五苓散は二日酔いやむくみに効果的な漢方薬?代表的なツムラ・クラシエの五苓散の成分や価格を紹介
更新日:2024年06月20日
漢方の考え方では、水分代謝異常で現れる不調を「水毒」という言葉で表します。水は本来、人間の身体に必要不可欠な要素ですが、正しく機能していないと「毒」になるよ!という事を表しています。
漢方では主に、体を構成する3大要素を「気」「血」「水」と表現しており漢方医学の「気・血・水」には伝統医学ならではのさまざまな概念が包括されています。
五苓散とは
五苓散は、水の巡りを整えるくすり(漢方薬)です。漢方の古典(傷寒論)に記載されている方剤で、いわゆる体内水分代謝を調整し、水分のバランスを取ることを目的とした漢方処方です。
漢方の考え方では、水分代謝異常で現れる不調を「水毒」という言葉で表します。水は本来、人間の身体に必要不可欠な要素ですが、正しく機能していないと「毒」になるよ!という事を表しています。
漢方では主に、体を構成する3大要素を「気」「血」「水」と表現しており漢方医学の「気・血・水」には伝統医学ならではのさまざまな概念が包括されています。
極めて簡潔にまとめると、次のようになります。
「気」・・・体内のエネルギー全体の働きや動き、機能の全体を表します。
「血」・・・現代医学の「血液」などの栄養物質を含みますが、漢方医学では「血」と表し、意味も広いです。髪の毛、肌、粘膜の潤いを保つ働きや、精神状態を保つためのこの3つのバランスが取れないと体に不調を起こすと言われており、体を物質的に構成する成分というような広い働きのことを指します。
「水」・・・尿や汗、血液、消化液など、体内の物質としての意味を含むほか、その作用や機能なども指します。
このように、漢方では、この「気血水」という言葉をよく使います。実際に「気」などは目に見る事はできませんが、「健康であること」=「体内の代謝や機能の作用がバランスよく働いていること」と定義し、概念的な要素として、「気」「血」「水」の3つがバランスよく機能、循環している必要があるとされています。
例えば、暴飲暴食や、高い湿度(雨や台風)などで気圧の変化等で体調不良を起こしやすい人、普段からお腹がゆるく下痢をしやすい、むくみ、めまい(中には吐き気や嘔吐を伴うようなものも含む)に悩まされている人は、身体の「水」に関する機能の乱れが関連している可能性が高いです。
漢方では、余分な湿気の事を「水湿」とあらわします。この「水湿」が溜まってうまく流れていない状態を「水滞」と表します。水を動かすのは、目に見えない「気」というエネルギーが必要と考えるので、水がうまく巡るためには「気」も上手に動いている必要があります。
「五苓散」はこの水湿水滞を解消する漢方薬です。成分や使い方などをご説明します。
自分の体質に合ったものはどうやって選ぶ?
西洋医学では、医療機関で血液検査などをしたり、からだの状態を表す基準となる数値があるように、東洋医学にも独自の理論に基づいた体質の診断方法と治療法があります。(四診といいます。)
体質の事を「証」、体力の有無や不調の勢いを「虚証、実証」という言葉で表現するなど、独特な言い回しの多い漢方医学ですが、理解すると日常の健康管理にも簡単に役立てる事ができる便利な医学です。漢方の専門薬局や薬店などでは、漢方薬の選択をするにあたり、細かい質問を受ける事が多いです。
顔色や症状、体格や体重、普段の生活習慣、過去の病歴や不調が起こったきっかけなど、細かい問診に基づき、患者様の情報を集めて適切な薬を選ぶのが基本です。
自分の「証」に合ったお薬を選ぶには、普段から自身の体調や体質を把握していることが大切です。
そこで、自分でできる体質診断の一歩として、まず、舌の状態をチェック!舌の色や苔の様子、形などで様々な情報を得る事ができるのです。舌にべったりした苔がついている場合は体に余分な水分が溜まっている状態なので要注意。
もちろん苔の色だけでなく、他の情報を総合して分析する必要がありますが、舌を観察する事で簡単に大まかな健康状態を把握することができるので、朝起きたら鏡で自分の舌の状態を是非確認してみるのを習慣にしてみてください。
五苓散にはどんな生薬が含まれている?
五苓散(ゴレイサン)は、天然の生薬で構成されている漢方製剤です。
「蒼朮(ソウジュツ)」「茯苓(ブクリョウ)」(製薬メーカーによっては白朮(ビャクジュツ))「沢瀉(タクシャ)」「猪苓(チョレイ)」「桂皮(ケイヒ)」の5つからから構成される医薬品で、利尿作用や、胃腸の消化吸収能力を高めながら水分バランスの調整をするのに優れた効果をあらわします。
「桂皮(ケイヒ)」は香辛料のシナモン(主に用いられるのはセイロンニッケイの仲間)の樹皮を乾燥したもので、料理や食品にも用いられるのでなじみがある方もいるかもしれません。
身体を温める作用により、「気」「血」「水」の巡りを良くし、他の生薬との調和を保つ作用があります。
また、五苓散に限らず、商品にもタイプ(剤型)があり、水から煎じて煮出して服用するタイプの商品と、生薬のエキスを抽出して粉状にしてある商品(顆粒タイプ)や錠剤タイプの商品があります。
煎じるタイプは抽出できる有効成分も濃く、効き目も高い事がありますが、厳密には症状や季節によって剤型を変える事で効果に影響する場合もあるため、手軽に服用できるエキス剤顆粒や錠剤タイプの商品をまず使用してみると良いでしょう。
五苓散はどんな症状に効果的?
五苓散には次のような効能効果があります。
口渇(口の渇き)、のどの渇き
尿量が少ない方のむくみ(浮腫)
頭痛、頭重感、身体が重い
吐き気、嘔吐(周期性嘔吐症も含む)
下痢(水様性下痢)
急性胃腸炎、腹部の動悸
急性胃腸炎・口渇(口の渇き)やのどの渇きがあり,尿量が少なく,はきけ,嘔吐,腹痛,頭痛,むくみなどのいずれかを伴う「水様性下痢」,「暑気あたり」主に、嘔吐やめまい、下痢の他、雨や台風など低気圧の前に頭痛がするといったような人に有効です。
特に「湿(水毒)」による痛みの特徴として「重だるい痛み」と表現されることが多く、頭がずーんと重い感じがする、ズキズキというよりは頭重感が強い痛み、また足腰の重だるさなどに使われることが多いです。
むくみや、下痢、吐き気や嘔吐、またはそれに伴う腹痛などは、体内の水が尿や汗などでうまく排出されないことにより、余分な水分を外に出そうとする生体の防御反応でもあります。
また、水分や油分の取りすぎなどによっても体内の「湿」はたまってしまいます。お酒を飲んだ次の日に顔や目の周り足などがむくんでパンパンになってしまう、油物を食べると胃がもたれ、調子が悪いなど生活習慣で「水毒」が溜まってしまう場合もありますね。実は、五苓散は、「二日酔いの救世主!」とも言われています。
食べ物の3つの「あ」と言って、アルコール、揚げ物、甘いものは、体内に余分な湿気を産む原因となってしまいます。お酒やお料理は適量を保って楽しみたい所ですが、ついつい飲みすぎた・・・というような時に,なるべくダメージは最小限に抑えておきたいところ。忘年会、懇親会や接待などに備えて常備しておくのも手かもしれません。
市販薬はある?
五苓散は、医療用医薬品で医薬品番号17番という製品番号が振り分けられています。お医者さんに五苓散を処方された場合、ツムラやコタローの17番という製品番号の漢方薬を目にした方もいらっしゃるかもしれません。
医療用の漢方薬の種類で圧倒的にシェアが高いのは「ツムラ」の漢方薬です(ツムラ五苓散エキス顆粒)。漢方薬の名前が覚えられなくても、「ツムラの〇〇番」と番号で医師や薬剤師などに伝えて服薬の履歴を伝えたという経験をお持ちの方も多いでしょう。
医療用と同じツムラの五苓散を市販薬で手に入れることができますが、処方名は「五苓散」でも各製薬メーカーによって商品名を別につけている場合があります。
オーソドックスな処方と商品で販売している五苓散は、ツムラ(ツムラ株式会社)の他に、クラシエ(クラシエ薬品)などの製薬メーカーが有名です。クラシエの漢方製剤は、ドラッグストアなどで取扱いが多く、手軽に購入できる傾向にあります。
近頃は漢方薬への需要が高まり、陳列棚に漢方薬のコーナーを設けているドラッグストアも増えてきました。クラシエの漢方薬もその需要に応えるべく、シェアを拡大しています。
クラシエ薬品は、もともとはカネボウ薬品という社名で、薬品事業を展開しており、2007年にクラシエ薬品に社名変更されました。
医療用の処方薬も販売しているので(商品名:クラシエ五苓散料エキス細粒)、医師の診療を受けた場合など病院で処方される事もあるかもしれません。
内容量や1日当たりの服用回数などに若干違いがみられることがあるので、不明点があれば、薬剤師か登録販売者に相談しましょう。
ツムラ 五苓散料エキス顆粒(株式会社ツムラ) 価格1,800円 (税込1,980円)※医薬品分類「第2類」
クラシエ 漢方五苓散料エキス顆粒(クラシエ薬品 ) 価格1,000円(税込1,100円)※医薬品分類「第2類」
ドラッグストアで比較的多く見つけるのは上記のタイプです。
エキス顆粒と錠剤タイプの漢方製剤がありますが、比較的エキス顆粒タイプの商品の取り扱いが多いようです。錠剤タイプを希望する方はドラッグストアの他、ネット注文などを活用するとよいでしょう。
また、一般名は五苓散ですが、製品名で商品を販売している製薬メーカーもあります。
キアガード(ロート製薬) 24錠 価格1,430円 (税込)※医薬品分類「第2類」
テイラック(小林製薬株式会社) 価格24錠1,100円(税込)※医薬品分類「第2類」
ロート製薬から販売している「キアガード」は構成生薬の中に蒼朮(ソウジュツ)を採用しておりと小林製薬の「テイラック」は、白朮(ビャクジュツ)を採用しています。
この2つの生薬はだいたい同じように水分代謝異常を改善する作用を示すのですが、蒼朮はより利尿、利湿作用に優れていて、白朮は胃腸機能が虚弱な人により適しているとされています。こちらは錠剤タイプで商品化されています。
一過性の低気圧による頭痛やめまいなどの場合はどちらを選択しても大きな違いはないと思いますが、水分代謝による不調が続くような方、体質の改善を目的としている方など細かく使い分けをするのもポイントです。
漢方医学に詳しい薬剤師や登録販売者に相談してみましょう。
※商品情報や商品価格は2020年9月現在のものです。また、内容量は商品ごと、販売店ごとにより異なります。
服用方法と注意点
服用を検討する際は、医師や薬剤師、または登録販売者に相談し、情報の提供を受けてください。構成生薬の中に「桂皮」が含まれますので、シナモンアレルギーのある人は副作用など注意が必要な場合があります。(皮膚のかゆみや喘息などの症状がでる事があります。)
また、医薬品は添付文書を確認の上、服用する際は用法・用量や使用期限を守って使用するようにしましょう。また、妊娠中は体調が敏感になる方も多くいます。
五苓散の服用自体は妊娠に大きな副作用等の影響を与える事はほぼないとされていますが、妊娠している方、妊娠している可能性のある方は、念のため注意したほうが良いでしょう。
医師や薬剤師に相談の上服用をする事をおすすめします。小児に服用させる場合は、保護者の監督のもと、服用させるようにしてください。(年齢により1回あたりの服用量が異なります。)
漢方薬は天然の生薬を使用している関係で、湿気などに弱いので品質を保つために保管方法などは注意をしてください。
1包を飲み切らず半分量を残し、残りを後で服用する場合などは切り口を折り曲げて早めに服用する事をおすすめします。
また、医薬品の効果を最大限に生かすため、水や白湯で服用し、またはぬるま湯に溶かして服用しましょう。
どこで買えるの?その価格は?
購入するには、処方箋を取り扱う保険薬局(医療機関で医師の診断により処方を受けた場合)や街のドラッグストア、漢方薬専門の相談薬局、薬店などを利用して医薬品を購入することができます。(医療用医薬品の販売に関しては国が定めた公定価格(薬価)があります。)
また、第1類、第2類、第3類のすべての一般用医薬品は、一定の条件の下、インターネットや電話相談による注文などで販売できるようになりました。
※購入時に専門家からの情報提供が必要な場合があります。ただし、使用に特に注意が必要な「要指導医薬品」は対面販売に限ります。
オンライン診療SOKUYAKUであればクリニックや服薬指導の待ち時間の短縮や、二次感染リスクの軽減が可能です。ぜひ「SOKUYAKU」をご利用ください。
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※お薬の処方は医師の診察により薬が処方された場合に限ります。