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アトピー性皮膚炎の跡はなぜできる?色素沈着が起こる理由と対策

監修医師 高藤 円香
更新日:2025年04月7日

この記事を読み終えるのにかかる時間は目安:12分

更新日:2025年04月7日

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アトピー性皮膚炎が治った後に、茶色いシミや黒ずみが残ってしまうことはありませんか? これは色素沈着と呼ばれ、炎症や刺激によって発生します。肌を強く掻いたり、紫外線を浴びたり、適切なケアを行わなかった場合に起こりやすくなります。この記事では、アトピー性皮膚炎による色素沈着の原因や対策、治療方法について詳しく解説します。

アトピー性皮膚炎で色素沈着が出来る理由は?

アトピー性皮膚炎による炎症が治まると、赤みやかゆみは引いていきますが、茶褐色や紫褐色のシミのような黒ずみが残ることがあります。炎症後の色素沈着と呼ばれ、肌を繰り返し擦ったり刺激を受けたりすることで、色素細胞が活性化しメラニンが増加・沈着することで生じます。

 

炎症が治まれば時間の経過とともに色素沈着も薄くなるのが一般的です。皮膚のターンオーバーは約1か月ごとに繰り返され、古い角質が剥がれ落ちることでメラニンも少しずつ排出されていきます。しかし、実際には色素沈着が思ったように消えないことも少なくありません。

 

首のような目立つ部分は黒ずみが残りやすく、アトピーの症状が改善した後も悩みの種となることがあります。

皮膚の炎症が原因

人の肌の色を決める要素のひとつに、メラニンという色素があります。メラニン色素そのものは茶色ですが、その量が多くなると肌が黒く見え、少ないと白く見えます。人種ごとの肌の色の違いも、このメラニンの量によるものです。

 

アトピー性皮膚炎の場合、かゆみによる頻繁な掻き壊しや擦る動作が、肌への機械的な刺激となり、メラニンの生成を促します。炎症と刺激が繰り返されることで、皮膚の表面に色素沈着が残り、黒ずみとなってしまうのです。

ステロイドが原因は誤り

ステロイド外用薬は、湿疹やアトピー性皮膚炎、虫刺されなどの炎症性疾患の治療に用いられます。疾患による炎症がメラノサイトを過剰に刺激し、メラニンの生成を促してしまうことがあり、結果として炎症後色素沈着が生じます。

 

色素沈着の原因はステロイド外用薬ではなく、そもそもステロイドを使う原因となった皮膚炎や炎症そのものです。むしろ、ステロイド外用薬には炎症を抑える作用があり、結果的に色素沈着の進行を防ぐ役割を果たします。

 

ただし、小児に対して強いステロイド外用薬を長期間使用した場合、色素が薄くなる色素脱失が起こることがあります。

アトピー性皮膚炎で色素沈着が起こりやすくなる行為

色素沈着が起こりやすくなる原因を見ていきましょう。

自己判断による治療の中断

かゆみが落ち着いたことでアトピーが良くなったと思っていても、肌の内部では炎症が続いている可能性があります。アトピー性皮膚炎の炎症によって生じた色素沈着が思うように薄くならない場合、実はまだアトピーの炎症が治っていないかもしれません。

 

炎症後の色素沈着と、慢性的なアトピーの炎症が続いている肌は、見た目が似ていることがあります。しかし、炎症が残っている場合は赤みやむくみが見られることが多く、肌表面の赤みが引いていても、くすぶる炎症が黒っぽい色を帯びることがあります。そのため、湿疹が落ち着いたように見えても、肌内部ではまだ炎症が起きていることがあるのです。

 

治ったと自己判断して治療を中断せず、まずは炎症をしっかり抑えましょう。

ステロイドを恐れて適切に使用しない

「ステロイドは副作用があって怖い薬」という誤解が広まり、噂が一人歩きしてしまったことで、不安を持つ人が多くなりました。このような誤解が定着し、ステロイドを適切に使用しないことで、十分な治療効果を得られず、症状が長引いてしまうケースもあります。

 

また、不安を感じ、少量しか使用しない患者は少なくありません。発疹が全身に広がっているにもかかわらず、少ししか使用していないケースも多く見られます。

 

「ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を使っても効果がない」と感じることがありますが、その多くは使用量が不十分なためです。適量をしっかり塗らなければ、皮膚炎を効果的に抑えられず、治療が長引いたり、症状の勢いが止まらないことにつながります。外用薬の使い方については医師の指示に従うことが大切です。

過度の掻き壊し

患部を掻きむしった際にできる茶色いシミは、「炎症後色素沈着」です。かゆみを我慢できずに掻き壊すことで肌が傷つくと、表皮にある色素細胞「メラノサイト」が活性化し、メラニン色素が大量に生成され、茶色いシミが残ることになります。

 

通常、メラニン色素は肌のターンオーバーにより、徐々に肌の表面へ押し出され、数か月から半年ほどで垢として排出されます。しかし、炎症が強く掻き壊しが続いた場合、メラニンが真皮まで沈着してしまい、色素沈着が1年以上残ることもあるため注意しましょう。

適切な保湿ケアを怠る

アトピー性皮膚炎による乾燥したガサガサの肌は、皮膚の炎症によってバリア機能が壊れた状態です。さらに、肌の保湿力を調整する自律神経の働きも低下しています。この状態を放置するとかゆみが強まり、掻き壊してしまいやすくなるため、皮膚に傷ができやすくなります。

紫外線対策をしない

色素沈着が起こる、または悪化する原因のひとつが紫外線です。紫外線が肌の内部に浸透すると、大きなダメージを与えます。これに対し、メラニン色素は紫外線から肌を守るために生成されます。そのため、紫外線を浴び続けるとメラニンの生成が活発になり、色素沈着が進行しやすくなるのです。肌が紫外線にさらされ続ける限り、メラニンは作られ続けるため注意しましょう。

生活習慣の乱れ

ストレスや睡眠不足も良くありません。メラニンを生成する細胞「メラノサイト」は、脳の神経系と深い関係があり、強いストレスが加わると、メラニンの生成が促進されることがあります。

 

また、肌のターンオーバーを促進しているのは、脳下垂体から分泌される「成長ホルモン」です。睡眠中に多く分泌されるため、寝不足が続くと成長ホルモンの分泌量が減少し、ターンオーバーのサイクルが乱れます。さらに、寝不足によって交感神経が活性化すると、皮脂分泌が増加し肌荒れを引き起こす原因となります。

アトピー性皮膚炎で出来る色素沈着以外の跡

アトピー性皮膚炎では、色素沈着以外にも肌に跡ができることがあります。

白色皮膚描記症

白色皮膚描記症(はくしょくひふびょうきしょう)とは、皮膚をなぞった後にその部分が白くなる症状です。皮膚描画症(ひふびょうがしょう)とも呼ばれ、皮膚の過敏反応によるもので、アトピー性皮膚炎患者に多く見られます。機械的な刺激が加わり血管が一時的に収縮することによって、皮膚が白く見える現象が起こるといわれています。

肥厚性瘢痕

外傷や手術後の創面が隆起した状態を指します。これは、傷が治る過程で過剰にコラーゲンが生成され、傷跡が厚く盛り上がる現象です。

 

ケロイドは創面の隆起を伴いますが、肥厚性瘢痕とは異なり、発赤、疼痛、掻痒(かゆみ)を伴うことが多く、治りにくい特徴があります。ケロイドは自然退縮することがなく、アトピー素因を持つ人に多く見られます。

苔癬化

胸の上部、腕、首、脚、陰部など、手が届きやすい場所が発症しやすい部位です。逆に、背中の中央部や上部のような手が届きにくい部位には発症しにくい特徴があります。

 

初期段階では、皮膚に異常は見られません。かゆみが生じ、その後、長期的に掻いたりこすったりすることによって、皮膚に乾燥、鱗屑(うろこ状の皮膚のかけら)、肥厚、暗い色の斑が現れます。これを苔癬化と呼び、皮膚が皮革のような質感になります。

アトピー性皮膚炎で色素沈着を防ぐための対策

アトピー性皮膚炎による色素沈着を防ぐには、肌の炎症を抑えることが大切です。そのため、医師と相談しながら、適切な治療とスキンケアを行うことがポイントとなります。

途中で治療をやめない

外用薬を塗ることで、3日〜4日で赤みが薄くなり、かゆみが軽減するため、ほとんどの方がこの段階で塗るのをやめてしまいます。しかし、アトピー性皮膚炎の炎症は3〜4日で完全に治まるわけではありません。早期に治療を中断するとすぐに再発してしまいます。

 

指でつまむと硬さを感じるのは、まだ炎症が残っている証拠です。硬さが感じられる間は、塗り続けましょう。約2週間で硬さがなくなり、赤みもかゆみも軽減します。

スキンケアをしっかり行う

肌のターンオーバーが正常に行われるように、洗浄や保湿などのスキンケアをしっかりと心掛けましょう。皮膚の清潔さを保つために、汗や汚れは速やかに落としてください。洗顔や入浴の後は、こまめに保湿することがポイントです。

肌を掻かない

かゆみがつらいときは、冷たい水で洗ってから薬を塗ることで、かゆみが和らぐことがあります。また、凍らせた保冷剤や冷たいタオルで冷やすと、かゆみが軽減することもあります。ただし、冷やしすぎないように注意してください。爪は短く、丸みを帯びた形に整え、無意識に掻いてしまうのを防ぎましょう。

紫外線対策を行う

紫外線によるダメージにも注意しましょう。日焼け止めを塗る、日傘や帽子を使用する、UVカットの服を着る、サングラスをかけるなどの対策を心がけてください。

生活習慣を整える

肌のターンオーバーは、ストレスや偏食、睡眠不足によって乱れることがあります。これを改善するためには、ビタミン類を積極的に摂取し、バランスのとれた食事を心掛けましょう。不規則な生活習慣を改善することは、ターンオーバーの正常化に役立ちます。

色素沈着の治療方法

塗り薬や飲み薬を組み合わせることによって、色素沈着を薄くするペースを早めることが可能です。色素沈着が気になる場合は、医師に相談してみましょう。

塗り薬

トレチノインクリームは、肌の再生を促進し、古い表皮とともにメラニン色素を押し出すことで、色素沈着の改善に効果がある外用薬です。加速された表皮の細胞分裂によって皮膚の再生が促進されます。

 

ハイドロキノンクリームは、メラニンの生成過程に関与するチロシナーゼという酵素の活性を抑えることによって、シミを薄くする効果がある外用薬です。色素細胞の活動を抑制することで、色素沈着の改善に寄与します。

飲み薬

トラネキサム酸は、シミの原因となるメラニン色素の生成を抑制し、炎症を抑える作用があります。

 

ビタミンC錠は、メラニン色素の産生を抑える効果があり、チロシナーゼの活性を阻害します。

 

ビタミンE錠は、紫外線照射時に増加する脂質の過酸化を抑制し、メラニン合成シグナルを抑制するのに効果的です。ビタミンCと併用することで、美白作用を高める効果が期待できます。

レーザー治療

レーザー治療は、メラニンを破壊する効果がありますが、レーザー照射によって新たに皮膚に炎症が起こるリスクもあります。

アトピー性皮膚炎は炎症をコントロールすることが大切!皮膚科を受診しよう

アトピー性皮膚炎の治療で最も重要なのは、炎症をコントロールすることです。放置せず初期の段階で皮膚科を受診し、症状の改善と再発予防を目指しましょう。

忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ

治療が長期にわたることがあるため、忙しくて病院を受診する時間が取れない場合には、オンライン診療を利用するのが良いかもしれません。

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まとめ

アトピー性皮膚炎が引き起こす色素沈着は、炎症や刺激が原因でメラニンが過剰に生成されることから生じます。ステロイド外用薬が原因だと誤解されがちですが、実際には適切に使用しないことが色素沈着を悪化させる要因です。色素沈着を予防するためには、治療を中断せず、スキンケアをきちんと行い、刺激を避けることが大切です。色素沈着が気になる場合は、治療を受けましょう。肌を守るためには、皮膚科を受診し炎症をコントロールすることが大切です。

コメント 皮膚の色素沈着は跡が残る時間が早く終わらないかなと悩まれる方は多いです。ただ、おすすめする方法としてはしっかり炎症を抑えて良い状態を維持することが最も大切だと思います。ステロイドを使うということを怖がるあまり処方された通りの塗り方をしなかったり、すぐに塗りやめてしまうことは思った通りの効果がでないリスクが増えてしまいます。塗り方が分からなかったりする場合にはしっかりと聞いてみましょう。

監修医コメント

医師
高藤 円香

皮膚の色素沈着は跡が残る時間が早く終わらないかなと悩まれる方は多いです。ただ、おすすめする方法としてはしっかり炎症を抑えて良い状態を維持することが最も大切だと思います。ステロイドを使うということを怖がるあまり処方された通りの塗り方をしなかったり、すぐに塗りやめてしまうことは思った通りの効果がでないリスクが増えてしまいます。塗り方が分からなかったりする場合にはしっかりと聞いてみましょう。

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監修医師 高藤 円香
経歴は防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科 保有免許・資格は皮膚科専門医
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