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新型コロナウイルス感染症の回復にかかる期間|ワクチンや治療薬で回復期間は変化するか

監修医師 木村眞樹子
更新日:2024年07月18日

更新日:2024年07月18日

新型コロナウイルス感染症の回復にかかる期間|ワクチンや治療薬で回復期間は変化するかのイメージ
新型コロナウイルス感染症は病原体であるSARS-COV-2に感染後、症状があらわれてから徐々に回復していきます。

この流れは一般的な感染症と同じですが、新型コロナウイルス感染症の場合の回復にかかる期間どのくらいなのでしょうか?

今回は、新型コロナウイルス感染症の回復期間について、ワクチンや治療薬との関連も含めて詳しく解説します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国で集団発生が報告されて以降、世界中へ感染が拡大しているSARS-CoV-2と呼ばれるウイルスに感染することによって起こる呼吸器感染症のひとつです。

 

SARS-CoV-2に感染してから症状が出るまでの期間を指す潜伏期間は14日以内であり、特に感染から5日前後でCOVID-19の症状があらわれることが多いと言われています。

 

また、SARS-CoV-2にはいくつかの変異株が存在することが明らかになっており、個々の変異株の詳細まで全てが解明されているわけではありませんが、従来株と比べて感染力や重症化しやすさなどに違いがあることを示唆する研究成果がいくつか報告されています。

典型的な症状

COVID-19患者にあらわれる典型的な症状として、発熱・咳・息切れ・筋肉痛・頭痛・咽頭痛・味覚異常・嗅覚異常などが報告されています。

 

これらのうち、発熱・咳・息切れのいずれかの症状が出る患者は70%程度いることが明らかになっています。また、他の呼吸器感染症ではあまり認められない嗅覚異常や味覚異常を引き起こすことがCOVID-19の特徴のひとつです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度分類

COVID-19はあわられる症状や酸素飽和度によって重症度が軽症・中等症Ⅰ・中等症Ⅱ・重症に分類されており、重症度によって症状の経過や治療方針が異なります。

 

重症度は回復期間にも影響するため、まずは厚生労働省から通知されている重症度分類に対する基準を整理します。

<軽症>
・酸素飽和度:SpO2≧96%
・臨床状態:呼吸器症状なしもしくは咳のみで呼吸困難なし、いずれの場合も肺炎所見なし
<中等症Ⅰ>
・酸素飽和度:93<SpO2<96%
・臨床状態:呼吸困難あり、肺炎所見あり
・呼吸不全:なし
<中等症Ⅱ>
・酸素飽和度:SpO2≦93%
・臨床状態:酸素投与が必要
・呼吸不全:あり
<重症>
・臨床状態:ICU(集中治療室)に入室もしくは人工呼吸器が必要
感染から回復まで

 

COVID-19は病原体であるSARS-CoV-2に感染後、感染は成立していても症状が出ない潜伏期間を経て発症して徐々に回復していきます。これは一般的な感染症と同じ流れですが、COVID-19は他の一般的な呼吸器感染症比較して潜伏期間が長いという特徴があります。

 

季節性のインフルエンザの潜伏期間は1~3日といわれている中で、COVID-19の潜伏期間は14日以内で、特に5日程度の場合が多いと考えられています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復にかかる期間

COVID-19に限らず多くの疾患では重症度に応じて回復期間が異なり、重症度が増すほどその期間は長くなることが予測できます。軽症や中等度ⅠのCOVID-19の場合は、約80%の患者が発症から7日程度で回復することが分かっています。

 

一方で、発症から7日程度経過した後に酸素投与が必要な中等度Ⅱに重症化した患者は、発症から10日目以降にICUでの治療が必要となり、回復が遅れるもしくは完治はせずに後述の後遺症に繋がってしまう場合もあります。

ワクチンや治療薬で回復期間は変化する?

次に、COVID-19の回復にかかる期間はワクチンや薬物治療によって変化はあるのか解説していきます。

ワクチン

日本で現在接種できるCOVID-19のワクチン3種はいずれも「COVID-19の重症化予防」を目的として接種が進められており、重症化予防という目的に対して有効性を判断しています。

 

そのため、COVID-19の回復期間に焦点を当てた解析結果は確認できる範囲で公表されていません。一方で、COVID-19の重症化予防に対して高い有効性が得られているとすれば、COVID-19患者全体として回復までの期間が短縮されていると考えることもできます。

 

いずれにしても、COVID-19のワクチンに関しては回復期間に与える影響を含めた有効性など不明な点が多いことが現状です。

治療薬

日本でCOVID-19の治療を目的として使用が承認されている医薬品はレムデシビル・デキサメタゾン・バリシチニブ・カシリビマブ/イムデビマブ・ソトロビマブです。これらの治療薬がCOVID-19の回復期間にどの程度影響しているか紹介します。
<レムデシビル>
レムデシビルは入院を要するCOVID-19患者に対しての使用が承認されている医薬品です。アジアと欧米で実施された臨床試験の結果から、COVID-19の標準的な治療と比較して15日かかった臨床的改善を10日まで短縮しました。

 

<デキサメタゾン>
デキサメタゾンが回復期間にどの程度影響を与えるかは不明ですが、重症のCOVID-19患者に対して用いることで予後改善効果が認められています。

これは、重症患者で生じている肺障害や多臓器不全をもたらす可能性がある全身性の炎症反応をデキサメタゾンが予防または抑制することによるものと考えられています。

 

<バリシチニブ>
JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤であるバリシチニブはレムデシビルと併用することで、レムデシビル+プラセボ投与群に比べて回復期間が1日短縮するという結果が出ています。

 

<カリシビマブ/イムデビマブ>
カリシビマブ/イムデビマブは、いわゆる抗体カクテル療法として用いられる医薬品であり、軽症患者に対して使用できることで注目されています。プラセボ群と比較して、カリシビマブ/イムデビマブ投与群では症状がなくなるまでの期間が中央値として4日短縮することが分かっています。

 

<ソトロビマブ>
カリシビマブ/イムデビマブと同様に軽症患者に対して使用できる医薬品です。今回紹介するい医薬品のなかではCOVID-19に対する治療薬として承認されてから最も日が浅いです。

回復までの期間より重症化予防に対する効果が注目されており、重症化リスクの高い軽症・中等症の患者を対象とするソトロビマブはプラセボ群と比較して入院・死亡のリスクを79%低減することが明らかになっています。

後遺症として長引くことも

SARS-CoV-2に感染して一旦症状は治まったものの再び何らかの症状があらわれることや感染後から継続して症状が治まらない場合をCOVID-19による後遺症としてlong COVIDやpost COVIDと呼ぶことがあります。

 

日本人を対象として聞き取り調査では、COVID-19の症状を発症してから4ヶ月後でも2~11%の方が呼吸困難感・倦怠感・咳・味覚障害といった症状を自覚していることが分かりました。

 

また、COVID-19患者全体の25%の人にあらわれる症状として報告されている脱毛のように、COVID-19の発症から約60日後に出現する遅発性の症状もあります。

まとめ

今回はCOVID-19の回復にかかる期間について詳しく解説しました。軽症患者はCOVID-19の症状があらわれてから約1週間で回復しますが、重症度が増すほど回復にかかる期間は長くなる傾向があります。

 

重症度の高いCOVID-19患者に対しては薬物治療を行うことで回復までの期間が短縮することや重症化を抑える効果が期待されています。

 

未だ明らかになっていない点が多くあるCOVID-19ですが、世界中で研究が進められていることもあり少しずつ分かることが増えている最中です。今後もCOVID-19に関する新たな情報を入手し、COVID-19に対する正しい理解をしていきましょう。

参考資料
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版(2021年8月31日改訂)|厚生労働省
感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第12報)|国立感染症研究所
COVID-19に対する薬物治療の考え方第9版(2021年10月11日)|一般社団法人日本感染症学会
Remdesivir for the Treatment of Covid-19 – Final Report
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19
REGN-COV2, a Neutralizing Antibody Cocktail, in Outpatients with Covid-19
Early initiation of corticosteroids in patients hospitalized with COVID-19 not requiring intensive respiratory support: cohort study
Prolonged and Late-Onset Symptoms of Coronavirus Disease 2019

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監修医師 木村眞樹子
現役医師、産業医 10年以上大学病院で臨床に従事、産業医として企業の健康経営にも携わる 2019年より医療ライターとしても活動している
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