認知行動療法とは|セルフのやり方・具体例と受診の目安を解説【医師監修】
この記事の結論
- 認知行動療法(CBT)は、認知と行動に働きかける心理療法で、うつ病や不安障害など多くの精神疾患の治療に用いられています。
- 中心となる技法は、自動思考の根拠と反証を検証して認知のくせを修正する「認知再構成法」と、楽しめる活動を増やす「行動活性化」です。
- セルフヘルプでも、つらい場面と自動思考を書き出し、根拠と反証を検証して考え方を修正する3ステップで練習できます。
- 気分の落ち込みや強い不安感が2週間以上続く、日常生活に支障が出ているときなどは、セルフで抱え込まず医師に相談しましょう。
認知行動療法(CBT)とは、ものの受け取り方である認知と、行動に働きかけて気持ちを楽にしていく心理療法です。うつ病や不安障害、パニック障害、不眠症など多くの精神疾患で効果が示され、医療機関の精神療法として用いられるほか、本を使ったセルフヘルプとしても実践されています。
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認知行動療法(CBT)とは|認知と行動に働きかける精神療法
認知行動療法は、認知療法と行動療法を統合して発展した心理療法(精神療法)の一つです。認知療法は自動思考や認知のくせに、行動療法は行動のパターンに働きかける精神療法で、CBTは両者の技法を組み合わせます。
認知とは、出来事をどう受け取り、どう考えるかという、ものの受け取り方のことです。強いストレスが続くと、認知は悲観的に偏りやすくなり、つらい気持ちから抜け出せないこころの状態に陥ります。CBTが目指すのは、無理に楽観的になることではありません。悲観的な思考と現実とのずれに気づき、現実的でしなやかな考え方を取り戻して、目の前の問題に対処できるようにすることです。
認知・気持ち・行動のつながり(基本的な仕組み)
同じ出来事でも、認知が違えば、気持ちも行動も変わります。たとえば相手の返信が遅いとき、「嫌われた」と悲観的に受け取れば不安感が強まり、連絡を避ける行動につながります。「忙しいのだろう」と受け取ることができれば気持ちは楽になりやすいでしょう。CBTでは、認知・気持ち・行動・身体の反応が互いに影響し合うと考え、悪循環を引き起こしている認知のくせと行動に働きかけて、その流れを変えていきます。
「自動思考」と「認知のくせ」とは
自動思考とは、気持ちが大きく動揺したときなどに、頭に自動的にふと浮かぶ考えのことです。うつ状態のときや強いストレスを受けているときは、自動思考が悲観的に偏り、現実と食い違った受け取り方が生じやすくなります。こうした思考の偏りや認知のくせが、抑うつ感や不安感を引き起こす一因になります。代表的な認知のくせは次のとおりです。
- 白黒思考:物事を両極端で捉える
- 過度の一般化:一度の失敗を「いつもこうだ」と考える
- 心の読みすぎ:根拠なく相手の気持ちを決めつけてしまう
- 自分への関連づけ:根拠なく自分のせいだと考える
認知療法では、浮かんだ自動思考に焦点をあて、その根拠と反証を検証しながら、認知のくせを現実的でバランスの取れた考え方へ修正していきます。
薬物療法との違い
CBTは、治療者と患者がお互いに協力して問題を整理し、技法の練習とホームワークを通じて、思考と行動のパターンに働きかける精神療法です。薬物療法は、症状を和らげる薬を用いる治療で、どの薬を用いるかは医師が判断します。うつ病や不安障害では、薬物療法と、CBTなどの精神療法を組み合わせる場合もあります。
認知行動療法の対象となる症状|うつ病・不安障害などの精神疾患
この心理療法は、うつ病や不安障害をはじめ、不眠症、摂食障害など多くの精神疾患の治療で用いられています。効果の現れ方には個人差があります。
効果が実証されている精神疾患と重点を置く技法
認知療法・認知行動療法は、うつ病や不安障害(パニック障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害など)、不眠症、摂食障害などの多くの精神疾患に効果があることが実証され、特に欧米では広く用いられています。精神疾患ごとに、重点を置く技法は異なります。
- うつ病:行動活性化で日常生活の活動を増やし、認知再構成法で悲観的に偏った自動思考を修正する
- パニック障害:発作への恐怖を引き起こす認知を見直し、避けてきた場面や身体の感覚に段階的に慣れていく
- 社交不安障害:「人前で失敗したら笑われる」といった思考を検証し、人前に出る場面へのエクスポージャーを重ねる
- 強迫性障害:確認や手洗いなどの強迫行為を控えながら、不安感に向き合う練習をする
- 不眠症:睡眠についての思い込みと、眠りを妨げる生活習慣を見直す(不眠症の認知行動療法)
- 摂食障害:食事や体型についての認知のくせと、食事、過食などの行動のパターンに働きかける
「考え方を否定される治療」ではない|向いている人
CBTは、考え方そのものを否定する治療ではありません。治療者と患者がお互いに協力しながら、偏った受け取り方に気づき、現実的で柔軟な見方を探していく共同作業です。次のような方は、取り組みやすい状態といえます。
- ストレスがかかると、同じ悲観的な自動思考が何度も浮かぶ
- パニック障害や社交不安障害のように、不安感から避けている場面や行動が増えている
- うつ病や不安障害の薬物療法を受けていて、心理療法にも取り組みたい
- ホームワークの練習に、無理のない範囲で取り組める
うつ状態が重いときは、セルフで無理を重ねず、休養と治療を優先してください。
認知行動療法の主な技法とやり方|進め方をステップで解説
CBTは、複数の技法を症状や状態に合わせて組み合わせる心理療法です。医療機関では、患者の悩みや問題点、強みや長所を洗い出して治療方針を共有し、技法の練習とホームワークを重ねながら治療の終結へ進みます。
認知再構成法(コラム法)の進め方
認知再構成法は、自動思考の根拠と反証を検証し、認知のくせを修正していく技法です。思考を書き込む表(コラム)を使うため、コラム法とも呼ばれます。進め方は次の5ステップです。
- つらくなった状況を書く
- 浮かんだ自動思考と、気持ちの強さ(0〜100)を書く
- その思考を支える根拠を書く
- その思考と食い違う事実(反証)を書く
- 根拠と反証を振り返り、バランスの取れた考え方を書く
行動活性化|楽しめる活動・やりがいのある活動を増やす
行動活性化は、うつ病やうつ状態で減りがちな活動を無理のない形で増やし、気分に働きかける技法です。日常生活を振り返り、日常的に行う活動、優先して行う活動、楽しめる活動ややりがいのある活動を書き出し、優先順位をつけて取り組みます。最初は10分の散歩や、好きな音楽を1曲聴くといった小さな活動で十分です。楽しめる活動や人と関わる体験が増えると、自信やコントロール感覚を取り戻すきっかけになります。
エクスポージャー・問題解決技法・リラクゼーション
エクスポージャーは、不安感が強まる場面に段階を踏んで少しずつ向き合う技法で、パニック障害や社交不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害などで用いられます。心的外傷後ストレス障害や強迫症状へのエクスポージャーは専門家のもとで行うことが推奨されます。問題解決技法は、症状に影響している問題に焦点をあてて解決策を比べて試し、問題解決の力を高める技法です。リラクゼーションは、呼吸や筋肉の緊張をゆるめる練習で、不安障害や不眠症でも用いられます。
ホームワークで日常生活に取り入れる
この療法は、面接の時間だけでは完結しません。面接で学んだ技法を、ホームワークとして日常生活で練習することが不可欠です。自動思考の根拠と反証を記録し、次の面接で振り返り、やり方を修正する。この繰り返しで、思考のくせに気づく力が身につきやすくなります。
セルフでできる認知行動療法のやり方|今日から試せる具体例
ここでは、認知療法・認知行動療法の原則に沿った、紙とペンで練習できるセルフヘルプの3ステップを紹介します。
ステップ①つらい気持ちと状況を書き出す(セルフモニタリング)
まず、気持ちが動揺した場面に焦点をあて、日付・状況・気持ち・浮かんだ自動思考を書き出します。気持ちに0〜100の点数をつけると、変化を振り返りやすくなります。
記入例:月曜の朝、上司へのメールに返信がない。不安80。自動思考「怒らせたかもしれない」。
1日1場面から始めれば十分です。
ステップ②自動思考の根拠と反証を検証する(記入例つき)
次に、書き出した思考に焦点をあて、事実に照らして検証します。
自動思考:怒らせたかもしれない
根拠:返信が来ない
反証:上司は午前中に会議が多い/返信が遅れて怒られたことはない/メールに失礼な点はない
大切なのは、その思考が正しいか間違いかを決めつけることではなく、現実と食い違う認知のくせがないかを確かめることです。反証が見つからないときは、無理に探さなくて構いません。
ステップ③バランスの取れた思考に切り替える
根拠と反証を振り返ったら、両方を踏まえて認知のくせを修正します。「会議で忙しいだけの可能性が高い。午後になっても返信がなければ、短く確認すればよい」と書き直し、気持ちの点数をもう一度つけます。80が50になるといった変化を確かめるのが目的で、点数が動かなくても練習の一回分です。うつ状態で考える元気が出ないときは、10分でできる行動活性化から始めても構いません。
セルフヘルプで気をつけたいこと・無理を続けるリスク
セルフヘルプは手軽に始められる一方で、限界もあります。うつ症状が重いときに自動思考の根拠と反証を書き続けると、書くこと自体がつらくなり、自分を責める材料になる場合があります。後述する受診のサインがあるときは、セルフヘルプを中断し、早めに受診してください。死にたい気持ちが強いときは、すぐに医療機関や公的な相談窓口に連絡してください。
認知行動療法を学べるおすすめの本・活用サイト
CBTを自分で学ぶなら、心理療法の専門家が監修した本や公的機関の資料から始めると、内容が偏りません。
セルフヘルプに役立つ本の選び方
- 著者や監修者が、精神科医や臨床心理士・公認心理師などの専門家である
- 認知療法・認知行動療法に基づき、自動思考の根拠と反証を書き出すワークや行動活性化を、ホームワークのように練習できる
- 効果を断定せず、うつ状態が重いときは受診を勧めている
信頼できる公的サイト・活用ツール
厚生労働省のホームページでは、うつ病の認知療法・認知行動療法について、患者向けの資料が公開されています。治療の代わりではなく、技法の練習を手助けする資料である点にご注意ください。
セルフで症状が和らがないときは?専門家に相談する目安
セルフヘルプを続けても症状が和らがない、日常生活に支障が出ているときは、精神療法や薬物療法を受けられる専門家に相談するタイミングです。
こんなサインが続くときは早めの受診を
- 気分の落ち込み(うつ状態)や強い不安感が2週間以上続き、仕事や家事など日常生活に支障が出ている
- 眠れない、または眠りすぎる状態が続く
- 食欲が大きく変わった
- セルフで根拠と反証を書き出しても、悲観的に考えるのをやめられない
- パニック発作や強い不安感のために、外出や人前に出る場面を避けている
- 死にたい気持ちが浮かぶ(すぐに医療機関や公的な相談窓口へ)
これらは受診の目安で、精神疾患の診断ではありません。診断や治療方針は、診察した医師が判断します。
医療機関で受ける認知行動療法・治療の流れ
医療機関では、医師が患者の症状や生活の状況を聞き取り、薬物療法や精神療法などの治療方針を検討します。セルフヘルプと違い、診断や薬の処方を受けられ、症状が重いときも治療を受けられます。保険診療で認知療法・認知行動療法を行う医療機関は限られるため、事前に確認すると安心です。通院のハードルが高いときは、まず症状を医師に相談する方法もあります。
※診断書の発行可否および発行時期は、医師の診察・判断によります。
オンライン心療内科SoiMe(ソイミー)でスマホから相談する
通院の時間や人目が気になる方は、スマホで受診できるオンライン診療も選べます。SoiMeは、うつ病や不安障害などのこころの不調を、通院せずに医師へ相談できるオンライン心療内科です。
通院不要・スマホで完結する診療の流れ
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- 希望の日時を選ぶ
- スマホで医師の診察を受ける
- お薬や診断書を受け取る(最短翌日配送)
処方の有無や薬の種類は、医師が診察のうえ判断します。
診断書の即日発行・傷病手当金の申請サポート
SoiMeは初診から診断書の即日発行に対応し、休職時の傷病手当金の申請もサポートしています。発行の可否と記載内容は医師が、傷病手当金の支給は加入している健康保険が判断します。
※診断書の発行可否および発行時期は、医師の診察・判断によります。
認知行動療法に関するよくある質問(FAQ)
Q. 何回・どのくらいの期間で効果が出ますか?
A. 効果が出るまでの回数や期間には個人差があります。面接とホームワークを重ねながら、段階的に進める心理療法です。
Q. 費用や保険適用はどうなっていますか?
A. うつ病などの気分障害、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、神経性過食症で、一定の条件を満たす場合にのみ公的医療保険が適用される場合があります。実施の有無と費用は、受診先に事前に確認してください。本を使ったセルフヘルプの費用は、書籍代などにとどまります。
Q. セルフだけで改善できますか?
A. 軽いつらさへの対処には、セルフヘルプが役立つ場合があります。ただし、セルフだけで改善するとは限りません。重いうつ病や統合失調症、心的外傷後ストレス障害、摂食障害などと診断されている方は、一人だけでは取り組まず、医療機関のもとで精神療法や薬物療法を受けながら進めることが大切です。
まとめ|認知行動療法を理解し、無理なく一歩を踏み出す
CBTは、認知と行動に働きかけ、つらい気持ちへの対処力を育てる心理療法です。自動思考の根拠と反証を検証する認知再構成法や、行動活性化は、セルフヘルプでも試せます。ただし、つらさが強いときや、一人で行っても改善しないときは、抱え込まず医師に相談してください。スマホで相談できるオンライン心療内科という選択肢もあります。
※診断書の発行可否および発行時期は、医師の診察・判断によります。
当コラムの掲載記事に関するご注意点
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