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アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説

監修薬剤師 福岡 蓉佑
更新日:2024年02月29日

更新日:2024年02月29日

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説のイメージ
病院やクリニックなど医療機関で取り扱われる医療用医薬品「アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)」はご存知でしょうか。

今回は外用副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)として知られるアンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)について成分の特徴や効果、副作用、市販薬の有無について解説していきます。

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)とは

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は鳥居薬品株式会社が医療用医薬品として販売している外用副腎皮質ホルモン剤です。

有効成分にベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを0.05%配合しています。

 

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は1988年より三菱化成株式会社(現 三菱ケミカル株式会社)と鳥居薬品株式会社が共同で開発をスタートさせ、主に湿疹や皮膚炎、乾癬、さらには難治性疾患の治療において使用されています。

 

薬の剤型には今回ご紹介する軟膏タイプをはじめ、クリームタイプやローションタイプも販売されています。ローションタイプは頭皮などの軟膏やクリームが塗りづらい場所や広範囲に使用する際に適した剤型です。

 

有効成分のベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルはいわゆる「ステロイド」と呼ばれるお薬ですが、「ステロイド」にはどんな特徴があるのでしょうか?

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の成分について

アンテベート軟膏の有効成分であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルは副腎皮質ホルモン剤で別名ステロイドとよばれるお薬です。そもそもステロイドとはどんなお薬なのでしょうか?

ステロイドとは

ステロイドとは、体内で作られる副腎皮質ホルモンのことを指します。副腎皮質ホルモンは副腎という臓器で作られるホルモンのことで、これを人工的に合成した薬がステロイド剤です。

 

ステロイド剤には塗り薬(外用薬)以外にも飲み薬(内服薬)、坐薬、吸入薬、注射薬など多くの種類が存在します。

ステロイドは主に炎症を抑える働きがあり、ステロイドの種類によってこの炎症を抑える強さ(ランク)が異なります。ではステロイドの主な働きと強さ(ランク)について詳しく見ていきましょう。

ステロイドの働き

ステロイドには以下の働きがあります。

・抗炎症作用
細胞の中で炎症を起こす原因になる物質を作らせないように働きかけることで、炎症そのものを抑える。
・細胞増殖抑制作用
炎症反応を引き起こす細胞の数が増えないように働きかけます。
・血管収縮作用
炎症している場所の血管を収縮(ひきしめる)ことで、患部の赤みを抑える。
・免疫抑制作用
からだの中で抗体が作られにくいように働きかけることで、炎症を引き起こす免疫系の 働きを弱める。

ステロイドの強さ(ランク)

ステロイドは成分によって作用の強さ(ランク)がことなります。

作用の強さ(ランク)によって5段階に分けられ、1番作用が弱い「ウィーク」からはじまり「マイルド」「ストロング」「ベリーストロング」「ストロンゲスト」の順に作用が強くなっていきます。

 

今回ご紹介するアンテベート軟膏の有効成分であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルは上から2番目の強さである「ベリーストロング」ランクに該当します。

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)はどんな症状に効果がある?

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は以下の症状に効果があります。

・湿疹・皮膚炎群(手湿疹、進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む)
・乾癬、虫さされ、薬疹・中毒疹
・痒疹群(ストロフルス、じん麻疹様苔癬、結節性痒疹を含む)
・紅皮症、紅斑症(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)
・ジベル薔薇色粃糠疹、掌蹠膿疱症、扁平紅色苔癬、慢性円板状エリテマトーデス
・肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫)
・特発性色素性紫斑(マヨッキー紫斑、シャンバーグ病)
・円形脱毛症、肥厚性瘢痕・ケロイド、悪性リンパ腫(菌状息肉症を含む)
・アミロイド苔癬、水疱症(天疱瘡群、ジューリング疱疹状皮膚炎・水疱性類天疱瘡)

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の用法・用量は?

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の用法・用量は以下の通りです。

通常、1日1〜数回、適量を患部に塗布する。

では「適量」とはいったいどれくらいの量なのでしょうか?ここでは塗り薬を使用する際に知っておきたい『1FTU」について詳しく説明します。

1FTUとは?

ステロイド外用薬の場合、薬の効果をしっかり得るために塗る分量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)と呼ばれる単位が使われています。

大人の人差し指の先から第1関節までの長さにクリームや軟膏がのる量「1FTU=約0.5g」を大人の手のひら2枚分の面積に塗る目安とします。

 

例えば患部の広さが大人の手のひら1枚分の大きさなら、人差し指の先から第1関節の長さの半分の長さが目安の量となります。

1FTUを覚えて、必要な量をしっかり塗ることが大切です。

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の副作用

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の重大な副作用に眼圧の上昇、緑内障、白内障があらわれることがあります。

目の周りの皮膚に使用した場合には眼圧の上昇や緑内障、白内障が、大量又は長い期間にわたる広い範囲での使用や密封法で使用した場合には緑内障や後嚢下白内障等の症状があらわれることがあります。

このような症状があらわれた場合には、使用を中止して医師、薬剤師にご相談ください。

また発生頻度ごとに起こる副作用を下記にまとめました。

【皮膚の感染症】
<0.1〜5%未満>
細菌感染症(伝染性膿痂疹、毛嚢炎・せつ等)、皮膚の真菌症(カンジダ症、白癬等)
<頻度不明>
ウイルス性感染症

【皮膚の症状】
<0.1〜5%未満>
ざ瘡(痤瘡様発疹、ステロイド痤瘡等)、ステロイド皮膚(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイド潮紅等)、刺激感、湿疹(発赤、苔癬化、腫脹、糜爛等)
<0.1%未満>
ステロイド酒さ・口囲皮膚炎(口囲、顔面全体に紅斑、丘疹、毛細血管拡張、痂皮、鱗屑)
紅斑、紫斑、多毛、色素脱失、色素沈着、接触性皮膚炎、皮膚乾燥、掻痒
<頻度不明>
魚鱗癬様皮膚変化

【過敏症】
<頻度不明>
皮膚の刺激感、発疹等

【下垂体・副腎皮質系】
下垂体・副腎皮質系機能の抑制

特に【皮膚の感染症】が現れた場合には、抗菌剤や抗真菌剤を使用し症状を改善していくため、症状に気づいたらお薬の使用を中止し、医師又は薬剤師に相談しましょう。

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)に関する注意点

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は次の病気の方は使用してはいけません。

使用により、症状が悪化したり、治療が遅れたりする恐れがあります。

・細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ 等)
・アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)でアレルギーなどの過敏症を起こしたことがある
・鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎
・潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷

 

また基本的な注意としてはリンデロン-V軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル)を大量に使用したり、広範囲の密封法での使用はステロイドを全身に投与した場合と同様の症状があらわれることがあるため、避けなければなりません。

 

特に妊娠中の方や妊娠している可能性のある女性、小児、高齢者の場合は注意が必要になるため、医師や薬剤師からの伝えられた使用方法を守ることが大切です。

アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)と同じ成分の市販薬はある?

残念ながら、アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)と同じ成分の市販薬は現在販売されていません。

 

今回ご紹介した、アンテベート軟膏の有効成分であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルはステロイドのランクが上から2番目の「ベリーストロング」に該当します。

しかし市販薬で現在販売されているステロイド外用薬は上から3番目の「ストロング」ランクから下のランクの商品になり、市販薬で「ストロンゲスト」「ベリーストロング」ランクのステロイドは販売されていません。

参考資料
アンテベート軟膏0.05%/添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/480306_2646730M1059_1_05
アンテベート軟膏0.05%/インタビューフォーム
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2646730M1059
ステロイド外用剤について/リンデロンVsについて/リンデロンVs
https://www.shionogi-hc.co.jp/rinderon/about/02.html
皮膚用薬(塗り薬)ってどのくらいの量を塗るのがいいの? │ 皮膚Q&A一覧 │ ひふ研
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/qa/quantity/
ステロイド外用薬/医師の視点で考えるアトピー性皮膚炎/アトピー性皮膚炎ってどんな病気?
https://www.kyudai-derm.org/atopy/docter/11.html

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ドラッグストア薬剤師を4年間経験した後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。
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