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抗体カクテル療法とは。特徴や対象患者、副作用などわかりやすく解説

監修医師 木村眞樹子
更新日:2024年02月28日

更新日:2024年02月28日

抗体カクテル療法とは。特徴や対象患者、副作用などわかりやすく解説のイメージ
インドから広がった強力な感染力を持つ変異株である「デルタ株」が、日本全国で猛威をふるっていた感染の第5波。2021年8月18日以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規感染者は2万人を超える日が連日続きました。

すでに18000人になっていた新規感染者数により、厚生労働省は同年7月19日夜、この状況を打開するために「抗体カクテル療法」で用いられる治療薬「ロナプリーブ」を特例承認※¹し、同年7月22日に販売開始しました。

では、抗体カクテル療法とはどのような治療なのでしょうか。詳しく解説していきます。
※¹ 特例承認…審査の手続きを大幅に簡略化され承認されること

抗体カクテル療法とは

抗体カクテル療法で使用する薬剤は「カシリビマブ(遺伝子組換え)」「イムデビマブ(遺伝子組換え)」という人工的に作られた2種類の抗体を点滴で投与する治療薬で、商品名は「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同1332」です。
日本では、中外製薬が2021年7月19日に厚生労働省から製造販売承認を取得しました。

ロナプリーブのメカニズム

では、具体的にロナプリーブが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、どのように効くのかをみていきましょう。

抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体

ロナプリーブは、新型コロナウイルスに対する2種類のウイルス中和抗体「カシリビマブ」および「イムデビマブ」を組み合わせ、COVID-19に対する治療および予防を目的として、アメリカ・リジェネロン社で創製・開発された抗SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)モノクローナル抗体です。

モノクローナル抗体とは、ヒトの体内に侵入した細菌やウイルス(がん細胞も含む)などの異物(抗原)から体を守るために免疫細胞の一つであるB細胞が「抗体」が作ります。

 

細胞やウイルスなどに侵された細胞には、他の正常な細胞にはない特定の目印を持っています。その特定の目印とくっつくことができる抗体を作ることで、それら異物をやっつけることができます。

 

そのため、特定の目印をもつ抗体を大量に作る、つまりクローン化することで、ある特定の標的を狙う医薬品として利用できます。この特定の目印をもつ抗体のことをモノクローナル抗体といいます。

2種類の抗体を用い、変異株にも対応可能

2種類のウイルス中和抗体を用いることで、日々現れる変異株にも効果があるといわれています。

ロナプリーブのメカニズムを簡単に解説

簡単にいえば「抗体カクテル療法」がCOVID-19に効くメカニズムとしては、
1.ウイルスが細胞につくのを抗体が阻止する
2.ウイルスが増殖せず、重症化リスクを防ぐ
ということです。

ロナプリーブの特徴

では、ロナプリーブの特徴をみていこうと思います。

日本初の軽度~中等度の新型コロナ治療薬

ロナプリーブ発売以前は、軽症COVID-19患者向けの薬剤はありませんでした。
軽症~中等度Ⅰ患者に用いることで、重症化を予防するのに、画期的な薬剤として登場したのがロナプリーブです。

 

特に発症から7日以内の投与で効果があるCOVID-19では、発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられています。

そのため、発症7日後以前には抗ウイルス薬または抗体薬の投与が重要となるのです。

当初入院患者のみ→外来や往診患者も可能に

ロナプリーブ発売当初は、対象は入院患者のみでしたが、厚生労働省は2021年8月13日に事務連絡を一部改正し、入院患者だけでなく宿泊療養施設の患者にも投与可能になり、東京などの一部のホテル療養者に実施しました。

 

さらに、菅義偉元首相(当時)は同年9月15日に「自宅療養の往診に抗体カクテル療法が使えるよう調整中」であることを明かし、同年9月17日には厚生労働省の事務連絡にて、自宅療養者の往診時にも使用できることが追加となりました。

 

同日夜に早速、大阪府で全国初となる自宅療養者のCOVID-19患者に対し、ロナプリーブの投与がされました。そして、ロナプリーブは2021年7月22日の販売開始以降、すでに35000人が使用したと言われています。

 

抗体カクテル療法は重症化を抑える効果が期待されますが、一方で容体が急変した際の対応の難しさから医療機関や宿泊療養施設、外来での実施に限定されていました。

 

そのため投与後、しばらくの間、経過観察しなければならず、医療従事者が次の往診になかなか行けないという問題点もあります。

ロナプリーブの対象となる患者

現在は、軽症~中等度Ⅰ(呼吸不全なし。93<SpO₂※<96)のCOVID-19患者が対象です。
※SpO₂(酸素飽和度):パルスオキシメーターで測定できます。

 

2021年10月12日、中外製薬は抗体カクテル療法「ロナプリーブ」を無症状患者および濃厚接触者になった場合の感染予防目的とした使用も対象となるよう、厚生労働省に申請しました。

 

すでに海外では使われており、無症状患者には発症リスクを31%減少すること、家庭内で濃厚接触者になった人に対し、感染予防を目的とした治験をし、治験開始時感染していなかった人では感染・発症のリスクが81%減少したことを発表しました。

 

ロナプリーブの投与対象となる患者は、酸素吸入を要さない他に、次の重症化リスク因子を少なくとも一つ有していることです。

<重症化リスク因子>
・50歳以上
・肥満(BMI30以上)
・喫煙
・心血管疾患(高血圧を含む)
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・(1型または)2型糖尿病
・慢性腎臓病
・慢性肝疾患
・脂質異常症
・妊娠後期
・悪性腫瘍
・免疫抑制状態(悪性腫瘍治療剤、骨髄または臓器移植、免疫抑制剤の長期投与など)

また、前述の
・投与日が発症日から7日間以内であること
・ロナプリーブの成分に対し重篤な過敏症の既往歴がないこと
も対象要件に必要です。

ロナプリーブの副作用

抗体カクテル療法は比較的副作用が少ないといわれていますが、ごくまれに「インフュージョンリアクション(急性輸液反応)」という合併症が発生することがあります。

 

インフュージョンリアクションは、薬剤投与中または投与開始後24時間以内に現れる、ロナプリーブを含むモノクローナル抗体製剤を点滴したときに起こる過敏症のことです。

 

インフュージョンリアクションの具体的な症状は、以下の通りです。

・発熱 ・悪寒 ・吐き気 ・不整脈 ・胸痛 ・胸の不快感 ・頭痛
・力が入らない(脱力感) ・じんま疹 ・全身のかゆみ ・筋肉痛 ・喉の痛み など

 

ちなみに、インフュージョンリアクションは、ヒスタミン薬やステロイドの投与により発生頻度を減少できます。

また投与後に、24時間以内のアレルギー反応として「アナフィラキシーショック」が報告されています。アナフィラキシーショックは、薬に対して体の免疫機能が過剰に反応することで、全身に起こす急性アレルギー反応です。

 

アナフィラキシーショックの具体的な症状としては、以下の症状があります。
・全身のかゆみ
・じんま疹
・皮膚の赤み
・ふらつき
・吐き気・嘔吐
・息苦しい
・冷汗が出る
・めまい
・顔面蒼白 ・手足が冷たくなる など

 

そのため、ロナプリーブの点滴自体は20分程度ですが、治療後、しばらくの間その場で体調の変化がないか観察し、症状が出ても医師や看護師がすぐに対処できる体制を整った状態で治療にあたります。

もう一つの軽度~中等度向けの治療薬

軽症~中等度ⅠのCOVID-19患者を対象とする薬剤が2021年10月25日現在、ロナプリーブの他にもう一つあります。2021年9月27日厚生労働省に特例承認され、同年9月29に発売された日本で2つ目の軽症~中等度を対象とするCOVID-19治療薬は以下のゼビュディです。

 

「ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ点滴静注液 500mg)」
・グラクソ・スミスクライン株式会社が販売
・単体のモノクローナル抗体を用いた点滴静脈注射の治療薬
・医療機関に入院のもと使用すること(2021年10月25日現在)

 

ロナプリーブとゼビュディは、基本的には同じですが(投与対象者、副作用など)、標的となる部位が異なるため、変異株に対する感受性も異なるといわれています。

また、ロナプリーブは2種類のモノクローナル抗体を使うのに対し、ゼビュディは1種類であることも異なります。

まとめ

今回は、国内初の軽症~中等度Ⅰを対象としたCOVID-19治療薬「ロナプリーブ」について詳しく解説しました。

 

今、塩野義製薬が全国初の経口(口から飲むタイプ)のCOVID-19治療薬の開発が最終段階魔できており、年内にも発売されるのでは、との話もあります。

海外で開発中のものも含めると、今後更に治療薬が増えて、治療の幅が増すことでしょう。

参考資料(いずれも参照 2021-10-25)
2021年07月19日| 抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット」、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、世界で初めて製造販売承認を取得|ニュースリリース|中外製薬
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210719220000_1129.html
コロナ自宅療養者に抗体カクテル療法 大阪府が全国で初めて試行|毎日新聞(2021-9-17 16:01)
https://mainichi.jp/articles/20210917/k00/00m/040/121000c
「抗体カクテル療法」約3万5000人が投与か 厚労省|新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB(2021-10-7 5:10)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211007/amp/k10013295201000.html
「抗体カクテル療法」無症状患者や予防にも 対象拡大を申請|新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB(2021-10-12 6:17)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211012/amp/k10013302991000.html
モノクローナル抗体とは?|バイオのはなし|中外製薬
https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp11.html
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第5.3版|診療の手引き検討委員会
https://www.mhlw.go.jp/content/000829136.pdf

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監修医師 木村眞樹子
現役医師、産業医 10年以上大学病院で臨床に従事、産業医として企業の健康経営にも携わる 2019年より医療ライターとしても活動している
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