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長引く咳、それはアトピーが原因かも?アトピー咳嗽の正体と対策

監修医師 中路 幸之助
更新日:2025年03月6日

更新日:2025年03月6日

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長引く咳に悩まされていませんか?風邪が治ったはずなのに咳だけ続く場合、その原因は「アトピー咳嗽」かもしれません。長引く咳は、日常生活に影響を与えるだけでなく、周囲にも気を使う原因になります。放置すると慢性化することもあるため、正しい知識を持ち、適切な対策を取ることが大切です。この記事では、アトピー咳嗽の原因や診断方法、効果的な治療・対策について詳しく解説します。

アトピー咳嗽とは?

アトピー咳嗽は、アレルギー体質の方に多く見られる咳の症状です。中年の女性に多く、エアコンの風やたばこの煙、会話中(特に電話)、運動、精神的なストレスなどがきっかけで発作のように出ることがあります。

 

この咳は、気道の表面が過敏になり、炎症が起こることで発生します。空気の通り道である中枢気道に刺激が加わると、咳が出やすくなるのが特徴です。就寝時や深夜、早朝に悪化しやすく、のどがイガイガするような違和感とともに、乾いた咳が長く続きます。

 

アレルギーによる咳と聞くと、多くの方が喘息を思い浮かべるかもしれません。アトピー咳嗽は喘息とは異なる病気で、気管支の狭窄(気道の収縮)を伴わない点が違いとして挙げられます。

アトピー咳嗽の症状

咳喘息と似た症状があるため見分けがつきにくい病気ですが、原因や治療法が異なります。咳喘息とは違い、アトピー咳嗽は喘息に移行しにくいとされています。これは、炎症が主に太い気管部分にとどまり、気管支の奥まで広がることが少ないことが理由です。

 

乾いた咳が長期間続きます。夜間から明け方にかけて咳が出やすく、のどにかゆみやイガイガした違和感を伴うことがあります。また、会話や長時間の電話、運動、笑ったときに咳が誘発されることが多いのも特徴です。

 

タバコの煙や香水、ほこりといった刺激に敏感で、それらを吸い込むと咳が出やすくなります。季節の変わり目や梅雨、台風の時期にも症状が悪化しやすく、冷たい空気を吸ったときや電車などの密閉空間にいると咳き込むことがあります。

 

喘息のようにゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音はみられません。ほぼ例外なく鼻炎を併発しています。

アトピー咳嗽を疑うポイント

中年女性に多い

□のどのイガイガ感がある

□就寝時、深夜から早朝、起床時に咳が出やすい

□ 咳のきっかけ
 ・風邪をひいた後

 ・気温、湿度、気圧の変化(季節の変わり目など)

 ・会話や長時間の電話

 ・ストレスを感じたとき

 ・たばこの煙(受動喫煙)

    ・運動したとき

□ 長く続く咳(数週間〜数か月続く咳)

□気管支拡張薬が効かない

□アトピー素因がある

咳はどうして出るの?

咳は、のどから肺にかけての空気の通り道(気道)にある神経が刺激されることで発生します。健康な人でも、刺激の強い空気を吸い込んだり、飲み物を誤って気道に入れたりすると、反射的に咳が出ることがあります。

咳は外からの異物に対する防御反応

咳は、体が外からの異物を排除し、肺や気管を守るための防御反応です。ほこりや煙、ウイルスなどが気道に入ると、それを感知するセンサー(咳受容体)が反応し、脳に信号を送ります。その指令を受けた呼吸のための筋肉が動き、咳が発生します。この仕組みが「咳反射」です。

 

咳には、気道にたまったたんを外に出す役割もあります。気道の表面は粘液で覆われており、細かい毛(繊毛)が異物を絡め取る働きをしており、ウイルスや細菌が体内に入ると粘液が増え、たんが作られます。炎症が起こるとたんの量が増え、粘り気が強くなりますが、繊毛の動きと咳の力によって、これを体外へ排出しようとするのです。

咳を起こす病気

からせきが出る場合、他にどんな病気が考えられるのでしょうか?

・かぜ(感冒)

・気管支炎・肺炎

・新型コロナウイルス感染症

・気管支喘息・咳喘息

・胃食道逆流症

・一部の降圧薬の副作用

 

多くの場合、からせきの原因は風邪です。風邪のウイルスが鼻やのどに感染すると、鼻水やのどの痛み、たん、微熱とともに、からせきが出ることがあります。風邪によるせきは通常数日で落ち着つくため、長引く場合は別の原因が考えられます。

 

細菌による気管支炎や肺炎では、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌などが原因です。また、新型コロナウイルス感染症では、せきが長引くだけでなく、息切れが加わり、重症化する可能性があります。

 

感染症以外にも、気管支喘息や咳喘息、胃食道逆流症、一部の降圧薬の副作用、間質性肺炎、肺がんなどもからせきの原因です。また、ウイルス感染が治った後でも気道が敏感な状態が続き、長期間せきが出る「感染後咳嗽」が起こることもあります。

 

気管支喘息によるせきは、夜寝ているときや運動したときに出やすく、春や秋に悪化しやすい傾向があります。どの病気にも当てはまらない場合は、精神的ストレスが原因となる心因性のせきの可能性もあります。長く続いて心配な場合は、呼吸器内科を受診し、原因を正しく診断してもらうことが大切です。

・間質性肺炎

・肺がん

アトピー咳嗽の原因と起こりやすい人

アトピー性素因を持つ中年女性に多く見られます。原因は、気道にある「咳受容体」の感度が過剰に高まっていることです。

 

通常、咳受容体は異物や刺激を感知すると脳に信号を送り、咳をすることで異物を排除する「咳反射」が働きます。しかし、アトピー性咳嗽ではこの受容体が過敏になっており、タバコの煙や会話など、通常なら咳が出ない程度の刺激にも過剰に反応してしまいます。その結果、必要以上に咳が出続けてしまうのです。

 

本来、咳は体を守るための大切な機能ですが、アトピー性咳嗽の場合は気道が過剰に敏感になり、咳が長引くという特徴があります。これが、一般的な風邪や他の咳の病気とは異なるポイントです。

アトピー咳嗽の検査

診断には、いくつかの検査を行い、ほかの病気との違いを確認することが大切です。画像検査で異常がなくても、症状が続く場合は他の検査を組み合わせます。

画像検査

アトピー咳嗽自体では画像検査に明確な異常が見られないことがほとんどです。気道の炎症や構造の異常がないことを確認するために実施します。

 

X線検査やCTスキャンを用いて、肺や気道に異常がないかを確認することで、肺炎や肺がんなどの病気を除外できます。

血液検査

アレルギーの指標となるIgE値を測定し、アレルギー反応が関与しているかを調べます。また、特定のアレルゲンに対する反応を調べるアレルギー検査を行い、アトピー咳嗽の原因となるアレルゲンを特定することもあります。CRP(C反応性タンパク)や白血球数を測定して炎症の有無を確認しますが、アトピー咳嗽の場合は特有の変化はありません。

呼吸機能検査

呼吸機能検査では、息を吸ったり吐いたりする力を測定し、気道の状態を詳しく調べます。アトピー性咳嗽の方は、呼吸のパターンに特徴があり、喘息や咳喘息とは異なる結果が出ることが一般的です。息を吐くときのピークの勢いが低下し、全体のカーブの形が直線的になる傾向があります。これは、気管支の奥まで狭くなっていないため、息を吐き出す流れが大きく乱れないことが理由です。

 

スパイロメトリー

呼吸量や呼吸速度を測定し、気道の狭窄や肺機能の低下がないかを確認します。アトピー咳嗽では通常、異常は見られません。

 

モストグラフ

気道の抵抗を測定し、どの程度過敏になっているかを評価します。ただし、喘息でも気道の過敏性は高くなるため、これだけで診断することはできません。

 

呼気NO検査

呼気に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定し、気道の炎症の有無を確認します。NO濃度が高いと炎症の可能性がありますが、喘息など他の病気でも上昇するため、アトピー咳嗽の確定診断には他の検査と組み合わせる必要があります。

アトピー性咳嗽の診断基準

気管支喘息や咳喘息と症状が似ているため、検査をしてもすぐに判断がつかないことがあります。そのため、実際に薬を使ってみて症状の変化を確認しながら診断することが多くなります。

 

・喘息のようなゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)や息苦しさを伴わず、乾いた咳が3週間以上続いている

・気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を使っても効果がない

・アレルギー体質が疑われる所見がある(アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の合併など)

・抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)やステロイド薬を使用すると咳の症状が改善する

 

これら4つの基準を満たした場合、アトピー咳嗽と診断されます。

アトピー咳嗽と咳喘息との違いは?

どちらも長引く咳を特徴とする病気ですが、原因や治療法に違いがあります。

アトピー咳嗽 咳喘息
炎症の起こる部位 太い気管(中枢気道) 細い気管支
主な原因 咳受容体の過敏性亢進 アレルギー反応による気道の炎症
喘息への移行 ほとんど移行しない 6人に1人が喘息に移行
気管支拡張薬の効果 効果がない 効果がある
治療方法 ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗アレルギー薬)、ステロイド薬 吸入ステロイド薬、気管支拡張薬(β2刺激薬)

 

咳喘息は、長く続く咳だけが症状として現れます。喘息とは違い、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)が出ないのが特徴です。アレルギー反応などによって気道が敏感になり、ちょっとした刺激でも咳が出やすくなることが原因と考えられています。

 

本来、気道はスムーズに伸び縮みしながら空気を通しますが、咳喘息ではこの動きに過剰に反応してしまい、軽い刺激でも咳が出てしまいます。気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を使って咳が改善するかどうかが、診断の手がかりです。

アトピー咳嗽を悪化させないための対処法

症状を抑えるためには、生活環境を整え、原因をできるだけ避けることが大切です。

生活環境を整える

原因となるダニやカビを減らすため、こまめな掃除や換気を心がけましょう。特に布団やカーペットはダニが繁殖しやすいため、定期的に洗濯や掃除を行うことが重要です。湿気が多い場所ではカビが発生しやすくなるため、除湿や換気を意識してください。

咳を誘発する要因を避ける

冷たい空気や運動、ストレスも咳を悪化させることがあります。冬場はマフラーやマスクで喉を冷やさないようにし、適度な運動やリラックスする時間を確保しましょう。ペットの毛やフケが原因になることもあるため、ペットがいる部屋の掃除を徹底し、必要に応じて接触を制限することも大切です。

花粉対策を徹底する

花粉の飛散が多い時期は、外出時にマスクを着用し、衣服や髪に付着した花粉を家の中に持ち込まないよう注意しましょう。帰宅後はうがい・手洗いを徹底し、花粉との接触を最小限に抑えることが大切です。

アトピー咳嗽の治療

治療は、気管支拡張薬が無効なため、抗ヒスタミン薬とステロイド薬が用いられます。症状が改善すれば、治療を継続する必要はありません。しかし、アトピー咳嗽は再発しやすい傾向があるため、注意が必要です

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが気道を刺激して咳を引き起こすのを防ぐために使用します。代表的な薬はアレグラやアレジオンです。ヒスタミンの働きを抑えて症状を軽減しますが、すべての方に効果があるわけではなく、有効率は約60%とされています。

ステロイド薬

抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合、ステロイド薬を使用することがあります。ステロイド薬は気道の炎症を抑え、咳の症状を緩和します。吸入薬と経口薬の2種類があり、経口薬は効果が高い反面、副作用のリスクがあるため、通常は短期間しか使用しません。

慢性的な咳は放置せず医療機関を受診しよう

長引く咳を放置すると、症状が悪化したり、別の病気が隠れている可能性があります。特に 3週間以上続く咳は、風邪以外の原因が関与していることが多いため、適切な診断と治療が必要です。

 

咳喘息やアトピー咳嗽のように、気道が過敏になっている場合は、一般的な風邪薬や咳止めでは改善しません。自己判断で放置せず、医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

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まとめ

長引く咳の原因のひとつであるアトピー咳嗽は、適切な診断と治療によって改善が期待できます。抗ヒスタミン薬やステロイド薬の使用に加え、生活環境を整えることも大切です。咳が長引く場合、「ただの咳」と思わず医療機関で診察を受けてみましょう。慢性的な咳に悩んでいる方は、この記事を参考にしながら自分の症状を見直してみてください。もしかしたら、アトピー咳嗽かもしれません。

コメント アトピー性咳嗽は咳喘息との鑑別診断が特に重要です。アトピー性咳嗽は喘息へ移行するリスクが低く、症状改善後に治療が中止可能です。ヒスタミンH1受容体拮抗薬が第一選択薬で、有効率は60%程度です。効果不十分な場合は、通常吸入ステロイド薬が追加されます。また、気管支拡張薬は無効です。そして、胸部レトゲン検査や胸部CT検査で結核、COPD、肺癌などの他重要な疾患を除外することが重要です。その他、実臨床では呼吸機能検査のフローボリューム曲線がその鑑別診断に有用です。

監修医コメント

医師
中路 幸之助

アトピー性咳嗽は咳喘息との鑑別診断が特に重要です。アトピー性咳嗽は喘息へ移行するリスクが低く、症状改善後に治療が中止可能です。ヒスタミンH1受容体拮抗薬が第一選択薬で、有効率は60%程度です。効果不十分な場合は、通常吸入ステロイド薬が追加されます。また、気管支拡張薬は無効です。そして、胸部レトゲン検査や胸部CT検査で結核、COPD、肺癌などの他重要な疾患を除外することが重要です。その他、実臨床では呼吸機能検査のフローボリューム曲線がその鑑別診断に有用です。

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監修医師 中路 幸之助
医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター 専門領域はアレルギー・膠原病内科, 神経内科, 消化器内科, 血液内科, 肝胆膵内科, 呼吸器内科, 総合内科, 感染症科, 循環器内科, 腎臓内科, 内分泌代謝科, 糖尿病内科, 内科 経歴:1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。 主な研究内容・論文として、カプセル内視鏡 消化器内視鏡 消化器病 保有免許・資格は、米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医 日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医
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