アトピー性皮膚炎が目の周りに出来た場合、合併症に注意!出来る対策は?


この記事を読み終えるのにかかる時間は目安:11分
更新日:2025年04月7日
この記事を読み終える時間は目安:11分

アトピー性皮膚炎が起こりやすい部位
乳児期は頭部や顔に湿疹が出やすく、その後体や手足へと広がります。幼小児期になると首や手足の関節部分を中心に症状が現れ、成人期では主に上半身に皮疹が集中する傾向があります。
おでこや目、口、耳の周辺をはじめ、首や手足の関節の内側など、皮膚が薄くて刺激に弱い部位に現れやすいことが特徴です。
目元は乾燥しやすいため、症状が出やすい
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下と免疫の過剰反応が関係しており、乾燥が進むことで皮膚のバリアがさらに弱まり、外部刺激に敏感になります。その結果、かゆみや炎症が悪化しやすくなるのです。
乾燥しやすい理由には、いくつか要因が考えられます。
肌の水分量の低下
目元の皮膚は頬などと比べて皮脂腺が少ないため、皮脂分泌が少なくなっています。そのため、水分を保持する力が弱く、乾燥しやすい状態になります。また、目元はまばたきや表情の変化によって頻繁に動くため、皮膚への負担が大きくなりやすい部位です。
気温や湿度の変化による影響も大きく、特に冬場は外気の乾燥や暖房による湿度の低下によって肌の水分量が減少しやすくなります。実際の調査によると、目もとの角層水分量は夏に比べて冬に低下します。
また、スキンケアの際に十分な保湿ができていないことも、目元の乾燥の原因です。化粧水をサッと塗るだけでは、目元にしっかりと行き渡りません。適切な保湿ケアを怠ると、水分量が補えず、慢性的な乾燥につながる可能性があります。
メイク、クレンジングの影響
まぶたの皮膚は他の部位に比べて非常に薄く刺激に敏感なため、メイク時に頻繁に触れることで負担がかかりやすくなります。アイラインやマスカラ、アイシャドウに含まれる成分が肌に刺激を与えたり、クレンジング時の摩擦がバリア機能を低下させることがあります。
紫外線や摩擦による刺激
紫外線は肌の水分を保持する機能を損ない、外部刺激を受けやすい状態にするため、目元の乾燥を悪化させる要因となるため、注意しましょう。バリア機能の低下は摩擦によっても起こります。目がかゆいときにゴシゴシ擦ったり、目元を強くマッサージしたりすると、皮膚への負担が増し、乾燥が進む原因になります。
スマホ使用や血行不良
デジタル機器を長時間使用すると、眼精疲労の原因となり目元の血行不良へとつながります。目元の血行不良が続くと、肌の細胞に必要な栄養が十分に届きません。ターンオーバーが乱れやすくなり、古くなった角質細胞が剥がれずに表面に残りやすくなります。保湿成分が生成されにくくなるため、肌のバリア機能が低下し水分が蒸発しやすくなります。
アトピー性皮膚炎の目の周りへの影響
アトピー性皮膚炎は、目の周りにもさまざまな症状を引き起こし、見た目だけでなく目の健康にも影響を及ぼします。
目の周りに現れる症状
アトピー性皮膚炎は、目の周りに赤いまだら模様、湿疹、むくみ、ただれ、かさつきなどの症状を引き起こします。これらは強いかゆみを伴うことが多く、無意識のうちにまぶたをこすったり叩いたりしてしまうかもしれません。
薬による副作用
目元にステロイドを使用する際には注意してください。長期間使用すると眼圧が上昇し、緑内障のリスクが高まる可能性があります。強いステロイドを頻繁に塗布すると、白内障や眼圧上昇の影響が出ることが報告されています。そのため、漫然と強いステロイドを塗り続けることは推奨されません。症状がひどい場合には、弱めのステロイドを使用し、改善後はタクロリムスなどの非ステロイド性の免疫抑制剤に切り替えましょう。
アトピー性皮膚炎による眼合併症
目がかゆくて、無意識のうちに強くこすったり叩いたりしたことはありませんか? 眼球は軟らかく精密にできています。眼球がゆがむほどの強い刺激を与えると、角膜が変形し、円錐角膜や網膜剥離などの取り返しのつかない目の病気につながることがあります。
10〜30歳代では、顔面の皮膚炎が重症化しやすく、頻繁に目をこすったり叩いたりすることで症状が悪化することが多いです。
眼瞼炎
まぶたの皮膚に炎症が生じた状態です。軽度の症状では、皮膚がかさついて赤みが出る程度ですが、かゆみが強いために、無意識にまぶたをこすったり、叩いたりすることで症状が悪化し、まゆ毛やまつ毛が抜けることもあります。さらに、頻繁にこすることで皮膚が厚くなり、慢性的な炎症を引き起こすことが特徴です。
炎症が長引くと、まばたきの機能が低下し、涙の角膜保護作用が損なわれるため、角膜びらんや角膜潰瘍といった深刻な合併症を引き起こすこともあります。
アレルギー性角結膜炎・春季カタル
アトピー性皮膚炎に伴うアレルギー性の結膜疾患をアトピー性角結膜炎と呼びます。目のかゆみ、涙の増加、結膜の厚みや充血、濁りなどが症状です。まぶたの皮膚が厚くなったり、感染を起こしたりすることで、まばたきや涙の角膜保護作用が低下し、点状表層角膜症や角膜びらんといった角膜上皮障害を伴うことがあります。
春から夏にかけて見られる重症のアレルギー性結膜炎が春季カタルです。70%以上の方がアトピー性皮膚炎を持っているとされており、点状表層角膜症、角膜びらん、潰瘍、角膜の混濁、血管侵入などの重度の角膜障害を引き起こし、視力に影響を及ぼすことがあります。まぶたの皮膚炎が治りにくい場合には、重症の角膜炎を発症するケースが多く見られます。
円錐角膜
円錐角膜は、不正乱視を引き起こす非炎症性の疾患です。思春期に発症し、徐々に進行しますが、原因ははっきりとわかっていません。アトピー性皮膚炎の患者に発症する頻度は約0.5%とされていますが、一般人口と比較すると10倍以上の高率で見られます。頻繁に目をこする習慣があることが指摘され、利き手側の目が先に発症したり、重症化しやすい傾向があると報告されています。
白内障
目をカメラに例えると、レンズにあたる部分を水晶体といい、この水晶体が白く濁る状態を白内障と呼びます。アトピー性皮膚炎と白内障の関係はまだ完全には解明されていません。皮膚炎が長期間続くほど、また顔の皮膚症状が重いほど、白内障の合併率が高くなることが報告されています。さらに、目のかゆみによる頻繁なこすりや叩く行為が影響している可能性も指摘されています。
片目だけに白内障が生じた場合、もう片方の目で補正するため、初期の段階では気づきにくいかもしれません。
網膜剥離
網膜剥離とは、網膜が土台となる組織から剥がれる状態です。網膜に栄養が行き渡らなくなり、機能が低下します。アトピー網膜剥離の約70%は15〜25歳に発症し、その40%が両眼に生じ、思春期を過ぎても顔のアトピー性皮膚炎が改善しない人に多く見られます。アトピー網膜剥離は、一般的な網膜剥離とは異なり、周辺部の網膜が長期間にわたって剥離していることが多く、初期の自覚症状が乏しい傾向があります。
細菌およびウイルス感染症
黄色ブドウ球菌などの細菌感染や、単純ヘルペスウイルス感染が起こりやすく、これが眼瞼皮膚炎や角結膜炎を悪化させる要因となります。
目の周りのアトピー性皮膚炎が悪化する要因は?
目の周りのアトピー性皮膚炎が悪化する要因として、以下のものが考えられます。これらの要因を避けるよう心がけましょう。
一般的な刺激
汗、唾液、髪の毛の接触、衣類との摩擦が影響を与えることがあります。羊毛やナイロンなどの刺激の強い素材は、皮膚を刺激しかゆみを引き起こしやすくなります。ナイロンタオルなど硬い素材の使用や、シャンプーや石けんのすすぎ残しも刺激性皮膚炎を誘発することがあるため注意しましょう。
接触アレルギー
外用薬、化粧品、香料、金属、シャンプー、リンス、消毒薬などによって症状が引き起こされることがあります。治療に対する反応が悪い場合や、皮疹の分布が典型的でない場合は、接触アレルギーかもしれません。
食物
食物アレルゲンが関与することもありますが、食物除去が必ずしも有効とは限りません。
吸入アレルゲン
ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛などがあります。環境アレルゲンへの反応がある場合、症状が悪化しやすくなります。
発汗
発汗量が少ないと皮膚温が上がり、乾燥しやすくなりますが、一方で汗をかいた後に適切な対策をしないと、汗に含まれる成分が刺激となり皮膚炎を助長することがあります。
細菌,真菌
アトピー性皮膚炎の病変部には黄色ブドウ球菌が多く検出されることが知られており、これが炎症の悪化に関与する可能性があります。また、カンジダやマラセチアといった真菌が関与する可能性も指摘されています。
目の周りへの症状を軽減する方法
目の周りのアトピー性皮膚炎の症状を軽減するためには、刺激を避け、清潔を保ち、乾燥を防ぐことが重要です。
刺激を避ける
目の周りはデリケートな部分であるため、タオルを使用する際には同じ面を繰り返し使わず、毎回違う面を使うことで感染予防に努める必要があります。また、目やにが固まっている場合は、蒸しタオルで温めてから拭くことで、肌への負担を減らせます。
髪が刺激になる場合には、当たらないように注意しましょう。
清潔を保つ
汗や汚れも症状を悪化させる要因となるため、汗をかいたら早めに洗うか、やさしく拭き取りましょう。洗顔時に肌を強くこすったり、刺激の強い洗浄料を使用すると、必要な皮脂膜が失われ、症状が悪化する可能性があるため避けてください。
過度な洗浄は皮膚のバリア機能を低下させるため、適度なスキンケアを心がけましょう。帰宅後は、花粉や汚れを除去するために、メイクをしている場合はクレンジングを行い、その後、石鹸や洗顔料でまぶたやまつ毛の根元をしっかり洗い流すのがおすすめです。
乾燥に注意する
日常的に十分な保湿ケアを行い、肌のうるおいを守ることが大切です。特に乾燥する季節には、加湿器を活用して室内の湿度を調整しましょう。
セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が含まれたスキンケアアイテムを選び、化粧水や乳液・クリームを指の腹でやさしく塗ってください。塗り残しがないように丁寧に保湿を行うことがポイントです。
目の周りのアトピーは合併症に注意!我慢せず皮膚科を受診しよう
目の合併症は自覚症状が少ないまま進行することもあり、気づいたときには視力に影響が出ているケースもあります。目の周りに赤みやかゆみ、腫れがある場合は、自己判断せずに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
症状がつらくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
症状がつらくて病院を受診する時間が取れない場合は、オンライン診療を活用するのも一つの方法です。病院へ行く時間が取れない場合や、外出が難しいときでも、医師のアドバイスを受けながら適切な治療を進められ通院の負担を軽減できます。
オンライン診療とは
オンライン診療は、インターネットがつながるデバイスを使用し、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。スマートフォン、タブレット、パソコンを通じてビデオチャットを利用し、医師と直接話せます。診察の予約、問診、診断、処方箋の発行、支払いまでオンラインで完結することが可能です。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKUは、オンライン診療をアプリでスムーズに行えるサービスです。診察の予約からお薬の受け取りまでのすべてのステップを簡単に進められます。
専門スタッフによるサポートや、お気に入りのクリニック・薬局の登録機能があり、お薬手帳のデジタル化も可能です。また、全国どこでも当日または翌日に薬を受け取れるため、スムーズな受診と治療につながります。
まとめ
目の周りのアトピー性皮膚炎は、乾燥や刺激によって悪化しやすい特徴があります。そのため眼の合併症に注意しないといけません。アレルギー性結膜炎や角結膜炎、白内障、網膜剥離などが起こりやすい合併症です。擦ることが要因となりやすいため、症状を和らげるために、刺激を避け、清潔を保ち、十分な保湿を行ってください。目の健康を守るためにも、無理をせず皮膚科や眼科を受診し、適切な治療を受けましょう。

医師
松澤 宗範

この記事には医師による認証マークである「メディコレマーク」が付与されています。
当コラムの掲載記事に関するご注意点
- 当コラムに掲載されている情報については、執筆される方に対し、事実や根拠に基づく執筆をお願いし、当社にて掲載内容に不適切な表記がないか、確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。
- 当コラムにおいて、医療及び健康管理関連の資格を持った方による助言、評価等を掲載する場合がありますが、それらもあくまでその方個人の見解であり、前項同様に内容の正確性や有効性などについて保証できるものではありません。
- 当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。
- 前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は一切責任を負うものではありません。


皮膚科, 形成外科, 総合内科, 美容外科, 美容皮膚科, 先端医療, 再生医療
2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
SOKUYAKUの使い方
-
STEP1
診療予約
-
STEP2
オンライン問診
-
STEP3
オンライン診療
-
STEP4
オンライン服薬指導
-
STEP5
おくすり配達
※お薬の処方は医師の診察により薬が処方された場合に限ります。