多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?診断基準や治療方法について詳しく説明します
更新日:2024年05月25日
多嚢胞性卵巣症候群と診断された場合、生活習慣や食生活など原因について考え、悩んでしまう方も少なくありません。
本ページでは、多嚢胞性卵巣症候群の症状や治療方法について詳細に解説しますので、不安に思われている方は参考にしてください。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?
多嚢胞性卵巣症候群は、女性の20人に1人の割合で見られるもので、月経不順を起こしやすい体質を指します。月経不順は排卵が不規則になった状態のことで、男性ホルモンが増加し、毛が硬くなって毛深くなりなったり、ニキビができやすくなったりします。また、糖尿病のリスクも高まります。
多嚢胞性卵巣症候群の原因は明らかになっておらず、胎児期の環境や遺伝子などの先天的要因に加えて肥満などが複雑に作用して発症するのではないかと言われています。症状の発現の仕組みも複雑なため、完全には明らかになっておらず、現代医学では、月経不順になりやすい体質自体の改善は困難なのが実情です。
診断基準
多囊胞性卵巣症候群の診断基準の検証に関する小委員会では、以下の3項目を全て満たした状態を「多嚢胞性卵巣症候群」と定義しています。
”・月経周期異常
・多嚢胞卵巣またはAMH高値
・アンドロゲン過剰症またはLH高値”
引用:本邦における多囊胞性卵巣症候群の診断基準の検証に関する小委員会「多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について」
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状
月経異常
排卵頻度が通常より少なくなる、もしくは月経周期が39日以上3ヶ月未満となる稀発月経、無月経がよく起こります。通常通り月経が来ていたのに体重増加後に月経不順に変わったり、思春期の頃から月経不順が長引いたりなど、別の要因が現れることによって、病状が変わっていくケースもあります。
多毛
男性ホルモンであるアンドロゲンが分泌過多となり、毛が硬くなって、毛深くなりやすいです。
ニキビ
アンドロゲンが分泌過多となり、ニキビができやすくなります。特に、思春期の女性に生じるニキビの多くは、アンドロゲンの分泌過多によるものです。
肥満
日本国内では、多嚢胞性卵巣症候群の患者様の約25%が肥満(BMI25以上)になっているというデータがあります。
※参考:松崎利也 2016 「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療の必要性 【メタボリックシンドロームの発生率が高いため,肥満PCOS患者の治療には減量が重要】」『週間日本医事新報』(4788):59
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療方法
妊娠希望の有無を問わず、多嚢胞性卵巣症候群の治療ではホルモンバランスの正常化が重要です。そのため、BMI25以上の肥満の方は減量から開始して頂きます。減量を行うだけでも、症状や排卵率が改善するケースもあります。肥満が改善した方、BMIが元から正常範囲の方は、妊娠希望の有無に応じて治療内容が異なります。
妊娠を希望する場合
多嚢胞性卵巣症候群は、排卵が不規則になっており、妊娠しにくい状態です。そのため、排卵を誘発するための治療を実施します。
まずは、排卵誘発剤であるクロミフェンを服用します(クロミフェン療法)。月経5日目から5日間連続して服用すると、5~12日後に排卵が生じます。必要に応じて、他のお薬を用いるケースもあります。
クロミフェン療法で排卵が誘発されない場合は、ゴナドトロピン療法や腹腔鏡手術が検討されます。
ゴナドトロピン療法
卵胞の発育・排卵を促すホルモンを注射する方法です。非常に効果が強いものですが、卵巣過剰刺激症候群(卵巣を過剰に刺激することで、卵巣が膨れてお腹や胸に水が溜まる症状)や多胎妊娠 を引き起こす恐れがあります。
卵胞の発育・排卵を促すホルモンを注射する方法です。非常に効果が強いものですが、卵巣過剰刺激症候群(卵巣を過剰に刺激することで、卵巣が膨れてお腹や胸に水が溜まる症状)や多胎妊娠 を引き起こす恐れがあります。
腹腔鏡による卵巣の手術(腹腔鏡下卵巣開孔術)
腹腔鏡を用いてモニターに卵巣を映し出し、レーザーや電気メスで小さな穴を多数あけ、排卵を促す手術です。お腹に目立つ傷ができることはなく、7割の確率で自然排卵の回復が見込めます。なお、効果は永久的なものではありません。
他にも、レトロゾールという内服薬を使った治療方法もあり、クロミフェンよりも子宮内膜を薄くさせず、
排卵率や妊娠・出産率が高いです。
このように治療法は多岐にわたりますが、患者様の状態に応じて適切な治療法を選択する必要があります。最適な治療を受けるためにも、不明点があればしっかりと医師に相談しましょう。
腹腔鏡を用いてモニターに卵巣を映し出し、レーザーや電気メスで小さな穴を多数あけ、排卵を促す手術です。お腹に目立つ傷ができることはなく、7割の確率で自然排卵の回復が見込めます。なお、効果は永久的なものではありません。
他にも、レトロゾールという内服薬を使った治療方法もあり、クロミフェンよりも子宮内膜を薄くさせず、
排卵率や妊娠・出産率が高いです。
このように治療法は多岐にわたりますが、患者様の状態に応じて適切な治療法を選択する必要があります。最適な治療を受けるためにも、不明点があればしっかりと医師に相談しましょう。
妊娠を希望しない場合
多嚢胞性卵巣症候群は、女性ホルモンのバランスが崩れた状態になってしまっているので、子宮内膜が過剰に増えてしまい、子宮内膜増殖症や子宮体がんなどを発症しやすくなります。
そのため、妊娠を希望しない方には、排卵を誘発する治療は選択せず、これらの疾患を予防するために、子宮内膜の周期的な変化を促す治療として、ホルムストローム療法 や低用量ピルの処方などが行われます。
ホルムストローム療法
黄体ホルモンが含まれたお薬を服用し、子宮内膜が剥がれるのを誘発する治療法です。お薬を約10~12日間服用します。服用期間中は子宮内膜が厚くなり、お薬の効果が切れるタイミングで子宮内膜が剥がれて出血をきたします。このサイクルを定期的に繰り返すことで、子宮内膜の周期的な変化がもたらされます。
黄体ホルモンが含まれたお薬を服用し、子宮内膜が剥がれるのを誘発する治療法です。お薬を約10~12日間服用します。服用期間中は子宮内膜が厚くなり、お薬の効果が切れるタイミングで子宮内膜が剥がれて出血をきたします。このサイクルを定期的に繰り返すことで、子宮内膜の周期的な変化がもたらされます。
低用量ピル
低用量ピルは避妊を防止する目的で用いられるお薬ですが、子宮内膜の周期的な変化をもたらす働きもあります。婦人科治療で用いるものはLEPと呼ばれ、保険が適用されます。
低用量ピルは避妊を防止する目的で用いられるお薬ですが、子宮内膜の周期的な変化をもたらす働きもあります。婦人科治療で用いるものはLEPと呼ばれ、保険が適用されます。
不安な場合は医師に相談を
多嚢胞性卵巣症候群は、初経から月経不順が起こることが多いですが、「いずれ治るだろう」、「治療は妊娠・出産時期を考えるタイミングになってからで良いだろう」と、そのままにしており、妊娠を考える時期になって悩み始め、受診した際に診断されるケースも見られます。
月経周期は人によって多少差はあり、初めて月経を迎えてから2~3年間は月経周期が不規則になることもありますが、4年目以降も月経周期が安定化しない場合は疾患が影響していることもあります。
少しでも不安に思うことがあれば、そのままにせずに専門医に相談することをお勧めします。病院に相談に行く時間の調整が難しい方は、オンライン診療を利用してみるもの良いでしょう。
アプリで診察を受けられるので、時間や場所の制約がありません。また、通院にかかる費用や時間などのコストもかかりません。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群は早期発見・早期治療が重要です。どのような疾患なのかを理解し、該当する症状が現れていれば、専門医に相談することをお勧めします。治療を早く受けるほど、不妊の改善も早まります。
妊娠を希望されない方は、低用量ピルを用いた治療がよく行われます。
SOKUYAKUオンラインクリニックでは、オンラインでのピルの処方に対応しています。
受付時間:平日10:00~19:00
医師
阿部 一也
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