥離とは異なり、ゆっくりと進行することが多く、初期には自覚症状が少ないこともあります。片方の目だけでなく、両目に起こるケースも珍しくありません。白内障を合併していると検査が難しくなり、網膜剥離の発見が遅れることもあります。

アトピー性皮膚炎などで傷がある肌にヘルペスウイルスが入り込むことで起こる感染症で、主な原因は単純ヘルペスウイルスです。中心がへこんだ小さな水ぶくれがたくさんでき、次第に広がってただれたようになります。痛みがあり、リンパ節が腫れたり、発熱したりすることもあります。顔に症状が出た場合、目にウイルスが感染し角膜ヘルペスを引き起こすことがあるため注意が必要です。

初めて感染した場合は症状が重くなりやすく、治るまでに2〜4週間かかることがあり、二次感染が起こりやすくなります。

伝染性軟属腫は、水いぼと呼ばれる皮膚の感染症です。原因は「伝染性軟属腫ウイルス」というウイルスで、皮膚の表面にある角化細胞に感染することで発症します。直径1〜5mmほどの小さなブツブツで、中心が少しくぼんでおり表面がツルツルしていて光沢があるのが特徴です。

健康な皮膚には感染しにくく、アトピー性皮膚炎やひっかき傷や肌荒れ、乾燥肌、湿疹などで皮膚のバリア機能が弱っている部分に入り込んで感染します。主に2〜12歳の子どもに多く見られ、特に胸やお腹、背中、腕や脚などができやすい場所です。

特に治療をしなくても自然に治ることが多く、通常6〜8か月ほどかかります。ただし、治るまで数年かかることもあります。周りの子どもに感染させたり、湿疹や二次感染を引き起こす可能性もあるため、症状に応じた対応が大切です。

子どもによく見られる皮膚の病気です。主に黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌という細菌が原因で、傷口から入り込むと感染を引き起こします。そこから周囲や離れた場所へと広がるため、「とびひ」とも呼ばれます。虫刺されや湿疹をかき壊したり、乾燥肌やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱まっている場合は注意しましょう。

赤みとかゆみを伴う水ぶくれができ、破れてただれた状態になるのが特徴です。水ぶくれの中の液体に細菌が含まれているため、手で触ることで別の場所にも広がってしまいます。かさぶたができるタイプでは、赤みのある小さな膿を含んだブツブツが破れると、厚いかさぶたになり発熱やリンパ節の腫れ、のどの痛みを伴うこともあります。

アトピー性皮膚炎の重症度を正しく評価することは、適切な治療を行うために重要です。評価方法には、厚生労働省が作成した「重症度のめやす」があり、皮膚の状態を軽症・中等症・重症・最重症の4段階で分類します。また、国際的に使われる評価方法には「SCORAD」や「EASI」といった指標があります。

「重症度のめやす」では、皮膚にどれくらい広がっているかと炎症の強さが基準です。ただし、症状の重さは単に面積だけで判断するのではなく、一つひとつの皮疹の状態も重要視します。例えば、範囲は狭くても強い炎症を伴っていれば、より重い症状として扱われることもあり、中等症以上と判断します。

皮膚に軽い赤みや乾燥が見られる程度で、症状が比較的軽く抑えられている

強い炎症を伴う湿疹が現れますが、その範囲は体の表面積の10％未満にとどまる

炎症の範囲がさらに広がり、全身の10％以上、30％未満に影響を及す

皮膚の炎症が体表面積の30％以上に広がる

アトピー性皮膚炎の重症度は、年齢によって変化します。幼児期よりも小学生になる頃に症状が悪化する傾向があり、さらに成長するにつれて重症の割合も増えていきます。一方、大人のアトピー性皮膚炎の重症度を調査した結果では、大半の人が軽症で重症になる割合は低めです。20〜30代よりも40代以降では重症例が減る傾向がありました。

症状がひどいときだけでなく、落ち着いているときにもスキンケアを続けることで、再発を防ぐ効果が期待できます。基本となるのは、肌を清潔に保つための入浴と、うるおいを維持するための保湿です。

体を洗うときは、石鹸は直接肌に塗るのではなく、必ず泡立ててから使うようにしましょう。泡立てネットを使うと簡単にきめ細かい泡が作れるので便利です。泡をしっかり作ったら、指の腹を使ってやさしく洗います。ナイロンタオルや硬いスポンジでゴシゴシこすると肌を傷つける原因になるため、避けてください。

洗った後は、ぬるめのお湯でしっかり泡を洗い流します。石鹸が肌に残ると刺激になるため、すすぎやすいタイプの石鹸を選ぶと安心です。お風呂に長時間入ったり、高温のお湯に入ると、体が温まってかゆみが増してしまうことがあるため避けましょう。入浴後は、タオルでゴシゴシこすらず、やさしく押さえるようにして水分を拭き取ってください。

お風呂の後は、肌の水分がすぐに蒸発してしまうため、5分以内に保湿剤を塗りましょう。塗るときはこすらず、手のひらでやさしく広げてください。関節のシワがある部分は皮膚をのばして塗ると、しっかり保湿できます。

症状があるときだけでなく、肌が落ち着いているときも保湿を続けることが重要です。べたつかないものや伸びが良いものなどさまざまな種類があるので、合ったものを選びましょう。油性の保湿剤は、水分を補給する効果が少ないため、入浴後すぐに塗るのがポイントです。もし時間が経ってしまった場合は、霧吹きやガーゼで肌を湿らせてから塗ってください。

発疹が出ている場合は、自己判断せず皮膚科を受診し、医師の指示に従いましょう。指示がなければ、まず乾燥している部分に広めに保湿剤を塗り、その後で薬を塗るのが一般的な方法です。

症状を和らげるためには、普段の生活環境を整え、悪化させる原因をできるだけ避けましょう。また、毎日の生活リズムを整え、体調を安定させることも重要です。

原因の一つに、家の中にいるダニやカビがあります。寝具はダニが最も集まりやすい場所なので布団カバーは週に1〜2回洗い、布団は天日干しした後に掃除機で吸い取りましょう。使わない布団はしっかり密封しておくとダニの発生を防げます。

床はフローリングが理想ですが、絨毯や畳を使う場合は週に2回以上しっかり掃除機をかけてください。掃除機はできるだけ毎日かけ、拭き掃除も取り入れると効果的です。

また、カーテンやソファもホコリやダニが溜まりやすいので、定期的に洗濯したり、素材を工夫したりするとよいでしょう。観葉植物やペットの毛もアレルギーの原因になるため、注意してください。空気清浄機を活用すると、空気中のホコリやアレルゲンを減らすのに役立ちます。エアコンも定期的にフィルターを掃除し、内部のカビを除去することで、アレルギーの悪化を防げます。

食生活では、腸内環境を整えることが大切です。糖質の摂りすぎは腸内環境を乱し、アレルギー症状を悪化させる可能性があるため控えめにしましょう。また、肥満があると皮膚の炎症を悪化させることがあるので、健康的な食生活を心がけることが大切です。

汗もアトピー性皮膚炎を悪化させる原因になります。汗をかいたら、すぐにシャワーで流したり、おしぼりやタオルで拭き取ったりして肌を清潔に保ちましょう。また、日焼け対策も重要です。直射日光を避けるために、帽子や長袖の服、日傘を活用してください。

生活リズムが乱れると悪化しやすくなります。睡眠不足や昼夜逆転の生活は、ホルモンのバランスを崩し、自律神経が乱れることで症状を悪化させる原因となります。規則正しい生活を心がけ、しっかり睡眠を取ってください。

また、ストレスもアトピー性皮膚炎を悪化させる要因の一つです。ストレスをため込まないように、自分なりのリラックス方法を見つけることが重要です。音楽を聴いたり、軽く運動したり、趣味の時間を持つなど、ストレスを上手に発散する工夫をしましょう。

症状や重症度に応じて塗り薬（外用薬）、飲み薬（内服薬）、注射薬（生物学的製剤）を使用します。どの薬を使うかは、医師が患者の状態に合わせて判断するため、自己判断で使用したり、中止したりしないようにしましょう。

基本となる治療方法です。炎症を抑え、皮膚の状態を改善するために使います。

ステロイド外用薬

炎症を抑える効果があり、薬の強さは5段階です。症状や塗る部位に応じて医師が適切なものを選びます。塗る際は、自己判断で使用を中止せず、指示通りに使用してください。

非ステロイド系抗炎症外用薬

ステロイド外用薬の副作用が気になる場合や、顔や首などの皮膚の薄い部分に使うことが推奨される薬です。タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏などがこれにあたります。

外用薬だけでは症状が抑えきれない場合や、かゆみが強いときに補助的に使用します。抗アレルギー薬、免疫抑制剤、ステロイドの内服、JAK阻害薬、漢方薬などになります。

重症のアトピー性皮膚炎で、通常の外用薬や内服薬では十分な効果が得られない場合の治療法です。炎症やかゆみの原因となる物質をブロックし、症状を大幅に改善する効果が期待できます。

アトピー性皮膚炎の治療には、紫外線療法やプロアクティブ療法といったものもあります。

アトピー性皮膚炎の症状は、日光を浴びることで悪化する人もいれば、逆に改善する人もいます。その理由はまだはっきりと分かっていませんが、この仕組みを利用した治療法の一つが「紫外線療法」です。重症のアトピー性皮膚炎の方には、通常の治療に加えて紫外線療法を取り入れると、症状の改善が期待できます。

紫外線にはさまざまな種類の波長がありますが、その中で治療効果が高いものだけを使って皮膚に照射することが紫外線療法です。紫外線を過剰に浴びると日焼けのように肌が炎症を起こしてしまうため、最初は安全な量から始めて徐々に増やしながら治療を行います。

紫外線療法は、週に3〜5回の頻度で紫外線を照射しないといけません。治療を始める際は、病院に入院して行うことが一般的です。

また、長期的な紫外線の過剰曝露が皮膚がんのリスクを高める可能性があるため、医師の指導のもと適切な頻度で行うことが重要です。

症状がひどくなったときだけでなく、症状が落ち着いた後も定期的にステロイド外用薬を使い、再発を防ぐ方法です。皮膚の炎症があるうちは、毎日ステロイドを塗ってしっかり治療してください。症状が安定してきたら、保湿剤だけを使うのではなく、再発を防ぐために週に数回だけ定期的にステロイドを塗る日を作ります。その後、少しずつステロイドを塗る間隔を広げ、最終的には保湿剤だけで肌を守れるようにしていきます。

この方法のメリットは、ステロイドを必要最小限に抑えながら、長期間にわたって肌の良い状態を維持できることです。適切に行えば、副作用のリスクを減らしつつ、皮膚炎の再発を防ぐ効果が期待できます。

アトピー性皮膚炎は、正しい治療と生活習慣の改善によって症状をコントロールできる病気です。しかし、自己流のケアや誤った情報に頼ると、症状が悪化することもあります。そのため、皮膚科医などの専門家のアドバイスを受けることが重要です。

アトピー性皮膚炎の治療は、長期にわたることがあります。忙しくて病院を受診する時間がつくれない場合には、オンライン診療を活用しましょう。

オンライン診療について

オンライン診療は、スマートフォンやパソコンを使い、自宅から医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオ通話を利用して医師と直接話し、診察や問診を受けた後、必要に応じて薬の処方も受けられます。診察の予約から支払い、処方箋の発行まで、すべてオンラインで完結できるため、病院に行く時間が取れない方や外出を控えたい方に便利な方法です。

SOKUYAKUは、オンライン診療をスムーズに利用できるサービスです。診察の予約から薬の受け取りまでをアプリ上で完結でき、専門スタッフのサポートもあるため、より簡単に医療サービスを受けられます。

お気に入りのクリニックや薬局を登録する機能があり、お薬手帳のデジタル管理も可能です。当日または翌日には、薬を受け取ることができます。

アトピー性皮膚炎を改善するには、スキンケアや生活習慣の見直し、適切な薬の使用が欠かせません。症状を悪化させないためにも、専門医の診察を受け自分に合った治療を継続することが大切です。セルフケアだけでは限界があるため、我慢せず早めに医療機関へ相談しましょう。