【皮膚科医師監修】そのピリピリ、どのタイプ？ヘルペスの種類の見分け方と対処法

ヘルペスって何？知っておきたい基本知識

ヘルペスは、皮膚や粘膜に小さな水ぶくれ（小水疱）が集まってできる感染症の総称です。原因は「ヘルペスウイルス」という仲間のウイルスで、人に感染するタイプは8種類あります。このうち日常で「ヘルペス」と呼ばれることが多いのは、単純ヘルペスウイルス（HSV）が起こす単純疱疹と、水痘・帯状疱疹ウイルス（VZV）が起こす帯状疱疹です。

ヘルペスについて詳しく解説

「潜伏→再活性化」でくり返すのがヘルペス

ヘルペスウイルスは、初めて感染したあと症状が落ち着いても、完全に体からいなくなるわけではありません。神経節という場所で長く潜伏し、免疫力の低下や強い紫外線、疲労やストレスなどをきっかけに「再活性化」して再発します。再発時は前ぶれとしてピリピリ、チクチクといった違和感が出ることが多く、早めの対応が回復を助けます。

ヘルペスウイルスの種類と特徴

単純ヘルペスウイルスは1型（HSV-1）と2型（HSV-2）があり、HSV-1は主に口周り、HSV-2は主に性器周りに症状を起こします。ただしどちらの型でも性器・口のどちらにも症状を起こし得ます。

帯状疱疹の原因であるVZVは、子どもの「水ぼうそう」のウイルスと同じです。水ぼうそうが治った後も体に潜み、大人になってから帯状疱疹として再発することがあります。

こんなにある！ヘルペスの種類とその原因ウイルス

ヘルペスと一口に言っても、原因ウイルスと症状の出やすい部位が異なります。

唇まわりに出る「HSV-1」

HSV-1は幼少期のうちに家族内などで感染することが多く、唇やその周囲、鼻の下、あごなどに水ぶくれやただれを作ります。風邪や強い日差し、過労のあとに「口唇ヘルペス」として再発しやすいのが特徴です。

性器まわりのヘルペスは「HSV-2」が多い

HSV-2は主に性行為で広がるウイルスで、性器や肛門まわりに痛みのある水ぶくれや潰瘍を作ります。最初の発症では発熱やリンパ節の腫れなど全身症状を伴うこともあります。近年は口から性器への接触により、HSV-1が性器ヘルペスの原因になる例も少なくありません。

帯状疱疹の原因は子どもの病気「水ぼうそう」

帯状疱疹は、水ぼうそうの原因であるVZVが体内で再活性化することで起こります。50代以降で増えやすく、神経に沿って片側だけに帯状に皮疹が出るのが典型です。

ヘルペスの症状は？種類ごとのサインを見逃さない

症状の現れ方には共通点もあれば、それぞれ特有のサインもあります。早期の気づきが、痛みや合併症を減らす近道です。

口唇ヘルペス：ピリピリの前兆に注意

唇やその周囲に、チクチク・ピリピリとした違和感が出たあと、小さな水ぶくれが集まって現れます。数日でかさぶたになり、1〜2週間で治ります。

性器ヘルペス：気づかないまま人にうつすことも

性器や肛門まわりに水ぶくれや潰瘍ができます。初めて感染したときは発熱や強い痛みを伴うこともありますが、再発すると症状は軽めです。無症状でもウイルスが排出されるため、気づかないうちにパートナーにうつすことがあります。

帯状疱疹：痛みと水ぶくれが“帯状”に広がる

体の片側に沿って、ピリピリした痛みと赤い発疹が帯のように広がります。やがて水ぶくれになり、かさぶたを経て治ります。高齢の方では、皮疹が治った後も長く痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」になることがあり、早期治療が重要です。

ヘルペスはうつる？知っておきたい感染のタイミング

ヘルペスは接触の仕方によって人から人へ広がります。

ヘルペスの感染について詳しく解説

帯状疱疹は「水ぼうそう」として周囲へ広がる

帯状疱疹の水疱液にはVZVが含まれます。水ぼうそうにかかったことがない、あるいは免疫のない人が触れると、水ぼうそうとして感染します。帯状疱疹そのものがうつるわけではありません。

口移しやキスでも？日常に潜む感染経路

口唇ヘルペスは、キス、同じ食器やタオルの共有、母子の口移しなどで感染します。症状が出ているときは特に感染力が強いため、マスク・手洗い・共有物を避けるなどの基本的な対策が有効です。

性感染症としてのリスク

性器ヘルペスは主に性行為で広がります。コンドームの使用はリスクを下げますが、皮疹がコンドームで覆われない部位にも出るため完全ではありません。症状がある期間の性行為は控え、パートナーと情報を共有して検査や治療を受けましょう。

症状がなくても感染するって本当？

口唇・性器ヘルペスとも、見た目に症状がない時期でもウイルスが排出される「無症候性排泄」が起こることがあります。このため、再発の自覚が少ない人でも感染を広げてしまう場合があり、予防と早期対応が大切です。

ヘルペスの治療法は？「早く治す」より大事なこと

ヘルペスウイルスは体内から完全に除去することはできませんが、抗ウイルス薬で「増殖を抑えて症状を軽くし、短くする」ことができます。

症状を抑える薬はあるけど、完治はできる？

抗ウイルス薬を、塗り薬・飲み薬・点滴などで使います。ウイルスそのものを根絶する薬ではないため「完治（生涯もう出ない）」はできません。ただし、早期の内服で症状や合併症を抑える効果が期待できます。

ヘルペスの薬について詳しく解説

繰り返すタイプには「抑制療法」という選択肢も

性器ヘルペスを頻繁にくり返す人では、一定期間、少量の抗ウイルス薬を継続して再発を予防する「抑制療法」があります。生活の質を保つうえで有効な場合があるため、再発が多い方は医師に相談してください。

重症化を防ぐには「受診のタイミング」がカギ

帯状疱疹は、できれば発疹が出てから早期（目安として72時間以内）に治療を始めると、痛みや合併症のリスクを減らせます。性器ヘルペスの初発で痛みが強い、排尿がつらい、発熱がある場合は早めの受診が必要です。

市販薬で対応はできるのか

口唇ヘルペスについては、再発時に使える市販薬が薬局で購入できます。ただし初めての症状や重い症状が出た場合は必ず医師の診断を受けてください。

ヘルペスにかからないために！今できる予防策とは？

感染経路を知り、日常の工夫と医療的な対策を組み合わせることで、発症や再発のリスクを下げられます。

口唇ヘルペスの予防は“当たり前の習慣”から

症状がある間は、キスや口移し、食器・タオルの共有を避け、手洗いと咳エチケットを徹底します。唇の乾燥や強い紫外線は再発の引き金になるため、保湿やUV対策も習慣にしましょう。

性器ヘルペスのパートナー間感染を防ぐには？

症状がある期間は性行為を控えてください。症状がない時期でも感染の可能性があるため、コンドームを一貫して正しく使用し、再発のサインがあるときは無理をしないことが大切です。再発が多い場合は抑制療法を検討し、パートナーとも情報を共有しましょう。

性器ヘルペスについて詳しく解説

帯状疱疹はワクチンで防げる？50歳からの対策

帯状疱疹は、50歳以上を対象とした任意接種のワクチンで発症や重症化のリスクを下げられます。持病や投薬状況によって選べる種類が異なるため、かかりつけ医に相談して適切な接種時期とワクチンの種類を確認してください。

生活でできる再発予防：睡眠・栄養・紫外線・ストレス管理

十分な睡眠と栄養、こまめな休息、強い日差しを避ける工夫、ストレスをためない生活は、免疫力の維持に役立ちます。再発の前ぶれに気づいたら無理をせず、早めに体を休めて医療機関を受診しましょう。

ヘルペスかも？そう思ったら放置せず皮膚科を受診しよう

「ただの口内炎かな」「虫刺されかも」と自己判断せず、ヘルペスの疑いがあるときは早めに皮膚科を受診することが大切です。正しい診断と治療によって、つらい症状を軽くし、再発や周囲への感染を防げます。

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まとめ

ヘルペスは、原因となるウイルスや発症部位によって症状も治療も異なりますが、共通して重要なのは早期受診と適切な対応です。自己判断で放置すると悪化や再発のリスクが高まるため、違和感や水ぶくれが出たら皮膚科で早めに相談しましょう。

再発予防と重症化の抑制には、十分な睡眠と栄養、紫外線対策、そしてストレスケアといった日常のセルフケアが役立ちます。