【医師監修】かゆいニキビの原因は?やってはいけない行動と正しい対処法


更新日:2025年06月10日

なぜニキビがかゆくなるのか?
ニキビの「かゆみ」は、単なる不快感にとどまらず、肌状態の変化や異常のサインかもしれません。乾燥や炎症、皮膚の常在菌バランスなど、複数の要因が複雑に関係しているため、原因を正しく知ることがケアの第一歩です。
乾燥によるバリア機能の低下
肌が乾燥すると、元々持っている「バリア機能」が弱くなり、外部からの刺激に敏感になります。これによって、少しの刺激にも反応して、かゆみを感じやすくなってしまうのです。
乾燥した肌は水分を守ろうとして皮脂を過剰に分泌します。その結果、毛穴に皮脂が詰まりやすくなり、新たなニキビをつくる原因にもなります。乾燥はかゆみだけでなく、ニキビの悪化にもつながるため注意しましょう。また、肌のバリア機能を担うセラミドやNMFが不足していることも多く、これがバリア機能低下の主な原因となります。皮脂量の調整だけでなく、セラミドやNMFなどの保湿成分をしっかり補うスキンケアが重要です。
炎症によるヒスタミンの分泌
ニキビが進行して赤く腫れてくると、「炎症性ニキビ」と呼ばれる状態になります。この時、毛穴の中ではアクネ菌に対抗するために免疫細胞が働き、放出される物質がヒスタミンです。
ヒスタミンは、神経を刺激してかゆみを引き起こすため、炎症性のニキビにはかゆみを伴うことがあります。アレルギー体質の人は炎症がなくてもヒスタミンが分泌されやすく、よりかゆみを感じやすい傾向にあります。ヒスタミンは主に皮膚の「マスト細胞(肥満細胞)」という免疫細胞から分泌されています。これらの細胞は、細菌などの刺激を受けると「TLR(Toll-like receptor)」というセンサーが反応し、かゆみや炎症を引き起こす物質(サイトカインなど)を放出します。この免疫の働きが、ニキビによるかゆみを強めていると考えられています。
顔ダニの増殖と皮脂バランスの乱れ
「顔ダニ」と聞くと驚くかもしれませんが、誰の肌にも存在しているごく小さなダニです。通常は問題ありませんが、皮脂の分泌が多くなると顔ダニが増殖し、死骸や排せつ物が肌に刺激を与えてしまうことがあります。
皮脂が多い肌は顔ダニが増えやすい環境です。顏ダニによる刺激がアレルギー反応を引き起こし、かゆみや炎症につながることがあります。
【部位別】かゆいニキビができる原因と対策
ここでは、かゆいニキビができやすい代表的な部位ごとに、考えられる原因と対策のポイントをご紹介します。
顎・フェイスラインのニキビと摩擦刺激
マフラーや髪の毛、襟元などが肌に触れることで摩擦が起き、毛穴に雑菌が入りやすくなります。ひげ剃りや産毛処理もバリア機能を低下させ、炎症やかゆみを引き起こす原因になります。さらに、近年ではマスクによる物理的な刺激も、顎やフェイスラインのニキビの一因として増えています。特に長時間の着用や素材によっては、肌への負担が大きくなることもあります。摩擦を軽減するためには、シルクや柔らかい不織布などの肌あたりのやさしい素材のマスクを選ぶのがおすすめです。刺激を避け、剃毛後やマスク着用後には保湿ケアを忘れずに行いましょう。
背中のニキビと乾燥・衣類の刺激
衣服との摩擦や汗による刺激、入浴後の乾燥が原因で、バリア機能が低下しやすい部位です。洗い残したシャンプーやボディソープも毛穴詰まりの原因になります。入浴後は背中も保湿をしましょう。衣類は通気性の良い素材を選び、洗い残しにも注意してください。
頬のニキビとマスク・ヘアスタイルの影響
マスクや髪の毛の接触、強い洗顔などの刺激で乾燥が進み、かゆみやニキビが起きやすくなります。洗顔は優しく、保湿も丁寧に行いましょう。ヘアスタイルを見直したり、マスクの素材を肌にやさしいものに変えるのも一つの方法です。
おでこのニキビと皮脂分泌・前髪の刺激
皮脂分泌が多く、前髪や整髪料が刺激となって毛穴が詰まりやすい部位です。前髪や整髪料が肌に触れないようにし、清潔を保ちましょう。
頭皮のニキビと蒸れ・洗い残し
蒸れやすく、シャンプーの洗い残しや整髪料の影響で毛穴が炎症を起こすことがあります。不衛生な寝具や帽子も原因になります。頭皮をしっかり洗い、シャンプーは丁寧にすすぐよう心がけましょう。蒸れやすい環境を避け、枕カバーなども清潔に保つことが大切です。
かゆいニキビにやってはいけないNG行動
ニキビの悪化や跡の原因になる、注意したい2つのNG行動に注意してください。
掻く
かゆいからといって、掻いたりかきむしったりするのはNGです。掻くことで皮膚のバリア機能が壊れ、サイトカインなどの物質が放出されてかゆみが悪化します。さらにヒスタミンや神経ペプチドが分泌され、かゆみが広がる原因にもなります。元々かゆみがなかった部分までかゆく感じるようになる可能性があるため注意しましょう。
また、掻き壊すことで皮膚に傷ができ、黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込むと二次感染を起こすリスクも高まります。炎症が長引くと、色素沈着や肥厚性瘢痕(皮膚が盛り上がるタイプの傷跡)として残る可能性もあるため、かゆみを感じても掻かずに冷やす・保湿するなどの対処を心がけましょう。
潰す
かゆみが気になってニキビを触っているうちに、無意識に潰してしまうこともありますが、これも避けるべき行動です。潰すことで皮脂が毛穴に残ったまま炎症が悪化したり、毛穴内部で破裂してニキビ跡が残るおそれがあります。見た目が気になって潰してしまう方も多いですが、状態を悪化させてしまう可能性があるためやめましょう。
また、潰したあとは色素沈着や瘢痕が残るリスクも高まります。特に、ケロイド体質など、瘢痕ができやすい肌質の方は、潰すことで深い傷跡になってしまう可能性があるため、より注意が必要です。
かゆいニキビの正しい対処法
症状や肌質によってかゆみの強さは個人差があります。ニキビがかゆいときは次に紹介する方法を参考にしてみてください。
正しいスキンケア
洗顔は、ゴシゴシ擦らず優しく洗うことが大切です。洗浄力が強すぎる洗顔料は、必要な皮脂まで落としてしまい、肌を乾燥させかえってニキビを悪化させる原因になります。
かゆみの主な原因の一つが「乾燥」です。肌が乾くとバリア機能が低下し、刺激に敏感になります。洗顔後は化粧水だけでなく、乳液やクリームで水分の蒸発を防ぎ、しっかり保湿しましょう。
冷やす
かゆみが強い場合は、患部を冷やすことで一時的に症状を和らげられます。タオルで包んだ保冷剤や氷をあてて皮膚温度を下げると、かゆみを引き起こすヒスタミンの分泌を抑える効果が期待できます。
ただし、冷やしすぎには注意が必要です。直接氷を肌に当てると凍瘡(とうそう)と呼ばれる皮膚の損傷を引き起こす可能性があるため、必ずタオルなどで包んでから使用し、冷却時間は15分以内を目安にしましょう。爪で掻いたり、タオルでこすったりすることは避けましょう。
生活習慣の改善
ニキビを予防・改善するには、肌の外側だけでなく、内側からのケアも大切です。バランスの良い食事を心がけ、睡眠をしっかりとりましょう。また、ストレスは皮脂分泌やホルモンバランスに影響を与えるため、溜めないようにしてください。枕カバーやメイク道具を清潔に保ち、髪が肌に触れないよう工夫することも効果的です。
皮膚科で治療を受ける
市販薬やセルフケアで改善しない場合や、かゆみや炎症が強い場合は、皮膚科での治療を検討しましょう。症状に応じて薬の処方や専門的な治療が受けられます。自己流のケアでは難しいニキビにも対応できます。
自己判断は禁物!ニキビではない皮膚疾患の可能性も
肌にかゆみがあるからといって、必ずしもニキビが原因とは限りません。ここでは、ニキビと間違いやすい主な皮膚疾患を紹介します。
蕁麻疹
皮膚の一部が突然赤く盛り上がり、数時間以内に跡形もなく消えるのが特徴です。多くの場合、強いかゆみを伴いますが、人によってはチクチクする感じや焼けるような感覚が出ることもあります。膨疹の大きさは小さなものから広範囲に及ぶものまで様々です。複数の膨疹がつながって広がるケースもあります。通常、ひとつの膨疹は数十分から数時間で自然に消失します。
マラセチア毛包炎
皮膚常在菌のひとつであるマラセチア(真菌=カビの一種)が毛穴の奥にある毛包で増殖し、炎症を起こすことで発症する皮膚疾患です。見た目はニキビによく似た赤いブツブツですが、原因となる菌が異なるため、治療法も異なります。
主な症状は、直径2〜3mmほどの均一な赤い発疹で、かゆみを伴うのが特徴です。背中、胸、肩、首の後ろ、二の腕、おしりなど、毛が生えている部位に多く見られます。まれに刺激感や痛みを感じることもあります。
脂漏性皮膚炎
皮脂の分泌が多い部位に赤み・かゆみ・フケのような皮膚の剥がれが現れる慢性の皮膚疾患です。頭皮、顔(鼻・眉・頬)、耳の中や後ろ、胸や背中などに症状が出やすく、再発を繰り返す傾向があります。
原因のひとつとされているのが、皮膚に常在するマラセチア菌です。洗顔不足、皮脂の過剰分泌、ストレス、睡眠不足、栄養の偏りなどが悪化の要因とされています。再発を繰り返すことが多いため、日常的なスキンケアや生活習慣の見直しも重要です。
あせも・湿疹
あせも(汗疹)は、汗を大量にかいたときに汗の出口が詰まり、皮膚の中に汗がたまって起きる炎症です。赤いブツブツや小さな水ぶくれ、かゆみが特徴で、夏に多く、首や背中、わきなど汗がたまりやすい場所に出やすくなります。
湿疹(皮膚炎)は、外的刺激(紫外線、化学物質など)や内的要因(アレルギー体質、乾燥など)によって起こる皮膚の炎症です。かゆみや赤み、小さなブツブツ、水疱、ジュクジュクした状態や慢性的な乾燥がみられることもあります。
どちらもニキビと症状が似ていますが、原因が異なるため治療法も異なります。
かゆいニキビは我慢せず皮膚科を受診しよう
かゆみを伴うニキビは、自己判断でのケアではなかなか改善しないこともあります。症状が長引いたり悪化する前に、早めに皮膚科を受診することが大切です。医師による適切な診断と治療を受けることで、原因に合った対応ができ悪化を防ぎやすくなります。
忙しくて通院する時間がない方にはオンライン診療もおすすめ
仕事や家事で忙しく、通院の時間を確保するのが難しいという方には、オンライン診療という選択肢があります。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットに接続できるスマートフォンやパソコンなどを使い、医師とビデオ通話で診察を行う医療サービスです。予約、問診、診察、処方箋の発行、支払いまでがすべてオンライン上で完結できます。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKUは、オンライン診療から薬の受け取りまでをアプリで一括して行えるサービスです。予約や診察、お薬手帳の管理、かかりつけのクリニック・薬局の登録など、医療をスムーズに受けられる機能が備わっています。処方薬は、全国どこでも当日または翌日に自宅で受け取れるため、忙しい方にとって非常に便利です。
まとめ
かゆみを伴うニキビには、乾燥や炎症、外部刺激など複数の要因が関わっていることが多く、つい掻いたり潰したりしてしまうかもしれません。しかし、そうした行動は症状の悪化やニキビ跡の原因になるおそれがあります。再発を防ぐためには、スキンケアや生活習慣を見直すとともに、必要に応じて皮膚科で適切な診察を受けることが重要です。自己判断に頼らず、正しいケアで肌トラブルを予防しましょう。

医師
松澤 宗範

この記事には医師による認証マークである「メディコレマーク」が付与されています。
当コラムの掲載記事に関するご注意点
- 当コラムに掲載されている情報については、執筆される方に対し、事実や根拠に基づく執筆をお願いし、当社にて掲載内容に不適切な表記がないか、確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。
- 当コラムにおいて、医療及び健康管理関連の資格を持った方による助言、評価等を掲載する場合がありますが、それらもあくまでその方個人の見解であり、前項同様に内容の正確性や有効性などについて保証できるものではありません。
- 当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。
- 前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は一切責任を負うものではありません。


皮膚科, 形成外科, 総合内科, 美容外科, 美容皮膚科, 先端医療, 再生医療
2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
SOKUYAKUの使い方
-
STEP1
診療予約
-
STEP2
オンライン問診
-
STEP3
オンライン診療
-
STEP4
オンライン服薬指導
-
STEP5
おくすり配達
※お薬の処方は医師の診察により薬が処方された場合に限ります。