アトピー性皮膚炎に対する効果的なかゆみ止め対策は?


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更新日:2025年04月7日
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かゆみが起こる仕組み
かゆみとは「引っ掻きたいと感じる不快な感覚」ですが、実は体を守るための重要な防衛反応の一つです。皮膚に異物が付着した時、その場所にかゆみを起こして注意を促し、掻く行為で異物を取り除こうとすることから、生体防御機能の一種と考えられています。
また、単なる不快感ではなく、身体の異常を知らせるシグナルにもなっています。
肥満細胞とヒスタミン
皮膚には「肥満細胞」という細胞があり、普段は安定していますが、皮膚に刺激が加わると活性化します。肥満細胞は刺激を受けると、「ヒスタミン」という物質を分泌します。ヒスタミンは「かゆみ物質」として知られており、これが皮膚の神経に働きかけて、「かゆい」という情報を脳に送ります。
知覚神経と神経ペプチド
皮膚に存在する神経のうち、「知覚神経」はかゆみを伝える役割を担っています。知覚神経は、肥満細胞から分泌されたヒスタミンの刺激を受けると、脳に向かってかゆみを伝えると同時に、神経の末端から「神経ペプチド」という物質を放出します。神経ペプチドは再び肥満細胞を刺激し、さらなるヒスタミンを放出させます。この結果、かゆみがどんどん強くなり、広がってしまいます。
かゆみの悪循環
一度かゆみが起こると、私たちはその部分を引っ掻いてしまいます。掻くことでかゆみを一時的に抑えられるものの知覚神経を刺激し、神経ペプチドの放出を促してしまいます。すると、肥満細胞がさらにヒスタミンを放出するため、かゆみが一層強まってしまうのです。
また、掻くことで皮膚の水分が失われ、乾燥が進みます。すると、アレルゲンが侵入しやすくなり、わずかな刺激にも敏感になってしまいます。かゆみは「掻く」という行動によって悪化する悪循環に陥りやすいのです。
バリア機能の低下
健康な皮膚の表皮は、水分と皮脂によって外部の異物を防ぐバリア機能を持っています。しかし、ドライスキンでは、水分や皮脂が失われることで、このバリア機能が低下します。これは、外部の刺激に対して無防備な状態です。ドライスキンは、わずかな刺激にも敏感に反応し、かゆみを引き起こしてしまいます。
アトピー性皮膚炎でかゆいときの対処方法は?
アトピー性皮膚炎によるかゆみは、主に皮膚の炎症や乾燥によって引き起こされます。次の方法を試してみましょう。
掻かない
皮膚に傷ができるとバリア機能が壊れ、かゆみの悪化につながります。掻いても傷をつくらないように工夫をしましょう。注意していても、無意識に掻いてしまうこともあります。
寝ている間に無意識に掻きむしるのを防ぐために、綿製の布手袋を使用しましょう。また、深爪にならないように注意しながら爪を丸く整えてください。睡眠の際には長袖・長ズボンの綿の下着を着ることで、直接皮膚を掻くのを防げます。それでも手が下着の下に入ってしまう場合は、袖口や裾を伸縮包帯で巻いて固定してみましょう。
患部を冷やす
かゆみが我慢できない時には、冷やすことが効果的です。皮膚が温まると血行が促進され、かゆみが強くなるため、局所的なかゆみには氷枕やアイスノンを布やタオルで包んで当てるとよいでしょう。
全身のかゆみが気になる場合は、室温を調整してください。寝ている間のかきむしりを防ぐために、夏は寝る前に弱めのクーラーをかけ、室温を2〜3℃下げると効果が期待できます。冬は寝室の暖房を控えめにし、電気毛布の使用は避けるようにするとよいでしょう。
薬を使う
かゆみを抑えるために薬が処方された場合は、医師の指示に従い、用法・用量を守って正しく使用しましょう。適切に塗ったり、内服したりすることで、かゆみの悪化を防ぎ、症状をコントロールしやすくなります。
かゆみを抑えるには薬を正しく使おう
かゆみを抑えるには、薬の使い方に注意しましょう。炎症が強いときにはステロイド外用薬が効果的です。
ステロイド外用剤の種類と選び方
ステロイド外用薬は、一般的に作用の強さによって5段階に分類されます。市販薬の多くは「弱い」「普通」「強い」に該当し、症状や部位、年齢によって適切なランクを選ぶことが大切です。たとえば、肌のバリア機能が未熟な子どもや赤ちゃんには刺激が少ないランクを、大人でも顔や陰部などのデリケートな部位には弱めのものを使用することが望ましい場合があります。自己判断で選ぶと副作用を招く恐れがあるため、医師や薬剤師に相談の上で自分に合ったものを使用しましょう。
剤形の選択も重要になります。軟膏は刺激性が少なく幅広い湿疹に使用できます。クリームやローションはさらっとしていて使いやすい反面、刺激性があるため注意しましょう。皮膚の状態に応じて適切に使い分けることが大切です。
ステロイド外用剤の塗り方
ステロイド外用剤を塗る際は、適切な量を使用することが重要です。塗布量の目安として「FTU(フィンガーチップユニット)」が推奨されています。これは「1FTU=大人の人差し指の第1関節までの長さ」の量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の範囲に塗れます。
塗る際には、薄くのばしすぎるとムラができ、治りが遅くなるかもしれません。適量を塗り、テカリが出る程度に伸ばすと効果的です。また、保湿剤と併用する場合は、まず保湿剤を塗った後に、炎症のある部位へステロイド外用剤を塗り重ねるようにしてください。
市販薬と処方薬の違いは
「とても強い(very strong)」や「最も強い(strongest)」に分類されるステロイド外用薬は、専門家の管理が必要なため医療用医薬品としてのみ取り扱っています。ドラッグストアで購入できる市販のステロイド外用薬は、「弱い(weak)」「普通(medium)」「強い(strong)」の3ランクです。市販薬を選ぶ際には、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
アトピー性皮膚炎でかゆみが強いときの治療方法
市販薬でも症状が改善しない場合は、放置せず皮膚科で治療を受けましょう。放置することによって、かゆみが悪化する可能性があります。
アトピー性皮膚炎の治療には、塗り薬を使う「外用療法」と、飲み薬や注射薬を用いる「全身療法」の2種類があります。基本となるのは「外用療法」です。
塗り薬
保湿外用薬
皮膚の乾燥を改善し、バリア機能を回復させるための塗り薬です。乾燥を防ぐことでかゆみを抑える効果もあります。入浴後は皮膚が乾燥する前に塗布し、症状が落ち着いた後も継続することが重要です。
ステロイド外用薬
炎症を抑える塗り薬で「必要な量」を「必要な期間」しっかり塗ることが大切です。
外用免疫抑制剤
ステロイド外用薬とは異なる作用で炎症を抑える塗り薬です。ステロイドの副作用が出やすい顔や首などの湿疹に適しています。
飲み薬
抗ヒスタミン薬
かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑える薬です。かゆみを軽減し、掻きむしりを防ぐことで症状の悪化を防ぎます。
ステロイドの飲み薬
炎症を強力に抑える効果がありますが、副作用のリスクもあるため、短期間の使用が基本です。
免疫抑制薬
炎症を引き起こす免疫の働きを抑える薬です。重症のアトピー性皮膚炎に対して、医師の管理のもとで使用します。
漢方薬
体質や症状に応じて処方されます。皮膚の炎症やかゆみの改善を目的として使用されます。
そのほかの治療法
注射薬
免疫細胞が産生する炎症物質の働きを抑え、皮膚の炎症を軽減する治療法です。重症のアトピー性皮膚炎に対して使用し、定期的な投与が必要となる場合があります。
紫外線療法
医療機器を用いて紫外線を照射し、皮膚の炎症を抑える治療法です。特定の波長の紫外線を利用することで、炎症を引き起こす免疫反応を調整し、症状の改善を図ります。
アトピー性皮膚炎のかゆみ予防
かゆみの悪化を防ぐため、早めの対策を心がけましょう。日常生活の環境を整えたり、スキンケアをしたり、生活習慣に気をつけたりすることが大切です。
スキンケアの徹底
汗や汚れは悪化要因となります。汗をかいたらできるだけ早くシャワーで洗い流し、難しい場合は濡れたタオルでやさしく拭き取りましょう。洗いすぎると肌のバリア機能が損なわれるため、優しく丁寧に洗うことを心がけてください。
肌が乾燥するとバリア機能が低下し、外部の刺激を受けやすくなります。そのため、保湿を欠かさず行い、肌のうるおいを守ることが大切です。
衣服の選択
肌にやさしいものを選ぶことがポイントです。ナイロンやポリエステルなどの合成繊維は刺激となるため、直接肌に触れないよう注意しましょう。綿素材の下着や衣類を選ぶことで、肌への負担を軽減できます。寝る際には無意識に掻くことを避けるため、長袖、長ズボンを着用することもおすすめです。
環境の管理
ダニやカビなどのハウスダストは、アトピー性皮膚炎の原因となり、かゆみを引き起こします。部屋はこまめに掃除し、ふとんやシーツ、枕カバーなども定期的に洗濯して清潔に保つことが重要です。皮膚の乾燥を防ぐために、加湿器を利用するなどして室内の湿度を適度に維持しましょう。
食生活の改善
アルコールや香辛料を含む食事は、かゆみを悪化させる要因となることがあります。刺激の強い食べ物や飲み物を控え、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
ストレス管理
ストレスが交感神経を刺激し、ノルアドレナリンというストレスホルモンを放出することで、免疫細胞である抗炎症性マクロファージの働きを低下させます。マクロファージの役割は、炎症を抑えることです。ストレスによってその機能が弱まり、結果として皮膚の炎症が悪化します。ストレスを受けた皮膚では細胞の死骸が蓄積し、それがさらなる炎症の引き金となります。
日常的に楽しめる趣味を持つことや、リラックスできる時間を意識的に作ることが大切です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身の負担を軽減することで、症状の悪化を防ぎましょう。
かゆみが辛いときは我慢せず皮膚科を受診しよう
かゆみが強くなると、無意識に掻いてしまい、皮膚を傷つけてさらに症状が悪化することがあります。辛いときは我慢せずに皮膚科を受診し、適切な治療を受けてください。自己判断せず医師の指示に従いましょう。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
忙しくて病院を受診する時間が取れない場合には、オンライン診療を活用するのも一つの方法です。症状に応じて薬の処方も可能なため、適切な治療を受ける手段として検討してみるとよいでしょう。
オンライン診療とは
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まとめ
アトピー性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンの作用や知覚神経の影響、皮膚のバリア機能低下によって引き起こされます。出来る限り掻かないよう工夫し、薬を適切に使用しましょう。また、スキンケアの徹底や衣類・生活環境の調整、ストレス管理によって、かゆみを軽減することも可能です。かゆみが辛い場合は我慢せず、皮膚科を受診して適切な治療を受けることが大切です。

医師
松澤 宗範

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皮膚科, 形成外科, 総合内科, 美容外科, 美容皮膚科, 先端医療, 再生医療
2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
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