テノーミン錠(アテノロール)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説
更新日:2024年02月29日
テノーミン錠(アテノロール)とは
テノーミン錠は心臓選択性β遮断剤としてアストラゼネカ株式会社が承認を受けて製造販売をしていましたが、2021年7月からは太陽ファルマ株式会社が製造販売を行っています。
テノーミン錠は有効成分であるアテノロールの含量違いでテノーミン錠25(アテノロール含量:25mg)とテノーミン錠50(アテノロール含量:50mg)の2種類が製造販売されています。
テノーミン錠(アテノロール)の成分について
テノーミン錠の有効成分であるアテノロールはβ遮断薬(βブロッカー)に分類される医薬品成分です。
β受容体は本来アドレナリンやノルアドレナリンといったカテコールアミンと結合して平滑筋収縮などの作用を発現しますが、β遮断薬はカテコールアミンと競合的に拮抗してβ受容体と結合することで本来の作用が起きることを防ぎます。
β受容体にはβ1やβ2などのサブタイプがあり、β1は心臓、β2は気管支や血管に存在します。アテノロールはβ受容体の中でもβ1受容体への選択性が高いため、気管支への影響は低いことが知られています。
以上のことから、アテノロールはβ1受容体を選択的に遮断することで抗狭心症作用や抗不整脈作用を発揮します。
アテノロールは世界中で使われている医薬品成分のひとつであり、現在では80カ国以上で製造販売されています。そのため、世界保健機関(WHO:World Health Organization)がアテノロールを世界の基準薬の意味を持つエッセンシャルドラッグに挙げています。
テノーミン錠(アテノロール)はどんな症状に効果がある?
テノーミン錠は本態性高血圧症(軽症~中等症)・狭心症・頻脈性不整脈(洞性頻脈、期外収縮)に対して効果があります。
高血圧は大きく本態性高血圧と二次性高血圧に分類でき、高血圧患者の85%ほどが本態性高血圧だと報告されています。
ホルモン分泌の異常や薬の副作用など原因が明らかな高血圧症を二次性高血圧と呼び、その他の原因が特定できない高血圧は本態性高血圧に分類されます。
本態性高血圧はいくつかの原因が重なって発症すると考えられており、生活習慣や体質など様々な因子が関連しています。テノーミン錠は高血圧の中でも軽症~中等症の本態性高血圧症に対して有効です。
テノーミン錠(アテノロール)の用法・用量は?
本態性高血圧症・狭心症・頻脈性不整脈のいずれの疾患に対しても成人には1日1回アテノロールとして50mg(テノーミン錠50:1錠、テノーミン錠25:2錠)を服用します。
年齢や症状によって適宜増減が可能ですが、1日アテノロールとして100mg(テノーミン錠50:2錠、テノーミン錠25:4錠)が上限です。
テノーミン錠(アテノロール)の副作用
テノーミン錠を服用したときに起こる副作用として徐脈・起立性低血圧・呼吸困難・血小板減少症・発疹・頭痛・めまいなどが報告されています。
テノーミン錠(アテノロール)に関する注意点
基本的な注意事項
・テノーミン錠の服用により徐脈や低血圧が起きた場合には、医師の指示のもとでテノーミン錠の減量または中止を行い、必要に応じて抗コリン薬であるアトロピンを服用します。
・手術を行う前の48時間は可能な限り服用を避けることが望ましいです。
・特に服用を開始したばかりの方はめまいやふらつきが現れることがあるため、自動車の運転もしくはその他危険を伴う機械の操作は注意してください。
・急に服用を中止すると症状の悪化や心筋梗塞を引き起こす可能性があるため、休薬する場合は医師の指示にしたがって少しずつ減量してください。(狭心症の患者がテノーミン錠の有効成分であるアテノロールと似た作用を示すプロプラノロール塩酸塩の服用を急に中止した際に症状の悪化・心筋梗塞の発症を認めた症例あり)
服用できない場合がある
以下に該当する場合はテノーミン錠を服用できません。
・糖尿病性もしくは代謝性アシドーシスのある患者(理由:アシドーシスによる心筋収縮力の抑制を増強するおそれがあるため。)
・高度または症状が現れている徐脈・ⅡもしくはⅢ度の房室ブロック・洞房ブロック・洞不全症候群のある患者(理由:これらの症状が悪化するおそれがあるため。)
・心原性ショックのある患者(理由:心機能を抑制することで症状が悪化するおそれがあるため。)
・肺高血圧による右心不全のある患者(理由:心機能を抑制することで症状が悪化するおそれがあるため。)
・うっ血性心不全のある患者(理由:心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがあるため。)
・低血圧症の患者(心機能を抑制することで症状が悪化するおそれがあるため。)
・壊疽など重度の末梢循環障害のある患者(理由:症状が悪化するおそれがあるため。)
・未治療の褐色細胞腫の患者(理由:テノーミンの服用により急激に血圧が上昇することがあるため。)
なお、褐色細胞腫の患者については、急な血圧上昇を防ぐためにα遮断薬による治療を開始、さらにα遮断薬と併用することでテノーミン錠を服用できます。
併用に注意が必要な医薬品がある
テノーミン錠を服用するときは以下の医薬品成分と併用することがないか注意が必要です。
・相互に交感神経抑制作用を増強する可能性がある成分
例:レセルピン・β遮断剤(点眼剤を含む)
・テノーミン錠の作用により血糖降下作用が増強する可能性がある成分(低血糖状態の症状(頻脈など)をテノーミン錠がマスクすることもある)
例:血糖降下剤(インスリン・トルブタミドなど)
・相互に心収縮力抑制作用や降圧作用を増強する可能性がある成分
例:カルシウム拮抗剤(ベラパミル・ニフェジピンなど)
・徐脈、心不全など過度の心機能抑制が起きる可能性がある成分
例:クラスⅠ抗不整脈剤(ジソピラミド・プロカインアミドなど)・クラスⅢ抗不整脈剤(アミオダロンなど)
・テノーミン錠の降圧作用が減弱する可能性がある成分
例:非ステロイド性抗炎症剤(インドメタシンなど)
上記以外にもテノーミン錠との併用には注意が必要な成分があります。テノーミン錠を服用するときは医師や薬剤師にお薬手帳を見せるなどして併用薬を確認してもらいましょう。
妊娠・授乳中の方は医師へ相談
テノーミン錠の有効成分であるアテノロールは胎盤を通過することが報告されています。また、妊娠中も高血圧治療を目的としてテノーミン錠を服用していた妊婦で胎児の発育遅延が認められます。
また、アテノロールは母乳中へ移行することも分かっているため、基本的に授乳中はテノーミン錠の服用は避けるか、服用した後は授乳を中止する必要があります。
さらに、妊娠・授乳中にテノーミン錠を服用した患者で、新生児に低血糖や徐脈が現れたという報告があります。
いずれにしても、妊婦や授乳婦、妊娠している可能性がある方がテノーミン錠を服用しようとする場合は必ず医師に相談してください。
高齢者の服用は注意が必要
一般に高齢者は心機能などが低下しているため、テノーミン錠の服用によって過度の血圧低下や徐脈・心停止などの心機能抑制に注意が必要です。また、脳梗塞などが生じる可能性があるため、必要以上に血圧を下げてしまうことは好ましくありません。
テノーミン錠(アテノロール)と同じ成分の市販薬はある?
現在、医療用医薬品のテノーミン錠に含まれている有効成分であるアテノロールを含む市販薬は販売されていません。テノーミン錠を高血圧症の治療で用いるときは医師による血圧の管理が必要です。
また、狭心症や頻脈性不整脈の治療に用いるときも症状の経過を考慮しながら治療を継続していく必要があります。病院もしくはクリニックで医師に相談して、テノーミン錠を用いた適切な治療を受けましょう。
また、テノーミン錠との飲み合わせを考慮する医薬品成分があるため、医療用医薬品や市販薬を問わず服用している医薬品は医師や薬剤師に知らせておきましょう。
参考資料
テノーミン錠50/ テノーミン錠25
eEML – Electronic Essential Medicines List
高血圧の概要 – 04. 心血管疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
製造販売承認の承継及び販売移管のご案内|アストラゼネカ株式会社/太陽ファルマ株式会社
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Webディレクター / 薬剤師
今後の医療に変化をもたらすために、デジタルチーム医療を発足。
「メディアから医療を支える」をミッションに活動している
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