現在のところ、円形脱毛症の発症の仕組みについて多くは分かっていなく、原因が明確にはなっていません。主な原因は以下の3つではないかと言われています。

・自己免疫疾患

・アトピー素因

・遺伝

自己免疫疾患は、円形脱毛症の原因として最も可能性が高いと考えられています。自己免疫疾患は、人体の免疫機能に正しく働かず、自身の体の細胞を攻撃してしまう疾患の総称です。これにより、細胞が攻撃された部位にある毛が抜けてしまいます。

なお、円形脱毛症はストレスが原因だとイメージされがちですが、ストレスや疲労が直接の原因となっている根拠は存在しません。ストレスや疲労は自己免疫疾患の直接的な原因ですが、円形脱毛症においては間接的要因に留まります。

アトピー素因は、皮膚炎、気管支専属、アレルギー性鼻炎などといったアトピー性疾患の既往歴を指します。「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、47人の円形脱毛症患者において29人がアトピー性疾患を併発しており、また、800人の円形脱毛症患者において187人がアトピー性皮膚炎を併発していたというデータがあります。

このデータから、円形脱毛症とアトピー素因は深く関連していると推察されますが、明確な作用については分かっていません。ただ1つ言えることとしては、アトピー素因を持つ方は円形脱毛症を発症しやすい状態だということです。

出典：公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」 

円形脱毛症は遺伝性があるとも言われています。「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、近年行われた大規模学術調査にて、円形脱毛症患者の8.4%に家族歴が確認されており、血縁関係が近くなるほどリスクが高くなると報告されています。

アトピー素因と同様に、遺伝と円形脱毛症の関連性についてもはっきりとした根拠はありませんが、調査結果を参考にすると、遺伝も重要な要因だということが推察されます。

出典：公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」｜

円形脱毛症は以下のような特徴があります。

・部分的に円形や楕円形の脱毛が起こる

・脱毛症状が起きている部位がはっきりと分かる

・髪の毛のみならず全身の毛に症状が起こる

・性別・年齢関係なく起こる

部分的に円形や楕円形の抜け毛が起こる脱毛症をまとめて「円形脱毛症」と呼びます。症状が一気に進み、2～3日ほどで地肌が見えるまでに髪の毛が抜けてしまいます。そのため、本人が症状に気づかず、第三者から指摘されてようやく自覚することが多いです。

また、症状は複数個所で同時に起こることがあり、それぞれの箇所が重なって脱毛が広範囲に及ぶことがあります。円形脱毛症は軽いものだと考える方が多いですが、症状が進んでしまうと全身の毛にまで及ぶこともあるので注意が必要です。

脱毛箇所が1つの場合、単発型と診断されます。脱毛箇所は頭部の1ヶ所のみで、最もよく見られるタイプのものです。

頭部の脱毛箇所が2つ以上の場合、多発型と診断されます。単発型が進行すると多発型になる可能性があります。

脱毛範囲が全頭部にまで及ぶと、全頭型と診断されます。頭部に小さな脱毛箇所がいくつかある状態から全頭部にまで広がる可能性があります。

髪の毛のみならず、眉毛やまつ毛などの全身の毛に症状が起きた場合、汎発型と診断されます。

AGAは別名「男性型脱毛症」と呼ばれ、男性ホルモンが強く影響することから、成人男性によく見られます。思春期以降に発症し、加齢に伴って発症リスクは高まります。

逆に、円形脱毛症は原因が自己免疫疾患などのため、老若男女問わず発症する可能性があります。実際、円形脱毛症患者の約25%は15歳以下の子どもだと言われています。

AGA（男性型脱毛症）は発症初期は自覚がないことも多く、時間の経過に伴って生え際と頭頂部から少しずつ毛が抜けていき、脱毛範囲が広がっていきます。

一方、円形脱毛症は脱毛範囲と正常な髪の区切りがはっきり分かれており、脱毛症状が1～2日で一気に進みます。

このように、円形脱毛症とAGAは、脱毛速度と脱毛斑の境界がはっきりしているという違いがあり、大半のケースでは医師の診察により鑑別が可能です。

AGAは症状が徐々に進んでいきます。初期は「髪の毛が薄くなってきたかな？」と気になる程度ですが、最終的には完全に髪の毛がなくなります。

一方、円形脱毛症は急激に髪の毛が抜けていくので、「髪の毛が薄くなってきたかな？」と気になる期間はそう多くはありません。そのため、気付いたことには脱毛箇所がはっきりと確認できる状態となります。

局所免疫療法は、円形脱毛症を引き起こす免疫異常を抑えるために実施します。脱毛箇所に炎症を起こす物質を意図的に塗布します。根治には至りませんが、発毛を促す効果が期待できます。

この治療法では患部に炎症が生じるため、アトピー性皮膚炎の患者様はかえって症状が悪くなる可能性があります。また、使用するお薬は試薬であるため、保険適用外となります。

免疫反応を抑える効果を持つステロイドを注射により患部に投与します。対象は単発型・多発型を発症している患者様です。注射時に痛みが強く現れたり、血管拡張が起きたり、注射部位が陥没する可能性などもあり、細心の注意を払いながら治療を進める必要があります。

ステロイド外用薬を患部に塗布する治療法です。イギリスの2012年版円形脱毛症診療ガイドラインによると、軽症～中等症の円形脱毛症に有効とされています。

原因に直接アプローチする治療ではないですが、人からの視線によってストレスが溜まることを予防したり、外傷や紫外線で患部にダメージが加わらないようにしたりする働きが見込まれます。

上述したように、円形脱毛症の治療法は様々なものがあります。知らない間に脱毛していたことに後に気付いた場合、1人で悩まずにまずは専門医に相談しましょう。症状がそれ以上進行しないよう、改善に向けて早めに治療に取り組むことをお勧めします。

円形脱毛症は、症状が進行するといずれはほぼ全ての髪が抜けてしまう可能性があります。ある程度の年齢の方だと、年齢による抜け毛だと勘違いしてしまい、そのまま治療を受けないでいることもあります。

しかし、AGAも円形脱毛症も、早期改善には早めに治療を受けることが重要です。まず初めに、薄毛・抜け毛の原因が何なのか、診察・検査を受けてはっきりさせましょう。