【医師監修】繰り返すかゆみと炎症…アトピー性皮膚炎。症状を悪化させないための対処法


更新日:2025年03月5日

アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が繰り返し現れる皮膚の疾患です。アトピー性皮膚炎を発症する方のほとんどは、アトピー体質を持っています。左右対称に湿疹が出やすく、年齢によって発症しやすい部位が異なるのが特徴です。
乳児期や幼児期に発症することが多いですが、症状が小児期に寛解することもあれば、寛解することなく再発を繰り返し、成人期まで続くこともあります。思春期や成人期に初めて発症するケースは少ないですが存在します。
かゆみと炎症が止まらない理由
肌のバリア機能が弱まることで外部の刺激やアレルゲンが侵入しやすくなることが原因です。これにより、免疫の過剰反応が引き起こされ、炎症やかゆみが続きます。また、かゆみを感じて掻くことで、肌が傷つき炎症がさらに悪化し、かゆみが増していく悪循環が生まれます。
アトピー性皮膚炎のしくみ
アトピー性皮膚炎の原因の一つは、肌に必要な保湿成分「セラミド」が不足していることです。セラミドは肌の細胞間を満たし、水分を保持する役割を持っていますが、これが足りないと肌は乾燥しやすくなります。さらに、肌のバリア機能をサポートするタンパク質「フィラグリン」が十分に働かないと、肌のバリアが弱まり、アレルゲンや刺激物が侵入しやすくなります。これが、炎症が引き起こされやすくなる要因です。
バリア機能が低下した肌にアレルゲンや刺激物が触れると、免疫がそれを排除しようと反応します。免疫は本来、体を守るために働きますが、アトピー性皮膚炎の方ではその反応が過剰になり炎症が引き起こされます。炎症物質が多く作られると、免疫細胞が過剰に反応し、かゆみや赤みが悪化するのです。
アトピー性皮膚炎の症状
年齢によって出る場所や特徴が変わります。また、皮膚の炎症が強くなると、見た目や触ったときの感触にも違いが出てきます。赤ちゃんでは顔や関節部分、子どもでは手足や首、思春期以降は顔や上半身に症状が強く出ることがほとんどです。
幼児期・学童期(2歳~12歳)の特徴
この時期になると、顔に現れる症状は比較的落ち着くことが多いですが、代わりに首やひじ、ひざの内側、手首や足首などに皮膚炎が現れやすくなります。症状が強い場合、顔や手足全体に広がることもあります。
長い間掻き続けることで皮膚が厚く硬くなった場所は、ゴワゴワとした質感です。腕や脚には鳥肌のようなザラザラしたブツブツができることもあります。
思春期・成人期(13歳以上)の特徴
思春期以降になると、顔や首、胸、背中などの上半身が症状の出やすい部位です。顔から首にかけて強い炎症が現れるタイプやかゆみが強いブツブツが体や腕、脚にできるタイプなど、症状は個人によって異なります。症状がひどくなると、全身に赤みが広がり、皮膚が全体的に炎症を起こす「紅皮症」という状態になることもあります。
皮膚症状の出やすい場所
皮膚症状は、体のどこにでも現れる可能性がありますが、特に外部から刺激を受けやすい場所に出やすいことが特徴です。例えば、洋服がこすれる場所や、汗がたまりやすい部分では、炎症が悪化しやすくなります。症状は左右対称に出ることが多く、両側のひじやひざなどに同じような皮膚炎が現れることがあります。
皮膚の状態による違い
皮膚症状は、大きく「急性」と「慢性」の2つのタイプに分けられます。
急性の症状(炎症が始まったばかりの状態)
皮膚が赤くなり、ブツブツが現れ、皮膚内にできる小さな水ぶくれが特徴です。水ぶくれが破れるとジュクジュクした湿った状態になります。その後、乾燥が進み、かさぶたが形成されることがあります。
慢性の症状(長期間続いている皮膚炎)
かゆみが強く、長期間掻き続けることで皮膚が厚く硬くなり、ゴワゴワした質感になります。さらに、かゆみが続くと、ひじやひざなどの部位に硬いしこりのようなブツブツ(痒疹結節)ができることもあります。
症状の悪循環
かゆみが強く、無意識のうちに掻いてしまうことがよくあります。しかし、掻くことでさらに皮膚が傷つき、炎症が悪化してしまいます。掻いた部分からさらにアレルゲンが侵入しやすくなり、免疫の反応が強まるため、かゆみが増し、また掻いてしまう…この悪循環が続くことで、症状がなかなか良くなりません。
アトピー性皮膚炎の原因と悪化する要因
アレルギーの一種で、ダニやホコリ(ハウスダスト)、特定の食べ物などが原因となって起こります。これらのアレルゲンが皮膚の内部に入り込むことで、炎症やかゆみを引き起こすと考えられています。
アトピー性皮膚炎の原因
通常の健康な皮膚は、「バリア機能」を持っており、アレルゲンが体内に入るのを防いでいます。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚はこのバリア機能が弱くなっているため、アレルゲンが簡単に侵入しやすくなっています。
症状が悪化する要因
さまざまな要因が重なって悪化することが一般的です。特定の1つの原因ではなく、複数の影響が組み合わさることで症状が悪くなるケースが見られます。
皮膚への刺激
日常生活の中で皮膚が受ける刺激が、症状を悪化させる要因のひとつです。例えば、唾液や汗、髪の毛、服の素材などに注意しましょう。さらに、かゆみに耐えきれず掻くことも、悪化の原因になります。
接触アレルギー
肌に合わない塗り薬や化粧品、香料や金属、シャンプーやリンスの成分が刺激になった場合、皮膚の状態を悪くします。
空気中のアレルギー物質
布団やカーペットに潜むダニやホコリが皮膚を刺激し、症状を悪化させることがあります。また、花粉が皮膚に付着すると炎症を引き起こしやすくなり、ペットの毛やフケも要因として考えられます。
ストレス
精神的なストレスがあると、かゆみを感じやすくなったり、免疫のバランスが崩れて炎症が悪化しやすくなります。
細菌・カビ
炎症のある皮膚には、黄色ブドウ球菌が多く存在しており、これが悪化の要因です。また、カビが影響し、皮膚炎をさらに悪化させることも指摘されています。
食物
特定の食べ物がアレルギーの原因となり、症状を悪化させる場合があります。ただし、すべての人に食物アレルギーが関係しているわけではありません。
悪化を防ぐためのアトピー治療の3つの軸とは
治療は、「スキンケア」「悪化要因への対策」「薬の治療」の3つが基本です。この3つを組み合わせることで、症状を落ち着かせ湿疹などが出にくい状態を維持できます。どの軸も欠けてはいけません。
悪化を防ぐためのアトピー治療①スキンケア
スキンケアは、肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を正常に保つために大切です。症状が落ち着いているときも続けましょう。
皮膚の清潔保持
炎症のある皮膚には、黄色ブドウ球菌などの細菌が存在しやすく、これがさらに症状を悪化させることがあります。かき傷やバリア機能が低下した肌からは細菌が侵入しやすいため、入浴やシャワーで洗い流すことが重要です。また、ホコリや花粉、汗などが皮膚に残らないよう、これらを取り除きましょう。
熱すぎるお湯や長時間の入浴は、かゆみを強くすることがあるため避けてください。38〜40℃のお風呂でゴシゴシこすらず、しっかり泡立てた石鹸でやさしく洗いましょう。肌に残ると刺激になるため、十分に洗い流してください。低刺激で香料や着色料の少ないものを選ぶとよいでしょう。
皮膚の保湿
肌の水分を閉じ込めて蒸発を防ぐこと、肌に水分を補給することが保湿剤の役割です。健康な皮膚にはバリア機能があり、外からの刺激を防いだり、水分を逃がさない働きをしています。しかし、皮膚が乾燥すると、このバリア機能が弱まり、外部の刺激に敏感になったり、体内の水分が失われやすくなったりします。季節を問わず、日常的に保湿を行いましょう。
背中などの広い範囲には、塗り広げやすいフォームやローションが便利です。また、髪のある頭皮には、さっぱりとした使い心地のものを選ぶと塗りやすくなります。朝は忙しく、短時間で済ませたい場合には、ローションやフォームが便利です。一方で、時間に余裕があるときは、軟膏やクリームを使うことで、しっかりと肌を保護できます。
悪化を防ぐためのアトピー治療②悪化要因への対策
乾燥だけでなく、汗や衣類との摩擦、ストレス、食べ物など、さまざまな要因が刺激となります。こうした日常生活での刺激をできるだけ減らすことが大切になります
環境
部屋の湿度を適度に保つことで、カビの発生を防げます。花粉の多い時期は窓を開けると室内に花粉が入りやすくなるため、換気は控え除湿機を活用するのがよいでしょう。
寝具は定期的に干して日光を当て、掃除機をかけることでダニの繁殖を抑えられます。エアコンのフィルターもこまめに洗浄し、カーテンは洗濯しやすい薄手のものを選ぶと清潔に保ちやすくなります。
観葉植物はカビの発生源になることがあるため、置かないようにするのが安心です。家具の配置にも気を配ることで、ほこりやカビの発生を防げます。壁にぴったりとくっつけるのではなく、少し隙間をあけることで空気の流れを確保できます。
ソファは布製ではなく、掃除がしやすい革や合成皮革のものを選ぶと、アレルゲンの蓄積を防ぎやすくなります。床にはこまめに掃除機をかけ、ホコリやダニをできるだけ減らすようにしてください。
衣服
ウール素材のようにチクチクしたものや、ゴワゴワした生地は避け、肌触りの良い素材の服を選ぶことが大切です。どんな素材でも、何度も洗濯をすると繊維が固くなり、肌への刺激が強くなります。必要に応じて新しいものと交換するとよいでしょう。
衣類の締め付けにも注意が必要です。ゴムがきついものは、かゆみを引き起こすことがあるため、特に肌に直接触れる下着や靴下などは、締め付けの少ないものを選んでください。
衣類も清潔に保つことが大切です。衣類はしっかりと洗濯し、汗をかいたり汚れたりしたら、早めに着替えるようにしましょう。
食事
乳児ではまれに食物アレルゲンが関与することがあります。しかし、小児や成人のアトピー性皮膚炎では、食べ物が直接の原因になっているとは限らず、食事を制限することで症状が改善するわけではありません。自己判断で食べ物を制限するのではなく、まず食物アレルギーが関係しているかどうかを確認しましょう。
ストレス
ストレスが強くなると、症状が悪化することがあります。また、かゆみや皮膚の状態が気になることで気持ちが落ち込み、夜にしっかり眠れなくなったり、人と会うことが億劫になったりすることもあります。
治療に対する不安を感じたり、薬が本当に効くのか疑問を持ったりすることで、自分の判断で治療をやめてしまった場合、症状をさらに悪化させることにつながることもあります。医師に率直に相談しましょう。話をすることで不安が軽くなり、適切な対応を見つけやすくなります。
悪化を防ぐためのアトピー治療③薬物治療
現在のところ、病気そのものを完全に治す薬はなく、症状を和らげてコントロールする対症療法が治療の基本となります。
保湿外用薬
皮膚の乾燥を防ぐために使う外用薬です。肌の水分を保ち、バリア機能を回復させることで、かゆみを軽減する効果があります。特に入浴後は、肌が乾燥しやすくなるため、できるだけ早く塗りましょう。症状が落ち着いてからも、継続して保湿を行うことで、肌の状態を良好に保てます。
ステロイド外用薬
炎症を抑えるために使用します。効果の強さによって5つのランクがあり、症状の重さや塗る部位によって使い分けます。適切な量を、決められた期間しっかり塗ることが重要です。
外用免疫抑制剤
ステロイド外用薬とは異なる仕組みで炎症を抑える薬です。顔や首など、ステロイド外用薬の副作用が出やすい部位に使用します。
その他の治療法
塗り薬だけでなく、症状が重い場合には抗体医薬品の注射や経口免疫抑制剤、経口ステロイドなど飲み薬、光線療法も治療方法として考えられます。
薬を使うべき?ステロイドの誤解
「ステロイドは怖いから、なるべく少なく短期間だけ使おう」と考える方もいます。中途半端に使うと、症状が十分に治まらず、かえって悪化したり、治るまでに時間がかかったりすることがあるため避けてください。
副作用はほとんどの場合、一時的なもので、薬をやめると回復します。また、ステロイドの塗り薬は直接皮膚に作用するため、飲み薬のステロイドに比べて全身に影響する副作用は少ないとされています。
誤った使い方をすると、薬の効果が出にくくなったり、副作用が現れやすくなったりすることがあるため、医師の指示に従って正しく使うことが大切です。副作用が心配なときは、遠慮せず医師に相談するとよいでしょう。見た目に湿疹がなくなったように見えても、皮膚の奥には炎症が残っていることがあるため、しっかりと治療を続けることが大切です。
治らないとあきらめずに、医療機関を受診しよう
かゆみが強いと、夜にぐっすり眠れず、生活の質が低下してしまいます。治らないとあきらめないでください。適切な治療とケアで症状をコントロールできます。自己判断で治療をやめたりせず、専門家の診察を受けて、指示に従った治療を続けましょう。諦めずに医療機関を受診することで、症状の改善や再発防止に繋がります。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
忙しくて病院に行く時間がない場合、オンライン診療は便利です。現代のライフスタイルに合った医療サービスとして、検討してみましょう。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットが使えるデバイス(スマートフォン、タブレット、パソコンなど)を通じて、自宅にいながら医師の診察を受けられる医療サービスです。ビデオチャットを使って医師と直接話すことができ、診察の予約から問診、診断、薬の処方、支払いまで、すべてオンラインで完結します。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKU(ソクヤク)は、オンライン診療をアプリで手軽に行えるサービスです。アプリを使って、診察の予約からお薬の受け取りまで、すべてのステップをスムーズに進められます。
専門スタッフによるサポートや、お気に入りのクリニックや薬局を登録する機能が特徴です。お薬手帳のデジタル化も可能で、全国どこでも当日または翌日にお薬を受け取れます。
まとめ
アトピー性皮膚炎は、適切なスキンケアや生活習慣の見直し、薬物治療を組み合わせることで、症状をコントロールし悪化を防げます。保湿や環境対策、ストレス管理が重要です。ステロイドは怖いと誤解されることがありますが、正しく使用すれば問題ありません。症状が辛いときは、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

医師
五藤 良将

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