帯状疱疹は、見た目が治って終わりじゃないかも。あとに残す痛みの後遺症とは

痛みが消えない…それは「帯状疱疹の後遺症」かもしれません

帯状疱疹は、ピリピリとした痛みを伴う赤い発疹が特徴の病気です。中には、発疹が治った後も強い痛みや違和感が長引く方がいます。この残る痛みが帯状疱疹の後遺症です。

「治ったのに痛い」はなぜ？帯状疱疹後神経痛（PHN）

帯状疱疹は、治療を受けて皮膚の症状が治まっても、「痛みが残ったまま…」という方は少なくありません。治ったはずなのに続く痛みが「帯状疱疹後神経痛（PHN）」です。

皮膚が治っても、神経のダメージは残る

帯状疱疹は「水ぼうそう」と同じウイルスが原因です。一度感染すると、ウイルスは神経の中に潜んだまま何十年も静かにしています。しかし、年齢を重ねたり、疲れやストレスで免疫力が落ちると、ウイルスが再び活動を始め、神経に沿って炎症を起こすのです。これが帯状疱疹です。治療でウイルスを抑えても、神経には強いダメージが残りやすく、これが皮膚が治った後も痛みとして感じ続ける大きな理由です。

なぜPHNは起こる？原因は神経の深いダメージ

帯状疱疹で痛みが残るかどうかは、どれだけ神経が傷ついたかが大きく関わっています。神経の数が減ったり、痛みを抑える脳の働きが弱まると、ちょっとした刺激でも強い痛みを感じやすくなってしまいます。また、年齢が高いほど神経の修復力も落ちるため、PHNは高齢者ほど起こりやすいのです。発症を防ぐには、帯状疱疹が疑われたらできるだけ早く治療を始めることが重要です。

痛みだけじゃない…かゆみやしびれも

症状は「焼けるような痛み」や「電気が走るような鋭い痛み」と表現されます。衣服に触れるだけでも激しい痛みになることがあり、眠れないほどつらい方もいます。また、痛みだけでなく「かゆい」「しびれて感覚が変わった気がする」という違和感が残ることも少なくありません。

帯状疱疹のかゆみについて詳しく解説

帯状疱疹の痛みについて詳しく解説

どんな方がなりやすい？PHNのリスク

年齢が上がるにつれて帯状疱疹からPHNへ移行しやすく、高齢者ほどリスクが高いと考えられています。その他には、帯状疱疹を発症したときに皮膚の症状が重かったり、強い痛みがあったり、皮膚に症状が出る前から神経の痛みがあった場合も、PHNを発症しやすいとされています。また、免疫力が低下する疾患を持っている方では、症状が広がりやすく、感覚異常が強く、アロディニア（触れるだけで痛む症状）も激しくなる傾向があるため注意しましょう。

帯状疱疹の後遺症の痛みに効くのは？PHNの治療

PHNの治療は複数の方法があり、症状に合わせて組み合わせて行います。

まずは薬で痛みをコントロール

治療の中心は薬物療法です。神経の痛みを抑えるための専用の薬がいくつかあります。たとえば、リリカやタリージェは、神経の興奮を抑える薬です。痛みを和らげる効果が期待できます。三環系抗うつ薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬も、脳の痛みを抑える仕組みを助けてくれます。

帯状疱疹に使用する薬について詳しく解説

薬だけじゃない！注射・理学療法・手術

薬だけでは痛みが十分に抑えられない場合、神経ブロックと呼ばれる注射が行われることもあります。痛みの元となる神経に直接麻酔薬を注射して、一時的に痛みを感じなくする方法です。

また、痛みで体を動かすことが怖くなると筋力が落ちてしまうため、理学療法でストレッチや軽い運動を取り入れると痛みの軽減や生活の質の向上に役立つことがあります。これらの方法でも痛みが続く場合には、手術が検討されることもあります。

いつまで続く？PHNの痛み

帯状疱疹後神経痛の痛みはいったいどのくらい続くのでしょうか。アイスランドで行われた長期の調査によると、痛みの続く期間は年齢によって大きく異なることが分かっています。

60歳未満の方

発疹が治ってから3ヶ月以上痛みが続く人はごくわずか（約2%）で、1年以上続くケースはほとんどありません。

60〜69歳

約10人に1人が3ヶ月以上痛みを感じ、さらに約20人に1人は1年以上続くことがあります。

70歳以上

3ヶ月以上続く方は約3割、1年以上続く方は約15%に増えます。

こうしてみると、年齢が高いほどPHNが長引きやすいことがわかります。ただし、長く続く方でも「ずっと強い痛みが続く」わけではありません。実際には、3ヶ月目で強い痛みを感じていても、半年〜1年ほどで徐々に痛みが弱まっていく方がほとんどです。

中には数年単位で痛みが残る場合もありますが、多くの場合、日常生活に大きな支障をきたすほどの強い痛みは時間とともに軽くなると報告されています。

参考：Prevalence of postherpetic neuralgia after a first episode of herpes zoster: prospective study with long term follow up

神経だけじゃない！帯状疱疹が引き起こすその他の後遺症

帯状疱疹の後遺症は、神経痛だけではありません。発疹ができた場所によっては、目や耳に影響を及ぼすことがあります。

見えにくい、聞こえにくい…目や耳に現れる後遺症

【医師監修】おでこやまぶたが痛い？それ、目の帯状疱疹かもしれません

耳が痛いのは帯状疱疹かも？耳帯状疱疹（ラムゼイ・ハント症候群）とは

顔や頭に帯状疱疹ができた場合、目の合併症として角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎が起こることがあります。これにより視力が低下したり、最悪の場合は失明に至ることもあるため、早めの治療が大切です。

また、耳の近くに発疹ができると顔面神経麻痺が起こることがあり、顔の筋肉が動かしにくくなる、味覚が変わる、涙が止まらないといった症状が残ることがあります。聴力低下やめまい、耳鳴りといった耳の後遺症も無視できません。

まれだけど怖い…ウイルスが脳に到達すると

非常にまれではありますが、帯状疱疹のウイルスが脳に影響を及ぼすこともあります。ウイルス性髄膜炎や脳炎を引き起こすと、激しい頭痛や吐き気が現れ、重症化すると命にかかわることもあります。たとえ一命をとりとめても、脳のダメージが大きければ後遺症が残る可能性があるため、頭痛や意識障害がみられた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

帯状疱疹の後遺症を防ぐには？いちばんの対策は「予防」

帯状疱疹後神経痛を含むさまざまな後遺症を防ぐためには、そもそも帯状疱疹にかからないことが最も重要です。帯状疱疹は免疫力の低下がきっかけで発症するため、普段から十分な睡眠と栄養、適度な運動を心がけ、ストレスをためない生活を送ることが大切です。また、50歳以上の方は帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症リスクや後遺症のリスクを大幅に下げられます。

帯状疱疹かもと思ったらスピードが大切！はやく皮膚科を受診しよう

もし帯状疱疹になってしまった場合でも、早めに治療を始めることでPHNの発症を防げる可能性が高まります。「帯状疱疹かな？」と思ったら、自己判断せずに早めに皮膚科を受診しましょう。

忙しくて通院する時間がない方にはオンライン診療もおすすめ

帯状疱疹後神経痛は、長期間にわたって治療が必要になることがあり、なかなか通院の時間が取れない方も多いのではないでしょうか。そんな方にとって、オンライン診療は強い味方です。

オンライン診療とは

オンライン診療について

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まとめ

帯状疱疹は、皮膚の発疹が治まっても安心とは限りません。神経に残ったダメージが原因で、「帯状疱疹後神経痛（PHN）」などの後遺症を引き起こすことがあります。特に50歳以上の方は注意が必要で、長引く痛みやしびれが日常生活に大きな支障をきたすこともあります。また、発症した部位によっては目や耳の機能に影響が出たり、まれに脳にまで症状が及ぶ場合もあります。

後遺症を防ぐためには、何よりも早期の治療が重要です。「いつもと違う痛みがある」「発疹が出てきたかも」と感じたら、自己判断せずにできるだけ早く皮膚科を受診してください。