【医師監修】そのかゆみ、性器ヘルペス？原因・症状・対処方法をわかりやすく説明

性器ヘルペスとは？一度かかると一生付き合うウイルス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス（HSV）1型または2型が原因で起こる性感染症です。皮膚や粘膜に入り込んだウイルスは、症状が落ち着いた後も神経の根元に潜み続け、ときどき目を覚まして同じ部位に再発します。

HSV-1とHSV-2の違いと特徴

HSV-1は主に口の周りにできる「口唇ヘルペス」の原因として知られ、オーラルセックスを介して性器に感染することもあります。HSV-2は性器感染を引き起こしやすく、性行為を介した伝播が中心です。どちらの型であっても、性器に症状が出れば「性器ヘルペス」と呼び、治療や予防の基本は同じと考えて構いません。

なぜ体から消えない？潜伏と再発の仕組み

一度感染したウイルスは、神経を逆行して腰仙髄の神経節などに潜伏します。風邪や疲労、睡眠不足、強いストレス、月経などで免疫が落ちると再活性化し、神経を伝って皮膚・粘膜へ戻り、同じ場所に水ぶくれやただれを繰り返します。この「潜伏→再発」の性質が、性器ヘルペスが長く付き合う疾患と言われる理由です。

性器ヘルペスの原因と感染ルートは？

性器ヘルペスは「接触」でうつるウイルス感染です。症状があるときはもちろん、見た目が落ち着いている時期でも、少量のウイルスが皮膚や粘膜から排出されていることがあり、これが感染源になります。

性行為でうつる

もっとも一般的なのは、膣性交・アナルセックス・オーラルセックスによる粘膜同士の接触です。病変部や分泌液に含まれるウイルスが相手の粘膜から侵入します。

タオルや便座でも？日常生活での感染リスク

日常生活での接触感染は性行為に比べると確率が低いと考えられますが、理論上はウイルスが付着した体液に触れることで感染が起こり得ます。タオルなど身体に直接触れる物の共用は避け、患部に触れた手は石けんで丁寧に洗いましょう。

妊娠・出産時の母子感染

妊娠中の再発自体で赤ちゃんに影響することは多くありませんが、分娩時に活動性の病変があると産道で感染する恐れがあります。

性器ヘルペスの症状をチェックしよう

症状の出方には個人差があります。初感染は強く出やすく、再発は軽い傾向です。どちらも数週間の経過で自然に落ち着きますが、治療によって痛みや期間を短縮できます。

初感染のときに出やすい症状

感染から2〜10日の潜伏期を経て、性器周囲に小さな水ぶくれが群がって現れ、破れて浅い潰瘍になります。強い痛みで排尿や歩行がつらくなる、足の付け根のリンパ節が腫れる、38℃以上の発熱を伴うこともあります。臀部や大腿にまで広がる場合も珍しくありません。

再発のサインと軽く済むケース

再発の直前には、チクチク・ピリピリ・ムズムズした違和感や、太もも・鼠径部の神経痛のような前兆が出ることがあります。病変は初感染より狭く、痛みや全身症状も軽いことが多く、早めに治療を始めると短期間で治まります。

男女で違う症状のあらわれ方

男性は亀頭・包皮・冠状溝、女性は外陰部から膣・子宮頸部まで症状が及ぶことがあり、女性のほうが歩行困難や排尿困難を伴うなど、痛みが強く出やすい傾向があります。いずれも無症状のことがあり、気づかないうちに感染が広がることがあります。

喉や口に出ることもある？咽頭ヘルペス

オーラルセックスを介して咽頭に感染すると、のどの痛みや嚥下時痛、扁桃の腫れ、高熱を伴うことがあります。初感染で強く出やすい一方、再発時は軽い咽頭痛だけで済むこともあります。

性器ヘルペスの検査方法と受けるタイミング

診断は、症状の有無や発症時期によって検査の選択が変わります。適切なタイミングで受けることが、正確な診断につながります。

発症時に行う検査（視診・ウイルス検査）

典型的な所見があれば視診で診断します。確定のためには、潰瘍や水疱の滲出液を綿棒で採取してPCRなどのウイルス検査を行います。結果が出るまでの間も、症状や発症時期から治療を先行することが一般的です。

無症状でも調べられる抗体検査

血液検査で抗体を測ると、過去に感染したことがあるかを推測できます。ただし、今の症状がヘルペスかどうかの判断には直結しません。そのため、発症時は病変部からの検査が優先されます。

性器ヘルペスの治療は早期対応がカギ

性器ヘルペスは自然に治りますが、抗ウイルス薬で痛みや治癒までの期間を大きく短縮できます。前兆に気づいたら、できるだけ早く治療を始めるのがポイントです。

抗ウイルス薬で治す

初感染では通常5〜10日間、再発ではおよそ5日間の内服が目安です。強い痛みには鎮痛薬を併用し、重症例や全身状態の悪化がある場合は入院のうえ点滴治療を行うこともあります。塗り薬は局所症状の補助にはなりますが、単独治療としては不十分です。

前兆の時点で始めるPIT療法とは

年に複数回再発する人では、ピリピリなどの前駆症状に気づいたら自分の判断で速やかに内服を開始できるよう、あらかじめ薬を処方しておく「Patient Initiated Therapy（PIT）」が有効です。できるだけ早い段階で内服を始めるほど、症状を軽く短くできます。

再発を防ぐ長期内服（再発抑制療法）

再発を頻繁に繰り返す場合は、少量の抗ウイルス薬を毎日継続する「再発抑制療法」を検討します。自身のQOLの改善に加え、ウイルス排出量を減らすことでパートナーへの感染リスクの低減も期待できます。開始や継続の可否は再発頻度や生活背景を踏まえて医師と相談しましょう。

性器ヘルペスの予防と感染対策

完全にウイルスを排除する方法はないため、「うつさない」「もらわない」ための行動が重要です。

コンドームだけでは不十分な理由

コンドームは感染リスクを下げるのに有効ですが、病変が出やすい外陰部や肛門周囲など、コンドームで覆われない部位からもうつる可能性があります。症状がある期間は性行為を控えることが、もっとも確実な対策です。

無症状でも感染を防ぐためにできること

無症状でもウイルスが排出される時期があるため、体調不良や前兆を感じるときは性行為を避け、パートナーと情報を共有しましょう。オーラルセックスを含めて分泌液が触れる接触は控え、物品の共用は避け、手洗いを徹底してください。

再発を遠ざける生活習慣

十分な睡眠と休養、バランスのよい食事、無理のない運動は、免疫機能の維持に役立ちます。強い日焼けや過度な摩擦・刺激、深酒、過労は誘因になり得るため、可能な範囲で避けましょう。前兆に早く気づき、早期に対応することも大切です。

妊娠・出産と性器ヘルペスの正しい知識

妊娠中の再発そのものが胎児に直接影響することは多くありませんが、分娩時の母子感染対策が重要です。新生児ヘルペスは稀ながら重症化することがあるため、適切な管理が欠かせません。

妊娠中の初感染はなぜ危険？

妊娠後期に初めて性器ヘルペスに感染すると、母体に十分な抗体がないためウイルス量が多くなりやすく、出産時に産道で新生児へ感染するリスクが高くなります。疑わしい症状があれば早めに受診し、自己判断での対処は避けましょう。

新生児ヘルペスを防ぐためにできること

妊娠後期に再発を繰り返す方には、出産前から予防的に抗ウイルス薬を内服することがあります。分娩時に病変がある場合は帝王切開を選択することで、新生児感染の予防につながります。妊娠を希望している方や妊娠中の方は、早めに主治医と方針を確認しましょう。

性器ヘルペスかもと思ったら放置せず医療機関を受診しよう

性器ヘルペスは「完治しない」病気ではありますが、「適切に管理できる」病気です。水ぶくれや激しい痛み、前兆の違和感に気づいたら、自己判断で様子を見るよりも早めに受診しましょう。

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仕事や育児、介護、通学などで外来の時間を確保しづらい方には、オンライン診療を活用しましょう。

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まとめ

性器ヘルペスは、一度感染するとウイルスが神経に潜伏し、体調不良やストレスをきっかけに再発することがあります。見た目が軽い、痛みが少ないときでも感染力は残るため、放置は症状の悪化や周囲への感染につながりかねません。

少しでも「おかしい」と感じたら自己判断で様子を見ず、早めに医療機関で検査と適切な治療を受けましょう。正確な知識と予防策を身につけることで、不安を減らし、安心して日常生活を送ることができます。