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ママ・パパが知っておきたい「こどものヘルペス」対処法

こどものヘルペスってどんな病気?

こどものヘルペスは「単純ヘルペスウイルス(HSV)」が原因で、口の中や唇、皮ふに小さな水ぶくれやただれができ、痛みや発熱を伴う感染症です。初めて感染したときは症状が強く出やすく、乳幼児では歯ぐきが赤く腫れて口内に複数の潰瘍ができる「ヘルペス性歯肉口内炎」になりやすいのが特徴です。

 

一度体に入ったウイルスは神経に潜んで静かになりますが、疲れや寝不足、発熱、強い日差しなどをきっかけに再び活動し、唇の縁に水ぶくれが出る「口唇ヘルペス」として繰り返すことがあります。多くは自然に回復しますが、痛みが強いときや水分がとれないときは治療で楽になります。

単純ヘルペスウイルスの種類

単純ヘルペスウイルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり、どちらも皮ふや粘膜に感染します。こどもの口のトラブルに関わることが多いのはHSV-1です。

 

初感染では発熱とともに口の中全体に小さな潰瘍が広がることがあります。いずれの型も一度感染すると神経節に潜伏し、体調が崩れたときに同じ場所を中心に再発しやすいという性質を持っています。

こどもに多い理由

生後しばらくはお母さんから受け取った抗体が守ってくれますが、月齢とともにその効果は薄れ、1〜3歳ごろに初感染が増えます。さらに、こどもは手を口や目に触れやすく、家族とのスキンシップも多いことから、接触の機会が多い生活様式が感染のきっかけになりやすいのが特徴です。

なぜこどもはヘルペスにかかりやすいの?

ヘルペスは空気中をただよってうつる病気ではなく、ウイルスが付いた手や唾液、水ぶくれの中身が皮膚や粘膜に触れることで広がります。こどもは手を口や目、鼻にしょっちゅう触れるうえ、よだれが多い時期も長く続くため、ウイルスが“口→手→別の場所”へ移動しやすい環境がそろっているのです。

 

大人よりも皮膚のバリア機能が未熟で、目立たない小さな傷からもウイルスが入りやすいことも、かかりやすさに関係しています。さらに、ヘルペスは症状が出ていない時でも唾液に少量のウイルスが出ていることがあり、「気づかないうちにうつしてしまう・もらってしまう」ことが起こりやすいのが特徴です。

手・唾液・水ぶくれ——接触で広がる仕組み

感染の出発点は、唇や口内にできた水ぶくれや、その周りの唾液です。水ぶくれの中にはウイルスが多く含まれ、触れた手指に移ったウイルスが、同じ子の目や鼻、口に運ばれると新たな部位で増殖します。

 

兄弟や友だちの肌・粘膜に直接触れることでも、同じことが起こります。近くにいるだけでは感染しませんが、至近距離でのキス、唾液が物を介して移動すると感染のきっかけになります。親や保育者の口唇ヘルペスが再発している時期は、とくに注意が必要です。

 

指しゃぶりの習慣があると、唇のウイルスが指先に移り「ヘルペス性ひょう疽」として指が腫れて痛むこともあります。逆に、入浴で同じ湯船に入る、会話で少し離れて話す程度では、感染のリスクは高くありません。

家の中・保育園で起こりやすい場面

家庭では、食事やおやつの時間に食器や飲み物を分け合う、同じタオルで口元や手を拭く、よだれのついたおもちゃを順番に使う、といった“何気ない共有”が感染のきっかけです。眠い時間帯は指しゃぶりや頬ずりが増え、唇の水ぶくれに触れた手で目をこすることで、目のトラブルが起きることもあります。

 

保育園では、おもちゃの回し使いや集団での食事、着替えやトイレ介助など密接な関わりが多く、同じコップやタオルの共用が続くと広がりやすくなります。対策は、患部をマスクや絆創膏で覆って触れにくくすること、食器やタオルを個別に分けること、遊んだあとのおもちゃを拭き上げること、そして手洗いをこまめに行うことです。

 

大人に再発がある時期は、赤ちゃんや幼児へのキスを控え、患部を触った手で目や口に触れないよう意識するだけでも、家庭内の感染リスクを大きく下げられます。

「それ、ヘルペスかも?」こどもに出やすいサイン

感染から症状が出るまでの潜伏期間はおよそ2〜12日です。症状が出ないまま終わることも珍しくありませんが、出る場合は痛みを伴う水ぶくれやただれ、発熱、ぐったり感、頸のリンパ節の腫れなどが見られます。

ヘルペス性歯肉口内炎の特徴と経過

初感染で起こりやすく、1〜3歳に多い病気です。歯ぐきが赤く腫れて出血しやすくなり、口の中や唇、舌、のどの奥に小さな口内炎がたくさん現れます。

 

高熱やよだれ、痛みで食べたり飲んだりできなくなることがあり、脱水に注意しましょう。多くは1〜2週間で回復しますが、初感染では2〜3週間かかることもあります。

口唇ヘルペスのはじまり方と治り方

再発時に多いのが口唇ヘルペスです。唇の縁がチクチク・ムズムズする前ぶれののち、小さな水ぶくれが集まってでき、やがてかさぶたを作って治っていきます。強い全身症状は少なく、8〜10日ほどで落ち着くのが一般的です。

 

日焼けや風邪、疲れなどが引き金になりやすく、前ぶれを感じた早い段階(目安として出始め〜3日以内)で抗ウイルス薬を始めると、治るまでの時間や痛みを抑えられます。

 

口唇ヘルペスについて詳しく解説

アトピー肌で注意が必要な重症型

アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱いと、ヘルペスが広がって「カポジ水痘様発疹症」と呼ばれる重い状態になることがあります。発熱や強いだるさを伴い、同じ形の小さな水ぶくれが顔や体に一気に増え、ただれに変わることもあります。目の周りに及ぶと角膜の合併症の危険があり、早期の抗ウイルス薬による治療が必要です。

似ているけど違う病気との見分け方

見た目だけでは区別がつきにくいこともありますが、出る場所や季節、歯ぐきの腫れの有無、全身症状の出方に注目すると、ヘルペスかどうかの見当がつきます。自己判断で長く様子を見るより、迷った時は早めに受診して確認しましょう。

ヘルパンギーナとの違い

ヘルパンギーナは夏に多く、のどの奥(口蓋弓や扁桃)に水ぶくれが集中します。ヘルペス性歯肉口内炎は口の中全体に口内炎が広がり、歯ぐきが赤く腫れるのが特徴です。初期は紛らわしいことがあるため、迷ったら受診してください。

その口内炎、本当にヘルペス?

口内炎といっても原因はさまざまです。

 

アフタ性口内炎は、頬の内側や唇の裏などの“やわらかい場所”に白っぽい円形の潰瘍が少数でき、歯ぐきの腫れや強い発熱は伴いにくいのが一般的です。

 

手足口病は、口内の痛みに加えて手のひら・足の裏・おしりに発疹が出ることが多く、流行期には候補に挙がります。

 

唇の外側にできる黄色いかさぶた主体の病変は、細菌によるとびひ(伝染性膿痂疹)かもしれません。ヘルペスの透明感のある水ぶくれとは経過が異なります。

 

白いミルクかすのような斑点がこすっても取れにくい場合は、カンジダ性口内炎が考えられます。

こどものヘルペスはどうやって治す?

多くは自然に治りますが、痛みや発熱を和らげ、回復を早めるための治療が役立ちます。重症化や脱水を防ぐためにも、適切なタイミングで受診しましょう。

医師による診断と検査

典型例では診察だけで診断できます。はっきりしない場合や重症では迅速検査などで確認することがあります。再発の口唇ヘルペスは、これまでの経過から診断することが一般的です。

抗ウイルス薬はいつ・どれくらい効く?

内服の抗ウイルス薬は、発疹が出てからできるだけ早く開始するほど効果が高く、痛みや発熱、治るまでの期間の短縮が期待できます。軽症で水ぶくれが少ない場合は外用薬で様子を見ることもありますが、原則として内服と外用を同時には処方しません。

 

症状が強い、脱水が心配、月齢が低い、アトピー肌で急に広がっている、目の症状がある…この場合は内服や点滴による治療が検討されます。

痛み・発熱への対処と水分・食事のコツ

発熱や痛みには、年齢と体重に合った解熱鎮痛薬を医師・薬剤師の指示で使います。アスピリンは小児では使用を避けてください。

 

口内がしみる時期は、冷たいゼリーやプリン、ヨーグルト、なめらかなスープ、アイスや経口補水液を少量ずつこまめに与えると飲み込みやすくなります。酸っぱい・辛い・熱い・塩分の強い食べ物は痛みを強めるため控えるようにしましょう。

 

授乳中の赤ちゃんは、短時間で回数を増やすと負担が少なく、哺乳びんの乳首がしみる場合はスプーンやコップをつかっても良いかもしれません。

治るまで待っても大丈夫?受診の判断ポイント

「そのうち治るのか」「薬が必要なのか」迷ったら、症状の強さと水分摂取の様子を目安にしましょう。

薬で治す場合と自然に治る場合

ヘルペスは多くが1〜2週間で自然に回復します。初感染では2〜3週間長引くこともあります。1日で一気に治す方法はありませんが、早めの内服は回復を助けます。軽い水ぶくれだけなら塗り薬で経過を見ることもあります。

早めに受診すべきサイン

・水分がほとんどとれない
・尿の回数が減る
・尿の色が濃い
・ぐったりして反応が乏しい
・高熱が続く(おおむね3日以上)
・強い痛みで眠れない

 

こうした状態の場合は受診が必要です。

 

また、“目のサイン”が出ている場合は眼科を早めに受診しましょう。

 

・目を痛がる
・まぶしがる
・涙が増える
・目の充血が強い
・目をこすったあとに違和感が続く

 

アトピー性皮膚炎があり赤みや水ぶくれが急に広がる、顔や体に同じ形の発疹が一面に出る、乳幼児(特に3か月未満)で発熱がある、けいれんが起きた…これらはすぐに医療機関へ相談してください。迷うときは「水分がとれているか」「機嫌や活動性が保てているか」を基準にし、少しでも不安があれば遠慮なく受診するのが安全です。

登園・登校はいつから?周囲への配慮と基準

単純ヘルペス感染症は学校保健安全法の第三種に分類されています。対応は園や学校で異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。

発熱や強い症状があるとき

発熱や全身症状がある間は無理をせず休み、治療と安静を優先してください。初感染は重くなりやすいため、とくに注意が必要です。

元気になっても注意したい

熱が下がり、普段どおり食事や水分がとれるなら登園・登校の目安になります。唇の水ぶくれはマスクや絆創膏で覆い、手洗いをこまめに行い、タオルや食器、おもちゃの共用は避けましょう。施設によって独自の基準があるため、最終的には園・学校の指示に従ってください。

家でできる!こどものヘルペス感染予防

ワクチンはまだ実用化されていないため、毎日の生活の工夫が一番の予防です。完璧に防ぐのは難しくても、リスクを下げることはできます。

家族内でうつさないための生活習慣

コップやスプーン、タオル、リップクリームの共用を避け、よだれのついたおもちゃは拭き取りや洗浄しましょう。大人に口唇ヘルペスが出ている時期は、赤ちゃんやこどもへのキスを控え、患部を触った手で目や口を触らないようにしてください。こども自身の手洗い習慣づけも効果的です。

再発を防ぐための体調管理のコツ

寝不足やストレス、強い日差し、発熱後などは再発のきっかけになります。十分な休養、日焼け対策、スキンケア、とくにアトピー肌の保湿を心がけましょう。再発を繰り返す年長のお子さんや大人では、医師の指示で早めに内服を開始する方法が提案されることもあります。

赤ちゃんや妊娠中の方への影響も知っておこう

新生児や妊娠中の感染は重症化のリスクがあるため、家族みんなで正しい知識を共有しておくことが大切です。

新生児や乳児が感染するときのリスク

妊婦さんに性器ヘルペスがある場合、分娩時に赤ちゃんへ感染することがあります。新生児ヘルペスは全身型や中枢神経型など重い病型があり、早期診断と抗ウイルス薬の治療が不可欠です。妊娠中にヘルペス症状が出たら、産科で必ず相談しましょう。

 

出生後も、周囲の大人の唇の水ぶくれからうつることがあるため、症状がある間は濃厚な接触は控えてください。

目にうつる「角膜ヘルペス」に注意

患部に触れた手で目をこすると、目にウイルスが入ることがあります。ただし、こどもで初感染の最初の症状として角膜ヘルペスが起こるのはまれで、多くは再発時に見られます。心配だからといって無症状のうちから受診する必要は基本的にありません。ただし、異変に気づいたらすぐ相談するようにしましょう。

うちのこども、もしかしたらヘルペスかもと迷ったら皮膚科を受診しよう

ヘルペスはつらそうに見える一方で、適切に対応すればしっかり治る病気です。初めての発症、6歳未満、発熱やぐったりが強い、食べられない・飲めない、皮疹が広がる、目の症状がある…こうした場合は早めに皮膚科しましょう。

忙しくて通院する時間がない方にはオンライン診療もおすすめ

「仕事が忙しくて受診の時間がとれない」「子どもを連れての移動が難しい」…そんなときには、オンライン診療を活用しましょう。緊急性が疑われる症状など状況に応じて、医師の判断で対面診療へ切り替わることもあります。

オンライン診療とは

オンライン診療について

オンライン診療は、インターネットに接続できるスマートフォンやパソコンを使って、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオ通話を通して医師と直接相談ができ、症状の説明や皮膚の状態の確認、診断、必要に応じた薬の処方までを、すべてオンラインで完結できます。

SOKUYAKUとは

SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をアプリでよりスムーズに行える便利なサービスです。お気に入りのクリニックや薬局を登録できるだけでなく、お薬手帳のデジタル管理も可能です。

 

全国どこに住んでいても、最短で当日または翌日に処方薬を受け取れます。また、操作に不安がある方には専門スタッフがサポートしてくれるため、初めての方でも安心して利用できます。

オンラインで受診できる医療機関を探す⇒

まとめ

こどものヘルペスは、症状が軽くても感染力があり、家庭内や園・学校で広がるおそれがあります。適切な対応を早めに行えば、多くは数日〜2週間ほどで回復しますが、重症化や合併症を防ぐためにも、気になる症状があれば早めに皮膚科で相談することが大切です。

家族間の濃厚な接触を控える、タオルや食器を共有しないといった日常の小さな工夫が、感染予防に役立ちます。正しい知識とタイミングの良い受診で、お子さんとご家族の健康を守りましょう。

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ママ・パパが知っておきたい「こどものヘルペス」対処法のイメージ

「口のまわりに小さな水ぶくれ」「発熱して食べたがらない」
その症状は、風邪や口内炎ではなく“ヘルペス”の可能性があります。ヘルペスはウイルスが原因の感染症です。免疫がまだ整っていない子どもはかかりやすく、家族や友だちなど身近な人からうつってしまうことも少なくありません。
本記事では、子どもに多いヘルペスの種類や主な症状、受診や治療の流れ、登園・登校の目安、そして家庭でできる予防策までを、皮膚科医師の監修のもとわかりやすく解説します。

こどものヘルペスってどんな病気?

こどものヘルペスは「単純ヘルペスウイルス(HSV)」が原因で、口の中や唇、皮ふに小さな水ぶくれやただれができ、痛みや発熱を伴う感染症です。初めて感染したときは症状が強く出やすく、乳幼児では歯ぐきが赤く腫れて口内に複数の潰瘍ができる「ヘルペス性歯肉口内炎」になりやすいのが特徴です。

 

一度体に入ったウイルスは神経に潜んで静かになりますが、疲れや寝不足、発熱、強い日差しなどをきっかけに再び活動し、唇の縁に水ぶくれが出る「口唇ヘルペス」として繰り返すことがあります。多くは自然に回復しますが、痛みが強いときや水分がとれないときは治療で楽になります。

単純ヘルペスウイルスの種類

単純ヘルペスウイルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり、どちらも皮ふや粘膜に感染します。こどもの口のトラブルに関わることが多いのはHSV-1です。

 

初感染では発熱とともに口の中全体に小さな潰瘍が広がることがあります。いずれの型も一度感染すると神経節に潜伏し、体調が崩れたときに同じ場所を中心に再発しやすいという性質を持っています。

こどもに多い理由

生後しばらくはお母さんから受け取った抗体が守ってくれますが、月齢とともにその効果は薄れ、1〜3歳ごろに初感染が増えます。さらに、こどもは手を口や目に触れやすく、家族とのスキンシップも多いことから、接触の機会が多い生活様式が感染のきっかけになりやすいのが特徴です。

なぜこどもはヘルペスにかかりやすいの?

ヘルペスは空気中をただよってうつる病気ではなく、ウイルスが付いた手や唾液、水ぶくれの中身が皮膚や粘膜に触れることで広がります。こどもは手を口や目、鼻にしょっちゅう触れるうえ、よだれが多い時期も長く続くため、ウイルスが“口→手→別の場所”へ移動しやすい環境がそろっているのです。

 

大人よりも皮膚のバリア機能が未熟で、目立たない小さな傷からもウイルスが入りやすいことも、かかりやすさに関係しています。さらに、ヘルペスは症状が出ていない時でも唾液に少量のウイルスが出ていることがあり、「気づかないうちにうつしてしまう・もらってしまう」ことが起こりやすいのが特徴です。

手・唾液・水ぶくれ——接触で広がる仕組み

感染の出発点は、唇や口内にできた水ぶくれや、その周りの唾液です。水ぶくれの中にはウイルスが多く含まれ、触れた手指に移ったウイルスが、同じ子の目や鼻、口に運ばれると新たな部位で増殖します。

 

兄弟や友だちの肌・粘膜に直接触れることでも、同じことが起こります。近くにいるだけでは感染しませんが、至近距離でのキス、唾液が物を介して移動すると感染のきっかけになります。親や保育者の口唇ヘルペスが再発している時期は、とくに注意が必要です。

 

指しゃぶりの習慣があると、唇のウイルスが指先に移り「ヘルペス性ひょう疽」として指が腫れて痛むこともあります。逆に、入浴で同じ湯船に入る、会話で少し離れて話す程度では、感染のリスクは高くありません。

家の中・保育園で起こりやすい場面

家庭では、食事やおやつの時間に食器や飲み物を分け合う、同じタオルで口元や手を拭く、よだれのついたおもちゃを順番に使う、といった“何気ない共有”が感染のきっかけです。眠い時間帯は指しゃぶりや頬ずりが増え、唇の水ぶくれに触れた手で目をこすることで、目のトラブルが起きることもあります。

 

保育園では、おもちゃの回し使いや集団での食事、着替えやトイレ介助など密接な関わりが多く、同じコップやタオルの共用が続くと広がりやすくなります。対策は、患部をマスクや絆創膏で覆って触れにくくすること、食器やタオルを個別に分けること、遊んだあとのおもちゃを拭き上げること、そして手洗いをこまめに行うことです。

 

大人に再発がある時期は、赤ちゃんや幼児へのキスを控え、患部を触った手で目や口に触れないよう意識するだけでも、家庭内の感染リスクを大きく下げられます。

「それ、ヘルペスかも?」こどもに出やすいサイン

感染から症状が出るまでの潜伏期間はおよそ2〜12日です。症状が出ないまま終わることも珍しくありませんが、出る場合は痛みを伴う水ぶくれやただれ、発熱、ぐったり感、頸のリンパ節の腫れなどが見られます。

ヘルペス性歯肉口内炎の特徴と経過

初感染で起こりやすく、1〜3歳に多い病気です。歯ぐきが赤く腫れて出血しやすくなり、口の中や唇、舌、のどの奥に小さな口内炎がたくさん現れます。

 

高熱やよだれ、痛みで食べたり飲んだりできなくなることがあり、脱水に注意しましょう。多くは1〜2週間で回復しますが、初感染では2〜3週間かかることもあります。

口唇ヘルペスのはじまり方と治り方

再発時に多いのが口唇ヘルペスです。唇の縁がチクチク・ムズムズする前ぶれののち、小さな水ぶくれが集まってでき、やがてかさぶたを作って治っていきます。強い全身症状は少なく、8〜10日ほどで落ち着くのが一般的です。

 

日焼けや風邪、疲れなどが引き金になりやすく、前ぶれを感じた早い段階(目安として出始め〜3日以内)で抗ウイルス薬を始めると、治るまでの時間や痛みを抑えられます。

 

口唇ヘルペスについて詳しく解説

アトピー肌で注意が必要な重症型

アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱いと、ヘルペスが広がって「カポジ水痘様発疹症」と呼ばれる重い状態になることがあります。発熱や強いだるさを伴い、同じ形の小さな水ぶくれが顔や体に一気に増え、ただれに変わることもあります。目の周りに及ぶと角膜の合併症の危険があり、早期の抗ウイルス薬による治療が必要です。

似ているけど違う病気との見分け方

見た目だけでは区別がつきにくいこともありますが、出る場所や季節、歯ぐきの腫れの有無、全身症状の出方に注目すると、ヘルペスかどうかの見当がつきます。自己判断で長く様子を見るより、迷った時は早めに受診して確認しましょう。

ヘルパンギーナとの違い

ヘルパンギーナは夏に多く、のどの奥(口蓋弓や扁桃)に水ぶくれが集中します。ヘルペス性歯肉口内炎は口の中全体に口内炎が広がり、歯ぐきが赤く腫れるのが特徴です。初期は紛らわしいことがあるため、迷ったら受診してください。

その口内炎、本当にヘルペス?

口内炎といっても原因はさまざまです。

 

アフタ性口内炎は、頬の内側や唇の裏などの“やわらかい場所”に白っぽい円形の潰瘍が少数でき、歯ぐきの腫れや強い発熱は伴いにくいのが一般的です。

 

手足口病は、口内の痛みに加えて手のひら・足の裏・おしりに発疹が出ることが多く、流行期には候補に挙がります。

 

唇の外側にできる黄色いかさぶた主体の病変は、細菌によるとびひ(伝染性膿痂疹)かもしれません。ヘルペスの透明感のある水ぶくれとは経過が異なります。

 

白いミルクかすのような斑点がこすっても取れにくい場合は、カンジダ性口内炎が考えられます。

こどものヘルペスはどうやって治す?

多くは自然に治りますが、痛みや発熱を和らげ、回復を早めるための治療が役立ちます。重症化や脱水を防ぐためにも、適切なタイミングで受診しましょう。

医師による診断と検査

典型例では診察だけで診断できます。はっきりしない場合や重症では迅速検査などで確認することがあります。再発の口唇ヘルペスは、これまでの経過から診断することが一般的です。

抗ウイルス薬はいつ・どれくらい効く?

内服の抗ウイルス薬は、発疹が出てからできるだけ早く開始するほど効果が高く、痛みや発熱、治るまでの期間の短縮が期待できます。軽症で水ぶくれが少ない場合は外用薬で様子を見ることもありますが、原則として内服と外用を同時には処方しません。

 

症状が強い、脱水が心配、月齢が低い、アトピー肌で急に広がっている、目の症状がある…この場合は内服や点滴による治療が検討されます。

痛み・発熱への対処と水分・食事のコツ

発熱や痛みには、年齢と体重に合った解熱鎮痛薬を医師・薬剤師の指示で使います。アスピリンは小児では使用を避けてください。

 

口内がしみる時期は、冷たいゼリーやプリン、ヨーグルト、なめらかなスープ、アイスや経口補水液を少量ずつこまめに与えると飲み込みやすくなります。酸っぱい・辛い・熱い・塩分の強い食べ物は痛みを強めるため控えるようにしましょう。

 

授乳中の赤ちゃんは、短時間で回数を増やすと負担が少なく、哺乳びんの乳首がしみる場合はスプーンやコップをつかっても良いかもしれません。

治るまで待っても大丈夫?受診の判断ポイント

「そのうち治るのか」「薬が必要なのか」迷ったら、症状の強さと水分摂取の様子を目安にしましょう。

薬で治す場合と自然に治る場合

ヘルペスは多くが1〜2週間で自然に回復します。初感染では2〜3週間長引くこともあります。1日で一気に治す方法はありませんが、早めの内服は回復を助けます。軽い水ぶくれだけなら塗り薬で経過を見ることもあります。

早めに受診すべきサイン

・水分がほとんどとれない
・尿の回数が減る
・尿の色が濃い
・ぐったりして反応が乏しい
・高熱が続く(おおむね3日以上)
・強い痛みで眠れない

 

こうした状態の場合は受診が必要です。

 

また、“目のサイン”が出ている場合は眼科を早めに受診しましょう。

 

・目を痛がる
・まぶしがる
・涙が増える
・目の充血が強い
・目をこすったあとに違和感が続く

 

アトピー性皮膚炎があり赤みや水ぶくれが急に広がる、顔や体に同じ形の発疹が一面に出る、乳幼児(特に3か月未満)で発熱がある、けいれんが起きた…これらはすぐに医療機関へ相談してください。迷うときは「水分がとれているか」「機嫌や活動性が保てているか」を基準にし、少しでも不安があれば遠慮なく受診するのが安全です。

登園・登校はいつから?周囲への配慮と基準

単純ヘルペス感染症は学校保健安全法の第三種に分類されています。対応は園や学校で異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。

発熱や強い症状があるとき

発熱や全身症状がある間は無理をせず休み、治療と安静を優先してください。初感染は重くなりやすいため、とくに注意が必要です。

元気になっても注意したい

熱が下がり、普段どおり食事や水分がとれるなら登園・登校の目安になります。唇の水ぶくれはマスクや絆創膏で覆い、手洗いをこまめに行い、タオルや食器、おもちゃの共用は避けましょう。施設によって独自の基準があるため、最終的には園・学校の指示に従ってください。

家でできる!こどものヘルペス感染予防

ワクチンはまだ実用化されていないため、毎日の生活の工夫が一番の予防です。完璧に防ぐのは難しくても、リスクを下げることはできます。

家族内でうつさないための生活習慣

コップやスプーン、タオル、リップクリームの共用を避け、よだれのついたおもちゃは拭き取りや洗浄しましょう。大人に口唇ヘルペスが出ている時期は、赤ちゃんやこどもへのキスを控え、患部を触った手で目や口を触らないようにしてください。こども自身の手洗い習慣づけも効果的です。

再発を防ぐための体調管理のコツ

寝不足やストレス、強い日差し、発熱後などは再発のきっかけになります。十分な休養、日焼け対策、スキンケア、とくにアトピー肌の保湿を心がけましょう。再発を繰り返す年長のお子さんや大人では、医師の指示で早めに内服を開始する方法が提案されることもあります。

赤ちゃんや妊娠中の方への影響も知っておこう

新生児や妊娠中の感染は重症化のリスクがあるため、家族みんなで正しい知識を共有しておくことが大切です。

新生児や乳児が感染するときのリスク

妊婦さんに性器ヘルペスがある場合、分娩時に赤ちゃんへ感染することがあります。新生児ヘルペスは全身型や中枢神経型など重い病型があり、早期診断と抗ウイルス薬の治療が不可欠です。妊娠中にヘルペス症状が出たら、産科で必ず相談しましょう。

 

出生後も、周囲の大人の唇の水ぶくれからうつることがあるため、症状がある間は濃厚な接触は控えてください。

目にうつる「角膜ヘルペス」に注意

患部に触れた手で目をこすると、目にウイルスが入ることがあります。ただし、こどもで初感染の最初の症状として角膜ヘルペスが起こるのはまれで、多くは再発時に見られます。心配だからといって無症状のうちから受診する必要は基本的にありません。ただし、異変に気づいたらすぐ相談するようにしましょう。

うちのこども、もしかしたらヘルペスかもと迷ったら皮膚科を受診しよう

ヘルペスはつらそうに見える一方で、適切に対応すればしっかり治る病気です。初めての発症、6歳未満、発熱やぐったりが強い、食べられない・飲めない、皮疹が広がる、目の症状がある…こうした場合は早めに皮膚科しましょう。

忙しくて通院する時間がない方にはオンライン診療もおすすめ

「仕事が忙しくて受診の時間がとれない」「子どもを連れての移動が難しい」…そんなときには、オンライン診療を活用しましょう。緊急性が疑われる症状など状況に応じて、医師の判断で対面診療へ切り替わることもあります。

オンライン診療とは

オンライン診療について

オンライン診療は、インターネットに接続できるスマートフォンやパソコンを使って、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオ通話を通して医師と直接相談ができ、症状の説明や皮膚の状態の確認、診断、必要に応じた薬の処方までを、すべてオンラインで完結できます。

SOKUYAKUとは

SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をアプリでよりスムーズに行える便利なサービスです。お気に入りのクリニックや薬局を登録できるだけでなく、お薬手帳のデジタル管理も可能です。

 

全国どこに住んでいても、最短で当日または翌日に処方薬を受け取れます。また、操作に不安がある方には専門スタッフがサポートしてくれるため、初めての方でも安心して利用できます。

まとめ

こどものヘルペスは、症状が軽くても感染力があり、家庭内や園・学校で広がるおそれがあります。適切な対応を早めに行えば、多くは数日〜2週間ほどで回復しますが、重症化や合併症を防ぐためにも、気になる症状があれば早めに皮膚科で相談することが大切です。

家族間の濃厚な接触を控える、タオルや食器を共有しないといった日常の小さな工夫が、感染予防に役立ちます。正しい知識とタイミングの良い受診で、お子さんとご家族の健康を守りましょう。

コメント 本稿は、こどもの単純ヘルペスについて臨床像・受診目安・登園基準・家庭内予防までを過不足なく整理した実践的な内容です。初感染での脱水や眼症状、アトピー合併例、新生児曝露のリスクを適切に強調している点も評価できます。補足として、第三種感染症では最終判断が園・学校に委ねられること、2歳未満のマスク着用には安全面の配慮が必要であることを併記できると、より実務に即したガイダンスになります。再発時は前駆期からの抗ウイルス薬開始が有用である点の明示も有益です。

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2.

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監修医師 松澤 宗範
青山メディカルクリニック院長/慶応義塾大学病院形成外科

皮膚科, 形成外科, 総合内科, 美容外科, 美容皮膚科, 先端医療, 再生医療

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
青山メディカルクリニック院長/慶応義塾大学病院形成外科 皮膚科, 形成外科, 総合内科, 美容外科, 美容皮膚科, 先端医療, 再生医療 2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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