ワセリンはアトピー性皮膚炎に効果がある?役割と注意点を解説


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更新日:2025年04月7日
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ワセリンとは
ワセリンは水分を肌に補給するのではなく、肌表面に膜を作って水分の蒸発を防ぐ働きがあります。このような成分は『エモリエント』または『オクルーシブ』と呼ばれ、保湿ケアの一部として用いられます。
ワセリンの役割
ワセリンには肌に薄い膜を作り、水分の蒸発を防ぐ役割があります。石油が原料だと聞くと肌に良くない印象を受けるかもしれません。しかし、高純度に精製することで、刺激の強い不純物がほとんど取り除かれています。
色に注意しよう
ワセリンは精製度によって色が異なります。一般的に純度が低いものは黄色がかり、純度が高いものは白色になります。医療機関でも使用される「白色ワセリン」は、薬局やドラッグストアで購入可能です。高純度な製品は不純物が少ないため刺激性が少なく、アトピー性皮膚炎の方や敏感肌の赤ちゃんにも安心して使用できます。
ワセリンがアトピー性皮膚炎に良い理由
ワセリンは乾燥から肌を守り、バリア機能をサポートするため、アトピー性皮膚炎のケアに有効です。
肌の水分蒸発を防ぐ
アトピー性皮膚炎の症状が悪化しているときや、乾燥がひどくて保湿クリームだけではうるおいが保てない場合、水分を補ったあとにワセリンを重ねることで、水分の蒸発を防ぎバリア機能をサポートできます。
皮膚のバリア機能の低下に対して保護を行う
日中は注意していても、寝ている間に無意識に掻きむしってしまい、肌を傷つけてしまうかもしれません。そんなとき、ワセリンを塗ることで油膜が皮膚を保護し、掻き傷を防ぎつつ衣類や寝具との摩擦からも肌を守れます。
また、湿疹から出る浸出液には皮膚再生を促す成分が含まれているため、拭き取ったり乾燥させることなく油膜で閉じ込めることで、傷や炎症の回復が早まり、傷あとも目立ちにくくなると考えられています。
刺激が少なく、アレルギーを起こしにくい
白色ワセリンは不純物が少なく肌に優しいため、デリケートな肌にも安心して使用できます。アレルギー反応や副作用の心配はほとんどありません。ただし、まれにかゆみや赤みが出ることがあります。まず二の腕などに塗り、少し時間をおいて反応を確認してから顔などデリケートな部位に使用しましょう。
ワセリンの使い方
乾燥肌ケアでは、保湿剤をたっぷり塗るのが基本ですが、ワセリンについては当てはまらない場合があります。ローションや乳液、クリームのように、同じ感覚で使用するものではなく、ワセリンには適切な使い方があります。
少量を伸ばして使う
ワセリンは肌の表面に膜を作り、水分の蒸発を防ぐ役割を果たします。しかし、ワセリン単体では肌に水分を補うことはできません。そのため、まず水分を含んだアイテムで保湿ケアを行い、その後にワセリンを重ねて塗るようにしましょう。ワセリンは常温で固形のため、手のひらで少し温めてから塗ると、薄く均等にのばしやすくなります。
ワセリンを多く塗り過ぎると、ベタつきやテカリが気になることがあるかもしれません。顔に塗る場合は、まず米粒2つ分程度を手に取り、足りなければ同量を追加しましょう。
ワセリンを手のひらで温めながら薄く広げ、顔を包み込むように軽く押し当てます。顔をこすらないように、手の位置を変えながら優しく塗布してください。これは、摩擦で皮膚を傷めるのを避けるためです。
保管方法に注意する
白色ワセリンは一般的に腐敗や酸化が起こりにくく、防腐剤無添加の製品も多いですが、汚れた手で触れると雑菌が混入する可能性があります。綿棒やスパチュラを使うか、清潔な手で取るようにしましょう。チューブタイプの製品も衛生的でおすすめです。
フタを開けっぱなしにしたり、直射日光の当たる場所に保管したりすると変質を招く原因となります。日差しを避け、高温多湿にならない場所で密閉して保管してください。開封後は、製品に記載された使用期限に従って使用しましょう。
アトピー性皮膚炎でワセリンを使用する際の注意点
ワセリンは使用方法を誤ると、トラブルを引き起こすことがあります。
ベタつきが強く、汗をかくと不快に感じることがある
ワセリンを厚く塗りすぎると、肌がべたつくだけでなく、汗腺をふさいでしまうことがあります。その結果、湿疹やかゆみなどの炎症を引き起こす可能性があるため、適量を心がけましょう。
皮膚表面の温度上昇による痒さを引き起こすことがある
ワセリンを塗ると皮膚表面に油膜ができ、水分の蒸発を防ぐ一方で、汗の発散も妨げる可能性があります。その結果、熱がこもりかゆみが増すことがあります。
細菌感染を悪化させる可能性がある
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能や免疫力が低下しているため、細菌感染を併発しやすくなります。ワセリンは肌に密着しやすいため、湿疹や掻き傷の上から厚く塗ると、その内部で細菌が増殖する可能性があります。
スキンケアは保湿だけではない!保清と保護も大切
日々のスキンケアでは、「清潔にする」「うるおいを与える」「刺激から守る」の3つが大切です。
皮膚を清潔に保つ(保清)
体を洗うときは、石鹸をしっかり泡立て、泡で包み込むようにやさしく洗いましょう。固形石鹸は泡立てネットを使うと泡が作りやすいですが、泡状の石鹸を選んでも良いかもしれません。石鹸を直接肌にこすりつけたり、ナイロンタオルを使用するのは避けましょう。
洗ったあとは、38度程度のぬるめのお湯でしっかりとすすぎ、石鹸を肌に残さないようにしましょう。体が温まるとかゆみが出やすくなるため、長時間の入浴や熱いお湯は避けてください。入浴後は、タオルでやさしく押さえるようにして水分を拭き取り、肌をこすらないようにしましょう。
皮膚にうるおいをあたえる(保湿)
入浴後は皮膚の脂分が洗い流され、そのまま放置するとすぐに乾燥してしまいます。そのため、入浴後すぐに保湿剤を塗ることが重要です。保湿剤はこすらず、手のひらでやさしく広げるようになじませます。関節やシワのある部分は、皮膚を伸ばしてしっかり塗り、目や耳の周りも忘れずにケアしましょう。
症状があるときはもちろん、症状が落ち着いているときでも、毎日継続して保湿を行うことが大切です。ワセリンなどの油性の保護成分は、霧吹きやガーゼで皮膚を軽く湿らせたり、化粧水をつけたうえで塗ると、より効果的にうるおいを保てます。
刺激をさける(保護)
肌に直接触れる石鹸やシャンプー、化粧品などは、低刺激のものを選ぶことが大切です。また、下着や衣類、寝具には通気性と保湿性に優れた綿素材を選ぶと、肌への負担を減らせます。
汗や汚れは肌への刺激となるため、毎日清潔に保つことを心がけてください。紫外線も肌にダメージを与えるため、帽子や日焼け止めを活用し、しっかり対策を行うことが重要です。さらに、ハウスダストなどのアレルゲンが症状を悪化させることがあるため、こまめな掃除や換気を行い、できるだけ生活環境から取り除きましょう。
アトピー性皮膚炎治療はスキンケアだけではなく薬物治療も大切
アトピー性皮膚炎の治療には、塗り薬を使う「外用療法」と、飲み薬や注射を行う「全身療法」があります。治療は塗り薬がメインとなります。
アトピー性皮膚炎の外用療法
保湿外用薬
肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を回復させることで、かゆみを抑えます。
ステロイド外用薬
炎症を抑える塗り薬で、効果の強さに応じて5段階に分類されます。症状の重さや部位に応じて適切なものを使用し、「必要な量」を「必要な期間」しっかり塗ることが重要です。
外用免疫抑制剤
ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える薬です。顔や首など、ステロイドの副作用が出やすい部位に使用します。
アトピー性皮膚炎の内服治療
塗り薬のみでは改善効果が薄い場合や症状が強く出ている場合に、併用または補助的に用いられます。内服治療には、抗アレルギー薬、ステロイド薬、JAK阻害薬、漢方薬などがあります。
アトピー性皮膚炎で保湿する際も医師に相談するのがおすすめ
アトピー性皮膚炎のスキンケアでは、肌の乾燥を防ぐために保湿が欠かせません。しかし、自己判断で保湿剤を選ぶと、肌に合わず症状が悪化することもあります。発疹や炎症がある場合は、適切な保湿方法や保湿剤の種類について、医師に相談しましょう。
忙しくて受診できない場合にはオンライン診療がおすすめ
アトピー性皮膚炎の症状が気になっても、忙しくて病院を受診する時間が取れないこともあるでしょう。そんなときは、オンライン診療を活用するのがおすすめです。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、インターネットを利用して自宅などから医師の診察を受けられる医療サービスです。スマートフォンやパソコンを使い、ビデオチャットを通じて医師と直接話せます。診察の予約から問診、診断、処方箋の発行、支払いまでオンライン上で完結できるため、病院に行く時間が取れない方にとって便利な診療方法です。
SOKUYAKUとは
SOKUYAKUは、オンライン診療をよりスムーズに行えるサービスです。アプリを使って予約から診察、お薬の受け取りまで簡単に進められる仕組みになっています。
専門スタッフによるサポートがあり、お気に入りのクリニックや薬局を登録する機能もあります。お薬手帳をデジタル化でき、全国どこでも当日または翌日に薬を受け取ることが可能です。
まとめ
ワセリンは皮膚の水分を閉じ込め、バリア機能を補うため、アトピー性皮膚炎のスキンケアに役立ちます。刺激が少なくアレルギーを起こしにくいことがメリットです。適量を意識し、使うタイミングにも注意しましょう。
スキンケアは「保湿」だけでなく、「皮膚を清潔に保つこと(保清)」や「刺激を避けて肌を守ること(保護)」も重要です。ワセリンを使用する際は、医師に相談しながら適切にケアを行い、必要に応じて外用薬や内服薬を併用しましょう。

医師
山下 真理子

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